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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/15スレ目短編/571 - (2011/03/21 (月) 23:14:00) の最新版との変更点
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*とある幼馴染の星間旅行 1 前編
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1 レベル1「粒子操作」
少年の名前は『朝凪星海(あさなぎせいかい)』。
学園都市のとある高校の1年7組。その能力は「粒子操作」で、ある物質の操作が可能である。
彼が操作可能なのは「タキオン粒子」、すなわち「超光速粒子」のこと。それを操作することで、彼は宇宙空間を超光速で移動できる能力があるという。
彼の能力名は『ワープドライバー』。所謂ワープ航法が可能なのであった。
もっとも実際に、タキオン粒子が操作されているのかは確認されていない。現在の能力測定装置では、AIM拡散力場以外は計測不能なため、現在の彼の能力レベルは1。
彼の今の能力レベルで可能なのは、質量を伴う物ではなく、意識のみが超光速移動が可能らしいのだが、今の所、彼以外にそれを確認できた者はいない。
少年は、年少の頃よりSF小説を嗜み、やがては中学生の頃よりここ、学園都市の学生として現在に至っている。
将来は宇宙飛行士という夢があったが、現実にはあまり出来がよろしくないため、学園都市でも無名の高校に在籍していた。
「んーったく、相変わらずうるさい連中だな。おちおち読書もできねぇ」
そう教室で一人ごちた彼の目前で騒いでいるのは、上条当麻、土御門元春、そして青髪ピアスの3人組。
「――だーっ!だから俺のせいじゃないんだって」
上条が叫ぶ。
「――うるさいんだにゃー。てめぇだけは許さんぜよ」
土御門が返す。
「――カミやんのおかげで、ワイらはえらい迷惑やねんで」
青髪ピアスがぶちまける。
――上条のヤツ、またどっかでフラグ立てやがったのか。うらやましい限りだぜ。けっ…
そう思う朝凪に、横の机に腰掛けていた少女が話しかけた。
外見は黒髪ショートヘアが似合う、ちょっと可憐系の女の子だった。
「ねえ、星海。今日読んでるのは何?」
「ロバート・ハインライン」
「ふうん。なんてタイトル?」
「スターマン・ジョーンズ。昨日古本屋の100均で見つけた」
「面白い?」
「やっと見つけてな。これでハインラインはコンプリート…、って、睦月、お前今日も来てるのかよ」
そう朝凪に言われた少女の名は『大神睦月(おおがみむつき)』という。
2 レベル1「心理回復」
大神睦月はレベル1「心理回復」の能力を持つ。能力名は「メンタルリカバー」。
過去にもっていた心理状態を回復させるものなのだが、そのレベル強度では、親しい人間の、一部の心理状態をわずかに回復させるのが精一杯という程度である。
彼女は、朝凪星海の幼馴染であり、小、中、高とずっと彼と同じ学校であった。彼女の今のクラスは隣の1年6組。
なぜ彼女がこのクラスにいるのかというと、おそらく「カミジョー属性」なのだろう。
おかげで上条当麻は、隣のクラスの一部男子からも妬まれているとかいないとか。
その割りに、彼女はなぜかいつも朝凪の横にいた。腐れ縁だから、というのが、二人のいつもの理由付けであるのだが。
その日、大神は朝凪の隣で三馬鹿トリオの騒動をあきれたように眺めていた。
「上条君は相変わらずね」
朝凪は本から目を外すことなく会話を続ける。
「なんだ、睦月。気になるのか?」
