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0-2/16-1」を以下のとおり復元します。
 友愛高校の入学式での一件から一週間後の放課後、初春は教会でステイルにある大事な提案を持ちかけられていた。

「ここの寄宿舎に引っ越して欲しいってステイルさん、その件ならもう少し待って欲しいって前々から……」
「分かってる、それは何度も聞いている。けどね……もう限界なんだよ! 神裂とシェリー、それとあの捕虜二人組には君が必要なんだ!」

 ネセサリウスのサポーターになって以来、当麻達には知らされていないが初春は何度か魔術師にも暗部の人間にも命を狙われている。
 身の安全、それに周囲のことを考えて安全な教会の寄宿舎への引越しは前々から言われており、初春自身も乗り気ではあるが一つの問題がそれを許さなかった。

「火織お姉ちゃんとシェリーさんのことも、ハイドンさんとクレインさんのことも分かってますけど私のルームメイトの方が……」
「そうだったね。ここに神裂が居るからって理由だけで反対してるんだっけ? 神裂の奴、一体彼女に何をしたんだい?」
「私にも心当たりが無いんです。だからちょっと困ってて……。春上さん、私のルームメイトの方ですけど授業中に私が火織お姉ちゃんにいじめられてるって……」

 ステイルは全く状況を理解出来なかったが、初春の寄宿舎入りは彼女の安全面以前に彼の心労を和らげる為のものだった。
 神裂とシェリーの喧嘩を簡単に止められる、生意気なハイドンとクレイン(ハイドマンとクレイウーマンの本名)を大人しく従わせられる初春の存在をステイルは求めていた。

「君が寄宿舎入りを前向きに考えていてくれて安心したよ。一応だけど神裂も動いてるみたいだけど初春、君もその春上という少女の説得を続けてくれるかい?」
「分かりました」

 しかし二人はこの時は思いもしなかった、まさかあの当麻と美琴が神裂派と春上派に別れて激突することになろうとは。

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 その頃のとあるファミレスでは当麻と土白が神裂に呼び出されていた、通常の課題も罰の課題も死に物狂いで5日で終わらせたので問題は無いが。
 注文した飲み物や料理が全て揃った時、神裂は神妙な面持ちで頭を下げて頼みごとをしてきた。

「お願いです3人とも! 春上衿衣という飾利のルームメイトに飾利の教会への寄宿舎への引越しを認めてもらえるように説得して下さい!」

何も聞かされていない当麻と土白、とりあえず逃避の意味でテーブルに並べられた料理に手をつけ始める。

「ちょ! 何ですかあなた達は! 人の頼みを無視してご飯を食べるなんて酷いですよ! 何て仲間甲斐の無いっ!」
「そう言われてもねーちん、俺達はその春上衿衣がどんな人間かも知らないぜよ。まあ、初春ちゃんの教会寄宿舎入りは望む所だがなぁ」
「だが、何ですか?」
「神裂さんならそれくらいは一人でも出来るんじゃないかなって言いたいんですよ、元春は。それとも私達を頼らないといけない理由でもあるんですか?」

 月夜の指摘に「うっ」と唸った神裂、しかし事情を話さないと協力は得られないと判断し、少し恥ずかしがりながらも理由を話す。

「……嫌われてるんですよ、私。その春上から。授業中も飾利をいじめる悪い先生って感じで警戒されていて……」
「神裂が人に嫌われることって珍しいよな。春上って子がどんな子か知らないけどさ、お前が理由も無く嫌われるってのは考えられない」
「上条当麻……」
「カミやんの言う通りだぜい。まずはいじめられてるって言われてる授業中について教えてくれるかにゃー?」

 土御門に言われて神裂は普段の授業内容を説明し始めたが要約するとこんな感じである。
 授業中の問題を八割がた初春にさせ、教科書を読む時も殆ど初春、問題の成否に関わらず初春の頭をいつも調子で撫で回すというものだ。

「ああ、言うまでもないですが飾利の席は教卓の真ん前です、特等席です♪ これで飾利がいじめられてるように見えるというから……おや? どうしました?」
「……神裂さん、絶対にそれが原因です。授業の指名を一人の生徒にほぼ集中させるって傍から見れば教師が生徒をいたぶるようにしか取りませんよ」
「そんな馬鹿なっ! 私は飾利との関係が学校でもそれなりにオープンさせて以来、ずーっとこんな感じですよ! それがまさかそのように取られていたとは……」

 真剣そのものの神裂の態度に当麻と土白は呆れながらも初春がらみだとここまでポンコツになれるものかと変に感心していた。
 落ち込んでる神裂を見かねた土御門がある提案を持ちかけるが、どう見ても面白半分にしか見えない感じである。

「よし、ここで俺から提案ぜよ。要はその春上って子の警戒心を解くことが先決。つまりだ、ねーちんが堕天使エロメイドで説得するって寸ぽゲフッ!」
「まったくこのバカったら! か、神裂さん、元春の言ったことなんか無視しても……神裂、さん?」
「……成程。アレなら警戒も何もありませんからね。ネックは恥ずかし過ぎる点ですが……飾利と同じ屋根の下での生活を得られるのならばやるしかありませんか」

 神裂に堕天使エロメイドを着せようとする不埒な土御門を殴った月夜が神裂を止めるが、初春のお姉ちゃんとしての愛が勝ってしまい、受け入れられることに。
 これで自分もお役御免と安心していた当麻だが、伊達に不幸なわけではない。

「では明日早速決行しましょう、ちょうど休日ですし。上条当麻、あなたも一緒に来て下さい。土御門、それに白雪も」
「な、何で俺が! 神裂一人でもそれなら大丈夫だろ!」
「万が一の為ですよ。もし私が失敗したらあなたの理屈も何もかも消し飛ばす説教、土御門の詐欺師顔負けのペテンで丸め込むんですから」

 月夜に殴られてまともに動けない土御門は思った、自分とカミやんを呼び寄せた理由が酷すぎると。
 そして話が終わったとばかりに神裂はテーブルに一万円札を置いて立ち上がった。

「では私は堕天使エロメイドの準備をしなくてはいけませんのでこれで。決行の時間と場所は追って伝えます。それと他の誰にも言ってはいけませんからね!」

 神裂が去った後、当麻は奢ってもらったことはラッキーだったが明日のことを考えるとやはり不幸と思わずにはいられなかった。

――――――――――

 時は少し遡り常盤台中学正門前、授業を終えた美琴が合流した黒子と帰ろうとした時、正門前に居る少女に気付いた。
 その少女は美琴と黒子に気付いて傍まで駆け寄ると、頭を下げて真剣にお願いしてきた。

「御坂さん、白井さん、お願いがあるの。初春さんを連れて行こうとする神裂先生を説得して欲しいの」
「え、え~っと春上さん。と、とりあえず場所、移しましょ。黒子、あんたの部屋に行くわよ」
「わ、分かりましたお姉さま……。仕方ありませんが○○様にはお断りの電話を…………っ!」

 少女こと春上衿衣の真剣な様子に美琴はもちろん、黒子も青ピとの買い物をキャンセルしようと電話をかけようとした。
 しかし目に飛び込んできた青ピの姿に黒子は柄にも無く携帯を取り落とすほどに動揺した、春上の危機という意味で。

復元してよろしいですか?

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