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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/1スレ目短編/112 - (2010/02/03 (水) 12:49:33) の編集履歴(バックアップ)




美琴「あんた…………わ、私のこと、なんだと思ってる?」
上条「へ?うーん…………腐れ縁?ライバル?いや、普通に友達か?」
美琴「えー。いや、良いけど。えー……うーん。そうかぁ。でも……」
上条「美琴さーん?おーい」
美琴「うーん、まぁそんなところかぁ。そうよねぇ……はぁぁぁ」
上条「なに頭抱えてぶつぶつ言ってるんだ?ていうか御坂的には俺は何なわけ?」
美琴「へっ!?えっと………こ、」
上条「こ?」
美琴「いや……か?」
上条「か??」
美琴「…………友達、かな」
上条「ですよねー。って何でそんなに落ち込んでるんだ?」
美琴「…なんでもない」
上条「もしかして御坂センセー的には友達というカテゴリに不満なのか?うーん………
    あ、じゃぁ思い切って恋人ー!」

 ボンッ!

上条「なーんちゃっ……た?いや、御坂さん、冗談デスヨ?何だその笑ってるような驚いてるような、
    怒ってるような泣きそうな顔。凄く面白ぞ。もしもーし」
美琴「…はっ…はっ…はっ……わらえる、じょうだんだにゃあ」
上条「……」
美琴「そう、なったら、ばくしょうもん、だにゃあ」
上条(……御坂が壊れた)
美琴「でも、それはさすがにありえ……」

 言いかけて口を紡ぐ。その先は死んでも言いたくない。

上条「た、確かに爆笑もんかもなー。御坂も嫌だろ?」
美琴「えっ…………」
上条「…………ん?」
美琴「…………………………」
上条「………………………………………………………………」
美琴「………………………………………………………………」
上条(あ、あれ?何ですかこの空気。何かがおかしいぞ。俺何か間違えましたか?お、落ち着け、そもそも御坂は
    俺のこと虫けら程度にしか……いや、色々あったし虫けらはさすがに無いんじゃないか。というか自分で自分
    を虫けらとか、考えてて哀しくなる……って違う!違うぞ上条当麻!だから、御坂は俺のことを好きじゃない。
    好きじゃない……よな?あれ?分からなくなってきたぞ。考え方を変えよう。俺は御坂のことは……好き、か?
    アレ?ドウダッケ?そもそも相手は中学生でガキだし、ビリビリだし、短パンだし、まあでもかわいいし、面倒見良いし、
    俺のこと気遣ってくれたし、エット……アレー???)

 両者仲良く、顔を真っ赤にして目をぐるぐる回す。

上条「があああああああっ!!!」
美琴(ビクッ!!)
上条「この流れ無し!無しだ!上条さんはリセットを要求します。オーケー?オーケーだな御坂黙って頷け頷いて下さいー!」
美琴「ふ、ふぁい」
上条「よし……じゃ、じゃぁ、俺はこっちの方向に用事がありますが、御坂さんはどっちですか?!」
美琴「わ、私もそっち」
上条「…………」
美琴「…………」
上条「い、一緒に行くか」
美琴「う、うん」




 上条が歩き出すと、美琴はその斜め後方2メートル前後の微妙な間隔を空けてついていく。

上条「…………………………」
美琴「…………………………」

 美琴は焦っていた。さっきの沈黙はどう考えてもマズイ。
 もし『嫌じゃない』と捉えられていたら、それは顔から火が出るほど恥ずかしいことだし、例えばあいつの方が
嫌だったなら、これまでのような捌けた会話が出来なくなるかもしれない。というか、そもそもそんなのは誤解に
違いない……かもしれない。
 逆に『嫌だけど言い出せない』と捉えられていたら、あいつに悪い印象を与えかねないし、嫌われる可能性だって有る。
大体にして、そんなのは私の本心じゃない。
 もはや何が何だか分からないが、とにかくあの沈黙は何でもないということを伝えなければならない。
 でも、言い出しづらいし…………
 などと、上条の横顔をチラチラ見ながら考える。

