タブンネと外食

僕はある日手持ちのタブンネ一家を連れて外食に出掛けた。
うちのタブンネ達は木の実やポケモンフーズ以外にも唐揚げや玉子焼き等色々与えているが、たまには違った物も食べさせたいし育児を頑張っているママンネのご褒美も兼ねてだ。
「ミィ!ミィ!」
楽しみで気持ちが逸る子タブンネ達に急かされながらも目当ての店に入店した。
店内に入ると客席寄りに設置されたチェーンコンベアの上に皿が流れ巡回している。皿の上にはぐったりした子タブンネが縛りつけられている。よく見ると焼け焦げていたり凍りかけだったりと様々だ。

「ミギャァ!」「ミグゥ!」店の奥から子タブンネの悲鳴が聴こえてくる。
店員であるエビワラーが炎のパンチで焼きタブンネを冷凍パンチで冷やしタブンネを雷パンチでスパークリングタブンネを調理(?)しているのだ。
火炎放射等よりも直接殴った方が肉が締まり美味くなるらしい。握り寿司ならぬ殴りタブンネといったところか。
そうして半殺しの状態で子タブンネ達は店内に流れくる。皿の上の寿司ンネ達は恐怖で震えている。自分達の行く末を理解しているのだ。
しかし瀕死状態の為に暴れる事も出来ず瞳に涙を浮かべるだけだ。

そんな中 1人の客が皿を手に取った。
「ミィヤァァァァ!」
寿司ンネが泣き叫んでいる。これが唯一出来る最後の抵抗なのだろう。
だが意味は無い。寿司ンネは噛み千切られ咀嚼され消化されていくだけだ。
「ミガァ!ミヒィィ!」
食べられながらも声を挙げるが次第に弱っていく。
その時は好みに合わせ寿司ンネを醤油やカラシ、タバスコにつける。
「ミピィィィ!」
新たな痛みで意識を取り戻した寿司ンネが喚く。
こうして寿司ンネ達は客の胃袋に収まっていく。

誰からも手に取られなかった寿司ンネは少し安堵の表情を浮かべながら店の奥に消えていった。
それから少ししてミキサーの音が聴こえてきた。
「ミビャァァァァァ!」
調理済みの寿司ンネもミキサーにかければ再利用出来コスト削減に繋がる。

「さあ食べようか。」
しかしタブンネ一家は誰も手を付けようとしない。
それどころかパパンネは激怒している。
子タブンネ達に皿を寄越しても首を横にブンブン振って嫌がっている。
「おかしいな。いつも唐揚げも玉子焼きも喜んで食べるのに。昨日だってミミガーを御代わりしたろ?」

子タブンネ達は泣き出してしまった。 仕方ない店を代えるとしよう。子タブンネ達に機嫌を直して貰う為に飴をあげた。
しばらくすると泣き止み楽しそうに口をクチャクチャさせている。


そうだな、行き付けの鉄板焼の店にでも行くか。
あそこなら肉を持参すれば格安で調理してくれる。
「ミッ♪ミッ♪ミッ♪」
鼻歌混じりの子タブンネ三匹を見ながら
「これならパパンネ、ママンネもお腹一杯になりそうだな」
僕はそう呟きながらタブンネ一家と次の店に向かった。



「お昼過ぎちゃったね。」「ミフィィ。」
タブンネ達はお腹ペコペコだ。
目的の店が見えてきた。何やら店の外に人だかりが出来ている。
「チィ!チィ!チィチチィ♪」
ベビンネ達の楽しそうな声だ。何かのイベントだろうか?沢山のタブンネ親子と手持ちのポケモン連れのトレーナー達がいる。


「あら、丁度いい時に来たわね。」
顔馴染みの鉄板焼屋の店長だ。
「新メニューの試食会をしているの。良かったら食べていって。」
「ありがとう。それとこの子達を頼むよ。」
「ミィ?」
首を傾げる三匹。
「わかったわ。私のエルレイドに頼んでおくわ。」
店長はエルレイドを呼び、子タブンネ達と店内に入っていった。


試食会と言っていたが目の前には小さなプールで遊んでいるベビンネ達。どういう事だろうか?
しかも滑り台を改造した簡素なウォータースライダーまであるぞ。

ベビンネ達は滑り台を滑り始めた。
「チィ♪」
スピードは遅いが気持ち良さそうだ。
すると滑り台の両脇にオーダイルやバンギラス達が集まる。
そして流れてきたベビンネを掴むと麺つゆに浸けて丸呑みした。
成る程、流しタブンネか。以前どこかでタブンネそうめんの話を聞いたが、この辺りでは生きたまま食べるのがブームらしい。


ベビンネを丸呑みしたバンギラスのお腹の中から泣き声が聴こえる。
いきなり暗い所になりベビンネは怯えているのだ。
「チギャギャァァァ~!」泣き声が絶叫に変わった。どうやら胃液がベビンネを消化し始めたらしい。


