第二章
さあて、今日も仕事っと。
俺はとあるタブンネ農場の経営者。タブンネの肉やタマゴを出荷している。
タブンネの苛められたときの反応を楽しむという趣味も満たせる素晴らしい職業だ。
そんな俺だが、一つ特技がある。
「チィ~チュイ!テュアア!」
(わーい、ごはんがきたよ!タブンネ、ごはんだいすき!)
俺はいわゆる
サイキッカー、いくつか超能力が使えるのだ。
昔からこの能力があった俺は例に漏れず超霊ポケモンと波長が合い、
トレーナーとしての実力もそれなりにあると自負している。
余談だがポケモンとナチュラルに会話ができる人がいるなんて話を聞いた。
世の中色んな人がいるもんだ。
まあそれはともかく、俺は
テレパシーが得意で人間以外の生物と意思疎通ができる。
つまりタブンネのリアクションも二倍楽しめるという訳だ。つくづく得したなあと思う。
「チィ…チャアッチュイ?」
(ニンゲンさんたちはだれにごはんをもらってるのかな?)
ここのきょうだい達の中で一番上の姉ベビンネだ。
タブンネ自体は知能は高くないが、コイツはその中ではなかなか賢そうだ。
ここのママンネ達は食用タブンネの生産用、
ベビンネ達も基本的にはいずれ出荷されるのだが…これは期待できるかも。
「ビッギャアアアアアアガッギビィィギギィ゙ィ゙!!!」
タブンネとは思えない叫び。♂ベビンネの去勢だ。
麻酔無しで直接睾丸を切り取るという拷問、悲鳴も最高だ。
もっとも、意思も感情もあったものじゃなく、完全に翻訳不可能だが。
いやあこの暴れるベビンネの凄まじい形相、ホント良いなあ。
なお当然だが後続のベビンネは仲間の悲鳴に曝される訳で…。
「ピヒィ!ビピィィィィィ!!」
はい、次キミね。
「ヂィィィィィィ!!ヂュビャアアアアアアア!!」
はいグサッとな。
「…ッッギッビュアッアアア゙ア゙ア゙ッギヂィィィィ゙ィ゙ィ゙!!!」
うーん楽しいなあ~。この作業は本当に楽しい。
まあ結構疲れるが、色々な意味でやりがいのある仕事だ。
「ミィィン…。ミヒィン…ミィィィィィン…!」
(うう…ごめんね…りっぱにそだってね…かわいいおちびちゃんたち…!)
「チィィィ!チヒィィン!」
(おかあさあん!いやだよう!)
「チュィィィン…ピィィィ…ピィィ…!」
(おかあしゃあん…やあん…やああん…!)
やっぱり母子引き離しは良いなあ。
ママンネはもう止めることはできないと分かっているが、
それに対してベビンネ達の必死な声が実に可愛い。
これからベビンネ達には立派な食肉になってもらうために快適な暮らしをしてもらう。
ここで俺のサーナイトの出番。
彼女は慈愛に満ちた励ましでベビンネ達に生きる活力を与えるのだ。
話が終わるとベビンネ達は寂しさよりも期待と希望の表情を見せた。
まあ暮らしが快適になればベビンネは親のことなんて大抵どうでもよくなるものだ。
さて、姉ンネはどうかな?
…子供を沢山産んで幸せに暮らしたい。子供が一人前になるまで自分で育てたい…。
期待通り…!苛めがいがありそうじゃないか…!
(フフ…楽しみですね…)
ああ…。
それからベビンネ達は沢山の飼料や放牧など快適な環境の中ですくすく育つ。
美味しいお肉になってくれそうだ。外に出てはしゃぐベビンネ達も見ていて和む。
こうして数ヶ月が経ち、ベビンネ達がある程度大きくなると出荷される。
実は飼育費などの関係上、ある程度大きくなったらさっさと出荷する方が得なのだ。
「ミィ!ミィィ!ミィィィン!」
(おねえちゃあん!おねえちゃあん!わああああん!)
「ミィィ…ミィィィィ…!」
(おねがい…おねえちゃあんもいっしょがいいよう…!)
