お盆嫌いだからタブ虐る 一話

  • タブンネとフィッシング・

タブンネ釣りという遊びがある。釣りならたくさんあるが、ここは釣ったタブンネをサイズ制の釣果に応じて景品と交換できる。
通常アイテムからドーピング剤など様々で最高ランクの景品はポリゴン。

やり方は簡単。太い釣り針にオボンをつけて投擲するとあっというまに食らいつくのであとは釣り上げるだけ。
重さは10歳の子供が数十キロのポケモンを釣り上げる世界なので問題はない。竿はいい釣りざおに相当する品。
掘りは一般的なプールくらいで、もちろん水はなく、代わりにホログラフで水面が写され底が見えないようになっている。逆も同じだ。

今日もトラックの荷台から数十はいるかと思われる大小様々なタブンネ達が次々と下車すると両手を後ろに組まされ、手錠型の枷がかけられる。拘束以外の理由は後述する。
主に収容所出の規律に縛られた生活をしてたタブンネなので怒鳴れば作業は楽に進む。
たまに数合わせにされただけの生意気なのも混じってはいるが、直ぐ様スタッフがぶちのめし枷をかければ問題ない。

次にプールへ次々と投げ込まれる(タブボディの弾力で怪我は無い)約2m程の深さで、作業用梯子があるが上がることは不可能。拘束する理由の二つ目がこれ。
用意ができたら開店。釣りざおを借り針に4分の1にカットされた実を餌にプールへ投擲、釣りの始まり。
丸一日食事をとらされてないタブンネは頭上から落下してきたオボンに躊躇なく食いつく。
両手を拘束した理由の三つ目がこれで、頭のいいタブンネは手で実をちぎってしまうからだ。
実を口に含んだ事を示す引きがあったらすぐフッキング。これでがっちり針はタブンネのタブタブの頬に突き刺ささる。

実の甘さから一転した突き刺さる痛みにタブンネは動転し、さらに実の汁が口内に滲み暴れるまわるが、
針はずれることなく口内に突き刺さったままだ。本来針にかえしはないが、ここはバラせないようにかえし針が使用されている。
見事に釣り上げた少年は満足そうにタブンネの口内から針をはずす。この少年は手慣れたものだが、難しいならスタッフが代わってくれる。
上げた際に暴れる事もあるが、スタッフが対応するので安全だ。わざと暴れさせたり痛ぶるのはマナー違反とされる。
釣り上げたタブンネはそのままリリース。センサーが自動でサイズを計測し釣果をつけてくれるのだ。
時間制で終了後は釣果カードをフロントで景品に清算して終わり。一時間200円
これが一連の流れだ。


※ここからはしばらくタブンネ視点で
「オボンだミィ!いただきまオギャアアォ!?」
空腹の中突然の恵みにタブンネ達は群がるようにオボンを目指し歩みを進めた。手が拘束されている分転んだら起きるまで大変なのは見た目通りだが。
さらに食らいついた瞬間激痛と共に引き上げられるのだからたまったもんじゃない。
「いだいびぃいだいびぃぃっ!!やべでばなずびぃ!」
さらに全体重が頬にかかるのだ。ちぎれないのはタブタブした肉のおかげか。
他タブはその様子を見るどころかオボンに夢中で助けるなどまずしない。

先程のが空に消えたかと思えばすぐさま落ちてきた。
「いだい…いだいミィ…」
頬からは血が噴き出し少し裂けている。

「だいじょミィ!?」
そんな彼に一匹が傷口を舌で舐めて癒やそうとしている。もちろん技は安全のために全消去済だ。
「舌を傷に当てておくミィ、唾液が応急処置になるから。それにしてもおかしいミィ、どうしてミィんな」
周囲でも同じような事が起きている。オボンに食いつくと叫びがあがり空に消えたかと思えばすぐに戻ってくる。処置を施したこの♀成タブンネは状況を冷静に判断していた。

この♀ンネは病院に勤務していた婦長と呼ばれる優秀なタブンネだった。
しかし院長お気に入りのハピナスの不祥事をすべてなすりつけられてしまい、もちろん反論するも上層の力に叶うはずもない。
優秀でも所詮「タブンネ」なので審議もなくすぐ収容所送りになった。
送り先がパンパンでありその場の判断で輸送トラックに投げ込まれ、たどり着いた先がこの釣り堀だった。

