悪質長男 第六話

354 悪質長男 第六話 sage 2010/05/24(月) 10:00:08 ID:eshkWFKK
「皆さん、こんにちは。主人公の怜二です。突然ですが、僕は風邪を引いてしまいました」

ばたんきゅ~~~~~~~~~~


第六話


朝はなんともなかったはず。憧れの3きょうだい登校を果たし、
妬まれ、笑い、昼食も3きょうだいで食した。
最後の授業を終えた瞬間に、怜二は机に突っ伏して動かなくなった。
その周りをクラスの女子らが珍しそうに囲んだ。
「こんにちはって言ってももう夕方だよ?」
「ほらほら、いつもの元気はどうした?」
「麗華様と仲直りして興奮し過ぎた?」
からかわれるように言われてばかりで心配する声が少な過ぎる
その時王子が好機とばかりに怜二の前に進み出た。
「ふふっ、怜二。おまえは保健室にでも休んで親の迎えを待っていたまえ。麗華様と玲君は俺が一緒に帰り・・・」
言い終わる前に数人の男子が王子を連行し、全員の男子がリンチに掛かる。
果てには送りするのは自分だとか、一緒に帰りたいが為に醜い争いへと発展していった。

「兄さん・・・」
その声と共に玲がやってきたのはその時だった。
心配して来たのだろうが、怜二が明るく振る舞おうと振り向いた時には男子共が玲の前に割り込んでいた。
「玲ちゃん、兄貴は心配いらないってさ。だから部活に専念しなよ」
「玲たん、帰りは僕が送ってってあげるからね」
「死ねこの豚!後輩相手に下心丸出してんじゃねぇ!!」
彼らは、怜二が体調不良の今こそ姉妹姫とコミュニケーションを取れると必死だった。
そこで怜二が妹を守る為に立ち上がる。
「君達!玲があからさまに困っているだろうが!

      • でも玲の心配をしてくれるなんて優しいねぃ・・」
「おいまずいぞ!あれは重傷だ!」
「怜二が男子を褒めるなんて気味が悪い!」

怜二は基本、男子の敵で嫌われ者であった。
だからちょっと態度が変わっただけで本気で心配された。
その間に玲は怜二に寄ると、あっという間に御姫様抱っこで抱えた。
シュールな光景に噴き出す女子数名に、スキンシップを羨ましがる男子一同。もの言わさず玲はさっさと教室から出て行った。



355 悪質長男 第六話 sage 2010/05/24(月) 10:01:59 ID:eshkWFKK
廊下で姉の麗華と出会った。
「あら、玲、どうかしましたか?なんだか怜二が風邪を引いているように見えますが」
「・・・・そう。私が看ておく」
兄を抱えながら頷く玲を、麗華が制した。
「いえ、私が面倒を看ておきましょう。貴女は部活があるのですから」
「でも・・・・」
玲は渋った。怜二が弱っているこの隙に既成事実の一つや二つを作ってしまいたいのが狙いだったからだ。
そしてそれは・・・・・姉も全く同じだった。
ただし、猫かぶりの麗華も無表情の玲もその野心がちっとも、例え姉妹でもわからない程、表に漏れていない。
「玲。・・・いいですね?」
あくまで良い姉を演じる麗華の前に、玲は心の中だけで溜息と舌打ちをして、姉に兄を託した。
麗華は玲の様に持ち上げたりはせず、彼の腕を自分の肩に回して運ぼうとする。
そこへ、麗華と同学年の男子が密集する。
「麗華様!ここは俺が運びましょうぞ!」
「てめぇは部活があんだろ!姫、義弟さんは自分に任せて・・」
「なにが義弟だオンドレはあ!」
「我ニ握り飯ヲ与エタマエ」

関係無い人も混じっていた。
対応する麗華は、関係無い人にも平等に笑顔を振りまく。
口から出る言葉ははっきりとした拒絶。
「皆さん、お気遣い有り難う御座います。しかし平気です。怜二の扱いには慣れていますので」
本当はもうしばらく密着状態でいたかった。だがこれだけ借りを作ってしまいそうな状況では仕方ない。
心の中だけで悪態をついて、怜二の耳元で一言二言囁いた。
すると怜二は輝く表情で顔を上げた。
「何、麗華姉ちゃんが看病してくれるだと!?シスコンたるもの真っ向から看てもらわねばなるまい!
敵は本能寺に在り、じゃなかった、天使は我が家に在りぃ!」
と、奇声を上げて上級生の男子を掻い潜りながら彼は飛び出した。
だがやはり熱で朦朧としているのか、2階の窓から飛び降り、
全開の校門を飛び越える無駄な奇行をした後、ダッシュで去っていった。

(さ、て、帰ったら何をしてあげましょう?)

