今は未だ、夢の途中~衝撃のダブルマウンテン!?~◆BtEbuU13e2
「まさか……生きているとはな」
清河は目の前に広がる海を見つめながら、ひっそりと呟く。
佐々木只三郎に斬られ、意識が遠く、視界が白めいたのは覚えている。
それが死を意味する事も承知していた。
虫の知らせはあったが、あのような不意討ち紛いの真似をされるのは予想外でもあった。
そしてその結果を招いたのは、佐々木只三郎の姦計でなく、自らの甘さというのも理解しているつもりだった。
だだ、死ぬ事自体には恐怖は無かった。
志半ばで倒れる事は不本意だが、お蓮をいつまでもあの世で一人でさせずに済む。
柄にも無く、死に際にそんなことまで考えてしまっていた。
「どうやら………会いに行くのはまだまだ先になりそうだな」
そして今、自らの立つ場所は冥府でなく、戦場。
二度目の生は殺し合いの為に与えられたのだ。
「あの老人………俺を生き返らせてまで殺し合いか。乗る気は無いが…………誰がいる?」
清河は幾人もの名を記してある巻物を紐解く。
そしてすぐに見つける。
宿敵の名を。
「佐々木只三郎。あいつも呼ばれたのか。やはりここで決着をつけるべきだな」
清河は腰に差した一本の太刀を握りながら、力強い言葉が口から零れる。
そして、更に名を追っていく。
「
近藤勇、
土方歳三、
芹沢鴨………彼等はどちらでも構わぬな。場合によっては刀を交える必要があるが………」
清河はいくつかの名前を見つけるが、自分の味方となる名があまり見つからない。
一人で心細くなるようなわけは無いが、多勢に無勢となるのだけは避けたかった。
しかし、ようやく知人の名を見つける。
「
坂本龍馬君に
千葉さな子さんか。二人なら信が置けるが………婚約者の二人にまで殺し合えとは……ますますもって
許せんな。あの外道」
清河は柳生宗矩の顔を思い出し、強く憤りを感じた。
一人になるまで殺し合えとは、友人知人はもちろん、愛し合う者同士にまで殺し合いをさせるという事だ。
そのようなふざけた真似。許せる訳が無かった。
そしてその後。しばらくし一通り目を通すと、再び巻物を結び直し、懐に入れると歩き出した。
「やはりまずは同士を集めねば。虎尾の会のようにはいかぬかもしれんが………何とかしてこの戦いを止めねばならん」
清河八郎は二度目の人生の幕開けを、非常に困難な試練へ向かい立ち向かう事でスタートさせた。
***
剣道着に身を包む女子高生。
富士原なえかは呆然と立ち尽くしていた。
何の前触れも無く時代劇のようなお白州に集められたと思えば、御前試合に強制参加。
しかもいきなり要約すれば、『お前弱いから死んどけ』みたいな感じで一人の男の子が首BOM!で死亡だ。
平静を保てという方が無理な話かもしれない。
「何なのよあれは。一体どうなってんのよ?私に殺し合い?この青春真っ盛りの女子高生に殺し合い?
………冗談じゃないわ!。誰がやるのよ。そんなもの」
なえかは半ばやけになって、適当な木に身を投げ出すようにもたれ掛かる。
そしてしばし現状に対し不平不満を喚き散らす。
不満を出し尽くすまでに、約十五分。
それだけの時間喚けば落ち着いたのか、少し静かになる。
「………はあ、疲れた…………まあいいわ。どうせいくら喚いたところで現状が変わる訳でも無し、こうなったら
頑張るしかないわよね」
と、なえかは元気良く刀を鞘から抜く。
するとそれはなえかでも知ってる宝剣だった。
「うわっ、さっきのお爺さん木刀渡すとか言ってたのに、こんな凄い剣……でもどうやって盗んできたのかな?皇居
に侵入してたら今頃ニュースで大騒ぎになってそうだけど……」
刀剣に関する知識はそれほどでもないなえかでさえも思わず驚きの声をあげる剣。
だがそれも無理は無い。
なえかに渡った剣は壺切御剣だったのだ。
867年の宇多天皇から現在に至るまで受け継がれていた天皇の証しとも言える宝剣。
それが富士原なえかに与えられた刀であった。
「……まあいいや。せっかくだし使わせてもらおうっと」
しかしなえかは特に気にする事も無く、普通に素振りを二度三度行う。
そしてその感触を確かめると、
「やっぱり良い刀は違うなー。手触りが良いや。それに………なんだろ。刀から力を貰えるような感じも………」
と非常に好感触だった。
しかしなえかは一度刀を鞘に戻す。
「そういえば私以外誰がいるんだろ………」
なえかは刀を地面に置くと、木にもたれるように座りながら名簿を開く。
「へえ、コガラシもシズクさんも居ないんだ………って、何この名簿。本当にこれでいいの?」
なえかはいきなり驚きを通り越した表情で名簿と睨めっこをしている。
(
沖田総司に土方歳三?他にも坂本龍馬とか
塚原卜伝とか
宮本武蔵とか
徳川吉宗とか………何か時代がおかしすぎない?
それに
佐々木小次郎ばっかり多すぎるし………(傷)とか(偽)って何?偽者とか怪我したのと、元気な時で小次郎だけ
三人連れ出したの?……………SFみたいな力でも使っちゃったのかな?)