「どうなってるミィの…」
考えていると眼前にまた降ってきたが、それは先と同じ怪我タブンネであった。
「両頬に穴空いてるミィ…どうしてこんな…」
「だっでオボンがあるんだミィ!もっどぐわぜろ」
手を振り払い、両頬から血を流しながら再びオボンを含んでは叫びと共に空へ消えてはすぐに落ちてくる。
♀ンネはそれの詳細:空腹4:6の割合で、試しにオボンを含んでみたがなにか金属のようなものが触れすぐに吐き出した。

「チェッ!スカったか!」
頭上からそんな声がするがそんなことはどうでもいい、あれは針だ!注射の時につかう針より大きい。♀ンネは周囲に知らせるべく声をあげた。

「ミィんな!これは食べちゃダメミィよ!怪我し「うるせえミィ!こちとら三日も食べてねえんでミィ!」
「お、おぼん…おぼん…ミィ」
「いだいミィ、おいじいミィ!」

自分には信じられなかった。通常のタブンネはこうなのか?自分は高等教育をうけ、自制できるようしつけられた身だ。
野生や収容所生活を知らず、ここまで執着できるのがタブンネの生態なのか?と彼女には信じられない光景だ。
血を流しながらもオボンに食いつき投げ捨てられる事を繰り返す様相はまるで地獄だ。

「ミィも!ミィもー!」
先程から懸命にぴょんぴょんしてるまだ幼さが抜けきらない子タブがいた。大人に突き飛ばされながらも懸命に立ち上がりオボンに飛び付く。
そんな光景に♀ンネの瞳に涙が浮かんだ。
病院では子供は人もポケモンも関係なくキラキラしてて誰からも大切にされてたのに…

「やたミィ!あーん」
「ぼうや食べちゃダメミィ!」
「ギャミィ!ムァァオメメギャア!」
一足遅かった。成体ですら余る針は子供には大きすぎて針先が目玉から突き出ている。

関係ないが一本釣りは餌を含ませてから少し移動させ、その進路と逆へ竿を横にひく。だが未経験者や初心者は焦りから真上に竿をたててひいてしまう。
針の丸みや餌の滑りで抜けてしまうのだが子タブは運が悪かったとしか言えない。

「うわきっもまじきっも」
「目玉目玉」
「とれねーぞこれ、うわ変な汁でた」
釣ったのは子供達で騒ぎながらも楽しそうにしている。
こうなったらかえし針ではまず抜けないので、スタッフが糸を切り、針がついたままの子タブをプールへ投げ込んだ。残念ながらオボンは吐き出してしまっていたようだ。
♀ンネは急いで様態を見るも目は重さが掛かったことで内部破裂を起こし、投げ込まれた際に受け身をとれなかったのか左足が骨折していた。
針を抜こうにも文字通り手は出せない。どうすることもできないのは明白だ。

「ミィも…ォボン…たべたいよぅ…」
目と口から血を流しか細い声で鳴く子タブに♀ンネは決意を固めた。自身が釣られ、その時にオボンを口内に残したまま戻る。♀ンネは子の為に痛みを堪えることにしたが。

痛みは想像以上だった。温室育ちの♀ンネには刺さるのとその引き上げられる痛みは常軌を逸脱していたが子タブの為に耐える事に成功した。
が、針を抜かれる際にオボンまで奪われてしまい、口内に残されたのは皮片とそこ残った僅な果肉のみ。♀ンネは投げ込まれてから這いずり子タブに口移しでそれを与えた。

「ぉぃちぃ-あまいよぅ…」
「ミフフ、よかった、ミィ…」
はじめての激痛に立ち上がる気力も無く♀ンネはそのまま気を失ってしまった。

………
気がつくと辺りは更なる地獄だった。
血に染められた床や壁を背景にひたすらオボンを求める血だらけのタブンネ。
針がなぜか腹に突き刺さっているのもおり、口から糸をたくさん垂らしている奴は飲み込んでしまったのだろうか。
血を吐いてる奴は針は残らなかったが内臓に多大なダメージを負ったのだろう。
死んだように横たわっている奴の体には同族の血の足跡が無数についていた。

ふと足元に何かがあるのに気づく。所謂撒き餌用ポロックだがこれには空腹誘発成分が含まれており、口にすれば食欲が満たされなくなる。
もちろんタブンネのみ有効で他種が食べても害は全く無い。♀ンネはそんなことはしらず、隣の子タブに与えた。