そんな朝凪を、大神はチラリと見て、小さくため息をついた。
「いや、別に…なんだけどね」
「上条と違って、俺みたいなSFオタクにはそんな縁なんてねぇよな」
「そんなことないって。星海のこと好きになる子、世界のどっかに必ずいるって」
「はいはい、どっかね。で、どっかってどこよ」
「さぁね?どこでしょうね…」
大神の表情がわずかに曇っていることに、朝凪は全く気付いていない。
「おめーは昔からそうだよな。俺のことおもちゃか何かとカン違いしてねぇ?」
「カン違いじゃないわよ。はっきり言って、おもちゃそのものね」
「ちぇっ。わかりましたよっと。お前そろそろ授業始まるから戻れよな」
結局最後まで、朝凪は本から目を上げることは無かった。
「うん。じゃね。上条君によろしく言っといて」
そう言って大神睦月は、朝凪を意味ありげに見て、教室を出て行った。
3 姫神秋沙・朝凪星海
その日、朝凪は空き時間は、ほとんど読書に費やした。
休み時間中、横に大神の気配を感じることもあったが、そのまま無視して読書に熱中していた。
もっとも大神自身は、そんな朝凪に何も言わず、デルタフォースの馬鹿ッぷりを見ているだけだったようだが。
その日の放課後に限って、なぜか朝凪はクラスメートの姫神秋沙に声を掛けられた。
実のところ、姫神は、先程の朝凪と大神の様子を、何とはなしに見ていたのだった。
「朝凪君。いつも。本読んでる。今日は何。読んでるの」
朝凪は、読んでいた本を鞄に入れながら、姫神に顔を向けた。
「ああ、姫神さん。ハインラインの小説」
「それは。SFね。私も。嫌いじゃない」
朝凪は、その答えに意外そうな表情を向けた。
「え、姫神さん知ってんだ」
「ハインラインなら。本当に少しだけど」
「へぇ。意外だね。女の子でハインライン知ってるって、滅多にいないよ。あ、姫神さん。時間あるなら本屋付き合わない?
今日、雑誌の発売日なんで」
大神以外の女の子と、SFの話が出来ることに、朝凪はちょっとテンションが上がっていた。
「私は。時間あるから。大丈夫だけど」
「おし、決まり。なんだったら何か奢るよ」
「でも。いつも大神さん。いるじゃない」
「ああ、睦月なら平気だよ。単に腐れ縁ってだけのことだし。それにアイツはカミジョー属性みたいだし」
「それを。言ったら。私も…」
「チッ、上条の野郎…、ブチコロス」
「その時は。私も」
――これで、と言いながら、魔法のステッキを取り出した。
――どこかで不幸だーという声が聞こえた気がするが、朝凪も姫神も特に気にしない。
4 上条当麻・大神睦月
夕方近く、大神睦月は7組の教室を覗いた。
「――ええと、星海、いない…か?あ、上条君、補習中だった?」
大神が見たのは、教室で一人補習中だった上条当麻だった。
そう呼ばれた上条が、教室の入口に目を向けた。
「ん、あれ、大神さん、ひとり?」
大神はちょっと残念そうな表情をしていた。
「うん、ちょっと遅くなっちゃって。上条君。星海知らない?」
そういや、といった表情で上条が言葉を継いだ。
「朝凪なら、姫神と帰ったみたいだぜ」
「あ、そう…なんだ」
ありありと表情を曇らせた大神に、上条が反応した。
「あれ?お前ら、付き合ってんじゃないの?」
「あ、いやいや、単に腐れ縁ってだけで、別に付き合ってるわけでもないし、なぜ?」
あわてたように大神が言う。
「いや、お前ら、いつも一緒に居るじゃん。だからてっきり…」
「んー、ホント昔からの腐れ縁ってだけだし。それに星海の方はね」
大神がわずかにため息をつく。
「――縁すらない上条さんにはうらやましい限りですよ」
突然大神が上条の横へ近付き、小さな声で言った。
「上条君。常盤台のエースと付き合ってるんじゃないの?」
