悪質長男 第十話

234 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:30:19 ID:bDOWWnvT
「え、嘘?怜二、もう風呂に入ったのですか?」

「イェス、マム。キモ姉になりたくば、そういうのは常にチェックしなさい。HAHAHA」

姉さんが・・キモ姉とやらに・・・誘導されている」

「え?私が調教される側?」

第10話


姉妹姫が兄を性的対象として見ていた事が、3きょうだい全員に明かされた翌日。
朝から忍法で姉妹を撒いて来た怜二が学校の教室に着くや否や、
クラスメイトの王子に絡まれた。
「おはよう、未来の義弟よ!」
「なんだいその挨拶代わりは?舎弟になるのなら君の方だろうに」
「いやいや。麗華様の伴侶となるのはこの我であり・・」
次の瞬間には男子によるリンチに王子が飲み込まれる。
そして人波が引いたらボロ雑巾の名が似合う男が横たわっていた。
怜二は侮蔑の視線で一瞥すると、ニヒルな笑みを残して席に着く。
今度は怜二が人波に飲まれた。ただし女子である。
これでもいつもの光景なのである。怜二は嬉しそうだ。
「いやーなんか日常に戻ってきた感じ。昨日は別次元に居た気がしたんだな」
例の、姉妹の偏愛の事だ。右隣の女が話に乗ってきた。
「どんな体験よ?四次元から来た怜二君が?」
「怜二君は四次元から来たの!?」
天然な女の子に皆揃って冷たい目を向けた。さらに意地悪な怜二が揚げ足を取り、
「縦があって横もあって高さがある他にもう一本。さあ、何だろう?」
「えっとねぇ。お時間だよ」
「時間なら普通に在るわよ」
別の女に睨まれ、天然さんはうーんと首を傾げる。

「ううん、違うの。もっとこう、私達が共有している時間の事じゃなくて、
その人の過去や未来を司る・・線・・じゃなくて、道と言うかなんて言うか・・」

この娘を止めろと言わんばかりの視線が怜二に突き刺さり、自称紳士は不動の笑顔のまま
手で合図した。



235 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:30:40 ID:bDOWWnvT
「君は四次元を信じるかい?」
「え?うん。ポケットの中にあるでしょ?」
ポケットって何でも入るよねーっと続く頃には、周りの女子が頭抑えて蹲っていた。
「いい所に気づいたね。ポケットの中でビスケットが増えるのは、
中が四次元である説があるんだ」
「へぇー」
「ちょ、怜二、あたしらはこの話を終わらせろと頼んだのに!」
ニヤリと嗤う彼の手には携帯電話があった。ただしいつものと機種が違う。
「ここに王子君の携帯があります」
小耳に挟んだ王子の顔が青くなった。彼は体中をまさぐるが、目的の物が見当たらない。
「僕のポケット内で叩けば増えるさ」
「すごーい。レアメタルの稀少さもこれで解決だね」
もうやだこの二人、と取り巻きの女子達が散っていった。


「やめろ―――――――――――!」


その間を縫う様に走る男が手を伸ばす。
王子である。


「ポケットを叩くと~」


ボキッ


「あ――――――――――――――――――――――――――――――――――――」





まあ、そんな事で携帯電話が折れるわけが無いのだが。



236 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:31:11 ID:bDOWWnvT


怜二の体験話すらうむやむになった頃、実姉に呼ばれた怜二が人気の無い場所に赴いた途端、

胸倉を掴まれ、

壁に叩きつけられ、

当たり前のように口付けされた。

顔が離れ、二人の姉弟が至近距離で睨み合う形になる。
「ずいぶんと楽しそうですね、怜二」
「はてさて何のことやら」
麗華の目が細まり、威圧的な空気が重くなる。
「これからは女子との付き合いは全て無くしてもらいます」
「断ればどうなるんだい?」

「夕飯抜きです」

「やーめーてー」

心が折れそうだった。

「私、貴方の事を好きになってから嫉妬ばかりしてました。ずっと貴方を追いかけていました。
その日は何人の女と関わっていたか。誰が怜二を触ったのか」
まあ、結局覚え切れなかったのだが。
「けれど想いを伝えてからずいぶん楽になりました。これから私達だけの貴方に染め上げ・・」
「姉弟妹なので、のーさんきゅー、ぐっぇ」
キレた麗華が怜二を締め上げ、すぐ降ろした。
「と、とにかく。貴方の行動は筒抜けなのですから、もう他の女なんて・・」
「本当に~~~~~?」
半目の怜二に麗華は怪訝そうな顔に歪んだ。
「何か?」
「『行動は筒抜け』って言うのは、僕の制服の襟に付いてる盗聴器のお陰でしょう?」
「!?」
図星だった。まだまだだね、と純粋な笑顔を向けられた麗華は絶句するしかなかった。
「ちなみに玲は、僕の鞄に盗聴器の他に発信機も付けていた。
今はね、それに『ピエロのランランルーがウザくて夜も眠れないCD』をリピート再生で当てているの」
「・・・何CD?」
「音声は録画しているのかリアルタイムで聞いているかは知らんが、まぁあれだ。自分を犯そうと兄の声を聴こうとしたら、
ランランルーの声しか聞こえない訳で・・」
「そりゃうざい!!!!」

