『花言葉デンドロビウム』その二前半

718 『花言葉デンドロビウム』その三 sage 2008/06/17(火) 01:00:48 ID:iZzcEZoR
 チャイムが鳴り、三時間目の授業が終わる。
これでやっと半分。残り時間は昼を挟んで三時間。
次の体育が終わったら、また机に突っ伏す。一番後ろの、一番窓側の席で。
隣の席から話し掛けて来る妹をずっと無視して、机に突っ伏して目をつむる。
だからここだけ……体育の時間だけ乗り切れば良い。
大丈夫だ。俺は変態じゃない。黙ってヤラレてるだけじゃないんだ。
妹だって学校じゃ何も出来ないさ。
俺達は普通の双子。普通の兄妹。
だから兄で有る俺は、硝子を普通の妹として扱えば良い。学校が終わるまでは。
普通に、普通に、普通に。
「ふぅぅっ、はぁぁっ……」
一つ深呼吸して決意。
頭を上げ、席を立ち、鞄から水着一式を取り出す。
隣に硝子の姿は無い。もう着替えに行ったか?
俺も早く着替えないと……

教室を出て、階段を下り、室内プールへとひた走る。
この高校は全生徒数が千五百を超える街屈指のマンモス校。
特徴は巨大な室内プールで、夏場には市民に一般開放される。それまでに水泳が盛んで何人も競泳選手を排出している学校。
故に前期九月までの半分は体育授業の殆どが水泳で、今日は二年になってから初めての水泳授業。
年中温室の内部は、中央位置に10レーンも有る五十メートルプールに高い飛び込み台。その横には通常の二十五メートルプールと深さ五十センチ程の子供用プールが囲むように存在し、サウナルームやシャワールーム、だだっ広い更衣室まで完備されている。
俺はそこでも一番奥。ロッカーを開けて着替え用のタオルを腰に巻き、制服から今年初の海パン姿に。
体育は三クラス合同で行われ、男女合わせて百二十の大人数。
これなら大丈夫。
この時間は大丈夫。
安心して過ごせる。
硝子は隣に居ないし、居たとしても何もできやしない。
こんなに沢山の人前で……できる筈が無い。
今朝だって何かの弾みだ。
だからリラックス。午後に備えて息を抜こう。楽に、楽に……



719 『花言葉デンドロビウム』その二 ◆uC4PiS7dQ6 sage 2008/06/17(火) 01:02:21 ID:iZzcEZoR
   『花言葉デンドロビウム』




1
 最初の水泳授業は楽。プールに慣れるだけ。早い話しが自由行動。
五十メートルプールを途中で何度も立ち止まりながら泳ぎ、妹の場所を怪しまれぬ様に確認する。
妹は……
硝子は……
子供用のプールサイドに腰掛け、
膝から下を水に漬けて、
数人の男と数人の女に囲まれて笑う。
その中には、俺の親友『加藤 綱(かとう つな)』も居た。
「上手く口説き落とせよ加藤……」
加藤は俺と正反対。硝子と似てる。
勉強も出来て、運動も出来て、社交的で、誰にでも優しい。軽い口調なのに人が心から傷付く事は決して言わないし、ファッション雑誌に乗っててもおかしくない顔と体型。
そんな奴。
そんな奴だから俺は加藤を親友にした。
コイツなら、硝子の全てを引っくるめて幸せにしてくれると感じたから。
俺は……
加藤に俺を印象付ける為に話し掛け続け、
仲良くなる為に会話の内容を合わせ、
妹へ興味が沸く様に硝子と三人で何度も遊び、
硝子に対する質問には出来る限り答えた。
好きなテレビ番組、好きな料理、好きなブランド。
その結果。ほぼ間違いなく加藤は硝子に惚れてる。
俺が、加藤を、妹に、惚れさせたんだ。
妹から逃れる為に、加藤を『犠牲』にしたんだ。
このままだと、妹が不幸になるから……
ゴメンな加藤。俺が家を出て、妹から離れて、お前に妹の気持ち悪い姿を見せてしまったら、俺は毎日謝るよ。
お前は良い奴だから「気にするな」って言うだろうけど、幸せを装って笑いかけて来るだろうけど、本当にお前が笑うまで、俺は毎日謝る。
それが俺の義務。妹から逃げ出し、お前になすり付けた俺の義務。
だから……
どれだけでも謝るから。
お前の優しさ。お前のトークスキル。お前のプレゼントセンス。最高のデートコース。俺からの情報。それらを有効に使って、必死になって、硝子を落とせ。惚れさせろ。この人なら私の全てを見せれると思わせろ!
「頼むぞ、本当にさ……」
俺は全てを加藤に託してプールから上がり、妹から見付からぬ様に、誰も居ないサウナルームの中へと隠れ入った。