突然のことに、上条の余裕が吹き飛んだ。
「ぶふぉっ。だ…、誰からそんな。か…、上条さんにそんなボーナスステージみたいなものは一切無いですよ」
「えー?この前、見たわよ。常盤台のお嬢さんとお手手つないで、いちゃいちゃ楽しそうにデート中なのを…」
「ははは…、それは何の事でせう…」
とぼけた上条に大神がたたみかけた。
「学園都市第三位のお嬢さんが、上条君と腕組んでさ。ふたりともすっごい笑顔で楽しそうに通りを歩いてたんだよね…」
「げ…」
「で、二人とも『当麻』『美琴』って呼び合って、どう見たってカップルそのものじゃないの。いいなぁ…」
考えてみれば、大通りをカップルで歩けば当然目立つわけであるし、ましてや相手が常盤台の女の子で、しかも有名人となれば尚更なのだが。
「えええ、アレ、見られ…て…た?お、お、大神サン。頼むから、内密で!お願いだから。でないと上条さんは命の危険が…」
「…ということは認めるってことね」
「ええと………ハイ…」
ガックリと上条は肩を落とした。
「へへへ、じゃ後で聞きたいことがあるから、ちょっとだけ付き合ってくれる?」
「わかりましたから…、なにとぞお手柔らかに…」
上条が不幸だーとつぶやいていた。
「大丈夫。そういうことじゃないから。じゃ校門前で待ってるからね」
そう言って大神は教室を出ていった。
5 幻想殺し・超電磁砲
校門前で待つ大神睦月の前に、上条当麻が声をかけた。
「すまん、大神さん。待たせちゃって」
「大丈夫よ。それより補習は終わったの?」
「おう。後は買い物して帰るだけだ」
「そう、実はちょっと相談したいことがあるんだけど…」
「こんな上条さんで良ければ、いくらでも力になりますことよ。ま、ここじゃなんだし、この先の公園にでも行くか…」
二人はとある上条馴染みの公園に向かっていった。
上条はいつもの自販機でやしの実サイダーを買い、傍のベンチに腰掛けている大神に渡した。
「大神さん、はいこれどうぞ」
「え、あ…ありがとう。…もしかしてこのジュース、彼女のお気に入り?」
「へっ…、あ…ごめん。ついいつもの癖で…」
「いいなぁ、上条君の彼女。うらやましいなぁ。愛されてるんだぁ。星海なんてさ、ぜんぜん振り向いてもくれないし…」
「大神さん、もしかして、朝凪のこと?」
「…うん、内緒だからね。でも星海さ、私のこと眼中にないみたいだし。腐れ縁すぎて、恋愛感情なんて無いみたいなのね」
「うーん、上条さんに恋愛相談はちょっと荷が重い…のですが」
「あ、ごめんね。今日はそれじゃなくて、能力のことなんだけど…」
そう言って、大神は上条に向かい合った。
「上条君、知ってるかどうかわかんないけど、私の能力って、心理系なの。
もっともレベルがレベルなんで、私に悪意があるか、好意があるか程度しか判断つかないんだけどね。
で、7組の子、ほぼ全員、判別できるんだけど、上条君だけ、どうしてもわからないのよ。
それで、ちょっと理由を聞いてみようかなって思ったんだけど、迷惑…かな?」
「ああ、そういうことね…。
んーなんて言うか…、俺の右手、実はちょっとした特殊な能力があってだな…。
あらゆる能力を消してしまうんで、俺には能力、効かないんだ」
「え、そんなのあるんだ…。というと、もしかして都市伝説の『あらゆる能力を打ち消す力』ってこと?」
「ああ、多分な…」
「だったら『第一位を倒した無能力者』って…」
「否定はしねぇが肯定もしねぇ…。ま、訳あって詳しいことは言えねぇがな。ここだけの話って事で、忘れてくれると助かる」
「うん、わかったわ…。でも…そうなんだ。なんとなくっていうか、上条君らしいというか…」
「ま、どこへでも首を突っ込む不幸体質てのは…」
その時、突然二人の目の前に立ちはだかる影があった。
