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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/6スレ目ログ/6-196 - (2010/03/21 (日) 13:59:44) のソース

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発端は夜の繁華街。
普段は連日の鬼ごっこ。
転機は夜の開放劇。
発覚は昼の一騒動。
焦燥は午後の地下街。

そして……始まりは夕方の自販機前。

最近御坂の様子が変だ、とは上条の弁。
まずビリビリが減った。これは大変に喜ばしい。
願わくばこのままでいて欲しいと思いたいところだが、きっと無理なので割愛。
つぎに買い物を手伝ってくれるようになった。これもある意味嬉しい。
特にお一人様一点限りの特売品の際にはもう涙が出そう。
でもどうして急に手伝ってくれるようになったのか。これも不明なので割愛。
ここまでが良い事。
その代わり漏電が増えた。これは非常に困る。
突然所かまわず電気を飛ばしまくるので、右手が間に合わないと周りに被害が出る。原因不明。
そして気を失う事が頻発する。最も困る。
体調が良くないなら寮で寝てればいいのに、とも思う。こっちは心配で仕方がない。

上条当麻にとって、御坂美琴は守るべき存在だ。
約束したからと言うのもあったが、それ以上に彼女と言う存在は外見とは裏腹に脆く儚い。
普段の傍若無人っぷりの裏側を知ってしまったと言うのもある。
他にももう一つ要因があって、これがまた結構大部分を占めているのだが、どうしようもない事情により封印中。
気にするなと言われたらそこまでだが、自分にとってはとても重要な事。
でも最近ふと思う。陥落も時間の問題かもしれないと。

とにかく、ケンカ売ってくるのが当たり前だった関係が変わりつつあるのだ。

「(まあ、上条さんとしては平和なのは大変良い事なんですがね)」

それも大事だけど、これも大事……と、上条は手に持った一枚の紙を凝視する。
本日の戦場への案内。食うか食われるかの激戦地への招待状。
自宅で保護している暴食シスターのために今日も征く。
全ては家計のため、そして自分のため。


御坂美琴はそわそわしていた。
ちょっと前に通りかかったスーパーに掲げられていた幕を見る限り、アイツはきっとここを通るだろう。
最近何度となく一緒に行ってるから聞かなくても分かる。
だから自分は待っているのだ。
どうして? そんな事を聞くまでもない。
上条を“恋愛の対象”と意識しだしてからは日増しに想いは募るばかり。
けれど生来の素直になれない性格が災いして未だ一歩は踏み出せず。
買い物に付き合うようになっただけでも大した進歩だ。
でも、このままで良いとは思えない。
すでにこの関係にも満足できない。
もっと上条と一緒にいたい。もっと上条と話をしたい。そしてもっと、上条に自分の事を見てほしい。自分の想いに早く気がついてほしい。
あまりにたくさん存在する恋敵たちを押しのけて、自分が頂点に立つために。
機会を伺うだけで何もできない。そんなイライラしたり涙したりする日々からおさらばするために。
だから今日は、今日こそは……。
そんな事を考えていると、前方からツンツン頭の少年が歩いてくる。
待ってたと悟られたくないから、さりげなく移動して偶然を装う。
ここまでなら大丈夫。もう何度も使った手だから。
トクン、トクンと鼓動を奏でる胸に手を置いて、一呼吸。
スッと前を見据えて、いざツンツン頭の隣へ。
そして自分はいつもの様にこう言うだろう。

『アンタ、今日も幸薄そうな顔してるわねー』

「んで、アンタ今日は何買うの?」
「本日の目玉商品一点張り。あとは安いものを手当たり次第」
「ふーん、卵がお一人様一パック限りで50円か。確かに目玉ね」
「だろ? ビンボー学生にとって卵は貴重なタンパク源。上条さんの明るい明日のためにも逃すわけにはいかんのです」
「でも、よくよく考えてみるとアンタって結構大食らいなのねー。一昨日だってあんなに買い込んだのに……。そんな買ってばっかいるからお金ないんじゃないの?」
「マ、マアソウカモシレマセンネ。カミジョーサンオトコノコデスカラ。 ハハハ……」
「ちゃんと栄養とか考えてるのか心配だわ。なんなら私が作りに行ったげようか?」
「いえ!? そんな、御坂センセーともあろうお方にご足労願うなんて、滅相もありませんの事よ?」
「そんな気にしなくてもいいのに。……それとも、来て欲しくない理由があるとかじゃあ?」
「(ギクゥッ?!)」
「……あやしい」
「み、御坂さん? 上条さんやましい事なーんにもアリマセンヨ? 紳士の中の紳士であるこの男上条が嘘を付くわけないじゃないですかー」
「………………」

