※一章のタブ視点になります。二章はまったく関係ありません
今この時期タブンネたちは越冬用に作った巣で集めた食料を少しずつ消費しながら家族身を寄せ合い暖をとっている。はずでした
この一家はそれが叶わなかったようです
街に近かったのが仇になったのでしょう。意地悪な人間により巣は無惨に破壊され貯蓄食料もド派手に踏みにじられ食べられたものではありません
『うっわ、こいつらゴミ食ってる。』
『どうせ盗品だろ』
『ははは!ブレイク!』
三人の人間は食料を川に投擲したり段ボールの巣をハンマーで破壊します。食料も破れた段ボールも泥まみれで本来の用途に使えなくなりました
惨劇の中ひたすら地に頭を擦りつけ許しを請うタブンネ
「ミィミィ(お願いします!もう許してください!)」
必死にたのんでもミィ語では伝わるわけもなく人間達はタブを無視して破壊を続けます
そんな時でした
『おいこれ子じゃね?』
隠しておいた家族。ママ、子タブ兄妹、ベビが見つかってしまいました
ママはベビを抱え、そして子はママにがっしりしがみつき皆震えています
土下座ンネはパパでした
危機にパパは立ち上がり愛する家族の前に立ち一秒間に三回土下座するバースト土下座をしました
それがウケたのかはわかりませんが人間達はライブキャスターをみたあとすぐいなくなりました
パパは腰が抜けたように尻餅をつき家族に笑顔を向けました。そして踏みにじられた食料からまだ食べれそうな部分を探しだします
パパは元飼いポケで人間の凶悪さは身をもって理解しています。実際に虐待され、攻撃技を全部消され捨てらくらいに
ですが人間への対応を理解しているのか、泥棒などは一切せず巣の材料はすべてゴミから
食料、生ゴミはとあるレストランからコンポスト代わりとしてきちんと受け取ったもの
レストランのスタッフの中にはなるべく混ざらないよう、仕分けてくれる人もいました
ただこれはタブ脳理解なので実際はていのいいゴミ処理くらいなのでしょうが
人間を知っているパパならではの生きる知恵です
生ゴミもパパが食べられる部分を家族に与え、自分は最低限ですが子供や妻の笑顔を見ると苦じゃなくなる。タブの出来たタブンネです
ママは野生育ちで人間嫌いですが媚るなどの特技をもつ普通のタブンネ。なぜつがいになったかはわかりません
なんだかんだで食事が得られ守って貰えるからかもしれませんが
話は戻って家を破壊されたタブ達は絶体絶命。このままでは二重の意味で命にかかわります
パパはわずかな食料とともに引っ越しを決意しました。家族も同意。暗いうちにこの場をあとにしました
ベビはママに抱かれ暖かそうですが、ある程度の子タブは寒そう。パパはボロ毛布を舐めて綺麗にしポンチョのようにして子供に与えました
それでも寒そうなのは変わりありませんでしたが
しばらく歩くと建物も散々とした広い場所に出ました。開発途中らしくまだまだの地
近くに森はありますが肉食ポケに考慮し偶然発見できたトタンばりの廃屋に身を置くことになりました
隙間風が厳しいですが贅沢は言えません。なんとか廃材で風除けを作り食料を置くとパパは新たに食料を探しに出掛けました
未開の地ですが心配そうな顔の妻や子供達に笑顔を見せ手を振りうっすら雪に染まった地へ踏み出しました
遠くに見える街の明かりに涙がこぼれそうになるパパ。食べ物をくれた人間に感謝しつつゴミを探します
ここいらにしては綺麗な一軒屋の近くに差し掛かった際、一匹の綺麗なグレイシアの♀が闊歩していました
「こんにちは、僕タブンネ。ここいらに食べ物ありませんか?」
と笑顔で話しかけますが
「ねえよ」
とだけ告げ、グレイシアはその家方面に向かいました。恐らくあの家の子なのでしょうか?タブンネはこっそり足跡をつけました