いよいよ出荷の時期だ。こいつらは加工工場に運ばれたり、
別のグループは生きたまま店に出されたり…。まあ末路は変わらない。
サーナイト達がさいみんじゅつで眠らせタブンネ達は出荷された。
そして姉ンネを含む一部の♀タブンネはタマゴ生産用にする。
望み通り沢山タマゴを産ませてあげるよ、姉ンネちゃん…。
『ミッミッ!ミッミッ!ミッミッミッ…』
(トクベツなんだ!)(あたしもっとごはんがたくさんたべたい!)(わたしも!)
(やったあ!)(おねえちゃん、わたしりっぱになるよ…)
ふんふん、良い反応だ。
「ミミッ!ミッミィィ!」
(こどもうむ!ぜったいしあわせになるんだ!)
姉ンネちゃん、君は本当に立派な子だよ…。
さて、姉ンネ達にもそろそろタマゴを作ってもらうかな。
という訳で姉ンネ達をタマゴ生産用の建物の檻に移す。
檻はタマゴが勝手に転がって繋がれたタブンネ達(繋いでおくと色々やりやすい)の
届かない手前側にくるようになっているのだ。
(マスター、終ーわったよー!)
チリーン、お疲れ様。
チリーンの役目はいやしのすずやいやしのはどうによるタブンネ達のケアだ。
いやしのすずを聴かせてまわるだけでもタブンネ達はかなり体調を崩しにくくなる。
繋がれたものもいるから体調には気を配らなくては。商売だからね。
タブンネには人工受精で妊娠してもらう。
♂に襲わせてみたりすることもあるが、こっちの方が色々と楽だ。
眠らせる手段は多いし。でもまだ若い♀が成体♂に襲われた時の
「ミビャア!ミビヒィ!ミヒッ!ミヒッ!ミヒッ!ミヒッ!ミヒッ!ミヒヒィィン!ミュヒイイイ!!」
って悲鳴は最高だったなあ。またいつかやりたいな。
閑話休題。姉ンネ達はしっかり妊娠したようだ。
サーナイトの「応援」もそうだが、コイツらには自分達が幸せ者だと思ってもらわなくては。
幸せなタブンネは苛めがいもあるし、何より大事な商品だ。優しく飼育は行う。
「ミィミッ、ミィミミュイ!」
(はやくうまれてきてね、タブンネのあかちゃん!)
姉ンネちゃんも自分のお腹をさすって嬉しそうだ。いやあ良かった良かった。
「ミィーーーーーーーーーーーーーー!!」
「ミィミィミィ!ミィィ!ミィィ!ミィミィミィミィィィィィィ!」
「ミュビィィィィ!テュィィイイイ!ミビュイイイイイイイイイ!!」
「ミィィッ!ミィィィィッ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィィッ!」
「ミヒッミヒッ!ミヒィミヒィッ!ミヒイミヒイ!ミヒイイ!ミヒ…ミビィィィィィィィィ!!」
「ミィィン……ミィィィィン……ミャフッ…ミフウ…ミアアアアアアアアアン……。」
「…ッンミギィッ!ミギュィィ!ミビィィィ…!ミッギ…ミギィーーーーーー!!」
「ミヒィィィィ……ミビィィィィィィィィィィィ!!ミャミュィィィィイイイ!!」
「…ミャフウ!ミィ…ミィィ!ギュイイイ!ンミィィィィィ!
ミィ、ンミィ、ンミビヒィッ!ンミュビュイアアアアア!!…………ミィッ、ミヒ…ミヒィィ……。」
……キターーーーーー!!阿鼻叫喚!やっぱ初めては良いなあ!よっしゃ、仕事仕事ォ!
姉ンネちゃんの様子はどうかな?
「ミィ、ミィィン、ミィィィン!ミュィィ…ミュヒィィィィィ…!ミィィィミヒィィィィィ…ミィィィィィィィィン…!」
(タマゴ、タマゴぉ、タマゴぉぉ!だれかあああ…タブンネのタマゴとってえ…!