ジーっと見られる。内心上条は冷や汗だらだら。
でもタイミングよく戦場へ到着したので一先ず安心。
既に激戦が広げられている中へ突撃するんだから、お喋りなんて言う余計な事をしている暇はない。
共同戦線を張った二人の攻撃が、今始まろうとしている。
それぞれ片手に買い物カゴを装備して、いざ、戦闘開始――――

「――――いやあ、今日もホクホク大戦果ですよ。これも御坂のお陰だな」
「当然よ。誰が手伝ってあげたと思ってんの」

しばらくしてスーパーのドアから現れた二人は、両手いっぱいに膨れた袋を持っていた。
言葉通り、戦果は上々。これで週末を乗り切る事ができるだろう。
……もっとも、一般の人から見れば一週間分の量なんだろうけれども。
人間ブラックホールに寄生されている上条家には三日持つかすらも怪しい。
でも、そんな事を知らない美琴からすれば『前回もこのくらい買ったのに……ホント、よく食べるわねー』なのである。

「ホント感謝しております。美琴センセー!」
「! そ、そそそうよ。アンタは私に感謝しなさい!」

上条の事をよく食べるわねとか、そんな事を考えている所じゃない。
不意打ちで名前を呼ばれたもんだから心臓が暴れまくってる。
“美琴”と言う言葉がぐるぐる頭の中で反芻した。

『うわ、どうしよう……名前、名前で呼ばれちゃった!』

制御ができなくなってきたのか、美琴の周りにパチパチと電気が飛び交い始めた。

「お、おい御坂! 電気漏れてるぞ」
「ふぇっ? あ、とっ止められな……」
「しょうがねえなあ」

ポフッ

「ふぁっ! あ……」

上条が右手で頭を押さえた途端に、嘘のように電気が消える。
その下では、やはり顔を赤くしたままの美琴が俯いて小さくなっていた。

「お前、最近本当に漏電増えたよな。危なっかしくてしょうがないぞ」
「……ふにゃー」
「あっこらまた……ったくよぉ。さっきまで元気いっぱいだったじゃねえかよ!」

目を回して気絶してしまった美琴を抱きかかえると、とりあえず近くのベンチへ腰掛ける。
硬いベンチに寝かせるのもアレなので、一緒に座って肩に寄りかからせた。
上条の左肩から腕先にかけて、美琴のぬくもりが伝わってきた。
しばらく美琴を見つめてから、そっと呟く。

「静かにしてれば、お前も可愛い女の子なんだけどな」
「………………」
「そんな野郎の前で頻繁に気を失ってばかりじゃ、いつか襲われてしまいますよー」
「………………」
「……例えば俺とか、なんて。俺は何を言ってるんだかな。馬鹿馬鹿しい、中学生相手にそんな気起こすなんて青ピじゃあるまいし」
「……ねえ、アンタは私のこと襲っちゃいたいの?」
「何言ってんだよ。だから俺は中学生相手……に……?」
「…………に?」

ギギギギ……と首を左へひねる。
そこには、こちらに体重を預けたまま見つめる美琴の姿があった。
まさか、聞かれてた?!

「み、ミサカサンいつの間に?! ええと、これには山よりも低く海よりも浅いワケがありましてですね。その、つまり……」
「……つまり、大した事ないってワケよね。それで、続きは?」
「へっ? いや、だから」
「それとも、私ってそんなに魅力ないのかな」

急に目を逸らすと、寂しそうな声で呟く美琴。
一体どういうつもりで発言したのか上条にはさっぱり分からない。
もちろん、裏で美琴が何を考えているかなんてのも。

「確かに、私はアンタに対して電撃かましたり超電磁砲撃ったり夜通し追い掛け回したりしてるけどさ……」
「(普通そんな事されたら死んでしまいますけどね?!)」
「それって、結局アンタだからやる事であって、他の人だったら絶対にやらないんだからね」
「と、言う事は、つまり……御坂は俺の事……」

