人斬りと女子高生、そして……◆/JvwgnbCcs



「ここ……何処?」
川添珠姫は古い造りの町並みの中を歩いていた。
京都によくありそうな、古風な建物ばかりの町だ。
「……一体どうしてこんなところに……」
珠姫は状況を正確に把握出来ずに居た。
いきなりわけのわからない場所に連れられ、いきなり目の前で一人の男子が首を爆弾で吹き飛ばされ、いきなり殺し合えだ。
状況の把握など出来ない方が普通なのである。
しかしそれ以外にも珠姫の頭を悩ます事があった。
それがこの人別帳だ。

「先生や先輩方はいないみたいだけど………宮本武蔵とか柳生十兵衛って……他にもいろんな侍の名前ばかりだし……どうして?」

珠姫は困惑していた。
自分がタイムスリップしただけとも考えたが、明らかに別の時代を生きた人の名前も多数見受けられる。
それに自分に与えられた食料はパンやおにぎりだった。この時代に白米の重要性やパンが存在していなかった事実を
考えると、自分の知る過去とも異なる事は間違い無かった。
それ故に理解出来ない。
「私はどうしたら……」
近くの大きな石に座り、途方に暮れていたときだ。
一人の男の声が珠姫の耳に届いた。
「見ぃつけた。ずいぶん小さい女だが……試し切りにはちょうどいいか」
「あなた………誰ですか。」
珠姫は慌てて立ち上がり、支給された木刀を中段に構える。
だが男は不敵な表情を崩さずに返す。
「うふふ、鵜堂刃衛だよ。別にお前は名乗らなくて構わんよ。どうせすぐに死ぬのだからな。うふふふふ」
「いいえ。名乗ります。川添珠姫です。あなた……殺し合いに参加するんですか」
「当たり前だろ。せっかくの楽しい殺し合いだ。だが残念ながらこの刀は俺の得物じゃないのでね。腕慣らしをさせてもらう」
「ぐっ」
刃衛が一歩近づくと、珠姫は不意に後ずさる。
(凄いプレッシャー。だけど……落ち着かなくちゃ。こんな所では死ねない)
珠姫は相手の刀の切っ先を見ながらひたすら平常心を取り戻すように努める。
普段の防具と竹刀ではなく、相手が持つ刀は真剣。自分は防具をつけずに制服姿。
一撃でも入れば致命傷。一本取られたらそれが意味する事は死。
珠姫は流れ出る汗をぬぐいもせずにただ刃衛の切っ先を見つめていた。

「うふふ、行かせてもらうよっ!」
始まりは唐突。
刃衛はいきなり驚くべき速さで間合いを詰め、珠姫の頭に刀を振り下ろす。
(早い!だけどよけられない速さじゃない)
珠姫は必死でその初撃を避ける。
そして
「小手ぇっ!」
珠姫は刃衛の手首に木刀を叩きつける。だが
「遅いっ!」
刃衛はすぐに手首を引いて攻撃をかわす。
そしてそのまま流れるように珠姫の首に刀が走る。
(うっ、くっ!)
珠姫はスウェーバッグの要領で必死に間合いのギリギリ外に避難する。
そしてそのまま大きく間合いを外す。

「はあ、はあ、はあ」
珠姫は息を乱しながらも木刀を再び中段に構える。
しかし刃衛はそれを見ながら笑顔を見せる。
「いいねえ、女と思って油断したがそこそこは出来る。だがこれをかわせるかな」
「私は……負けるつもりはありませんっ!」
「うふふ、いいねえ。その目は本当に面白い」
刃衛はその言葉と同時に走る。
必殺の平突きを珠姫へと仕掛ける。
(突き!?だけどそれなら持ち手の方へ避ければ胴が決まる)
珠姫は刃衛に向かい走る。攻撃をかわし、刃衛の胴に木刀の一撃を叩き込む為に。


**

「どうなっている?」
伊東甲子太郎は悩んでいた。
支給された刀は名刀と名高い太刀銘則重であり、振るうには申し分ないのだが、伊東にとって問題はそこではなかった。
「私は確かに近藤の一派に殺されたはず。何があった?夢幻であったのか?しかしあの感触を確かに覚えている。私は確かに
胸を貫かれ、咄嗟に襲ってきた一人の男を斬ったはず。そしてそのまま…………いけませんね。それをいうなら柳生十兵衛と
いう男があの場に居た事自体が不自然だ。それにまずはこの無意味な殺し合いを止めなければ。天下無双の称号等のために人
を殺めるなどあまりにもバカバカしい。私が感じている疑問の真相など、全てが終わってから考えれば済む話だ」
伊東は言葉に出して考えを纏めると、刀を鞘へ納め立ち上がる。
そして街を歩き始める。
「それにしても綺麗な満月ですね。殺し合いなどせずに、自らの主張があるのならこの月に照らされながら互いが理解できるま


話し合えばいいと思うのですが」
伊東はため息混じりに呟いた。
そしてしばらく歩き続け、嫌な気配を感じ取る。
「………ん?この感じは……行ってみますか」
伊東は気配の方向へと走り出した。