玄関が見える位置にあった看板に隠れ、帰宅したグレイシアをドレディアが迎え入れ足を拭いてあげています。やはりここは人間の家
さらにポケモンがいるならもしかしたら理解してもらえるかもしれない。虐待していた人間は自分以外ポケモンがいなかった
食事をくれてた人はポケモンがいるらしい優しかった。都合のいい解釈ですが後がないパパはこの家のゴミに望みをかけることにしました
壁側からこっそり庭を覗くと大きなガラスがあり、中では先ほどのグレイシアが石で区切られた木が燃える箱の前で、
暖かそうな毛布の上に横になりでっかいあくびをしていました。ドレディアが現れると手にもったオボンを綺麗にきりわけ あーんして食べさせてもらっています
パパの目に涙が浮かびました。あっちはポケモン同士ですが自分もそんな生活を夢見てあの時プレシャスボールに入ったのですから
ザッザッ。音に気づき身を隠しながら辺りを伺うとマフラーを巻いたハッサム♂が雪掃きしながらこちらに現れました
鼻水垂らしガタガタしながら雪を掃く姿にある程度体毛をもつ自分とは違い辛いんだろうな と同情してしまいました
「僕がチョキしか出せないのわかってるのにみんなグーだすんだもんなあ。ハッサムっ変換すると発寒!余計寒くなった」
ブツブツ言いながら雪を掃く姿が不憫で仕方ありませんでした
しばらく待っても人間は現れません。辺りも暗くなり寒さが厳しくなったあたりでパパは一度退散しようとしましたが、車が停車しました
『おおさむさむ!早く入ろう』
頭にニット帽を被ったアーケン、ファーのついた暖かそうなお洋服を着たイーブイも人間に続き降車し家に入っていきました
二匹はまだ子供のようでとてもキラキラして見えます。うちの子もあんな暖かそうな服あげたい
パパはボロキレで作ったポンチョがとても情けなくて悲しくなりました
再びガラスから覗くとみんなテーブルを囲んで、ここからでも見える湯気たつスープを飲み幸せそうでした
パパは意を決して窓をコンコンと叩いてみました
何も反応はありません。一瞬人間がこちらを見たように思えましたがすぐスープに向きなおしました
「たくさん家族がいるから大変なのかな」
パパは名残惜しそうになんども暖かそうな家族を振り返りながら場をあとにしました
ですがそんな真面目なパパに振りかかった災難。野生のウォーグルが珍しいとこにエサが!といわんばかりにパパに襲いかかります
嘴でパパの肩を抉り 鋭い爪は右目と右耳を奪いました
「ミギャアアアア!」
パパは必死に投石し命からがら逃げることに成功。我が家の前で力尽きてしまいます
「誰…?パパ!!酷い怪我ミィ!チビちゃん達手伝って!」
気づいたママはパパを運び寝かせると必死に癒しの波動をかけますが出血や寒さにより容態は悪くなるばかり
「僕は…パパは大丈夫…だから…ね?なかないで」
大粒の涙を流す子供達の頭を撫でようとしますが、神経が切断されたのか動かすことはできません
その日家族は空腹も忘れみんなで身を寄せ合いながら眠りにつきました
翌朝、ママは子供達にわずかな食事、ベビに乳を与えるとパパに癒しの波動を放ちますが、PPが尽きたのか空振りするばかり
パパは会話すらできなくなり、様態は悪化していくばかり。特性再生力でなかったようです
こうなってしまった以上はママが戦うしかありません。ちなみにママに人間のモラルなどありません
タブ媚がダメならば強奪や傷害沙汰もやむを得ない。子供を守る母は強い と思い込んでいる始末
ベビを連れていく理由も同情をひくのに役立ってもらうのと、夫の様子からして最悪この子だけでもと苦渋の決断の半々です
ママはクズじゃありません。野生、自然の厳しさを理解しているのです。たぶんね
勘違いした心の強さを携えママは未開の地へ足をふみだし
「ミャアア!つめたミィ!」
ませんでした