「ちょっと、アンタ!よその女とここで何してんのよっ!!!!」
学園都市第三位『超電磁砲』こと御坂美琴であった。
「ひっ!?み、美琴!!ちょ、ちょっと待てって!!落ち着けって!!誤解だって!!」
上条があわてたように手を振る。
「なによ、人のこと放っておいて。アンタ、説明してもらおうじゃないの!」
指先からバチバチと放電しながら、美琴が上条の前で仁王立ちになる。
さすがに一般人がいるところで、電撃を放たないだけの理性はあるようだ。
「だから説明しますから、美琴センセー。ちょっとその電撃は…」
上条が言いかけたところへ、横にいた大神が美琴に声をかけた。
「あの、上条君の彼女さん…ですよね。はじめまして、私、上条君の隣のクラスの大神睦月といいます」
上条の彼女と言われたとたん、美琴の顔が赤くなり、電撃を引っ込めてモジモジしだした。
「は、はじめまして。御坂美琴です。あ、あの何かコイツが失礼なことでも…」
すかさず上条がツッコミを入れる。
「だーかーらー、いくら俺が不幸体質でも、そうそう人をトラブルに巻き込まないって…」
そんな二人を見た大神がクスリと笑った。
「ごめんなさいね。私、上条君に能力のことで聞きたいことがあったの…。あ、大丈夫よ、私、別に好きな人いるから。安心して」
カミジョー属性を良く知ってる大神は、美琴へのフォローを忘れない。
「そうだったんですか。ごめんなさい。コイツ、よくきれいな女の人と一緒にいるもので、つい…」
美琴は赤い顔のまま、大神に向かって頭を下げた。
「ううん、誤解させちゃったのは私のほうだから、御坂さんは気にしないで。
じゃ、デートのお邪魔になるから、私、行くわね。上条君、相談に乗ってくれて、ありがとう」
そう言って、大神は二人に手を振ってその場を離れた。
――いいなぁ。私も星海とあんな風になれたら…
振り返った大神が見たのは、楽しそうに手をつないだカップルの後姿だった。
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#include(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/15スレ目短編/645)
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*とある幼馴染の星間旅行 1 前編
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1 レベル1「粒子操作」
少年の名前は『朝凪星海(あさなぎせいかい)』。
学園都市のとある高校の1年7組。その能力は「粒子操作」で、ある物質の操作が可能である。
彼が操作可能なのは「タキオン粒子」、すなわち「超光速粒子」のこと。それを操作することで、彼は宇宙空間を超光速で移動できる能力があるという。
彼の能力名は『ワープドライバー』。所謂ワープ航法が可能なのであった。
もっとも実際に、タキオン粒子が操作されているのかは確認されていない。現在の能力測定装置では、AIM拡散力場以外は計測不能なため、現在の彼の能力レベルは1。
彼の今の能力レベルで可能なのは、質量を伴う物ではなく、意識のみが超光速移動が可能らしいのだが、今の所、彼以外にそれを確認できた者はいない。
少年は、年少の頃よりSF小説を嗜み、やがては中学生の頃よりここ、学園都市の学生として現在に至っている。
将来は宇宙飛行士という夢があったが、現実にはあまり出来がよろしくないため、学園都市でも無名の高校に在籍していた。
「んーったく、相変わらずうるさい連中だな。おちおち読書もできねぇ」
そう教室で一人ごちた彼の目前で騒いでいるのは、上条当麻、土御門元春、そして青髪ピアスの3人組。