美琴「…………………………」
上条「…………………………」

 上条は悩んでいた。さっきの流れはどう考えてもマズイ。
 何がマズイかよく分らないが、ああ言う居たたまれない空気は苦手だ。
 とりあえずそれをリセットした。リセットできたと信じた。
 なので、何か別の話題を振らないと……と考えるが全く思いつかない。
 歩き出してからもう5分は経っただろうか。二人ともずっと無言でこれまた居たたまれない。
 しかし考えれば考えるほど『さっきのは何だったんだ?』がちらつく。
 あの沈黙が、もし『嫌じゃない』ということなら…………いや、まさか。とかぶりを振る。
 あれはきっと『正直嫌だけど、はっきり嫌なんて言ったら可哀想だ』と言う意味に違いない。まったく、何だかんだ言って
美琴さんってば根は優しいんだから。と勝手に納得してちょっと感動する。
 美琴の方を生暖かい眼差しで見ると、美琴はまだ悩んでいるようだった。
 きっとモテない俺の心を傷つけてしまっただろうかと案じているに違いない。と再び妄想して目頭が熱くなる。
 とか勝手にやってる内に不意に目があう。

美琴「な、なによ。その気色の悪い笑顔」
上条「いえいえ、何でもございませんですよ。良い天気だなーってね」
美琴「ああ……そうね」

 前日の土砂降りとは打って変わって、その日はよく晴れていた。
 その場所は丁度高台になっていて、上条と反対の方向を見ると若干夕日に染まり始めた学園都市を見下ろせる。
 なんともゆったりした温かい景色であるはずだが、それが一層美琴を焦らせる。
 
上条「で、どこまで行くんだ?」
美琴「へ?あ、セブンスミストまで」
上条「って、ほとんど同じ場所じゃねぇか」
美琴「あんたはどこ行くのよ」
上条「そのビルの地下。特売」
美琴「ふーん」



 生返事をしながら、美琴はどこで切り出すべきかを考える。
 行き先が同じなら、そろそろ人通りが多い場所に出るはずだ。正直あんな会話を人前でしたくはない。
となるとそろそろ話を振って、誤解を解かなければならない。
 人通りが少ない小さな広場のような場所に差し掛かった時、美琴は意を決した。

美琴「ね……ねぇ」
上条「ん?」
美琴「えっと………………良い天気ね」
上条「さっき俺が言った……つか、何か曇ってきたぞ。さすがは秋の空」
美琴「え、あれ?」

 空を見ると確かに薄い雲に覆われていた。
 上条はちょっと寒いなと独りごちたが、美琴はさっきから体が熱くてたまらない。

美琴「じゃなかった。さっきの話なんだけどさ」
上条「…………秋の空?」
美琴「違う」
上条「…………猫って可愛いよねって話?」
美琴「んな話してないわよっ!猫可愛いけど…………そうじゃなくて、あんたのこ、恋人なんて嫌だろーって話よ」
上条「…………はい」
美琴「いやね、私が黙ってたから、あんたが間抜けでどうしようもない誤解をしてないかなーって、美琴センセーは
    心配になった訳よ」

 強気に出てみたが、目は泳ぎ、決して上条の顔は見ない。

上条「誤解なんかしてねぇよ。上条さんはこの程度の状況、きちんと把握できる男ですよ」
美琴(……だからどっちによ)

 変な笑顔の上条から真意は読み取れない。

美琴「何か信用できないわねぇ。一応言葉にしとくけど、私は………………、あ」

 そこではたと気付く。

美琴(あれ?誤解を解くって……どっちにだっけ?)

 上条の恋人になるのが『嫌じゃない』か『嫌』か、どちらかを言えばいいのだが……

美琴(これって、実質告白状態じゃない!何でこんなことになっちゃってるんだっけ??)

 普段は冴え渡るはずのレベル5の脳が、今は全く働いてくれない。
 そんな美琴を、自称状況を把握してる男、上条が茶化す。

上条「ん?私は何だってー?お兄さんは心が広いから怒らないよ。言ってごらんなさい。『す・き』って。きゃっ☆」

 余裕綽々の上条に対して、美琴は更に焦る。

美琴「ち、ちがっ、違うわよ!私はあんたなんか何とも………何ともっ………これっぽっちもっ………1ミリもっ………」

 『好きじゃない!』と言いたいはずなのに、言えない。いや、本当は言いたくないのだ。
 言ったら何かが壊れそうな気がする。
 しかしここで言わないと肯定と取られるかもしれない。言わなければならない。
 頭ではそう思っていても、心はそれを拒絶する。
 動悸が速くなり、上手く嚥下ができない。ついには、うっすら涙が浮かんできたことに気付く。

美琴(もう何だってんのよ。全然意味分かんない)
上条「うわ、おい電撃出すな。俺が悪かったって。だから落ち着け!」



 美琴は素直にそれ従って、とりあえず一度大きく深呼吸をする。

美琴「い、今くしゃみが出そうだったわ」
上条(うそくせぇー。まだ電撃出てるし、全然落ち着いてないじゃねぇか……)
美琴「だからさ。あの沈黙は別にただあんたの言葉に驚いただけで」
上条「ああ、うん」
美琴「そういうわけだから、私が、あんたを、す……好きなわけ……………………ない」
上条「………はいはいそうですねー」
美琴「わけ、ない……」
上条「え?」
美琴「わけ、ないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけない
    わけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないわけないじゃないのよこのクソバカーーっ!!!」

