サムライの決断◆teYIdSMxAQ



烏丸与一
現代に生まれながら十七歳になるまで、山で育ちひたすらに剣の修行を続け、それ故に現代の剣道家を域を超えた実力者である。
そしてそれために、現代人でありながら現代の文明をほとんど知らず、それが幸いしてか、彼がこの場に居る事に違和感は無い。

そうなのである。袴姿の青年、烏丸与一。
彼はとある村の端にある小さな家で一人座っている。
昔ながらの民家であるが、与一の服装や、伝わってくる雰囲気はその昔の民家の雰囲気と調和され、違和感を感じさせない。

「どうなっているでござる」

そして、その民家の中で一人呟く。
彼の人によっては少しふざけたようにも聞こえるござる口調も、今この場ではまじめな雰囲気しか感じる事が出来ない。
だが音響の悪い村の民家では、声は反響する事も無く、虚空へと消え去るのみだ。

「御前試合。ただの御前試合であれば、拙者も自身の鍛錬の成果を相手に見せ、互いに武士として恥ずかしくない
戦いを見せるのでござるが。……あのような先ある男子をただ殺すなど……許せぬでござるよ。あの男子もまだ
修行中の身であったであろうに。精進して立派な侍になれたかも知れぬのに………」

与一は一人で強い憤りの言葉を続ける。
自身が修行中な為か、修行中であろうあの少年の無念さが伝わっているのだ。

「それに純粋な天下一など、木刀で戦えば済むはずではないか。それをなぜ………相手を殺すまで戦えでござるか!
何を考え、あの男はそれを強いるでござる!!そこまでして血をみたいのでござるか!!!」

次第で心のテンションが上がり、少し語尾が強くなる。
都会で精神の修行を積んでいるが、それでもあの所業は与一にとっては許せるものではない。
だがそれでもしばしの時間さえあれば落ち着ける。
与一はすぐに気を鎮め、本来の落ち着きを取り戻す。

「………そもそもあの場には女性や老人もいたようであるが……まさかそのような者にまで戦いを求めるつもりで
ござるか?それでは天下一を目指す御前試合としてはおかしいはずでござるが………何を考えているでござる」

しばし冷却した頭で考えると、新たな疑問も思い浮かぶ。
だが、元より考えるより先に行動というタイプの与一では良い考察も出来ない。
一度考えを中断させ、自身の腰の得物に手を伸ばしてみる。

「しかし……あの男、拙者の木刀を取り上げ、代わりに別の木刀をよこすか。殺し合いと言いながら木刀を支給。
一体何を考えているのでござる」

与一は普段は腰に差した木刀が、いつもと若干違う事に違和感を覚えている。
何度か腰に手をやり、感触を確かめるがやはり落ち着かない。

「しょうがない。一応探してみるでござる」

与一は自身の愛用の木刀を探して民家をあさる。
だが、それらしい物は見つかる気配すらなかった。

「見つからぬか。やはりすぐには見つからぬでござるね」

与一はここでの木刀の入手を諦める。
そして何度か自身に与えられた木刀で素振りを繰り返し違和感を拭い落とす。

「よしっ、これならいくらか増しでござる。それにいつまでもここに居ても始まらぬ。まずは外に出ねば。
そして………あの男は拙者が倒さねばならぬ。武士として、悪党は成敗せねばでござる!」

与一はとある決意を固め、強い表情で外へと出る。
力強い足取りで、しっかりと地面を踏みしめながら。



【はノ漆 二七村/一日目/深夜】

【烏丸与一@明日のよいち!】
【状態】健康
【装備】普通の木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:人は殺さない。
一:木刀を探す。
二:あの男(柳生宗矩)を倒す

【備考】
登場時期は高校に入学して以降のいつか(具体的な時期は未定)


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試合開始 烏丸与一 束の間の邂逅

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最終更新:2009年08月19日 06:57