とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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タイトルがないんだよ



上条当麻は考えていた。
一人、考えていた。
それはとある、一人の少女のことだ。
その少女は、つい最近まで一緒に同居して、苦楽を共にしていた少女ではない。
インデックスという名の少女は、ほんの少し前イギリスに帰ってしまった。
「あなたが好き」という言葉を残して。
そして、その少女に宿題を与えられてしまった。
今まで、解こうとしなかった。考えもしなかった。思いつきもしなかったとても困難な宿題を。

別れの際、上条が告げられた想いは彼にとってあまりに重く、大きく、そして意外なものだった。
自分が誰かから好かれるはずがない、誰かから告白されるわけがない。
だから…自分も誰かを好きになるはずがない。
そう思っていた。
そう思っていたのだ。
だが蓋を開けてみればどうだ。
自分は確かに誰かから告白され…そして碌な返事も気のきいた答えも返せないでいる。
なんたることか。
なんたることか!
なんて不甲斐なく情けないことなのか!
愕然として、自噴する上条当麻に、インデックスはひとつだけ聞いた。
「とーまは。私のこと。どう思ってるのかな?」
上条当麻は、答えることができずただただうつむくのみだった。
そして宿題を出され…今に至る。

そして話は冒頭に戻る。
宿題の内容をシンプルに表そう。
上条当麻は、一体、誰が好きなのか?
これだけ。ただこれだけである。
普通に考えれば簡単な話である。
しかし、当麻にとっては事情が違った。
普通に考えれば誰もが一度はあるであろう恋の記憶。
その記憶がすっぽりないからである。
あの夏の日、あの少女を助けてから…
だが今そんな話はどうでもいい。
今問題なのは記憶がないから自分の中の心の答えあわせができない、ということである。
また、新しく人を好きになっていかなければならない。
恋とは、人を好きになるというのは、一体どういうことなのだろうか?
土御門や青髪ピアスを好きというのと、異性を好きというのはまるで違うことなのだろう。
だが、それはどこがどう違うのだろうか?何がどう違うのだろうか?
上条当麻は、さらに己の思考の渦の中に巻き込まれていくことになる。

しかし、と当麻は考える。インデックスからこの宿題を出されてから、頭から離れない少女の顔がある。
…御坂美琴。である。
なぜこの少女のことばかりが頭から浮かんでは消え、消えては浮かんで離れてくれないのだろうか?
宿題を出したのはインデックスなのに考えるのは御坂美琴のことばかり。
理解できない。自分の思考に納得できない。何故、何故、何故…
 
現在、上条当麻の思考のほぼ全てを埋め尽くしている少女はどちらかというと、
今まで追いかけ回されて理不尽に責められて苦労をかけられていたほうだ。
だけど楽しかった。嬉しかった。心の底から自然体でいられたと思う。決してMというわけではない。
ただ、純粋にそう思う。ただし、純粋にそうとしか思っていなかった。
何故今までそうとしか考えなかったのだろうと不思議に思うくらいだ。
とりあえずいっそのこと、「お前の事が頭から離れないんだ。」と本人に相談でもしてみるか?
とも考えたが確実に電撃の矢が飛んできて変態と思われるので却下した。
それに、宿題を出されたのは自分だ。ならばなおさら他人に聞くわけにもいくまい。
…ちょっと、顔が熱くなってきたな、と当麻は思った。
いや、顔だけではない。体が、頭が、心が熱くなってきていた。
それは、苦しい熱さではなくて、なんとなく気持ちよくて、ずっと味わっていたい熱さだった。
しかし同時に、どこかすっきりしない熱さでもあった。
このなんとももどかしい熱さ、これが異性を特別に好きになること…恋なのだろうか?
わからない…わからないが、これが恋なのだとするとなぜか納得できた。
そして同時に嬉しくもなってきた。
自分は、御坂美琴が好きなのだ…!
上条当麻、初めての感情である。
自覚すると思考は更に止まらなくなってきた。
どうしようもなく、この気持ちを伝えたい。
だが今は夜だ。日付も変わろうかという時間帯。
流石にこんな時間には呼び出せないし、色々と迷惑だろう。
もしこの気持ちを伝えるとするならば、明日だ…
とりあえずメールで明日の放課後いつもの公園で会いたい旨を送信する。
おそらく寝ているであろうが明日の朝には気がつくであろう。
だから、落ち着け、と自分に言い聞かす。
先ほどから異常に心臓が高鳴る。まるで自分の心臓ではないかのようだ。
脈々と全身に血を送るのはいいことだが、ちょっとがんばりすぎだろうと。
今日はなかなか眠れないかな…と興奮しながら床につき明日のことを考える上条当麻であった。

そして、朝がきた。
幸いにして、少しは眠れた。目に変なクマはできていない。
この時間に行動しだせば学校にも遅刻しないだろう。
ふと、携帯電話を見る。
メールの着信有。御坂美琴からだ。
どうやら、放課後は会えるとの事。時間も明記されてある。
よかった…と上条当麻は思った。一刻も早くこの気持ちを伝えたい、伝えたくて仕方がないのである。
もちろん、メールや電話で伝えるなんて無粋な真似はしない。
会いたいのだ。
会って、直接言いたいのだ。
言葉を尽くして自分の気持ちを余すことなく相手に伝えたいのだ。
今の今まで自分の気持ちに気がつかなかった、
相手の気持ちも考えなかった盆暗は、
異常なまでに燃え上がっていた。