一年生の教室で、玲がクシャミをした。



237 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:32:38 ID:bDOWWnvT






その日の放課後だった。
怜二は出来心で、いつも一緒に帰る姉妹を撒いて先に帰ってしまった。
家に待ち構えて帰ってくる姉妹の反応を妄想しながら歩いていてメールを開くと、

「・・・む?」

とある女子のアドレスに眉をひそめた。

『久々に君に会えるよ 愛に行くから 会いに行くから待っていてね
絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?
絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?
絶対だよ?絶対だよ?絶対だよ?』

「・・・・ち」

舌打ち。

自称紳士が舌打ちした。

あの怜二が女からのメールで舌打ちしたのだ。


(こんな事なら美人なねーちゃんや可愛い妹と帰るべきだったか?
いや、そんな事より、どうすっか?下水を通るか、屋根に登って帰るか・・)

















「えへへへへへ  会いたかった―――――――――――――」





轟音

否、頭を殴られてそう聞こえただけだ。


地に堕ちる前に頭を捕まえられ揚げられ腹に膝蹴りを食らう。
手頃な壁へ、襲撃者と共に寄りかかる。


238 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:33:33 ID:bDOWWnvT

苦痛に眉間に皺を寄せ、相手を睨む。


「く・・・君は・・・」

壮絶な美女だった。
麗華が太陽なら彼女は北風。肩?き出しの衣裳が涼しさを感じさせる。
恍惚とした笑顔は本当に嬉しそう。

「会いたかったよ、怜二。私よ。貴方の one of the 幼馴染にして、
貴方の初物を全て手に入れた女よん」

拳が一発。脇に入る。
彼の頭が垂れた瞬間に、耳の穴から瞼の裏、口内が彼女の舌で犯されていく。
「げほえほえお!やめ・・」
「ね。会えなかった分慰めて?大学が忙しくなって、
君の事が頭から離れた事なんて一瞬でもなかった。私、我慢したでしょ?」
「毎日電話していてまだ不満かい?恋人でも無いくせに!」
「確かに告白を受けてくれた事なんてないけど・・・
でもでも、ここ一週間ギョーザの話ばかりされる女の気持ちにもなってよ!」
「マイブームなの」

ごすっ

後頭部を壁に叩きつけられる。
怜二が怯んだ隙に、女はボタンをいくつか毟り、表れた鎖骨に吸いついた。

「愛しい人の汗がおいしい・・・。初めて交わった日の事が昨日の様に思い出せる・・・」
「小学生に性教育実習はトラウマだ!お陰で女の子を益々好きになったが、
Hに抵抗を覚えてしまったではないか」
「そうそうそんな思い出があったね。あの後も仲が良いままでいてくれたのに、
キスすら逃げるようになって、それから・・・」

ばき

今度は回し蹴りが背中を打つ。よろめいた怜二を女が支え、触れるだけのキスを重ねる。
「ねえ痛いよ?僕は不死身だが、痛いものは痛いんだ・・マゾになりきれなかった男なのさ・・・」
「うん、その後、君の弱点を探した」
今田は彼女が頭を撫でた。彼の脇をしっかり固め、自分で傷つけた事実を棚に上げるごとく、、
なだめる様に慰めるように優しく。

「君の弱点は徹底的な暴力。君は人を惑わすのが上手い。やる気を出せば空中ジャンプも出来そうな、
手品師の君。だから喋る前に殴る。逃げる前に蹴る。
君が逃げるから私は君を殴る。蹴る。それから幸せだった。君と体を重ねられた」




239 悪質長男 第十話 sage 2010/08/13(金) 01:34:25 ID:bDOWWnvT
頭を殴る。
今度こそ意識が飛びそうだった。
薄れる景色の中で、怜二は言葉を紡いだ。
「家に連れてく前に・・・」
「え?」
「家族に連絡して・・・・常識だよ・・・」
「あ、うん」
彼女は怜二の携帯でメールを打った。宛先は彼の姉と妹。

『初めまして。私は怜二の幼馴染です。
この度怜二は私の家に泊まります。明日の学校には普通に登校させますので、御心配無く
申し遅れました、私の名前は氷柱です』





このメールは麗華と玲が一緒に見ていた。二人共動かなかった。



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最終更新:2010年08月30日 04:20
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