ここはイッシュ地方の孤島にあるタブンネ裁判所。その名の通り、タブンネを裁くための施設だ。悪事を働いたタブンネが世界中からこの裁判所に送られ、法の裁きを受ける。
しかし法と言っても、この世界にはポケモン自体を裁く法律は存在しない。実はこの裁判所はタブンネ虐待愛好会が作ったものであり、タブンネを裁く法律は全て愛好会によって非公式に定められたものだ。
もちろん通常の裁判とは異なり、厳粛な決まりは無く非常にラフな形式を取る。あくまでも虐待を楽しむ手段だからだ。
「静粛に!それでは開廷します」般若の面を被った裁判長が鉄槌をベビンネに叩きつける。バキボキと骨が折れる音で裁判は始まった。
「被告人1番・あぶらみ、糞豚容疑で逮捕」裁判長が番号・名前・罪状を読み上げると縄で縛られた一匹のタブンネが法廷に姿を表した。
ボンレスハムのような体を捻り縄から抜けようとするが当然無理である。
「えー、被告人は4日、ヒウンシティのアイスクリーム屋を襲撃し
ヒウンアイス600円相当を強奪、さらに店主に全治2週間の不快感を与えた」
「ミィィッ!ミフォッ(僕にアイスを売らなかったから奪ったんだミィ!文句あるかミィ)」タブンネは裁判長に悪態を付いた。タブンネの言葉は翻訳機を通して人間にもわかるようになっている。
「くたばれ外道!」「私のアイスを返して!」「死んで償え!」傍聴席からヤジが飛ぶ。投げられた石が一つ、タブンネの頭に当たった。
「ミフーッ!ミブッ!(なにするミィ!殺してやるミィ!)」タブンネは癇癪を起こし、地団駄を踏みながら歯を剥き出した。
「静粛に!静粛に!」裁判長が鉄槌をベビンネに振り降ろす。傍聴席は静かになったがタブンネはまだミィミィ騒いでいた。
「えー、被告人は身勝手な理由により強盗を働き、さらに法廷を侮辱しました。よって判決、死刑!」
「ミィィィ!ミミッ!!(意味がわからないミィ!ふざけるなミィ!)」
するといきなり法廷に筋肉質の死刑執行官が5人入ってきて、タブンネの顔面を殴ると隣の執行室へ引きずっていった。死刑はすぐに執行され、その様子は法廷の巨大モニターで見ることができる。
タブンネは執行室に連れてこられると補助係のドーブルにより抵抗できなくされる。
まずトリックで持ち物を没収され、次に金縛りで動けなくされる。そして封印と変身で技を使えなくされるのだ。
「1番・あぶらみ!貴様は名前通り油の刑だ、フライドタブンネの刑に処す!」裁判長が叫ぶと執行官は一斉に柄杓を持ち、バケツに入った煮えたぎる油を動けないタブンネにかけ始めた。
「ミギャアアアア!ウギギギィ―――ッ!!(みぎゃああああ!熱いよぉ―――っ!!)」
ジュウジュウと音を立ててタブンネの全身が高温の油で焼かれていく。
「ギチヂヂイ!ミボオボオボボボッ!!(もうしまぜん!もうじまぜんがらあ!!)」
淡いピンク色のチョッキ模様の皮膚はベロベロと剥がれ落ち、醜い肉と脂肪が泡を噴いて溶ける。
「ミ゛ジシャャアィアアア!ヴジュイイェェ!!(ごめんなざい゛!ごべんなざいぎぎぎぃぃ!!)」タブンネは白濁した目から涙をぼろぼろ溢しながらただひたすら懺悔していた。
そのうちにタブンネの表面がパリパリと揚がっていき、美味そうな匂いが立ち込めてきた。フライドタブンネの完成である。
執行によりタブンネ料理が完成した場合、休廷時に裁判官や傍聴者、原告などに振る舞われることになる。このシステムにより被害者は満腹感の中で心から救われるのだ。
「被告人2番・
マランネ、電子計算機使用詐欺罪並びに電子計算機損壊等業務妨害罪並びに名誉毀損で逮捕」
裁判長が番号・名前・罪状を読み上げると「マランネ」が一匹法廷に現れた。
しかし、それは紛れもなくタブンネであった。耳があった、手があった、尻尾があった。
「えー、被告人は11日、
GTS…グローバルトレードステーション内のポケモン交換所において、名前を偽りマランネとして通信交換を成立させた。これによりGTSサーバーに不正処理を起こし、通信回線を約5時間もの間停止させた」
「ミッミッ!ミミィ(私じゃないです!ご主人が私にマランネなんて名付けたのが原因です!)」
「またマランネが高レートで取引されていることを利用し、タブンネと釣り合わないレートに設定されている同時4遺伝マッギョを不正に入手した」
「ミィ、ミッミッ!?(そ、それは私と関係ない罪じゃないですか!?)」
「またこの件について国際マランネ協会から、マランネを貶める行為であるとして嘆願書が提出されている」
「ミッミッ!ミッミィ!(だからそれは私のせいじゃないです!言いがかりです!)」
「えー、被告人は公共施設のシステムに異状を発生させ、個人間および企業間の取引に重大な損害を与えた。またマランネを偽って悪質な詐欺行為を行った。倫理道徳心に著しく欠けており更正の余地は無い。よって判決、死刑!」