かあっと頬が熱くなる。
上条のことを直視できないから思わず下を向いてしまった。
さすがにここまで言ったから上条も気がついただろう。
だからこそ、次に来る言葉が物凄く楽しみで、物凄く怖い。

「……そんなに嫌いだったのか」
「ンなこと一言も言ってねえだろうがこのド馬鹿! 一体どういう解釈したらそうなるってのよ!」
「い、いや、だって。御坂お前、俺にだけビリビリして追いかけるって、どんだけ嫌いなんだよ」
「だあぁぁぁもう! その話し終わり、消し去りなさい! だから、つまりはアンタの事が好きだからよ!!」
「……え?」

勢いあまるとは、まさにこの事を言うのかもしれない。
逆に勢いがあったからこそ、普段言えないような事もスラスラと口に出せた。
人、それを告白と言うのではなく暴露と言う。またはぶっちゃけとも。

「えぇそうよ! 私はアンタの事が好き。寝ても覚めてもアンタの事が頭の中から離れないくらいにアンタが好き! 追い掛け回したのも買い物付き合ったのもアンタと一緒にいたかったから! 私は、アンタともっと一緒にいたいの。もっと話がしたいの。全てのものを捨てても、アンタの傍にいたいのよ! いい加減、気づきなさいよ。このバカ、鈍感……」
「………………」

ついさっきまで気を失っていたはずなのに、今では怒涛の如く言葉を吐き出す美琴を前に完全に翻弄されている上条。
ハッキリ言えば美琴の言ってる事は無茶苦茶だ。
致死レベルをはるかに超えた電撃や、街一つ吹き飛ばすような超電磁砲を生身の人間相手に放っておいて、それで好きと気づけと言われても、かなり無理な話だ。
まず恐怖に慄き、消し去りたいくらいに自分の事が嫌いだろうと考えられる。
追い掛け回す、と言うのをギリギリ許容範囲に収めたとしても、まず最低限買い物に付き合う位からがようやく好意への第一歩といったところか。

しかし……しかしである。裏を返せば、それだけ上条のことを信頼していたからこそ。
致死レベルを超えた電撃も、本気撃ちの超電磁砲も、日頃から得た感覚で『コイツならきっと打ち消してくれる』と信じていたから打てたのだ。
いつどんな時でも、常盤台の超電磁砲・学園都市の第三位としてではなく、御坂美琴と言う一人の女の子として接してくれる上条への本気の信頼の証。
普通の知り合いや友達ならいざ知らず、あの白井黒子にすらこんな事はしない。
夏に知り合った初春飾利や佐天涙子に至っては言わずもがな、だ。

まとめ。その位に上条当麻の事が好き。そういう事だ。

「……うぅっ……ひぐっ……ぐすん」
「あー、その。そうか。俺の事、そう言う風に思ってくれてたんだ。……悪かったな。御坂」
「ぐすっ……(コクン)……」
「えぇと、その、なんと言うか。ハッキリ言うとな。俺もお前の事、好き、なんだと思う。いや、好きだよ?」
「ッ!?」
「最初はさ、海原と交わした約束ってのもあったんだけど、あれからいろいろやってる内に、約束とは関係なく本当にお前の事を守りたいって思った。一人の女の子として」
「………………」
「……でも、な」
「……え?」
「こんな事ここで言うとまた怒られそうな気もするけれど、高校まで待ってもらえねえか?」
「どういう、こと?」
「俺の中で、中学生って言う部分に酷くためらいを感じるんだ。中学ってまだ義務教育だろ? だから何かあったとき責任が持てねえんだよ。御坂にも、親御さんにも。安易に俺がOKだして付き合って何かありましたでは、俺はともかくとして御坂の将来が傷ついちまう」
「………………」
「だからお前が高校に上がる2年後なら、高校生になったのなら胸を張って付き合うことができると思う。だから……」
「付き合うの? 付き合わないの? 好きなの? 好きじゃないの?」
「いやだから、それは……」
「いいから! 中学とか高校とか責任とか、そんな事は関係ナシに、アンタはどうなの?」
「……好きなんだから、付き合いたいに決まってんだろ」
「じゃあ、それでいいじゃない」
「はあ? 御坂、お前人の話し聞いてたか? 俺は」
「お互いに好きだから付き合う。普通の中学生だってやってる事だから何の問題もないでしょう。それに、アンタがそこまで考えてくれてるんなら、間違いなんて起きないんじゃない? 私からって言うのはあるかもしれないけど。それに……」
「………………」
「中学生と付き合ったからって理由だけで何か言ってくるような奴がいたら、ソイツのふざけた幻想ごとぶっ飛ばしてやればいい。アンタがいつもやってる事でしょ?」
「!!」
「確かに、アンタの言うとおり中学生はまだ子供かもしれない。だけど、だからって付き合うのすらいけないなんて理由はない。好きとか恋愛に年齢なんてカンケーないのよ」
「御坂……」