タブンネこどもほしいよう…おかあさんになりたいよおぉ…!)
「ミィ!ミッ!ミィィィン!ミィミィミィィィィィ…」
(ニンゲンさあん!おねがい!タブンネのタマゴとってえ!タブンネ、タマゴじぶんじゃとれないよお…。)
お、(予想通り)助けを求められてしまった。となれば当然…
「ミアアアアア!ミィィィィ!ミィィミヒィィ!ミヒャアアアアン!
ミィィィン、ミィィィィ!ミィィ、ミィィ!ミビィィィィィ!」
(いやあああああ!やめてえええええ!タブンネのタマゴもっていかないでええええええ!タブンネのタマゴなのよう!
タブンネ、こどもたちとくらすのがゆめなの!おねがい、かえして、かえしてええええええ!)
姉ンネちゃん期待通りの反応!最高だなあ!
君達のタマゴはみんなが美味しく食べてくれるよ!良かったね!
しかしまた最初は全滅か。まあ産卵のために仰向けになると産んだタマゴは見にくいだろうし、
ぽっちゃりお腹や短い首と手足では仕方ないのかもな。
このあたりに野生のタブンネの生存率の低さのカラクリがある気がする。
サーナイトによると、やはり姉ンネは他のタブンネよりは賢いようだ。ますます期待大だな。
実は、最初は良いなあと言ったが、むしろこれからが本番なのだ。
いきなりでは仕方ない…では二度目以降、タブンネ達はどうするのか、どう反応するのか、そこが面白い所なのだ。
姉ンネのようなちょっと(だけ)賢いタブンネがいるとより面白くなる。次も楽しみだ。
そしてタブンネ達の反応をカメラで録画して後で見るのが最高の娯楽になる。
さあてまた姉ンネ達が妊娠したぞ。
カメラの映像を別室で見ると、姉ンネは1コだけながらタマゴの確保に成功したようだ。やるじゃないか。
しかし届かない位置にある残り4コのタマゴに向かってミィミィ喚いている。
ぜんぶタブンネのタマゴなのぉ!といったところか。
だが残念、君のタマゴから命まで全て俺の手の中です…申し訳ない!
…あっ!姉ンネちゃんやらかした!鎖に無駄な抵抗をしてる間に確保したタマゴが転がって行っちゃった!
「ン゙ミ゙ィィィィィィィィィィィィ!!」
絶望の叫び声!さてすぐに回収に行かないとな!
近くで姉ンネの顔を見ようと思ったのだが、タマゴを回収したら気絶してしまった。
この時の目を見開き涙を垂れ流し、口をあんぐりと開けて硬直した姉ンネの顔!
勿論即写真を撮った。タブンネの定番の表情だが、姉ンネちゃんのは格別だなあ。よっぽど子供が欲しいんだな。
さて、次はどんな行動に出るかな?姉ンネちゃん。まだまだ楽しませてもらうよ。
ほう、今回は2コ手元に残せたんだね、偉いね。
だけどサーナイトが念力で取り上げるからね。
「ミギュイイイイイ!ミィィン…ミギャアミュビャアアアアアア!」
(なんでタブンネのタマゴとりあげるのおおおお!いやああああん!タブンネのタマゴかえしてよおおおお!)
さて、他のタブンネ達からもっと。
「ミィアアア!ミビアアア…!」
(やああああ!やめてええ…!)
「ビグウ!ビギュィィ!ミギィィィ!」
(かえして!あたしのタマゴかえしなさいよおおお!)
うんうん、威勢のいいコも居ていいね。
でも姉ンネちゃんは2コ手元に残せたのに、君達は良くて1コ!だらしないぞ~!
口ばかり喧しい子には
お仕置きだ!
「ミギィィ…ミヒッ!?ミビャッ!ミギアアアア!ミギィ!ミギィ!ミヤア!ミヤア!」
(タマゴぉ…みひゃあ!?いたあ!いたあい!いだいいだい!やめてやめてえ!)
念力で左の触覚を引っ張って…そうだ!結び目をつけちゃおう!