子タブはどんどん弱っていった。空腹感も増し、苦しみは乗加しているのだろう。残された片側の小さな瞳が♀ンネを見つめ呟いた。
「おなか…すいた……ママ」
最後の一言で♀ンネは決意する。今度こそオボンを手にして…私がこの子を守って見せる。
膿が吹き出始めた目を優しく舐めて♀タブは意を決し立ち上がるが、既に実は無く辺りは少し暗くなっていた。

「点検開始」
大きな声と共にプールへ三人の人間が降りてきた。
「ひでえな。血塗れなのはわかってたがこれはやばいわ」
「とりあえず見た目マシな奴は残して、死骸や重症はこっち」
プールの端に穴が開きスタッフは選定したタブンネを投げ込みだす。まだ息のある者も容赦無く。

「枷と針は必ず抜けよ」
針はペンチで無理矢理引き抜くので、酷いのは口から頬まで裂けてしまったのもいる。それらももちろんダストシュートへ。
「飲み込んだやつは?」
「こうする。おい手伝え」
二人がかりで無理矢理引っ張ってようやく抜けたが肉片がたくさん刺さっていて血も大量に吐き出された。
「1、2…6針、よし全部だな」
「どうすんすかこれらは」
「ああ、サファリゾーンの食事だ、だから針ははずせよ。まあ膓は抜かれるが、処理が大変だからできる限りはな」
撒き餌さで空腹ストレスを感じてる分旨味が増してるとサファリ在住のポケモンは語る。もう一度いうが撒き餌の成分は他ポケには無害だ。

次々とダストシュートへ消え、あれだけひしめいていたプールは今や点々とした静かな空間となった。

そして♀ンネ達の前にも人間が。
「これは綺麗だから明日も使い回せますが、こっちのチビはダメっすね」
折れた足をつかみ上げ、針を無理矢理引きずりだした。眼孔から神経のようなものが垂れ下がり、人間は汚いものを払うように手を振る。
「いたいミ…ママ…たす………」
振った手から血が飛び♀ンネの顔に付着した。それが引き金となったのか♀ンネは涙を流し人間にすり寄り叫ぶ。

「どうしてこんなことするんですかミィ!この子はこんな小さくて、まだママと一緒に暮らしてて……それでも必死に生きてミグッ!」
人間からの返答は顔面へのキックだった。針痕が開いたのか出血し口内に血の味が広がる。
「なんだこいつうっぜえなあ、何か叫んでるけど、「腹へったオボンくれミィ!」だろうな、明日までまってろよバカ」

♀ンネは突き飛ばされ立ち上がることも無くただ俯いたままだった。
人間が上がると乾燥付自動洗浄機が起動しプール内部の血や細かい物体は全て中央排水溝に流れ、照明も落ちた。

先ほどまで惨劇があったと思えないほどプールは綺麗で静かだったが、
ダストシュートからまだ息のある飼料タブ達の呻きが♀ンネに眠りすらもたらしてくれない。
耳を塞ぎたくとも手に自由になく、さらに痛みと失意が彼女を支配していく。
壁にもたれかかり、閉ざされた天を見ることしかなかった。
※タブンネ視点終わり


「オーライ!」
今日もトラックが搬入口に背を向け、タブンネの列が枷と共にプールに投げ込まれる。盛況に合わせ数がいつもより増えているようだ。
あの日からもうしばらくになるが、あの♀ンネはまだそこにいた。
飢えから手を出したポロックによる終わりのない空腹感、頭がよいぶん釣り餌オボンに手は出さずにいたのが仇となった。
幾度と無く繰り返される惨劇、たくさん同胞や子、ベビの死。撒き餌のせいか、精神はボロボロになり無気力に撒き餌を這って食うを繰り返す廃タブ化していた。

どんなに糞尿や血に汚れても清掃されれば見た目は綺麗なタブンネに戻る。
スタッフも消耗品一匹一匹にナンバーつけて管理してるわけもないので、点検時に毎回同じやつがいるなんて誰も気づかないし気にもしない。

今日も♀ンネは壁端にもたれ掛かり、撒き餌を食べながら空腹感と、同胞が弄ばれ死ぬ様をただ見ているだけの日々を過ごす。蒼かった瞳はヘドロのように濁りきっていた

一話終
最終更新:2015年08月19日 21:44