「――だーっ!だから俺のせいじゃないんだって」
上条が叫ぶ。
「――うるさいんだにゃー。てめぇだけは許さんぜよ」
土御門が返す。
「――カミやんのおかげで、ワイらはえらい迷惑やねんで」
青髪ピアスがぶちまける。
――上条のヤツ、またどっかでフラグ立てやがったのか。うらやましい限りだぜ。けっ…
そう思う朝凪に、横の机に腰掛けていた少女が話しかけた。
外見は黒髪ショートヘアが似合う、ちょっと可憐系の女の子だった。
「ねえ、星海。今日読んでるのは何?」
「ロバート・ハインライン」
「ふうん。なんてタイトル?」
「スターマン・ジョーンズ。昨日古本屋の100均で見つけた」
「面白い?」
「やっと見つけてな。これでハインラインはコンプリート…、って、睦月、お前今日も来てるのかよ」
そう朝凪に言われた少女の名は『大神睦月(おおがみむつき)』という。
2 レベル1「心理回復」
大神睦月はレベル1「心理回復」の能力を持つ。能力名は「メンタルリカバー」。
過去にもっていた心理状態を回復させるものなのだが、そのレベル強度では、親しい人間の、一部の心理状態をわずかに回復させるのが精一杯という程度である。
彼女は、朝凪星海の幼馴染であり、小、中、高とずっと彼と同じ学校であった。彼女の今のクラスは隣の1年6組。
なぜ彼女がこのクラスにいるのかというと、おそらく「カミジョー属性」なのだろう。
おかげで上条当麻は、隣のクラスの一部男子からも妬まれているとかいないとか。
その割りに、彼女はなぜかいつも朝凪の横にいた。腐れ縁だから、というのが、二人のいつもの理由付けであるのだが。
その日、大神は朝凪の隣で三馬鹿トリオの騒動をあきれたように眺めていた。
「上条君は相変わらずね」
朝凪は本から目を外すことなく会話を続ける。
「なんだ、睦月。気になるのか?」
そんな朝凪を、大神はチラリと見て、小さくため息をついた。
「いや、別に…なんだけどね」
「上条と違って、俺みたいなSFオタクにはそんな縁なんてねぇよな」
「そんなことないって。星海のこと好きになる子、世界のどっかに必ずいるって」
「はいはい、どっかね。で、どっかってどこよ」
「さぁね?どこでしょうね…」
大神の表情がわずかに曇っていることに、朝凪は全く気付いていない。
「おめーは昔からそうだよな。俺のことおもちゃか何かとカン違いしてねぇ?」
「カン違いじゃないわよ。はっきり言って、おもちゃそのものね」
「ちぇっ。わかりましたよっと。お前そろそろ授業始まるから戻れよな」
結局最後まで、朝凪は本から目を上げることは無かった。
「うん。じゃね。上条君によろしく言っといて」
そう言って大神睦月は、朝凪を意味ありげに見て、教室を出て行った。
3 姫神秋沙・朝凪星海
その日、朝凪は空き時間は、ほとんど読書に費やした。
休み時間中、横に大神の気配を感じることもあったが、そのまま無視して読書に熱中していた。
もっとも大神自身は、そんな朝凪に何も言わず、デルタフォースの馬鹿ッぷりを見ているだけだったようだが。
その日の放課後に限って、なぜか朝凪はクラスメートの姫神秋沙に声を掛けられた。
実のところ、姫神は、先程の朝凪と大神の様子を、何とはなしに見ていたのだった。
「朝凪君。いつも。本読んでる。今日は何。読んでるの」
朝凪は、読んでいた本を鞄に入れながら、姫神に顔を向けた。
「ああ、姫神さん。ハインラインの小説」
「それは。SFね。私も。嫌いじゃない」
朝凪は、その答えに意外そうな表情を向けた。
「え、姫神さん知ってんだ」
「ハインラインなら。本当に少しだけど」
「へぇ。意外だね。女の子でハインライン知ってるって、滅多にいないよ。あ、姫神さん。時間あるなら本屋付き合わない?