昨日の薄い雪は凍結し氷状になっていました。ママは子供達からポンチョをかり足にぐちゃぐちゃに巻き付け再び外へ踏み出しました
ママはパパがよりすぐった生ゴミのおかけで肉付きはよく、抱かれたベビはそれなりに快適で自身もある程度寒さには強いようで
正午すぎの晴れた天候もありまだマシといった感じ
まあなによりベビンネの暖かさもあんじゃねえのかな
「さぶいびぃ…でもママがんばるからね!」
自身に酔う余裕があるのは今までの不自由の無い暮らしからかもね。ほんとかわいそう
しばらく歩き雪が乾いた石に腰掛け尾からかじりかけのオボンを取り出し食事を始めやがった
そんなん隠してたんならガキにやれよって話だがママがミルクでなくなっちゃミィとかいうんだろうね
ぐちゃぐちゃ食ってると道路を車が走っていき、廃棄ガスにゲホゲホミィしてると一軒屋を発見
※ママは解らないけど昨日のあの家
ママはオボンの芯をぽいすてし、ドスドス後を追いました
凍結道だからゆっくり運転してたのが幸いしたのがなんとか見失わず家を特定できました
「ミィゼェハァ…ゼェハァ…ブッヒィ…」
ようやく家の前につき、車に目をやると人間と抱っこされたイーブイが現れました
イーブイは(ママは知らないけど)昨日と同じように暖かそうなモコモコの服を着て 靴まで履いています。それに無償に怒りがわきました
イーブタのくせにうちのベビちゃんよりいい暮らししやがってミィ
肝心のベビちゃんはドスドス走りに揺られ酔ったのかゲロ吐いてママの自慢の毛並み()にゲロがべったりこびりつき、ミルクだけありママは激臭を漂わせてました
二つの怒りに燃えるママですが車から降りたもう一つの物体に目を奪われます
タブンネ
なんと子タブンネを家に招いてるではありませんか。しかもそのタブンネは毒々しい紫色の体毛
一般的にポケモンは体色など気にもしませんが、ママはピンクの体毛に自信を持っていたので
色違いが大嫌いでした
あのヘドロ色が人間にかくまってもらいやがってミィ。私のピンクのが可愛いのにミィ
鼻息荒く怒るママですが走った疲れからか玄関前の看板に背をもたらせたまま眠ってしまいました
ベビの鳴く声と冷たさに目を開けると辺りは真っ暗で雪が降りだしていました。頭に積もってますが震えるベビちゃんに気が動転してしまいます
どうしようどうしよう。明かりが見える方へ向かうと窓からポケモン達と人間がテーブルを囲み食事をしています
燃える木(暖炉)家の中で火災おこしてバカじゃねえかと思いつつもその様子を眺めているとさっきのヘドロ野郎も輪にいました
ヘドロに草女(ドレディア)が変な棒で皿からすくって食べるように教えてるように見えます
湯気をフーフーしながら笑顔で食うヘドロにママは怒りが爆発しました。よし、ミィのピンクボディでメロメロにしちゃうゾ
バンバンとできるだけ必死な顔で窓を叩きますが誰も気づかないのか無視して食事を続けています。必死に叫びもしましたが無反応
ですがタブンネだけあってヘドロがこちらを向きました。お前だけなんで!?と叫びます
ベビちゃんの震えが激しくなりいよいよまずい状況。人間に飼われてるようなやつらは大したことない。こうなったら無双してやるとと思った時
「おい」
振り向くとグレイシアがいました
ママは焦りからか媚びるのを忘れ、口悪く頼み込みましたが、返答は
「しね」
ママの体はたくさんの氷刃に切り裂かれました。目が飛び出したのか左右で見えるものが違っています
それでも雪に落ちたベビちゃんを抱こうとしましたが体が動きません。グレイシアは子供をもみあげネクタイで締め上はじめました
そしてぶち と千切れ軽い音が響きました
ママは薄れ行く意識の中に見えたのはこちらを心配そうに見つめるヘドロタブ
なんで…あなた…だけ…