720 『花言葉デンドロビウム』その二 ◆uC4PiS7dQ6 sage 2008/06/17(火) 01:03:38 ID:iZzcEZoR
2
 サウナルーム。室内プール入口から奥の左隅に存在。
その中は二面ずつに分かれ、奥面と左面は岩壁、右面とドアの有る前面は磨り(すり)ガラスになっている。
床は木目タイルの上に全面簀の子(すのこ)が敷かれて、蒸気は天井と岩壁の隙間から絶え間無く噴き出す。そんな場所。
確かに夏に一般開放されればココも賑わうが、まだ四月……それも水泳授業の初っ端から入る奴なんて居ない。
百の人数を超して、これだけ賑わっていても、ココに入ろうとする奴なんて、せいぜい一人か二人。
「俺だけ、だよな?」
その一人もココに入ったんだから、これ以上入って来る筈は無い。
俺は一人。サウナルームの中。磨りガラスを透す人影も目立たなくする為、奥を向いて俯せに寝転ぶ。
これで完璧……後は授業の終わりを待つだけ。30分も待つだけ。
自分の腕に額を着けて目を閉じながら、まだ温まり始めたばかりのサウナで俯せになりながら、次のチャイムが鳴るまで息を殺す。
「ふぅっ……」
一気に脱力。溜まっていた気疲れが、一気に身体へ降り落ちる。一気に、眠気を誘う。
視界も思考もまどろみ、瞼の重力も強くなる。
もう、いいや。寝て、しまおう。授業終わりの見回りで起こして貰えるだろうし、このくらいの小休止なら良い、よな?
そんなハチミツより甘い考えで、ハチミツよりドロドロに溶ける。
そんなだから、
ドアの開閉する音に気付けなかった。
回りに配るべき気を怠慢した。
そんなだから……

背中に柔らかな感触と負荷が掛かり、

水泳キャップを剥ぎ取られ、

顔を上げた目の前で、『ソレが二つに増えて』置かれてる。
ソレにはそれぞれにイニシャル。Y・SとG・S。
Y・Sは俺。よりみつ しんどう。
じゃあG・Sは? 頭文字Gの名前はそう居ない。俺が知っているのは一人だけ。その一人は……
「ッ!?」
溶けていたまどろみが解ける。
意識が急速に覚醒し、巻き起きた非常事態に身体が対応し切れず、ドクンと心臓の動きだけが大きく躍動。
ああ、まちがいない。
まちがいなく、俺の背中に座っているのは、
「オ、ハ、ナ、シ……しましょうよ頼光」
百を越える生徒に紛れていた筈の妹。
妹が、背を跨いで座り、百を越える羊に紛れた双子の兄を、追い詰める。



721 『花言葉デンドロビウム』その二 ◆uC4PiS7dQ6 sage 2008/06/17(火) 01:04:37 ID:iZzcEZoR
3
 磨りガラスの部屋は熱気が篭り、壁を水滴が伝うまでに温度が上昇。
身体を這うモノが、水か汗かも判別できない。

「ココへ、何しに来た……んだよ硝子?」
脅えきってる声で解りきってる事を聴き、
「頼光と話しがしたいって言ってるじゃない。だって今日、ずっとシカトされてるし……さみしいわ」
脅えきってる頭で解りきってる答えを合わせる。

こんな、はずじゃ、なかった。

肩甲骨を両手で強く押さえ付けられているから身動きも難しい。
「別に……学校でまで話すネタは無いだろ」
だけど、難しいけど、無理じゃない。
ココで硝子と会話する事なんてないんだ。無視して、落ち着く事だけ考えよう。
そうすりゃ動ける。力は俺のが有るんだから。
取り敢えず、この位置関係だけは解消しないと。俺が俯せで下、妹が馬乗りで上。この位置関係はマズイ。体内ブザーも鳴り捲くってる。
「へぇっ……会話もしたくないんだ? そんなに、私が嫌いなんだ? くっ……ムカつくわ頼光」
押さえ付けた掌から伝わる、妹の震えと不快感。
引いちゃイケない。引いちゃいつもと同じ。
ターニングポイント。例え泣かれても引かんぞ!
「ムカついてもいいから、さっさと退け硝子」
憮然と、視線は前に向けたまま。重なる水泳キャップのイニシャルを眺めたまま。顔も見ようとせずに妹を煽る。
怒って背中から立ち上がりますように。
怒って部屋から出て行きますように。
そんな微かな願いを込めて。
「嫌ッ! イヤよ……頼光が私を蔑 (ないがし)ろにするなら、背中の上でオシッコ……してやるわ!」
次の言葉で打ち砕かれる。
はっ? 授業中だぞ? プールだぞ? 何の冗談……じゃ、ない、か。こんな冗談を言わないって、俺が一番知ってる筈だ。
「ヤケになるな硝子! 今夜、キチンと言うから。その時に、話しを聞くから。それじゃ駄目か?」
ちく、しょう。いっつも、いっつもいっつもいっも! 何で上手く行かないんだよ畜生ッ!!
結局、最後には下手。気付けば少しずつ妥協して、硝子の意見を聞き入れてる。