そして最後にもう一度ギューッと引っ張って…。
「ンミュギュア゙ア゙ア゙ア゙!ッビィイイイイ!!」
(いだいよお゙お゙お゙お゙!っぎゃぁああああ!!)
ブチッ
あっ…。
「ッ…!イッビャアアア゙ア゙アガッアアア゙ア゙ア゙!!」
あーあ、触覚が千切れてしまった。まあ想定内だけど。
まあコイツはさいせいりょくだし、日を置けば触覚でも治るだろう。
「…ビヒッ!…ミ゙…ミバッ…!…カヒッ…カヒ…。」
しかし今にも死にそうな痙攣具合だな。これは触覚プレイの道が開けるかも?
…キタ!来たぞ!姉ンネちゃん、寝そべってお腹の下にタマゴを隠してる!
あの「キリッ」って感じの表情!前回も大絶叫だったのにまだまだ希望を捨てていないようだな!
素晴らしい!…が、君は最悪の方法を選んだ!サーナイト!
ググッ…
「ンミ!?ギュ…ギュミ…ミ…ミュ…ビィアア…ンビ…!」
ビシィ…ベキバキ…グチッ…
「…ミッ…ミヒ……ビィ…ンビヒィ…!」
ビシィ…ベキバキ…グチッ…
「ビビャアアアアア!ギュギャアアアッアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
最高だよ姉ンネちゃん!特に大事な大事なタマゴにヒビが入り始めたときの表情!
自分のお腹に直に伝わってくる感触はどうなんだろうなあ~。
自分で赤ちゃんを殺したという罪悪感はどれほどなんだろうなあ~。
これで姉ンネちゃんも限界かな?別に精神がどうなろうとタマゴを産んでくれればいいんだけどね。
…なん…だと…?
姉ンネちゃん、タマゴをしっかり抱えて守っている!おお、あれでも折れないかあ。
しかも正面からタマゴを守るつもりのようだ。その意気や良し!たっぷり苛めてあげよう!
「ミッ…ミヒッ…ミヒィィ…。ミ…ミィ…!ミィミィミィィ…!」
(ひっ…ひぃぃ…こわいよぉ…。…でも、タマゴはぜったいにまもるもん…!)
恐怖で震えながらも我が子のために敵に立ち向かう…か。うん、徹底的に苛めたくなるんだ、すまない。
ガッガッ!
「ンミヒャア!ミギュッ!ンビィ!ミュギッ!ビヒィミュギヒィッ!」
(やあん!いやあ!ゆるしてえ!うぎゃっ!いたいいたいいたい!)
健気で本当に可愛いねえ君は。今回も美味しそうなタマゴをありがとう。
お礼にこれからも食べ物や安全な寝床をしっかり用意してあげるから…ね!
ドスッ
「ミギュイッ!…ミッ…。…ミッビャアアアアアア!」
(いたあい!…あっ…。…いびゃああああああ!)
タマゴ、ありがとね。ちゃんとご飯、食べるんだよ。
「ンッギュミ゙ィィイイイイ!ミ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙イ゙!!」
いじわるぅ!とか喚いてる。…俺の声は届いてなさそうだな…。
姉ンネちゃんもいよいよ精神がヤバいか。よおし…。
「ミグィィ…。ミギュウウゥ……。」
(よーし、ハマったな…ケケケ…。)
ゲンガー、お疲れ。姉ンネちゃん、素敵な“あくむ”を楽しんでいるようだね。果たして再起できるかな?
あれ、姉ンネちゃんまた1コキープしてるだけ?まあいいか。
んじゃドスドスつついて…はい没収!お疲れ様で~す。
…なんて気付かないとでも思ってるのかね?
姉ンネに限ったことじゃないが、タマゴを隠したのバレバレもいいとこだよまったく。
…でもその足掻きに免じて特別サービスをあげよう。タマゴ、大事にしてくれよ?
そろそろタマゴが孵る頃合だな。姉ンネも幸せそうにタマゴにミィミィ話しかけている。
しかしカメラでの監視云々の前に態度が違い過ぎてタマゴの存在がやっぱりバレバレ。
というか生まれた後どうするつもりなんだ?流石にそこまで考えは及ばないか。
でも本当に幸せそうだなあ。タマゴから返事が返ってきて最高に幸せだそうだ。
ではその幸せをズタボロに壊して差し上げよう!