まだ目元に涙を浮かべている美琴。
でもしっかりと上条を見据えて、ハッキリとした言葉で伝えている。
そこには“中学生の御坂美琴なんていう幻想”はどこにもない。
”御坂美琴と言う一人の女の子の現実”が、確かにあった。

「それで、もう一度だけ聞くわ。……私は、上条当麻の事が好き。だから、私と付き合ってください」
「……俺は、御坂の事が好きだ。だから、こちらこそ俺と付き合ってくれないか」
「……やっと言ってくれたわね。ホント、バカなんだから」

ポフっと上条の胸元へ倒れ掛かる美琴。
その上から、おずおずと言った感じに上条が抱き締めてきた。
また涙が溢れてくる。でも今度のは悲し涙じゃない。嬉し涙だ。
ようやく捕まえた。想いが叶ったという実感が、胸いっぱいに広がってきた。

「こりゃあ、不幸だなんて言ってらんねえな」
「当たり前よ。この私を彼女にしておいて、不幸だなんて言わせてたまるもんですか」
「真面目な話、不幸な出来事に巻き込んしまうかもしんない。世界を飛び回ってしばらく帰ってこれないかもしんないし、また入院して心配かけるかもしれんが……本当にそれでも、いいのか?」
「当然。むしろ、望むところよ。アンタの帰るべき場所は、私が絶対に守って見せるから、だからアンタは思う存分暴れてきなさい。そして、ちゃんと私のところへ戻ってくること!」
「……サンキュな。御坂」
「“美琴”」
「え?」
「“美琴”よ。付き合い始めたんだから、ちゃんと私のことは名前で呼んで。でないと返事しない。私も、アンタのこと当麻って呼ぶから」
「お、おぃ御坂。そんな急に……」
「……(プイッ)……」
「……分かったよ。美琴」
「ん、よろしい。当麻」

しばらくお互いの鼓動を感じたところで、美琴の方からするりと離れた。
傍に置いてあった買い物袋を、よいしょと持ち上げる。

「それじゃ、帰りましょうか。荷物もあることだし」
「……そうだな」
「あ、ついでだから私がお夕飯作ってあげる。なんてったって彼女ですから」
「ああ、悪いが宜し」

宜しく頼む、と言いたかった。本当に。すっごく本当に。
だけど最後まで言葉は発せられなかった。
今と言う空間は非常に居心地の良いものであり、美琴の柔らかさを堪能してしまった上条としてはこの後の家訪問・料理と言うのも大変ありがたいものであった。

でも、何か忘れてはいないか?

上条は本来は一人暮らしだ。
しかし現在はワケあってもう一人(+一匹)を家に置いている。
そしてその事を美琴は知らない。
付き合う前ならいざ知らず、彼女と言う存在になってしまった美琴がこの事を知ったら、一体どうなるのか?
答えは、最早言うまでもないだろう。

「(や、ヤバイですよヤバイでしょうヤバイですとも?! 今家に御坂を入れるわけにはいかない!)」
「うん? どしたの急に黙り込んじゃって。早く行きましょ」
「い、いやいやいや! ミサカサン! 大変申し訳ないのでございますが、実はカミジョーさんこの後ヒッジョーに大切な用事を思い出してしまいましてでございましてね?! できればまた今度にして欲しいな。なんて……」
「御坂じゃなくて、美琴。今言ったばかりでしょうが。 あと、何かアヤシイからやっぱアンタん家行くわ。案内しなさい」
「み、みさ……美琴」
「は・や・く」
「……ハイ」

彼女と言う存在ができて、あれ、ひょっとして俺ってば今幸せ? なんて思ってたのもつかの間。
いつもの不幸よりもさらに上の『恐怖』がおいでおいでしている。
選択権もなければ拒否権もない。
正に上条当麻、風前の灯。

「(や、やっぱり言ってしまうんですね。 せーの、不幸だあぁぁぁぁぁ!!)」

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