タブンネさんのせーたい

「ミッミッ!ミィミィミッ…」
クチャクチャと音を立てて木の実を食べるタブンネ。
タブンネが食べているきのみは農家から奪ったきのみである。
幸せそうな表情、とてもかわいい。
しかし、そんな幸せもいつか終わりが来て、いつもの地獄の日々が始まる…。

タブンネ達が巣に戻ると、巣が荒らされていた、恐らく野生のピッピの仕業だろう。
人の農地を荒らした罰である。
冬の飢えを凌ぐための食料や木の枝、布などは全て無くなり、残っていたのはピッピの足跡と人里から持ってきたであろうゴミだけだった…。

途方に暮れるタブンネ達、子タブンネは泣き叫び、その鳴き声だけが巣に響きわたる。
絶望した表情で巣からタブンネは出ると小さなヨーテリーが可愛らしい鳴き声を上げた。
「クウーン」
タブンネは今日を生きるためにヨーテリーを補食することにした。

「ミッミッ!」
タブンネはヨーテリーにすてみタックルを当てに行った、しかしヨーテリーは俊敏で鈍足なタブンネでは攻撃を当てることが出来なかった。
「キュウーン」
ヨーテリーは草むらの中に逃げていってしまった。
更に落ち込むタブンネ、その表情はいつものかわいい顔とは違い絶望の表情である。
タブンネは世間からは可愛らしい妖精のようなアイドルポケモンのイメージが有るが、それは大きな間違いである。
肥えた腹部に短足単腕鈍足、そのくせ食い意地ポケ一倍、そのせいかポケモンの生態系の底辺である。
並外れた繁殖力のおかげで数は大量でまともな食事にありつけるのはごく一部、大半のタブンネは食糧難から農家などを荒らして生活しているのである。

またタブンネは経験値が高いことで有名であり、経験値目的のトレーナーから襲撃をよく受けることがある。
イッシュ政府は並外れた繁殖力のせいで被害が出ているためタブンネ狩りを公式的に公認しており、イッシュで唯一保護法が適用されていないポケモンである。
しかしそれでも被害と生息数は年々増えており、可愛さゆえに餌付けをしてしまう人間がいるために政府は頭を悩ませている。

またタブンネの繁殖が進んでいる原因にはもう一つある。
それは大手マスコミによるタブンネの印象操作である。
今イッシュではタブンネによる被害も増えているが人気も凄まじく、まさに空前絶後のタブンネブームなのだ 。
マスコミはタブンネ愛護団体ミィーシェパードから献金を受け取りタブンネの印象操作を日々行っている。
タブンネの被害や悪事をテレビの前で告発したジャーナリストが手厳しいバッシングを受け、一家共々行方不明になったこともあるという。
それほどにタブンネの人気はイッシュを盛り上げているのである。

今は保護法が適用されていないタブンネだが、最近はタブンネ愛護団体ミィーシェパードがマスコミを使ってイッシュ政府に対して圧力をかけ始めた。
その結果、1ヶ月後にはタブンネ特別保護法が制定される予定である。
タブンネ特別保護法の中身は酷い物であり、タブンネを虐待した者は無期懲役を課せられるとの噂もある。
他にもミィーシェパードによるタブンネの生活を脅かしているポケモンの駆除も検討されているらしい。
先ほどのピッピなども駆除される恐れがある。
ミィーシェパードの勢力は凄まじく、イッシュだけでなくカントーやジョウト、ホウエンシンオウにも近々支部を置く予定である。

ある日、とあるジャーナリストたちはミィーシェパードがタブンネを別の地方に売買している様子を目撃した。
「ミィミィミィ!」「ミッミッ!」
檻の中に入れられた無数のタブンネたち、可愛らしい鳴き声を上げて船に積まれていく。
「しかし随分かわいいポケモンですね~」
「これがイッシュに生息するタブンネというポケモンか」
カントー地方の船乗りは感心していた。
「絶 対 に 大切にしてあげて下さいね」
ミィーシェパードのメンバーは念を押して車でその場を去っていった。
ちなみに車は高級な外車でタブンネマネーで買った車だそうだ。
ミィーシェパードはこうしてタブンネを様々な地方に売り飛ばし、大量のマネーを得る。
果たして売り飛ばされたタブンネ達の運命やいかに…。

「あのイッシュのアイドルタブンネちゃんがカントーにやってきた!」カントー地方のテレビではこのニュースが連日連夜放送されていた。
恐らくミィーシェパードがテレビ局に圧力をかけたのだろうか、タブンネはすっかり国宝扱いされていた。(マスコミが勝手に)
カントー政府はまず入国してきたタブンネたちを最大級のもてなしで歓迎した。
「ミッミッ!」
すっかりアイドル気取りのタブンネたち、その人気がミィーシェパードとマスコミによって作られたものだとも知らずに。
その後カントー政府はタブンネをカントー図鑑のNo152番に制定し、大量のタブンネたちを野に放った。
そしてタブンネ特別保護法を制定してしまった。
こうしてカントー地方はすっかりミィーシェパードの支配下についた…。
一年後には予想を上回るペースで繁殖し、その生息圏を広げていった。