「・・・・姉さん・・・家と・・・・・・方向が逆」

「え!?あ!?れ、怜二―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!?」



356 悪質長男 第六話 sage 2010/05/24(月) 10:03:28 ID:eshkWFKK



帰宅後。
麗華は早速看病に取りかかった。腹ごしらえのお粥を食べさせ、適量の薬を用意する。
この間までそう時間は掛かっていないので、ベッドで寝る怜二の熱はまだ変動していない。
「さて、これからどうしましょう?」
「・・・の~~~ん」
怜二は呆けている。この時を待っていたとばかりに、麗華は目を光らせた。

「・・・ねぇ、怜二。汗をかいていますね。私が拭いて差し上げます。・・・さあ、脱いで」

怜二は黙って頷くと、自ら服に手を掛け、半裸になった。
その体は麗華が以前海水浴で見た時とあまり変わっていないようだ。
猿みたいに飛び跳ねるものだからか、筋肉が中途半端に付いた体格。
「じっとしていてくださいね?」
麗華はタオルで拭き取っていく。もう片方の手は汗ばむ体にペタペタと張り付ける。
触っているだけなのに、心の底が沸騰する感覚が湧きあがっていく。
(あ、は・・・私、興奮しているんですね・・・)
拭きながら、姉は弟の首に顔を近づけると、舌を出して舐め取った。
一舐めする毎に至高の味に巡り合えたかのごとく恍惚とした表情。
なんだか頭がぼうっとしてきた。
その間も怜二は何の反応も示さない。
ちなみに、唇同士重ねる事はしない。症状が風邪なだけに、時たま咳をするからであり、仕方のない事だからだ。
気が付けば、麗華は自身が彼の鎖骨に吸いついていた事に気が付いた。
(はあ・・・・怜二ぃ・・・)
やはり怜二の反応は無い。このまま次のステップに進んでもいいだろう。
麗華はベッドに乗り出すと、弟の体を跨いで座り込んだ。
「怜二・・・?」
「・・・んー?」
眠そうな顔で生返事。構わず麗華は続けた。
「これから私達、性行為をします」
「・・・んー?」

先日悟った事。
姉弟であろうが、しょせんは女と男。そこから導き出した、負の答え。
「ふふふ・・・怜二・・・・」

興奮のせいか高まり続ける熱をそのままに、

麗華は頭を下げて

頭を下げて

下げて

下げて・・・・・


「・・・・・あれ?」

そのまま怜二の胸に突っ伏した。なんだか頭が痛いし、ぼんやりするし・・・

「姉ちゃん・・・?うつったかな?」
いつの間にか意識を取り戻したのだろう。怜二が姉の額に手を当て、そうぼやいた。
「ええ?私は二次感染の対策もきちんと・・・・」
「説明しよう。怜二ウィルスは、不死身で女好きなのだ」

「は・・・・、ハタ迷惑~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」



357 悪質長男 第六話 sage 2010/05/24(月) 10:04:10 ID:eshkWFKK




玲が帰って来た。
姉も風邪を引いたと知ると、余ったお粥を食べさせて薬を与えて、部屋で寝付かせた。
リビングに戻ろうと兄の部屋を通り過ぎるところで、ふと立ち止まる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
薬箱からあるものを取り出すと、無表情ながら喜々と玲は部屋の中に入った。
呼びかけた時の怜二はまたも意識が虚ろだった。
「兄さん・・・座薬だよ。さ・・・・脱いで」
脱いだら最後、その隙に・・・

その時返って来た返事は、咳が一つだった。




さらに夜が更けた頃。
「はあ、全く。全員に風邪がうつる展開はベタ過ぎるだろうが」
三人の実母が面倒を見て、彼らは事なきを得た。

後日、回復はしたものの逃がした魚は大きいと悔しがる姉妹がいた。
そんな彼女らに、同じく心身共に全快の長男が、元気良く礼を言う姿がそこに在った。



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最終更新:2010年06月06日 20:16
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