今日、雑誌の発売日なんで」
大神以外の女の子と、SFの話が出来ることに、朝凪はちょっとテンションが上がっていた。
「私は。時間あるから。大丈夫だけど」
「おし、決まり。なんだったら何か奢るよ」
「でも。いつも大神さん。いるじゃない」
「ああ、睦月なら平気だよ。単に腐れ縁ってだけのことだし。それにアイツはカミジョー属性みたいだし」
「それを。言ったら。私も…」
「チッ、上条の野郎…、ブチコロス」
「その時は。私も」
――これで、と言いながら、魔法のステッキを取り出した。
――どこかで不幸だーという声が聞こえた気がするが、朝凪も姫神も特に気にしない。
4 上条当麻・大神睦月
夕方近く、大神睦月は7組の教室を覗いた。
「――ええと、星海、いない…か?あ、上条君、補習中だった?」
大神が見たのは、教室で一人補習中だった上条当麻だった。
そう呼ばれた上条が、教室の入口に目を向けた。
「ん、あれ、大神さん、ひとり?」
大神はちょっと残念そうな表情をしていた。
「うん、ちょっと遅くなっちゃって。上条君。星海知らない?」
そういや、といった表情で上条が言葉を継いだ。
「朝凪なら、姫神と帰ったみたいだぜ」
「あ、そう…なんだ」
ありありと表情を曇らせた大神に、上条が反応した。
「あれ?お前ら、付き合ってんじゃないの?」
「あ、いやいや、単に腐れ縁ってだけで、別に付き合ってるわけでもないし、なぜ?」
あわてたように大神が言う。
「いや、お前ら、いつも一緒に居るじゃん。だからてっきり…」
「んー、ホント昔からの腐れ縁ってだけだし。それに星海の方はね」
大神がわずかにため息をつく。
「――縁すらない上条さんにはうらやましい限りですよ」
突然大神が上条の横へ近付き、小さな声で言った。
「上条君。常盤台のエースと付き合ってるんじゃないの?」
突然のことに、上条の余裕が吹き飛んだ。
「ぶふぉっ。だ…、誰からそんな。か…、上条さんにそんなボーナスステージみたいなものは一切無いですよ」
「えー?この前、見たわよ。常盤台のお嬢さんとお手手つないで、いちゃいちゃ楽しそうにデート中なのを…」
「ははは…、それは何の事でせう…」
とぼけた上条に大神がたたみかけた。
「学園都市第三位のお嬢さんが、上条君と腕組んでさ。ふたりともすっごい笑顔で楽しそうに通りを歩いてたんだよね…」
「げ…」
「で、二人とも『当麻』『美琴』って呼び合って、どう見たってカップルそのものじゃないの。いいなぁ…」
考えてみれば、大通りをカップルで歩けば当然目立つわけであるし、ましてや相手が常盤台の女の子で、しかも有名人となれば尚更なのだが。
「えええ、アレ、見られ…て…た?お、お、大神サン。頼むから、内密で!お願いだから。でないと上条さんは命の危険が…」
「…ということは認めるってことね」
「ええと………ハイ…」
ガックリと上条は肩を落とした。
「へへへ、じゃ後で聞きたいことがあるから、ちょっとだけ付き合ってくれる?」
「わかりましたから…、なにとぞお手柔らかに…」
上条が不幸だーとつぶやいていた。
「大丈夫。そういうことじゃないから。じゃ校門前で待ってるからね」
そう言って大神は教室を出ていった。
5 幻想殺し・超電磁砲
校門前で待つ大神睦月の前に、上条当麻が声をかけた。
「すまん、大神さん。待たせちゃって」
「大丈夫よ。それより補習は終わったの?」
「おう。後は買い物して帰るだけだ」
「そう、実はちょっと相談したいことがあるんだけど…」
「こんな上条さんで良ければ、いくらでも力になりますことよ。ま、ここじゃなんだし、この先の公園にでも行くか…」
二人はとある上条馴染みの公園に向かっていった。
上条はいつもの自販機でやしの実サイダーを買い、傍のベンチに腰掛けている大神に渡した。
「大神さん、はいこれどうぞ」