夜、チリーンが可愛らしいあくびでタブンネ達の眠気を誘う。
姉ンネはタマゴに神経を使っていた反動か、もうすぐタマゴが孵る安心感か、ぐっすりだ。
さいみんじゅつで操っても面白そう…いやいや!姉ンネへの仕打ちはもう決まっている。
タマゴをこっちに寄せて…さあ、明日が楽しみだ。
「ミヒィィン!ミビィィィン!」
キタキタキタ!俺は待機して…さあサーナイト、姉ンネちゃんに僅かな希望を抱かせるんだ。
…OKOK、いいよいいよ。おっ、タマゴが孵るぞ姉ンネちゃん!
「ミィ…ミュヒ…!ミアア…!ミッ!ミィミィミィ!」
赤ちゃんを舐めてあげたいんだね、でも残念だけど君の幸せな時間はここで終了です!ネイティオ、テレポート!
(…了解ダヨ。)
「ミッヒィアアア!?ミンミャア!?」
なんでぇ!?だって。驚いてる驚いてる。
さて、ベビンネちゃんは柵に縛りつけて、すぐには死なないように水を用意して…と。
「ミィィ!ビィィィ!ミィミィミィィ!ンミギィィ!ミュビィ!ミギャアアア!」
赤ちゃんの末路に気付いた姉ンネちゃんが喚く喚く。タブンネは“さわぐ”なんか使えたっけ?
とにかく姉ンネちゃん、念願の赤ちゃんと楽しく過ごしてね!
じゃサーナイト、そっちはよろしく。
「ミィィ…。ミュィィ…ミィィィン…。」
姉ンネちゃんはずっとベビンネに届かない手を伸ばしている。
ベビンネが空腹で弱ってきてからはより一層訴えるように鳴いているが…。
「ミギィ!ミィミィィッ!ミグウゥ…!」
「ミフッ!ミィッ!ミヒィミィィィ!」
他のタブンネ達からうるさい!いい気味!などと罵られてしまった。まあなんでアイツだけ…って思うよな。
「チヒ…ヂィ…。」
一方のベビンネは弱々しく母親に向かって鳴いている。
目の前の母親に触れることもできずに、空腹の苦しみの中短い生涯を終えることになるのだ。
悪いけど、君は姉ンネちゃんの心にトドメを刺す為に生まれてもらったんだ。自分の運の悪さを恨むんだね。
夕方。恐らくベビンネはそろそろ限界だろう。殆ど鳴かず、水も飲んでいない。
姉ンネちゃん、いよいよだよ。
「…ヂィ……ヂ……。」
(…おぢ……ぢ……。)
あ、最後にお母さんにお乳をねだれたんだね、偉い偉い。でもこれが遺言になっちゃったね。
…?姉ンネは何をしてるんだ?今まさに自分の子供が事切れたというのに、必死で鎖から逃れようとしている。
まさかまだ気付いてないのか?…暫く放っておくか。いつ気付いて泣き叫んでくれるかな。
なんと姉ンネは朝になっても鎖と格闘していた。タブンネに壊せるような鎖ではないが。
それより、哀れな姉ンネちゃんに現実を教えてあげないと。
さあ、すっかり冷たくなった可愛い可愛いベビンネちゃんだよ。ようやく念願の赤ちゃんを抱けるよ。
「ミッミッ!ミィィ~♪ミィミィ!…ンミィ?ミィ!ミィ!ミィィ!」
おいおい、冷たくなってても気付かないのかよ。それ程赤ちゃんへの想いが強かったのか。
でも流石に無反応のベビンネにはおかしいと思ったようだな。触覚で心臓の音を聞いて生きているかを確かめている。
「ミ…ミッ…ミグッ……ミビャアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙……!」
哀れ姉ンネちゃん、ようやくベビンネの死を理解したようだ。
目を付けたタブンネを撮影した映像は資料という名のコレクションにしている。
姉ンネちゃんは泣き声が特にイイ。楽しませてくれてありがとう姉ンネちゃん!