**

珠姫と刃衛の戦いは決着を正念場を迎えようとしていた。
(この平突きを避ければ胴を決めて私の勝ち!)
珠姫は必死になって突きをかわしきる。
そしてそのままカウンターの要領で胴の構えを取った。
しかし、
「うふふっ、はあぁっ!」
刃衛はそのまま珠姫の首筋に狙い平突きから派生する横薙ぎを繰り出す。
(なっ、っ!)
珠姫は横っ飛びで横薙ぎをギリギリでかわす。しかし首の皮を僅かに掠り小さな赤い線を作る。
「うっ、くっ」
「ちぃ!やはり刀の間合いが違うと上手くいかないな」
刃衛は刀の腹を撫でながらぽつりと呟く。
珠姫は一度首を撫でると三度、刃衛に向き合う。
「ほう、まだやる気か」
「当たり前です。絶対に……負けないっ!」
(どうしよう。この人……強い)
珠姫は虚勢を張りながらも、目の前の男と自分の実力差は肌で感じ取れた。
先ほどの二度の立会いはどちらも相手が自身の刀の間合いを見誤っていたから助かったが、普通なら既に二度死んでいた。
それを考えると、既に勝機など絶望の闇に隠れてしまっていた。
「うん、その気概いいねえ。だが、もう終わりだよ」
「何を言っ!?」
珠姫は刃衛の言葉に言い返そうとするが途中で言葉が止まる。
身体が急に動かなくなっていたのだ。
「心の一方を掛けた。これで思う存分斬らせてもらうよ。うふふふふ」
刃衛は不敵な笑みを浮かべながら珠姫へと近づいていく。
しかし珠姫は身体が動かない。
「なっ、何をっ!?」
「ほう、泣かないか。俺が切った維新志士の腑抜けどもは泣いて命乞いをしていたのだが………思った以上に気が強い」
「当たり前です!私は……負けません!!」
珠姫は必死で身体を動かす。必死で気迫を見せ、木刀の切っ先を僅かに震わせる。
「うふふ。面白いが……死んでもらうよ」
「うっ」
刃衛は容赦なく刀を振り上げる。
後は死を待つのみ。
そのタイミング。

一つの声が響いた。
「何をしている!」
「んっ!?」
刃衛はその声を刀を一度下ろしてから背後を振り向く。
そこには一人の男が立っていた。
「私は伊東甲子太郎と申します。あなたその少女を殺すつもりですか?」
「当たり前だろう。折角殺し合いの場に集められたんだ。思う存分人を斬れるのに何を躊躇する必要がある」
「確認しますが刀を納める気はありませんか。刀を納めて去るのならこの場は治めますが」
「うふふふふ。何をビビッている。俺が怖いのか。安心しろ。この女を斬ったら次はお前だよ」
そう言いながら刃衛は伊東に向けて剣気を強くぶつける。
だが――
「無駄ですよ。私にその技は通用しません」
――伊東は平然とした顔で刃衛に向き合い銘則重を抜く。
「ほう、心の一方が通じないとは」
「もう一度だけ尋ねますが、この殺し合いを止める気は無いのですか?」
「うふふ、お前の甘い性格……俺が歪ませてやろう」
刃衛は伊東が尋ねるのを無視し、一気に間合いを詰めて切りかかる。
「うふふふふっ!」
「残念です」
だが伊東は初撃を難なく流す。
だが刃衛はさらに二度三度と伊東の首や腕を狙い斬りかかる。
「無駄です。その攻撃では私を倒せません」
「ぐっ!」
伊東が大きく刃衛の刀を撥ね返すと、刃衛は大きく後ろに跳んで間合いを離す。
「どうしました。今なら引き返せます。刀を納めるなら……」
「いいねえ。その腕前。確かに面白い。確かにこのナマクラ刀で相手にするには失礼だ」
刃衛はため息をつくと刀を納め背を向けた。
「伊東甲子太郎といったか。ここは引かせてもらうよ。最もここで俺と決着をつけなかった甘さはお前自身に降りかかるがな」
「構いませんよ。もしあなたが再び戦いを望むのなら、私は戦いましょう。ですがあなたに殺される気などは毛頭ございませんが」
伊東はそういいながら既に珠姫を背に刃衛と向き合う形をとっていた。
「うふふ、心配せずとも今は女を殺しはしないよ。今の刀でお前を相手にするほど愚かでも無い」
そういい残すと刃衛は夜の闇へと消えていった。
「行きましたか。………大丈夫ですか」
「あっ、……はい」
珠姫に掛けられた心の一方は既に解かれていた為に、珠姫は体の力を抜いて答える。
「ありがとうございました。おかげで助かりました」
「いえ、礼は入りませんよ。それより大丈夫ですか。首から血が出ているようですが」
「はい。かすり傷ですから」
「それは良かったです。所でお名前は。私は伊東甲子太郎と申しますが」
「はい。川添珠姫といいます。よろしくお願いします」
「いいお名前ですね。こちらからもよろしくお願いいたします」

伊東は珠姫に手を差し出し、二人は握手を交わした。

【へノ参 城下町 一日目 深夜】

【川添珠姫】
【状態】若干の疲労 首にかすり傷
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いには乗らない
一:伊東さんと一緒に行動する
二:ここは何処でしょう
三:歴史上の人物は皆本人?

※登場時期は少なくとも部員全員が入部して以降

【伊東甲子太郎】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いを止める
一:珠姫さんを守る
二:同士を集めこの殺し合いを止める手段を思案する
三:目の前で行われる一方的な殺戮を出来る限り阻止する。

※死後からの参戦です。殺された際の傷などは完治しています。
※人別帳をまだ見ていません

【とノ参 城下町 一日目 深夜】

【鵜堂刃衛】
【状態】健康
【装備】打ち刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この殺し合いを楽しむ
一:もう少しマシな刀を見つける。
二:伊東甲子太郎に再び会えば絶対に殺す。

※登場時期は未定です。
※人別帳をまだ見ていません


時系列順で読む

投下順で読む


試合開始 川添珠姫 頑張る女達/師匠と弟子/盟友の誓い
試合開始 伊東甲子太郎 頑張る女達/師匠と弟子/盟友の誓い
試合開始 鵜堂刃衛 Beholder Vs SwordSorcerer

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年06月01日 18:07