ミィーシェパードの企みは成功し、ジョウトやホウエンも同じ様にマスコミを使った印象操作でタブンネは他地方での繁殖を次々に続けていった。
しかし、ただ一つ、シンオウ地方だけは状況が違っていた…。
ミィーシェパードはシンオウ地方にもタブンネを送り込み、そしてミィーシェパードの圧力でマスコミを操りシンオウ地方も征服を企んでいた。
しかしシンオウ地方には新興宗教ギンガ教というシンオウ最大級の団体があり、シンオウのマスコミを支配下に置いているのもギンガ教だったからだ。
ミィーシェパードはギンガ教を潰そうとしたが、シンオウの住民の九割がギンガ教を信仰しており、とてもではなく支配下に置けるものではなかった。
それでも一応タブンネを大量に送り込むことは成功したが、元々経験値の塊であり、トレーナーに次々に狩られてあまり繁殖は進まなかった。
ミィーシェパードのシンオウ征服は成功しなかったのである。

ミィーシェパードはシンオウ征服が進まないことに苛立ち、イッシュ政府はシンオウ地方に戦争を仕掛ける体制をとることを決めた。
イッシュの政権はミィミィ党が一党独裁状体である。
またミィミィ党はカントー、ジョウト、ホウエンにも協力を求めた。
もちろんそれらの地方はそれを承諾し、シンオウ地方との戦争に突入していった。
シンオウ地方はガブリアス部隊を国境近くに配備、数は少ないが有事の際には頼りになるエリート部隊である。
対するミィーシェパード率いる連合軍はもちろん数でごり押しのタブンネ部隊。
しかも人間に甘やかされたタブンネ達なので戦力になるかは疑問だが。
それでも強力なわざマシンを使い強化されたタブンネ達はミィーシェパードには頼もしく見えたという。
そしてある日、カントー前線基地から出撃したタブンネ部隊はシンオウ征服へ乗り出した…。

国境近くに近づいたタブンネ達、向こう側にはガブリアスがタブンネ達を睨みつけている。
「ミィィ!」
一匹のタブンネがガブリアスにれいとうビームを放った、戦争開始だ。
「ウキ!」
タブンネがガブリアスにれいとうビームを放った時それを草むらから飛び出してきたゴウカザルが受け止めた。
「ウキィィィ!」
草むらから大量のゴウカザルが飛び出し、タブンネ達に火炎放射を浴びせた。
「ミギャァァ!」「ミィィ!ミッミィィィ!」
瞬く間に燃えていくタブンネ達、燃えたタブンネ達にゴウカザル達の容赦ない追撃が始まりました。
「ミブォファ!」「ミギャウェ!クェェ!」「ブヒィィ!」
焼き爛れた体に突き刺さるインファイト、ドラゴンクロー、血が血を洗い流し国境の土地は汚れた体液で覆い尽くされた。
「ミィィィ!」
生き残っていたタブンネは逃走を図ったがガブリアスに追いつかれ、補食されてしまった。
この戦闘をきっかけに、シンオウ軍はカントーに進行を始めた。

カントーに進行を進めるシンオウ軍、中でも大惨事がおこったのがタマムシシティ、ヤマブキシティである。
この街はミィーシェパードによって街の人間は全て退去させられ、タブンネの植民地になっていた。
街は糞尿にまみれ、異常な臭気を発していた。
さらにタブンネの繁殖力のせいで街はタブンネまみれになり、与えられた食料の奪い合いになることが多い。
そのためタブンネ達による共食いが多発、タブンネの残骸が街にしばしば見られるらしい。
そんな街にシンオウ軍が攻撃を仕掛けた。
軍が街にやってきた途端、タブンネ達は人間が食料を持ってきたと勘違いしたのかミィミィと媚びた声で鳴き始めた。
媚びた表情で軍に近づくタブンネ達、そんなタブンネを軍隊は火炎放射器で焼き払った。
「汚物は消毒だ~!」
軍人がそう言うと、タブンネ達の掃討作戦が始まった。

「ヒャッハー!この街は人間が居ないから好きに暴れられるぜぇ!」「豚祭りだぁ!」「満足させてくれよ!」
軍人たちは狂喜の表情でタブンネ達を焼き払っていく。
「ミィ!ミィィィィィ!」「ミッミッ!ミッミッ!」
我先にと地獄の業火から逃れようとゲートから街の外へ逃げようとするタブンネ達、しかし空から空気の振動がタブンネの体を引き裂いていきました。
「ミブォ!?」
空からトゲキッスがエアスラッシュでタブンネ達を攻撃しています。
どこにも逃げ場が無くなったタブンネは絶望の表情で刈り尽くされてしまったようだ。
こうしてカントー、ジョウトは1ヶ月で焼け野原となり、特にタブンネの個体数は大幅に減少した。
また、カントーを中心にミィーシェパードに対する不信感が強まり、住民はタブンネたちを迫害し始めた。
タブンネたちは草むらや街を歩く度に住民からお前のせいだと石を投げつけられたそうだ。
こうしてようやく害獣タブンネの駆除に乗り出したカントー、ジョウト地方。
ミィーシェパードは当然抗議、弾圧をしたが、戦争によって勢力や資金が衰えていたため、徐々にその影響力は薄れていった。