 一息にまくし立てて、思いっきり息を吸う。

上条「へ?………………ええっと、わけないわけないわけない……」
美琴「わっ、わわ!何数えてんのよバカ。いちさんごーはちごーにーよんよんきゅういちにーにーごーはちさんよんじゅう!」
上条「だーっ!分からなくなったじゃねーか。何だそれ。純情な男の子の心を弄びやがって!鬼!悪魔!」
美琴「へへーん。いい気味だわ。せいぜい悩むことね。大体にして、何だって私がこんなこと言わなきゃならないのよ」
上条「……言い出したのってお前じゃなかったか?」
美琴「う、うるさい!」
上条「はぁ。不幸だ」
美琴「じゃぁあんたはどうなのよ」
上条「どうって、何が?」
美琴「この御坂美琴の恋人が『嫌』か『嫌じゃない』か……」

 言ってから後悔する。もし嫌なんて言われたら自分はどうなってしまうのだろうか。

上条「はぁ?」

 思わず目をつぶる美琴。

上条「何言ってんだ?嫌なわけないだろ」
美琴「………………………………」

 バチバチ

上条「ちょっと待てー!何でそうなるっ」

 怒ったのか漏電なのか分からなかったが、上条は叫びながら美琴の肩に右手を置いた。
 と同時に美琴の体がゆっくりと前に倒れる。

上条「あれ?おい、御坂?おーい……ってうおっ」

 とりあえず支えようとした途端に、美琴の体が弛緩して倒れる。
 どうにか頭は守ったが、美琴は引きつった笑みを浮かべて気を失っているようだった。

上条(気を失うほど嬉しかったのか、気を失うほど嫌だったのか……いやびっくりしただけか?分からん。上条さんには
    もう何も分からんっ!)
上条「て言うか、どうすりゃいいんだこれ…………」

 新たな疑問に悩むのは後回しになりそうだった。


◆         ◇         ◆         ◇         ◆


 美琴は夢を見ていた。
 恐ろしく強い敵と戦っている。
 そして、もう駄目かというところで、"あいつ"が少年漫画のヒーローのように都合良く現れ、あっけなく
敵を討ち滅ぼす。なんていう、ベタベタで面白みもない夢。
 それでも美琴の心は幸福感に満たされる。
 しかしその意に反した事を美琴の口は発する。
「もっと私の力を信用しなさいよ。あんたは頑張りすぎなのよ。もしあんたに何かあったらどうするのよ」
 しかし"あいつ"は頭を掻きながらそっぽを向いてしまう。
「あーはいはい。しかたねぇだろ?俺はお前が好きなんだから。ちょっとはかっこつけさせろよな」
「えっ!?」
「ん?何今更驚いた顔してるんだよ」
 あいつはそう言って近づくと、美琴を優しく抱きしめる。
「好きだぞ御坂……御坂?」
「わ、わたわたわた、私……………も、好き」
 お互い見つめ合い、徐々に顔が近づく。
 20cm……15cm……
上条「御坂?御坂?」
美琴「ん?」
 10cm……5cm……
上条「お、おはよう」
美琴「おはよう?」
上条「ふ…」
美琴「?」
上条「ふぇっくしゅ!!」
美琴「…………………」
上条「わ、悪い」

 ぼーっと、顔に掛かった何かを舌でぺろっと舐めたところで、美琴は我に返る。

美琴「ッッッ!!!??」

 美琴は、何故か自分の腕を上条の首に回し、自分の顔を上条の顔に近づけていた。距離は互いの息が掛かるくらい。
 それをどうにかこうにかそれを離すと、どうやら仰向けになっているらしく、頭が温かく弾力のある何かに落ちた。
状況から察するに、それは上条の太ももであり……

美琴(膝枕されて……た?)