「ミギウウウウウゥゥゥ…ビイィィィィィ゙ィ゙ィ゙ィ゙…!」
「ミィミ、ミュイ!ミィミィ♪」
姉ンネちゃん…君という子は本当に…
姉ンネはどうやら我が子の死を受け入れられないようだ。ベビンネの死体を幸せそうな笑顔で可愛がっている。
本気で哀れになってくる…のだがやっぱり死体を可愛がる姉ンネの姿を見ると呆れから笑いが出てきてしまう。
タブンネにはこの様に我が子の悲惨な死を受け入れられず、暫くの間親が死んだ子供を世話するということが稀にある。
それを狙って子タブンネを目の前で惨たらしく死なせる連中もいるらしい。
(無惨で理不尽な死に方が重要で、毒殺が効果的だとか)
他人のことを言えた身ではないが、まったく良い趣味をしている。
「ミンミ、ミィッミィ!ミィア~ミィィ!」
ずーっと幸せに暮らそう…か。まあ現実逃避する権利くらいはあげよう。
結局、姉ンネはベビンネの死体を大事に大事に抱きしめて幸せな顔で眠りについたのだった。
翌朝。姉ンネは我が子の死をやっと受け入れたらしく、ベビンネの死体を放り出して
虚ろな表情でミ…と弱々しい声を出していた。
どうやら遂に、遂に姉ンネちゃんの心は完全に砕けたようだ。
おめでとう!君は母親になんかなれない、ただの産卵マシーンだ!
やっとそのことを分かってくれたんだね。じゃあこれからもしっかり働いてくれよ。
「ミ……ミ…………ミィ…………。」
…ふう、今日も仕事終わりっと。
プルルルルル…
ん、電話…おや、アイツからか。また「新調」するのかな?もしもし…。
よーし、身を隠して…。
ガチャン!ギィ…
念力であの姉ンネの鎖と柵の鍵を外してやった。姉ンネちゃん、ここから逃げるなら今だよ!
ポテポテポテポテ…
本当に足遅いな…あっ、コケた。はあ…まあいいか、始めよう。ブラッキー、くろいまなざし。
(間抜けめ…。ビビれ!)
ゾワッ…
「ミピィ!ミ…ピヒャアア……。」
姉ンネはもう逃げられない。じゃあいつものようにやるか。サーナイト、ルカリオ。
グググ…
「ギュ…グピ…ャア……ンビ……。」
パアン!パアン!
「ミ゙ュギィ!ビュィッ……ヂュビャア!ビッ…ギャッ…!ビヒィ!ビヒィ!ビヒュイァ!」
サーナイトが念力で拘束し、ルカリオがしんくうはの連射でボロボロになるまで痛めつける。
もう何度もやった連携だ。無力な姉ンネにできることなど許しを請うくらいだろう。
そして姉ンネが限界というところでいつものようにアイツに合図をして…。
ザッザッ…
「コイツか…。」
「……ミ゙………ミ゙…ィ……。」
「んじゃ、貰っていくぞ。」
ポン!
姉ンネはボールに入れられた。…ってコラコラ!金金!
「おっとそうだった。…ほらよっと。んじゃ、ありがとさん。」
はいはい。姉ンネちゃんを「可愛がって」あげてね!
「分かってるよ、フッフッフ…。」
(マスター、良かったのですか?)
ルカリオ。…そうだな、ちょっと惜しいかな。
ま、アイツの所にやるならもう苛め尽くした今の姉ンネが一番良かっただろうし、
触覚を弄ったタブンネの観察も進んでるし、別に良いさ。さあ、寝よう寝よう。
(あの娘はあの方の所で夢が叶うと良いですね。ウフフフ…。)
サーナイト…(全く、ホント父親に似てゴーストタイプじみた奴だなあ…)。
…でもまあ、確かにそうだな。頑張れ、姉ンネちゃん!
終わり
最終更新:2015年02月20日 17:15