泥沼

「よう、久しぶりだな!」

友人は手をあげて俺にそう話すのは
30分かけてリザードンに乗りジョウトからカントーを渡ってきた俺に水道水を差し出す

「せめておいしい水とかはないのか‥‥」

俺は文句を言いつつも水道水を飲み干す、背に腹は代えられない
カントーにいる友人に呼ばれたのは数日前だ
なんでもほしいポケモンが居るんだがポケモンには詳しくないのでポケモンに詳しい俺に聞こうと思っているらしい
そのお礼として珍しいポケモンをくれてやるとかどうとか

「お前さ、タブンネってポケモン知ってるか?
 そいつを捕まえてきてほしいんだ」

藪から棒に友人はそう話しかけてきた
タブンネ‥‥イッシュ地方では対して珍しくないポケモンだ
しかしジョウトやカントーではあまり見かけない
そもそも繁殖できる土壌が少ないのだろう
サファリパークみたいな特殊なところや育て屋みたいなところじゃないと無理だと思う
仮に捕まえてきたとしてもあんな超劣化ポケモン何に使うんだが

「あー、ジョウトやカントーじゃ見つからないかもなぁ、っていうかあんなの何に使うんだよ」

「ん?あぁいや弟のおもちゃに使おうかと思ってさ」

友人の弟は軽度の知的障害持ちだ、最近弟がなんでも壊すと嘆いていたのを思い出した
そういえばその席でタブンネのことを話したようなそうでもないような‥‥

「ほら、この前飲みに行ったときさ、お前タブンネってポケモンだったら再生力持ちですぐ壊れないし
 壊しても罪悪感のないデザインしてるよって言ってたじゃないか」

どうやら予感は的中したようだ
なんでもそれをおもちゃに使いたいんだとか
我ながら馬鹿なことをしたものだ‥‥

「じゃあそういうわけでよろしく!まぁ育て屋とかサファリにも顔聞くんだしそこらへん当たれば見つかるんじゃね?」

気軽に言ってくれる‥‥まぁ嫌なら断ればいいんだが俺だって珍しいポケモンには興味がある
とりあえず探して見ることにした
俺はリザードンにまたがり再びジョウトに戻った


ところ変わってここはジョウトのコガネシティ
俺はリザードンをモンスターボールに戻し育て屋を訪ねることにした
たまに育て屋で臨時のアルバイトをやっているのでもしいるならくれるかもしれない
俺は育て屋の前に居るおじいさんに話しかける
おじいさんは優しそうな笑みを浮かべて来訪を歓迎してくれた
俺は事情を説明しタブンネが居ないか聞いてみる
しかし反応は思わしくない、タブンネは愛玩用としての価値に秀でているので要らなくなったものもおもちゃとして引き取ることが多いんだとか
余りが居ないのなら仕方ない、俺はおじいさんに会釈してその場を去った
再びコガネシティに戻る、さてどうしたものか‥‥と考えてると近くで数人の子供達が親タブンネを虐めて遊んでいた
なんて都合がいいんだ!なんてご都合主義なんだ!そんなことは放っておいて俺は子供達に話しかけた
子供達はこっちに振り向くと事情を説明してくれた
近くのトレーナーの家から逃げてきたのを捕まえた褒美に親タブンネとその子タブンネを譲り受けたらしい
親タブンネは丈夫だし殴るとスッキリすると聞かされたので今殴ってる最中なんだとか
よく見ると3人の手元には乱雑に握られた子タブンネが3匹居た
この機会を逃す俺ではない、ちょうどそこそこ優秀な孵化余りが何匹か居たので交渉してみることにした
俺は子供たちにここで待ってくれるよう頼み急いでコガネのボックスで孵化余りを持ってきた
子供たちにそのポケモンたちを見せてみる
コマタナ、コジョフー、ワシボン等だ
子供達は皆この地方では珍しいポケモンに興味津津だ
タブンネもこの地方には居ないんだがさすがにこれに興味を持つのはこの年頃の男の子達にはないだろう
コマタナ、ワシボン、コジョフーはそれぞれ3人の男の子達に行きわたった、みんな大事そうにポケモンを抱えている
良い目をしている、きっとこの子達は優秀なトレーナーになるだろう
子供達は早速3匹で親タブンネをリンチしている
ワシボンのおいかぜで全体的なサポートをし、コマタナのアイアンヘッドで相手をけん制、コジョフーの飛びひざ蹴りで効果的なダメージ
実にコンビネーションのとれた攻撃だ、きっとこの3人はトリプルバトル会に旋風をもたらすだろう
そんなことを考えつつ俺は3匹の子タブンネをモンスターボールに入れてその場を去った