ママはの意識は闇にとけていきました
少し時間を遡って
二匹のタブ兄妹は戻らない母に不安をつのらせてました。パパもどんどん弱っています
「よし!僕がママ達を迎えにいくミィ!」
「お兄ちゃん、私もいくミィ!」
「僕たちもパパみたいにみんなを守るんだ!」
二匹は父の為にも母を迎えに行く決意をかためたようです
パパは麻痺がはじまり口も開けませんが視覚聴覚と意識はまだあるようで子供達が心配でなりませんが、優しく立派になったことに嬉しさが込み上げました
「パパいってくるミィ!妹もベビもママもみんな助けるミィ!」
二匹は寒さの中へ飛び込みました
「お兄ちゃんまってミィ…」
トストス走りますが妹ははやくも息切れ気味。さらに転んでしまいます
寒い中でぶつかったりした時の痛みは想像しやすいと思います。妹は大声で泣きますが、兄が血がでた肘を舐めてあげると泣き止みました
「がんばるっていったミィじゃない!ママ達はもしかしたら悪い人につかまったのかもしれないミィ、だから二人で助けなきゃミィ」
「ヒッグヒッグピッグ…うん…ミィ…がんばるもん!」
二匹は手を繋ぎ走り出しました
ですがやはり子供の足。あたりは暗くなりはじめ寒さも増してきました。それでも肉球を真っ赤にして 擦り傷だらけにして
何度つまづいて転んでも 二匹は励まし合いながら 走りました
暗さがよかったのか明かりが見えます。家のようにも見えますが、パパから人間の巣は夜でも明るいという話を思いだしその方向へ向かいました
二人はパパから人間の怖さを学んではいません。自分達がどんな目に合うかなど考えもしません
助けてもらえるはずと思う図々しさは母親譲りなのでしょうか
明かりの元につきそうな時叫び声が聞こえました。まさか…まさか…
たどり着くと血塗れのタブンネと頭の無いベビンネが散らばってました。二匹は恐る恐る臭いを嗅いで絶叫しました
おがあ゛あ゛あ゛ざあああ!!
残骸がママと気づいたのか二匹は大泣き。寒い中傷だらけでようやく会えた家族は残骸のようだったのですから
そして背後の存在に気づきます。色は違えど綺麗な子タブンネがこちらを見ていました
なんで助けてくれないの!?なんでお前だけ!
子供目にも室内が暖かいとわかるのでしょう。ひたすら嫉妬や憎悪をむけました
さらに母親達を失った行きどころの無い怒りをぶつけようと近寄りますが、見えない壁に阻まれます
ガラスなど知らないのでしょう
二匹はバンバンガラスを叩き「ママをかえせえ!ベビをかえせえ!」と騒ぎますが、突然頭を捕まれ雪に投げ捨てられました
カーテンが閉まったせいかよく見えませんが赤い大きなポケモンがハサミをバチバチしながら二匹を見下ろしています
兄は手を振り回しながら立ち向かいますが、ブチュンという音と共に頭と足が同じ位置にされてしまいました
妹は失禁してM開脚みたいな感じで涙鼻水流しながら震えますが
目が慣れてきたのか見えた姿は赤いハサミでワシワシ頭をかくポケモン
すぐにハサミ迫り意識が飛びました。途絶える瞬間空を飛んだような感じと共に頭の無い自分の体が見えました
巣のパパはもはや虫の息でした
体は動かないのに意識はある。断続的な痛みが気絶すら許してくれません
パパは穴だらけの天井を見つめました。隙間から降りる雪がとても幻想的です
そして陽が上がる頃、痛みと寒さに耐えられずパパは誰にも看取られず息をひきとりました
季節は変わり、家屋解体業者に発見された時は顔を痛みにひきつらせ、見るものに同情をひかせたそうです
焼却処分され、骨は共同墓地に埋葬されたようです。きちんと供養されたのは真面目に生きてきたパパへの賛辞なのかもしれません
雪がとけ新たな命が芽吹く季節。またどこかでタブンネが生まれては死んでいくでしょう
糸冬
最終更新:2014年06月29日 13:33