722 『花言葉デンドロビウム』その4 sage 2008/06/17(火) 01:07:16 ID:iZzcEZoR
4
 「だめ……ふぅっ、おしっこ……する、から。頼光の、んんっ……せな、かに……おもらし、するからぁっ!」
俯せになる俺の背の上で唸る、硝子の呻き声がサウナルームに響く。
それは熱を帯びて部屋中に絡み付き、相乗効果で一層に体温を引き上げようとする。
「ヤメ、ろっ! するならトイレに行け! 本当に変態になりたいのか!?」
暑くて掻いた汗も、
この状況で掻いた冷や汗も、
混じって纏まり身体に滲む。
何を考えてんだよ!? 俺は妥協したろ? 双子のお前には伝わってるだろ? なら退けよ! さっさとトイレに行けよ!!
「意地悪、するから。頼光のせいで私は、人の上でおもらしする変態になったのよ? それに尿道まできちゃってるし、もう止められないわ。ふふっ。でるっ、から、ね……責任とって、ふぅっ……トイレに、なりなさい頼光っ!」
独特の低音。くぐもった声。荒い吐息。
硝子は興奮してるって、顔を見なくても想像は簡単。
きっと頬は朱く染まり、口は開きっぱなしで舌をダラリと垂らしてる。
「ぐぅぅっ、くそっ!」
何とか起き上がろうと試みるも、硝子の指が背中のツボに爪ごと食い込んで力が入らない。激痛が反動するだけ。
「んっ、ふあぁぁっ……でてっ、るよぉ。頼光トイレにオシッコでてるよぉっ♪♪」

 ぷしゅ、ぢょろぢょろちょろちょろちょろ……
小さな破裂音に僅かな間が続き、低い声が甲高く。
そして、
「ぐっ……マジで、してるのかよ!?」
妹は俺の身体をトイレに。
熱い液体が背中で弾け、幾つにも別れたシブキを浴び、水筋が肩上を流れて落ちる。
「気持ち、いいよ頼光……背中の窪みに、私のオシッコ溜まってる。んっ……こんなに、オシッコが気持ちいいなんて、知らなかったわ♪」
どんなに抵抗しても、俺の意志は通らない。
妹の声が潤って行く度、俺の瞳も潤いボヤける。
悲しくて、悔しくて、情けなくて、涙が浮かぶ。
妹の放尿が終わるまで待つしかないって解答を出した心と、
オシッコをかけられてるのに性的興奮を感じてる身体が、
悲しくて、悔しくて。情けなくて……



723 『花言葉デンドロビウム』その二 ◆uC4PiS7dQ6 sage 2008/06/17(火) 01:09:24 ID:iZzcEZoR
5
 「私は水着のままオシッコして興奮する変態だけど、双子の貴方も負けてないわ♪」
高温で広まる微かなアンモニアの匂い。
それだけ。意思とは無関係にドクドクと血液がペニスに集まり、硬度を増して上を向こうとする。
するだけ。床を相手に無駄な押し合いをするだけ。背中の痛みも消える程の痛みがペニスの先端に跳ね返り続ける。
痛い。痛いのに収まらない。
「早くどいてくれ! 早く! 頼むからっ!! はやくっ!!」
余裕も無い。なりふりも構ってられない。背上の妹に訴えるだけ。
せめて仰向けにさせて貰えれば。
「やっぱり、双子って良いわ。なんで頼光が必死になってるか分かるんだもん♪ チンポ……痛いんだよね?」
硝子が興奮する事は俺だって興奮するし、俺が興奮する事は硝子も興奮する。
「ああっ、そうだよ畜生ッ!!」
どうせ見透かされてると高を括り、俺の上から硝子が退くまでの道程を急ぐ。
返答も考えずに短く、単純に。
「いいわよ。私の『お願い』を一つ聞いてくれるならね」

このやり取りで終わり。
どんな無茶な願いでも、俺は硝子の満足する答えを返すだけ。
何故なら……反故にするから。どうせ無茶な願いなんだ。悪いけど、脅迫を聞いてやる気は更々無い。
だから簡単に嘘を……
「今の俺に出来る事なら、何でもしてやるから! 早く退いてくれよ!」
そう言った途端、背中を押さえていた圧力は無くなり、腰の上も軽くなる。
硝子が立ち上がった。それを感じると、すぐに身体を回して仰向けに。
大きく、大きく。震える息で深呼吸。改めて視線を妹にやれば、体型にしてはキツ目のスクール水着姿。その中でクロッチ部分だけが僅かに変色していて、膨らんだ淫突起の形がくっきりと浮き出ていた。
硝子は俺の身体を跨いだまま。仰向けになった俺のフトモモに場所を移して座り直す。

そして表情は真剣に。
「それじゃあ約束。私と……セックスして」
嘘や冗談は言ってない。
硝子の赤い瞳は、驚いて揺れる俺の瞳を捕らえてる。
「がら、す……オカシイぞ!?」
なんだよ急に!? ココで、俺に、そんな事を言うなんてオカシイだろ?
サウナルームの中。汗も掻き、湿気も十分なのに、唇が乾く。泣き出しそうな硝子の瞳に見詰められて。
「私もね、好きな人に振り向いて貰おうと必死なのよ。ねぇ……頼光? どうしたらオチてくれるの? どうしたら、愛してくれるのよっ!!」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年05月31日 14:34
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。