リザードンにまたがり再び友人宅、友人は喜んでモンスターボールを三つ受け取った
俺は珍しいと言われるポケモンの入ったモンスターボールからそのポケモンを取り出す
そのポケモンは白とピンクのふわふわボディにホイップクリームのような尻尾
サファイアのような眼をした────タブンネが居た
俺は酷く落胆する、珍しくもなんともないよこれは‥‥
友人は事情を説明するとかなりバツが悪そうに頬を掻く
知らなかったものは仕方がない‥‥とはいえさすがにこれは精神的にきつい
何のために俺のコマタナとワシボンとコジョフーは‥‥まぁ良い引き取り手が居てよかったとは思うけどさ

「いやー、すまん!今度なんか奢るから許してくれ」

友人は手を合わせて腰を下げる、まぁ仕方がないか‥‥
俺はそれで納得し、タブンネを友人に返した
友人は四つのモンスターボールを抱えて弟のところに向かった
弟はボロボロのピッピ人形を投げたり噛んだりしながら遊んでいた
そんな弟にまず一匹子タブンネを与える
弟はキャッキャッと笑いながら子タブンネの胴体を両手で掴み強く握った
まだ幼いとはいえ胴体をつぶされたらかなり苦しいはず
苦しそうに息をする子タブンネを解放し弟君は腕を握って思いっきり地面に叩きつけた
それを何度も繰り返す、子タブンネは短い悲鳴を何度もあげて全身ボロボロだ
再び子タブンネを解放する、子タブンネはボロボロの体に鞭打って逃げようとするが弟がそれを許さない
頭を鷲掴みして顔を地面に叩きつけた
顔面が凹み血でドロドロの子タブンネ、一応弱々しく息はしているが早くモンスターボールに戻さないと死んでしまうだろう
しかしモンスターボールに戻す間もなく弟がトドメの一発を叩きつけた
骨が砕ける音がする、しかしそれを歯牙にも留めず弟は事切れていたタブンネを痛めつけて遊んでいた
俺はその間にほかの三匹の特性を調べていた、再生力なら大丈夫だがいやしの心ではただの消耗品だからな
特性は友人が持っていた奴だけが再生力だった、つまり他の二匹は消耗品というわけだ
二匹を同時にモンスターボールから取り出し弟に対峙させる
二匹は周りを見渡し、そして先ほどの子タブンネの死体を持っている弟を見て戦慄した
二匹とも一斉に逃げだすが弟はそれを素早く捕まえて二匹で遊び始めた
手始めに一匹の腹を鋏でちょん切る、そしてその鋏を腹の中に突っ込み腹の中で閉じたり開いたりを繰り返す
内臓をズタズタにされた子タブンネは血を吐き出す、まぁ普通は死ぬわな
血を吐き出し苦しんでる子タブンネに飽きたのか鋏ごと放り投げてもう一匹の子タブンネを捕まえた
子タブンネは媚びたような鳴き声をして命乞いをする、しかしまぁその容姿とその鳴き声じゃ逆に神経逆なでするだけだわな
弟は一匹目の子タブンネの死体の顔を鷲掴みにし、もう一匹の子タブンネの顔も鷲掴みにする
そして互いの後頭部を叩きつけた
ガンガンと何度も何度も叩きつける、そのたびに子タブンネの後頭部が凹み子タブンネは悲鳴を上げる
そして頭蓋骨が砕ける音と共に一際大きな叫び声をあげて子タブンネは動かなくなった
これでいやしの心はいなくなった、残りは再生力だけ
しかし如何せん今の惨状を見て本当に壊れないのか友人は疑問に抱いてるようだ
壊れる前にモンスターボールに戻してを繰り返せば大丈夫だよ、と言うと友人は納得したようだ

俺は子タブンネの死骸を持ち上げて友人宅の庭へ向かう
そしてそれを地面に放り投げ、リザードンをモンスターボールから取り出す火を吐かせた
子タブンネ達の体に火が引火する
すると炎の中から叫び声が聞こえてきた、どうやらまだ生き残りが居たようだ
生き残ったのは最後の子タブンネで、炎の中から飛び出る
全身が燃え盛っているのをゴロゴロと転がって何とか鎮火させようとする
そんな子タブンネに対して俺はリザードンに火炎放射を撃たせる
絶望の中燃え盛るタブンネ、叫び声をあげてもがいている
そして数分立つと子タブンネは息をしなくなった
燃えカスを踏み潰して灰にする
人仕事終えて軽く伸びをしてると友人が料理を作ってくれたようだ
俺は御飯をいただき友人宅を後にした


数日後、ポケギアで再び友人から連絡があった
弟がタブンネを気に入ってぐちゃぐちゃにして元に戻してを繰り返したら形が変になったとか
送られてきた画像を見るとそこにはいびつに歪んだマランネがあった
俺はそっと画面を閉じてなにもみなかったことにした
最終更新:2014年09月29日 18:13