 極めつけは顔に掛かった大量の唾…………

美琴(私、今、舐め……舐め……)
上条「はいはい。ビリビリ出さない。とりあえず落ち着こうなー」

 そう言うと、上条は固まって中空にあった美琴の手を右手で握り、左手で出したハンカチを使い美琴の顔を適当に拭ってやる。

美琴「ちょっ、むぐぐ…」
上条「あーそれとなぁ。さっきのは告白とかそういうんじゃないからな。嫌ではないけど勘違いすんなよ」

 早口でそう言い終わると、ようやく顔を拭うのをやめた。
 美琴は上条の顔を見上げたが、上条は顔を斜め上の方に向けていてよく表情が見えない。

上条「……分かったら学ラン返せ。寒いじゃねーか」
美琴「え?…あ」



 美琴は今更ながら体に上条の制服が掛けられている事に気付いた。
 素直にそれを返すと、起き上がるために上条の右手を離そうとする……が、上条は離さない。

上条「……落ち着いたか?」
美琴「だ、大丈夫よ」

 むしろこのままの方が落ち着かない。とは言わない。
 手を離し起き上がる。上条が制服を着終えるのを待って、ベンチの上で横向きに体育座りをし、そのまま勢いよく上条に
もたれ掛かりつつ、頭突きを決める。

上条「痛っつ!」
美琴「寒いんでしょ」
上条「お、お前なぁ……」
美琴「ごめん」
上条「…………」
美琴「色々」
上条「ま、別に良いけどな」
美琴「私、どのくらい寝てた?」
上条「んー、20分くらいかな」

 空は既に赤く染まりきっていた。あとは暗くなる一方だろう。
 冷たい風が服の隙間から入ってきて、二人仲良く身を縮める。
 しかし、互いに触れている部分だけはやけに熱く感じるのは何故だろうか。

美琴「ゎ……わ、私も………」
上条「……………」
美琴「……………何でもない」
上条「いいよ。無理すんな」

 どう無理しているのか分からないが適当に言う。

美琴「む、無理なんかしてないわよ」
上条「してるだろ」
美琴「してない」
上条「してる」

 美琴はもう一回頭突きするべく、体を前に倒して振りかぶった。

美琴「ってうわっ!」

 が、バレバレだった為か、それは上条に避けられ、体勢を崩し再び上条の太ももの上に倒れる。
 思わず目が合い、互いの顔が赤いことに気付く。

上条「ぷっ。何間抜けなことやってんだお前。しかも顔真っ赤だぞ」
美琴「う、うっさいわね。あんただって赤いわよ」
上条「違いますー。俺は夕日のせいですー。ってだからこの近距離でビリビリすんなっ!」

 再び手を握られる。

美琴「……………」
上条「……………」
美琴「はぁ。私たち何やってんのかしら」
上条「同感だな。そろそろ特売が始まっちまう。とりあえず行くか」
美琴「そうね」



 二人は溜息混じりに立ち上がると、目的地を目指して再び歩き出した。
 先ほど握られていた左手が突然外気にさらされたためか、妙に冷えるのを美琴は感じて、少し前
を歩く上条を見つつニギニギする。

美琴「ねぇ」
上条「あん?」
美琴「なーんか、さっきから能力の制御が効かないのよねー」
上条「…………で?」
美琴「またビリビリ漏れちゃうかもなー」

 とか言って少し電撃を出してみる。

上条「……………………」
美琴(何よそのあからさまに嫌そうな顔は!)

 胸中でそう呟きながらも、顔は平静を装う。

上条「御坂、知ってるか?この通りを少し行くと、人通りの多い道路に出るんだぜ」
美琴「そうね。知ってるわ」
上条「…………セブンスミストはその先だぞ」
美琴「そうね。知ってるわ」
上条「………………………」
美琴「人通りの多い場所で漏電したら大変なことになるかもねー」
上条「…………じゃぁ仕方ないから、俺はおまえから離れ……って!?う、うそうそ冗談」

 一瞬、美琴の酷く切なそうな表情を見て、上条は異常に慌てた。

上条「分かったって。こ、これで良いんだろこれで」

 照れ隠しにわざと乱暴に美琴の左手を右手で掴んでやる。

美琴「う、うん。仕方ないわよね。我慢我慢」
上条(とか言う割に嬉しそうだし。全く、さっきの顔は何だったんだ)

 未だに心臓のドキドキが止まらないことを気取られないようにしないと、と上条は思う。

上条(あれ、御坂は他人の生体電気の流れを読めるんだっけ?いや、それは手を繋いでる内はできないか。
    つうかこいつは何を考えてるんだ。もう分からん。も、もしかして俺って………鈍感!?)

上条「ふ、不幸だ」
美琴「ちょっ!この状況の何が不幸だってのよ!」
上条「い、いや、誤解だ誤解。それじゃない」
美琴「どうだか。あー、何だかあんたが酷い事言ったせいで、この手を離した瞬間に周りが大変なこと
    になる気がするわー」

 冗談めかして言っているが、実は本当にそんな気がしていた。

上条「……………」
美琴「大丈夫大丈夫。特売が先で良いわよ」
上条「……不幸だ」



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