Heartspeaks 後ろにいる輩

128 名前:Heartspeaks 後ろにいる輩[sage] 投稿日:2011/04/15(金) 18:38:44.57 ID:vzGkJmn/
鷹司がパジャマ姿のまま階段を下りてくると、玄関で妹と母が出支度の最中だった。
「あ。お兄ちゃんおはよ」
「おはよう……これから入学式か」
「うん」
鳩子は4月に入って髪を少し短く揃え、さらに今朝は眼鏡をかけていた。
「眼鏡デビューなんだな」
「そう」
(机につっぷして色んなもの眺めたり舐めたりしてたら視力落ちちゃった。てへ。忙しかったのは舌と右手なのになぁ)

身を包む制服は、かつて兄も通った高校のものだった。
鳩子がその場でターンしてみせると、赤いネクタイとスカートの裾がふわりと翻る。
「……どうかな?」
「あ……ああ」
鷹司は小さく息を飲んだ。
「なんか……、後輩、みたいだな」
「みたいじゃなくて後輩でしょ。何言ってんのあんたは」
母親が呆れたような声を出した。鳩子はくすっと笑うと兄に背を向け、真新しい靴に爪先を差し込んだ。
「じゃ、行ってきます」
颯爽と出て行く二人を見送った後、鷹司は廊下に突っ立ったまま頭を掻いた。
「……もっとマシなこと言えよ、俺」

「寺胆州高校まで」
タクシーに乗り込み、運転手に告げる。
「もーあの子ったら。妹の晴れ姿なのに、もうちょっと気の利いた感想はないのかしら」
「あはは……まぁ、あんなもんじゃない?」

(わかってない。わかってないねお母さん! 私は今猛烈に感動しているのYo!!
 お兄ちゃんが私を後輩と! 後輩と呼んだ!! これで はとこは こうはい として 生きてゆくことになった。
 いいですか、「後輩」といえば「妹」に次いで、若き男子の圧倒的な支持を集めるエロスの偶像なのです(※当方調べ)。
 始まりはただ文字通りの先輩後輩という関係でした。だけどバター犬のように自分を慕う後輩の純真なまなざしに、
 お兄ちゃんもだんだんと特別な感情を抱くようになっていくのですよ。性欲とか。
 そしてついにある日、お兄ちゃんの下駄箱に後輩からの手紙が!)

(呼び出された場所は、校庭に立つ一本の大きな木。
 その木の下で女の子の方から告白して結ばれたカップルは爆発するという伝説があるのです。
 『先輩! 前世からずっと好きでした! これから毎日私のお味噌汁やその他の汁を飲んでください!!』
 ……お兄ちゃんが私のことを後輩と呼んだのは、私をそういうロマンスでリビドーな存在に感じたということ。
 ちゃんと伝わってるから安心してねお兄ちゃん。私超嬉しいよ!! こんな栄誉がありますか!?
 私生まれ変わったつもりで修業に励む! 後輩マスター目指しちゃう! 前人未到の後輩になってみせるからね!!)

(お味噌汁で思い出したけど、お兄ちゃんの靴下はダシが出なくて全然だったなー。一人分しか作らなくて正解だった。
 1週間くらい同じの履いてくれたらいいのに。やっぱ下着も入れなきゃだめか。でも隠蔽工作面倒そう……)

「あ、桜が満開」
「ほんとだ。きれーい」
鳩子は無邪気な声を上げた。



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最終更新:2011年04月29日 14:54
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