と、疑問ばかりが浮かんで頭から離れない。
だがその疑問もすぐに頭から消し飛ぶ。
小枝を踏む音が耳に届いたのだ。
「だれっ!」
なえかは刀を手に取りながら勢い良く立ち上がる。
その豊満な胸を揺らしながら………
***
時間はほんの少しさかのぼる。
清河八郎は浅い林の中を歩き進んでいた。
見通しがそれほど悪くないが、夜のため視界はそれほど広くは無い。
その為に、出会い頭に斬られるという、不測の事態を避けるべく、五感を研ぎ澄ませながら慎重に歩を進めていた。
そしてある程度歩き続けたという所で、ようやく五感はある人間の気配を察知した。
(むっ、この声は………女?さな子さんの声とは違うが……あの外道何人の女子を血生臭い戦いに巻き込むつもりだ)
清河は女と分かり、若干歩を早める。
距離はそれほど離れているわけも無く、すぐに近くまで辿り着く。
しかし女性は無用心にも参加者の名を記した名簿に見入っていた為に、自身の存在に気付いていなかった。
まずは声を掛けようと更に足を進めた時、不覚にも小枝を踏み小気味良い音を響かせてしまう。
「だれっ!」
当然のごとく、女性は勢い良く立ち上がる。
そして女性が振り向き向かい合う形になった時に清河の目に入った光景に、思わず想いもよらぬ言葉が
口から飛び出てしまった。
「やっ、山が二つ!?それも………揺れている!!?」
清河は思わず驚愕の声をあげてしまう。
遊郭でも見たことが無いような二つの巨大な山がそこにあったからだ。
剣道着の上からでもはっきりわかるそのふくらみはあまりに刺激的すぎた。
(くっ、イカン。俺は元服前の子供じゃないんだぞ。何を小娘の胸で!)
視線をすぐに逸らしながら、深呼吸をして鼓動の高鳴りを抑える。
しかし目の前の女性はその明らかに挙動不審な態度が気になっているようだった。
「ねえ。あなた大丈夫?息が荒いけど」
女性は心配そうな声で話し掛けて来る。
それに清河は何とか平静を装い答える。
「ああ、……大丈夫だ。心配は要らない」
「そう。ならいいけど。あっ、自己紹介忘れてたね。私、名前は富士原なえかだから」
「そうか。なえかという名か。俺は清河八郎という。心配掛けて悪いな」
相手が名乗ったので、清河も自身の名を答える。
だが、その言葉に対するなえかの反応は少し意外だった。
「えっ!清河八郎って、あの北辰一刀流で新撰組を作ったあの清河八郎!!」
「確かに北辰一刀流だが………新撰組とは何だ?」
清河はなえかの台詞に対し疑問を口にする。
新撰組という聞いた事の無い言葉が変に気になったのだ。
そして、ここでようやく清河の意識もなえかのたわわに実った胸から自然に離れられた。
「えっ、新撰組…………あっ、そう壬生浪士組なら知ってるよね。土方歳三とか近藤勇の」
「なるほど。あの幕府の犬共か。それなら知っている。俺とは元々の理想が違った奴等か」
「じゃあやっぱり………みんな本物なのかな」
「本物?何のことだ?」
「あっ、ううん。なんでもないよ」
「そうか」
なにやらなえかは何かを納得したようなそぶりを見せたが、特に清河は気にしないことにした。
「あっ、そうだ。ねえ、私の相手をしてよ。一回本物の武士と戦ってみたかったの」
だが今度は突然驚きの注文をしてきた。
それには流石の清河も驚く。
「相手?剣の勝負か」
「もちろん。私これでも結構自身あるんだ。だからお願い」
一応確認を取るが、認識に間違いは無く、剣の勝負を挑まれているのだと確信する。
しかしそれと同時、相手に殺気がないのもすぐに感じ取れた。
そして清河の答えはすぐに出る。
「残念だが無理だな」
「どうして?」
「私の刀がこれで、君の刀もそれだからだ」
清河は自身のかなり大きな太刀となえかの刀を交互に指で指して答える。
なえかの視線もその二つの往復するが、反論に出る。
「どうして?真剣だけど峰同士なら安全でしょ」
「馬鹿か。峰でも切っ先が当れば君の肌を傷付けるだろうが。大体君は婿も取っていない生娘だろ。あいにくだが
俺には嫁入り前の娘の肌を傷付ける趣味は無い」
「えっ」
清河の予想外に紳士的な態度に思わずなえかは驚いてしまう。
自分の周囲の人物だったらまずありえないような反応に、なえかはどうリアクションを取っていいのか分からなかった。
しかし、清河はなえかをもう一度だけ一瞥すると、すぐに背を向ける。
「まずは村に行くぞ。もし竹刀があれば……一度ぐらいは相手をしてやっても良い」
「えっ?」
「早く行くぞ。夜が明ける前に村に行きたい」
「あっ、………はい!」
なえかは清河を追うように若干早足で歩き出す。
こうして幕末の志士と現役女子高生の不思議な二人の旅が始まった。
【いノ弐 林の中/一日目/深夜】
【清河八郎@史実】
【状態】健康
【装備】一文字兼正@魁!!男塾
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:同士を集め、殺し合いを止める。殺し合いを挑む輩は容赦なく斬り捨てる。
一:とりあえず呂仁村址の方へ向かう
二:坂本龍馬と千葉さな子を探す。
三:竹刀が見つかればなえかの相手をしても良い
四:佐々木只三郎とは決着をつけねばならんな
[備考]
佐々木只三郎等に殺された直後からの参戦です。
殺された際の怪我は全て完治しています。
【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】健康
【装備】壺切御剣@史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いにしない。けど強い人とは戦ってみたい
一:竹刀が見つかれば目の前の清河八郎と戦ってみたい
二:出来れば他の侍の人とも会ってみたい
三:やっぱり知ってる名前の人は全員本物?
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最終更新:2009年03月28日 01:07