その光景を見たタブンネ達から笑顔が消える。
タブンネ達の笑い声の合唱は悲鳴のそれに変調した

食べられたタブンネの両親がバンギラスの腹に向かい必死に話しかける。
すると腹から助けを求めるベビンネの叫びが返事となって返ってきた。
「これが本当の腹話術って訳か!」
近くに居たおっさんトレーナーが笑いだした。

どんどん胃袋に消えていく流しベビンネ。
悲鳴の合唱は食べられた後もお腹の中でアンコールの曲を楽しませてくれる。


流しベビンネ達は逃げようにも流れに逆らえず泣きながら流れてきて滑稽だった。
そしてトレーナーのポケモン達は新メニューを完食した。
「しまった。食べ損ねた。」

まぁ生だから流石に僕は無理だがうちのタブンネ達に食べさせたかったな。
振り返るとパパンネ、ママンネは嘔吐したり失禁したりしている。


「調子悪いのか?まぁいいや、店に入るぞ。」
パパンネ達は子供達が気になるのか慌てて店内に入った。


「ミィ!ミミィ~!ミッミ~!」
パパンネ達は興奮しながら店内を見渡す。
「ミィ?ミ、ミガァァァ!」
子タブンネ達は鉄板の上で眠っていた。


しかしよく見ると鉄板は熱されておらず子タブンネ達は幸せそうに寝息をたてている。
心なしか少しお腹がふっくらしているのは気のせいか?


「もう出来てるわよ。エルレイドが手際良くしてくれたからね。」
褒められたエルレイドが照れている。

「そこに座って頂戴。」
僕は用意された椅子に座った。

エルレイドが一匹の子タブンネの腹を裂いた。
中からは良い香りがする。次にサイコキネシスを使い腹の中から熱された黒い鉄球を取り出した。


子タブンネはヨダレを垂らして寝たままだ。強力な麻酔が効いてるのかな?
腹の中は味付けされたライスにタブモツ、ちゃんと人間が食べれるように熱処理されている。

エルレイドは癒しの波動で子タブンネの腹を回復させた後にケチャップを腹にかけた。
少し子タブンネの顔につき寝惚けてペロッと一舐めした。

「ミィッ!」
目が醒めたようだ。
「これでタブライス完成ね。食べて良いわよ。」

「ミピャア!ミィヤァ~!」
店内に子タブンネの悲鳴が響く。いや、正確にはタブライスの悲鳴だ。
麻酔が効いた子タブンネの腹の中には熱処理されたタブモツと味付けライス。タブ肉は米との相性が抜群にいい。

タブライスの魅力は味は勿論だがタブンネの鳴き声を聞きながら味わう事が出来る事だ。
麻酔の為痛みは無いが自分の体を少しずつ食べられる光景を見せ付けられるので命乞いや媚びて助かろうとする姿を楽しめる。

「ミピィィ~!」
必死に「お願い!食べないで!」と訴えても僕の箸は止まる事を知らない。
タブライスは号泣するしかなかった。


「ミィ?」「ミファ~」
他の二匹の子タブンネが目を覚ました。タブライスの匂いに反応したのだろう。
僕は子タブンネ達にタブライスを与えてみた。単なる味付けライスと思っているのか喜んで食べている。

「ミィ♪ミィミ~♪」
余程美味しいのか尻尾を振ってお代わりを催促してくる。
特にタブモツがお気に入りのようで二匹で取り合っている。

「お代わりならまだあるよ。」
そう言ってタブライスを指差すと二匹は尻尾を振るのを止めた。
「ミィ?ミヒッ!ミビャァァ!!」
いきなり悲鳴をあげたかと思うと嘔吐し始め泣き叫んでいる。

一方泣き疲れているタブライスも様子が変わった。
「ミギュゥアアア~!」
どうやら麻酔が切れたようだ。

麻酔の切れたタブライスを熱した鉄板の上に移す。
香ばしい匂いと共に体を焼かれたタブライスの絶叫が僕のテンションを一層あげてくれる。

「ミッ!ミィミミ~!」
すると突然両親タブンネがタブライスに駆け寄った。「今助けてやるぞ!」と言わんばかりのパパンネ。
一体何をするつもりなのか?

パパンネはオボンの実を取り出しタブライスの口に含ませた。
「ミィ!!」
ドヤンネ顔のパパンネ。
そういえばうちのタブンネ達は癒しの波動が使えなかったな。とは言えこれは酷い。

当然回復する筈が無くオボンの香りが付加されただけだった。

次にママンネがモーモーミルクを取りだしタブライスにかけた。
モーモーミルクは熱された鉄板にかかりジュ~と音をたててタブライスの悲鳴のボリュームをあげミルクの香りを付加させた。

「タブライスのモーモーミルク和えのオボン添え」
こうしてタブンネ両親は自分の子供で新メニューを考案したのであった。
これからもうちのタブンネ達には沢山のタブンネ料理を食べさせるつもりだ。
その為にはママンネには健康な子供を沢山産んで貰わなければ。

終わり
最終更新:2015年02月18日 17:07