「ミエエエエエン!」タブンネは判決を聞くとその場で泣き出してしまった。しかし泣き落としで判決が覆った例は無く、今回も同様であった。
タブンネは泣きながら執行室へ連れていかれた。
「2番・マランネ!貴様はタブンネであるにもかかわらずマランネの名を騙った!タブ切断の刑に処す!」タブ切断、それはタブンネから「タブンネらしさ」を奪う刑である。
執行官は上部にスリットがある黒い箱を運んできた。そして動けないタブンネを持ち上げるとスリットに耳のクルクル巻いた触角をあてがった。その瞬間――
「ビャアアアアアア!!!」ガリガリガリと激しい音を立てて、黒い箱……
シュレッダーの口は
タブンネの触角を吸い込み、その鋭い歯でグザグザに噛み砕いた。
シュレッダーは一度食い付いた物はなかなか離さない。神経が集中している触角を切り裂き、大きな耳までも飲み込んでいく。
「ィビビャアアア!ヒィィィ(痛いよう!痛いよぅぅぅ)」
執行官が足でシュレッダーを押さえ、強引にタブンネを引っ張ると耳のあった場所から伸びた糸束のような神経がプヂプヂと小気味良く切れていく。
タブンネは痛みに歯を食い縛っているが執行官は構わずもう片方の耳をシュレッダーに突っ込んだ。
「ミギヒャャヤアアアアアア!!ミフォオエアアアアッ!(痛いよぉぉおおおおおおお!!助けてぇええええええっ!)」タブンネは両耳を失いハゲンネになった。執行官は次に、縄で一纏めにされている両腕をシュレッダーに投入する。
バキリメキリと太い骨の砕ける凄惨な音が執行室に響き、赤黒い血が床を染める。
タブンネは気絶してしまい、叫ぶことはなかった。抵抗すらせず、そのままダルマのようになっていく。
最後に尻尾がシュレッダーに食いちぎられて完成、と思いきや執行官は些細なミスに気づいた。
「ん、そういえばマランネは頭に割れ目があったな……」執行官はそう呟くと壁に掛けてあった鉈を取り、タブンネの頭に思い切り刃を叩き込んだ。
おめでとう!タブンネはマランネに進化した!しかしマランネが目覚めることは二度と無かった。
「被告人3番・ウコンネ、糞豚容疑で逮捕」法廷に現れたのはヘラヘラと笑うタブンネだった。
「えー、被告人は7日、
ブラックシティで帰宅途中の会社員に糞尿を投げつけ全治6ヶ月の不快感を与えた。この他に被害届が数百件確認されtぶべら」
「ミヒィ!ブリブリ(うんこぶりぶりミィ!)」裁判長の言葉が途切れた。タブンネはなんと法廷で脱糞し、あろうことかそれを裁判長に投げつけたのだ。
「ミヒィヒィ!ミフャヒャヒャヒャ!(楽しいからやってるのに何が罪だミィ?面白いミィ!ドヤンネ~)」
「……判決、死刑」裁判長はそれだけ言うと、鉄槌の一振りでベビンネを粉砕した。唇を噛み破ったのか、般若の面の顎から血が流れる。
「ミヒヒヒヒ!!キエーーーーーッ!!!(死刑に出来るもんならやってみろミィ!)」タブンネは両手に糞を握るといきなり傍聴席や裁判官に無差別に投げつけ出した。法廷は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「ミヒヒヒヒ!!ミヒヒヒヒヒヒヒヒ!!ミヒッ…!?」調子に乗って糞を撒き散らしていたタブンネの動きがいきなり止まった。ドーブルが封印で「なげつける」を封じたのだ。
タブンネは懲りずに糞を投げようとするが、どういうわけか糞はタブンネの手の中から消えてしまっていた。
次の瞬間、タブンネは口の中に異物を感じたと思うといきなり真っ青な顔になって目を見開いた。トリックで全ての糞がタブンネの口の中に移ったのだ。
「フビィ!ブゴホホ!(臭いミィ!死にそうだミィ!)」タブンネは吐き出そうとするが金縛りで全く動けない。それを見て死刑執行官が一斉に飛び出し、タブンネを警棒でメッタ打ちにした。
「ブヒィイ!ンブフッ、フゴォッ!フゴォッ!グムッ!(誰か!助けて、痛いミィ!臭いミィ!死んじゃうミィ!)」
警棒の渾身の一撃が後頭部に打ち込まれるとタブンネは大人しくなった。頭蓋骨の割れ目から覗いたタブンネの脳は腐ったような茶色をしていた。
「えー、では本日はこれにて閉廷。本日のタブンネ処刑数は531匹です、お疲れ様でした」夕方、裁判長は鉄槌でベビンネを叩き潰しながら閉廷を宣言した。
これがタブンネ裁判所である。タブンネ犯罪検挙数・被害者数は近年減少傾向にあるが、それは犯罪を犯したタブンネがタブンネ裁判所で法の裁きを受けているからなのだ。
タブンネによる犯罪が無くなるその日まで、正義の鉄槌は絶え間無く振り下ろされるであろう……。
完
最終更新:2014年09月06日 13:24