また、イッシュ地方にも新しい風が吹き始めていた。
ミィーシェパードの本拠地であるイッシュ地方は影響力が物凄く、タブンネを虐めようものなら最悪極刑も有り得る狂気の地方だが、そんな中タブンネ虐待派が陰に隠れて活動を始めた。
特にイッシュ地方の様々な街で行われたタブンネミキサーショーは大好評だったという。
日々タブンネ虐待派はその勢力を増していき、初めこそはミィーシェパードによる厳しい弾圧が入ったが、タブンネ虐待に目覚めたミィーシェパード会員の裏切りもあり、ついにはミィーシェパードと同等以上の勢力を持つようになっていた。

こうなるとイッシュを動かすのはミィーシェパードでは無くタブンネ虐待派となった。
タブンネ虐待派はマスコミも支配下に置き、タブンネ虐待グッズの販売も始めた。
特に人気の商品はタブンネ用ミキサーである、このミキサーはタブンネの肉を綺麗に抉れる用に出来ており、またタブンネの悲鳴がよく聞こえるように出来ているのだとか。
他の人気商品はタブンネホイホイ、特に農家の間で人気だという。
タブンネ虐待グッズはイッシュ地方で飛ぶように売れ、莫大な経済効果を生み出した。
ミィーシェパードが支配していたときよりもイッシュの雰囲気はよくなり始め、タブンネ虐待ビジネスは成功を収めていた。
タブンネ虐待派は虐待ビジネスで稼いだ金をカントー地方やジョウト地方に復興の為に寄付したという。
そのおかげでカントー地方やジョウト地方は徐々に回復の兆しが見え始め、またカントー地方、ジョウト地方に住み着くタブンネは元々その地方にいたポケモンたちに生息圏を取り替えされてしまい、姿を消していった。

また唯一戦争の被害を受けずにすんだホウエン地方はミィーシェパード最後の砦であった。
ミィーシェパードの勢力が衰えたイッシュ地方からミィーシェパード会長はホウエン地方に拠点を移し、ホウエン地方で勢力を立て直そうとしていた。
未だにミィーシェパードの勢力が強いホウエン地方、だがホウエンの港に着いたときにイッシュのミィーシェパード会長は絶句した。
そこでは人間とタブンネ達が本当の意味で笑い合い、友情を築いていた。
本当の意味で人間と対等なタブンネ、ホウエン地方では人間タブンネと無邪気に遊んだり、げしげししたり、冗談混じりでタブンネに軽いいたずらをしたりしていた。
もちろんタブンネは純粋な笑顔であり、嫌がった表情はしていなかった。
「ミィミィ♪」
真の意味で喜びの鳴き声を上げるタブンネ、それを見てミィーシェパードの会長はこう言った。
「私は愚かなことをしていた…タブンネを愛護するだけでタブンネたちと笑い合い、愛する事を忘れていた…」「そう、タブンネを本当の意味で愛していなかった…」
後悔した表情で泣き崩れるミィーシェパード会長。
「私たちはタブンネを過保護にする事に固執し、欲望のままに戦争までしてしまった…」「そんな私たちを許してくれるか?タブンネちゃん…」
そう言うと会長はタブンネの肩をたたいた。
「ミッミッ!」
タブンネは笑って返事をした、どうやら許してくれているらしい。
「そうか…ありがとうタブンネ…」
会長はタブンネに感謝した、その後会長はこう言った。
「あ、あの…後でタブンネちゃんとSMプレイがしたいんだか…いいかな?」
「ミッミッミィ!」タブンネは承諾した、恐らくこのタブンネは真性マゾなのだろう。
「ミッーーー!」
そしてその夜、タブンネの嬉しい悲鳴と鞭の音が夜空に響いた…。

その後会長や会員の改心の結果ミィーシェパードという団体は消滅し、「タブンネちゃんファンクラブ」という団体に生まれ変わった。
タブンネちゃんファンクラブではミィーシェパードとは違い、タブンネの様々な愛し方、虐め方を検討する団体である。
会長の実は隠れた趣味であるタブンネとのsmプレイはホウエン地方で大流行したという。
タブンネ虐待によりホウエン地方で増えすぎたタブンネの生息数も抑えられ、ちょうどいい数になった。
イッシュ、ホウエンは虐待の聖地イッシュ、もふもふなでげしげしの聖地ホウエンと呼ばれるようになり、いろんな需要でのタブンネ目的の観光客が増えていった。
本当の意味でお茶の間の人気者になったタブンネちゃん。
あの頃のような過剰な愛護はなく、虐待アイドルタブンネちゃんとしてタブンネは新たな生き方を始めた。
そう、タブンネへの愛情は様々なのである…。

fin
最終更新:2014年08月01日 23:42