「え、あ…ありがとう。…もしかしてこのジュース、彼女のお気に入り?」
「へっ…、あ…ごめん。ついいつもの癖で…」
「いいなぁ、上条君の彼女。うらやましいなぁ。愛されてるんだぁ。星海なんてさ、ぜんぜん振り向いてもくれないし…」
「大神さん、もしかして、朝凪のこと?」
「…うん、内緒だからね。でも星海さ、私のこと眼中にないみたいだし。腐れ縁すぎて、恋愛感情なんて無いみたいなのね」
「うーん、上条さんに恋愛相談はちょっと荷が重い…のですが」
「あ、ごめんね。今日はそれじゃなくて、能力のことなんだけど…」
そう言って、大神は上条に向かい合った。
「上条君、知ってるかどうかわかんないけど、私の能力って、心理系なの。
もっともレベルがレベルなんで、私に悪意があるか、好意があるか程度しか判断つかないんだけどね。
で、7組の子、ほぼ全員、判別できるんだけど、上条君だけ、どうしてもわからないのよ。
それで、ちょっと理由を聞いてみようかなって思ったんだけど、迷惑…かな?」
「ああ、そういうことね…。
んーなんて言うか…、俺の右手、実はちょっとした特殊な能力があってだな…。
あらゆる能力を消してしまうんで、俺には能力、効かないんだ」
「え、そんなのあるんだ…。というと、もしかして都市伝説の『あらゆる能力を打ち消す力』ってこと?」
「ああ、多分な…」
「だったら『第一位を倒した無能力者』って…」
「否定はしねぇが肯定もしねぇ…。ま、訳あって詳しいことは言えねぇがな。ここだけの話って事で、忘れてくれると助かる」
「うん、わかったわ…。でも…そうなんだ。なんとなくっていうか、上条君らしいというか…」
「ま、どこへでも首を突っ込む不幸体質てのは…」
その時、突然二人の目の前に立ちはだかる影があった。
「ちょっと、アンタ!よその女とここで何してんのよっ!!!!」
学園都市第三位『超電磁砲』こと御坂美琴であった。
「ひっ!?み、美琴!!ちょ、ちょっと待てって!!落ち着けって!!誤解だって!!」
上条があわてたように手を振る。
「なによ、人のこと放っておいて。アンタ、説明してもらおうじゃないの!」
指先からバチバチと放電しながら、美琴が上条の前で仁王立ちになる。
さすがに一般人がいるところで、電撃を放たないだけの理性はあるようだ。
「だから説明しますから、美琴センセー。ちょっとその電撃は…」
上条が言いかけたところへ、横にいた大神が美琴に声をかけた。
「あの、上条君の彼女さん…ですよね。はじめまして、私、上条君の隣のクラスの大神睦月といいます」
上条の彼女と言われたとたん、美琴の顔が赤くなり、電撃を引っ込めてモジモジしだした。
「は、はじめまして。御坂美琴です。あ、あの何かコイツが失礼なことでも…」
すかさず上条がツッコミを入れる。
「だーかーらー、いくら俺が不幸体質でも、そうそう人をトラブルに巻き込まないって…」
そんな二人を見た大神がクスリと笑った。
「ごめんなさいね。私、上条君に能力のことで聞きたいことがあったの…。あ、大丈夫よ、私、別に好きな人いるから。安心して」
カミジョー属性を良く知ってる大神は、美琴へのフォローを忘れない。
「そうだったんですか。ごめんなさい。コイツ、よくきれいな女の人と一緒にいるもので、つい…」
美琴は赤い顔のまま、大神に向かって頭を下げた。
「ううん、誤解させちゃったのは私のほうだから、御坂さんは気にしないで。
じゃ、デートのお邪魔になるから、私、行くわね。上条君、相談に乗ってくれて、ありがとう」
そう言って、大神は二人に手を振ってその場を離れた。
――いいなぁ。私も星海とあんな風になれたら…
振り返った大神が見たのは、楽しそうに手をつないだカップルの後姿だった。
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