最期の戦いは終わらない◆BtEbuU13e2
慶応三年の冬。
坂本龍馬が殺されて一月と経たぬ時期。
伊東甲子太郎が謀殺され、藤堂平助、毛内有之助、
服部武雄が討ち死にした。
服部武雄は両手に剣を振るい、最期には力尽き、両手に剣を握ったまま絶命した。
原田左之助に槍で喉を貫かれ、それがトドメとなったのだ。
「……はっ」
服部武雄が目覚めたのは、深い森の中だ。
本来なら緑豊かだろう景色も、月明かりのみが照らす深夜では黒く滲んでしか見えない。
「どういうことだ?俺確かに……あの原田に殺されたはず。それなのに……死ななかったのか………いや、俺は確かに死んだ。
喉を突かれた感触は絶対だ………………どうなってやがんだよ」
服部は喉を軽く手でさするが、傷跡の感触一つ無い。それどころか全身に受けたはずの刀傷が全て跡形もなくなっていた。
その不可思議な現象を前に、服部は困惑していた。
「ちっ、何棒立ちして考えてんだ。俺らしくもねえ。……そういや確かあのジジイは殺しあえとかいってたよな。実力の無いとかいう
理由で子供まで殺して………わけわかんねえ。実力無いなら殺し合いに呼び出す必要も無いだろうが」
しかし服部は強引に心を落ち着かせて、適当に幾人もの名前が書かれた紙を広げる。
「これが巻き込まれた奴等の名前か。俺の名前はやっぱあるな。他には………っ!」
適当に流し読みをすると、服部はある名前が目に止まる。
「伊東甲子太郎!?坂本龍馬!?二人がどうして!?」
(二人とも死んだはず。生きてたのか?それとも俺みたいに死んだと思ったら助かってた?……だが良い。生きてるならもう殺させねえ。
俺が絶対に二人とも生きて元の世界に還してやる)
服部は驚きつつも、ある決意を固め、そして更に読み進める。
そしてやはり見つけてしまう。
因縁深い敵の名前を。
(やっぱ……ここに居るのか。
近藤勇。
土方歳三。もう……許さねえぞ!あんな卑劣なまねしやがって。俺がこいつらを殺す。
………永倉と原田は居ないか。それに毛内と藤堂もいねえ。あいつらはやっぱ助からなかったのか………なら、俺があいつ等の分も
頑張ってやらねえと浮かばれねえな。……よしっ!とにかく、伊東さんと坂本さんは俺が守る。近藤と土方は殺す。それだけだ!)
服部は方針を定めると、早々に名簿を片付け、二刀の太刀を持つと森を走り出す。
***
風林館高校剣道部主将。
高校剣道会の期待の星と言われた男。
九能帯刀は森の中で一人佇んでいた。
「………ふっ、あの老体、柳生宗矩と言ったか。このボクに殺し合えなどと命令するとは。あのような戯言聞く耳は持たぬが、
天下一の称号か……。天道あかねとおさげの女がボクに振り向くのならば、それも悪くない。幸いこの刀も手によくなじむ。
これなら問題も無い」
九能は刀を持つと歩きだそうとする。
だがそこで、一つの森を走る音が耳に入る。
「……ほう。早速相手のお出ましか。誰だっ!」
九能は声の方へと向かい力強く呼びかける。
すると、足音の主は九能へと近づいてきた。
「誰だ!とはご挨拶だな。俺は服部武雄だ。そういうお前は誰なんだよ」
木の陰から姿を見せると、服部は九能へと尋ねる。
すると九能は真正面に向き直り、応える。
「ボクか。ボクは風林館高校の蒼い雷。九能帯刀。武雄とか言ったな。せっかくだ。ボクに敗れる一人目となってもらおう」
「敗れる?お前もこのふざけた殺し合いに乗ったのか」
「殺し合いに乗る?ふっ、ボクが殺しなどするわけがないだろう。ボクは殺さずに全員を打ち倒すさ」
武雄の問いに九能は飄々と返しながら、刀の峰を向けて構える。
それを見てから服部も二本の太刀を抜く。
「ではこちらから行かせてもらおう。はあっ!」
九能は言うが早い。瞬く間で武雄との間合を詰めて、刀を打ち下ろす。
「くっ!」
服部はそれを一瞬早く後ろに飛んでよける。
そしてすぐに構え追撃に備える。
「………ほう。なかなか早いな」
「……………」
九能はそんな服部に余裕の笑みを浮かべる。
しかしそれに服部は沈黙で応える。
「ではもう一度。次は更に早いぞ」
九能は再び、言葉通りの瞬速の一撃を繰り出す。
だがそれは甘かった。
(いくら早くとも、同じ軌道とは………甘すぎる!)
服部は右に刀でその一撃を受け止め、動きが静止する一瞬に、左の刀で九能の刀を弾く。
そしてそのまま流れるような動きで服部は両の刀を鞘に納める。
「俺の勝ちだな。では先を急ぐぞ」
服部は九能を見ずに、すれ違いそのまま背と背が重なる。
九能はしばし、呆然としていたが、服部が去る前に一言だけ呟く。
「………ボクの負けだ。……………だがしかしっ、ボクは諦めんぞ。必ず日本一の男になってみせる!!」
「そうか。………お前の剣筋は悪くない。経験を積めば強くなる。じゃあな」
「待てっ!」
「俺には時間が無い。それに機会があればまた会える」
「まっ」
九能の呼びかけを無視し、服部は走り出す。
そしてその場には一人。
九能帯刀のみが残された。
「…………くっ、ボクは負けんぞっ!天道あかね!おさげの女!ボクは必ず天下一の称号を持って帰るぞっ!!!」
九能は弾かれた刀を拾うと、再び素振りを始めた。
がむしゃらに、ただ更なる高みを目指して。
【とノ壱 森の中/一日目/深夜】
【九能帯刀@らんま1/2】
【状態】健康
【装備】日本刀(名刀の可能性が高いが銘は現時点では不明)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺さずに天下一の称号を勝ち取る
1:とにかく強くなる。
***
服部武雄は走り続けていた。
森の中を一人で。
(風林館高校。なんなんだ高校って。わかんねえな。伊東さんなら意味分かるのか?だがあいつ………何だか俺や他の奴と
何か雰囲気が違った。なんだ一体?この違和感はなんなんだ?……馬鹿か俺は。余計な事考えんじゃねえ。今は早く伊東さんと
坂本さんを見つけるんだ。俺より近藤や土方が先に見つけやがったら間違えなくやべえ。それにそうじゃなくても、さっきの奴は
良かったが参加者の何人が殺し合いに乗りやがったかわかんねえ。早く見つけねえと。絶対に手遅れになんてさせねえぞ!)
服部武雄は更に決意を固め、森を疾走する。
【へノ壱 森の中/一日目/深夜】
【服部武雄@史実】
【状態】健康
【装備】
オボロの刀×2@うたわれるもの
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この殺し合いの脱出
1:伊東甲子太郎、坂本龍馬との早期合流
2:土方歳三と近藤勇を殺す
3:殺し合いに乗った奴は殺す。純粋な力比べを挑む奴は殺さずに倒す。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2009年09月09日 09:37