今の時刻は放課後。そして、御坂美琴との待ち合わせの時間まではまだかなりの余裕がある。
上条当麻は学校で一日中うわの空であった。
それもそのはず、どうやって告白しようか?ということで頭が一杯だったのである。
しかし、行動は不審人物そのものであった。
ぼーっと窓の外を見ていたと思ったら、おもむろに頭を抱えて机に突っ伏し、そして正面を虚ろな瞳で見つめ続ける…
を延々と繰り返すのである。授業中休憩中問わず。
傍から見ていると、ちょっと関わりたくない人物である。
土御門やあの青髪ピアスですら、「あ、今日はちょっとヤバイネー」と思い接触を避けていたほどだ。
知らず知らずの内にそんな致命的な醜態を晒し続けていたにも関わらず、いいアイデアは一向に浮かんでこない。
正直、言葉が足りないのだ。相手に伝えたい言葉が。
好きだ、大好きなんだ。というのは今の上条当麻からすれば簡単だろう。
だが、違うのだ。それだけではない。
もうとにかくすごいのだ。気持ちがあふれかえってしまいそうなのだ。
しかし、それを表現するだけの言葉が見つからない。
相手がエスパーであるならばそんな苦労はしないだろうが…残念なことに御坂美琴はビリビリ系だ。
言葉にしなくても思いは伝わる、なんて都合のいいことは起こりはしないだろう。
ならば、やはり口から、言葉にして、気持ちを相手に伝えなくては…
そこまで考えて、上条当麻は考えるのを止めた。
どうせもう呼び出してしまっているのだ。
やっぱ今日は無理ーとか言うと今後が怖い。
何を口走ってしまうかわからないが後は会って、なるようになるしかない。
振られてしまう、ということも考えていなかったわけではないが、それはそれ、これはこれである。
いつも不幸に見舞われている少年は、いい意味で諦めがよかった。
そろそろ時間も待ち合わせ時刻に近づいている。今からいけば十分に間に合うであろう。
薄い学生かばんをよっ、肩に担ぎ、上条当麻は教室を後にした。
そういえば今日は誰とも話してないなー、などと今更な事を考えながら。

上条当麻は、のんびりと待ち合わせ場所である公園に向かっていた。
それはもうのんびりと。
考えることを止めてから、本当に何も考えなくなってしまったのである。
今心にあるのは、御坂美琴と会って自分の言いたいことを正直に言うこと。
これだけである。
あれだけ散々悩んでのた打ち回っていたのがあほらしく思えるほどの開き直りっぷりである。
こんな性格だからアホだのバカだの言われるのだが…当人は全く知らないし気にもしていない。
とにかく、上条当麻は今とても自然体である。

そして待ち合わせ場所が見えてきた…と思ったら、すぐに本日の目的とも言える人物が見えた。
おやま、遅刻か?と思い携帯電話を見る。
待ち合わせ時刻からまだ10分ほど余裕がある…
なんだ、早く来てくれたのか、と思うととても嬉しくなる。
そういえば、この少女が遅刻したことは一度もないな、と考えると途端に胸が熱くなる。
しかし、少女の様子が少しおかしい。
なにやら落ち着かない感じでうろうろして、携帯をちらちらと見ている。
あー、暇なんかな?と上条当麻は見当違いな憶測を立てる。
実はこの御坂美琴という少女、上条当麻のことが大好きなのである。
もうめちゃくちゃ好きなのである。
どれくらい好きかというと、ゲコ太よりも好きなのである。…ちょっと悩むが。
とりあえず、彼女の心の中の一番であり、
これからも一番であり続けるんだろうなぁと漠然と思ってしまうくらい好きなのである。
そんな人からメールでいきなり「会いたい」といわれればそれはもう舞い上がってしまうのも無理はない。
しかも、その人からの初めての「お誘い」である。
落ち着くなというのが土台無理なのである。
実はもう30分も前からここにいて、不安と期待のごちゃ混ぜで堪らなくなっているのだが、
しかし、そんなことは露とも知らない上条当麻。
至って普通に、いつも通りに話しかける。

上条当麻はとりあえず、いきなりメールをしたこと。少し待たせたことを詫び
いつものベンチに座らないか?と持ちかけた。
対する御坂尊は、特に気にしていないこと。アンタが遅刻しなかっただけマシ。等々いつもの憎まれ口を叩きながら
ベンチに座ることを了承した。
そこから…会話が続かない。繋がらない。発展しない。
上条当麻は上条当麻で、「どうやって話を切り出せばいいのやら…」と思案いているし、
御坂美琴は御坂美琴で、「なんで難しい顔して黙っているのかしら…」と上条当麻を観察、もとい見惚れているしで
両者とも違うことに気が行っているわけだから話が生まれるわけがないのである。
沈黙、沈黙、沈黙…
だが、決して居心地が悪いわけではない。
むしろ、普段よりゆったりと時が流れている気がするなぁ、と上条当麻は思った。

嗚呼…そうか。と上条当麻は唐突に閃いた。
別に無理する必要なんかないんじゃないかと。
素直にいつも通り話の話をする感じで言ってしまえば万事解決じゃあないかと。
うんうん、と一人頷く上条当麻。
いきなり頷きだして、ちょっとびっくりする御坂美琴。
どうしたの…?と聞く前に、向こうからいきなり言葉が飛んできた。
御坂、好きだ。と。






すこし思考が止まる。
今、なんと言った?
あー、聞き間違いか何かの冗談か。
なんとなく今 好き といわれた気がする。
まるで普段からそう言い慣れてるような、いつもの会話のような感じで。
あー、これは確認せねばなるまい。一体どういうことなのかと。
自分の勘違いだった場合は少し、いやとても恥ずかしい。恥ずかしい、が。確認しないといけない。
主に自分自身の精神の安定のために。
実際、この御坂美琴という少女、ここ最近精神的に荒れていた。俗に言う恋の病というやつである。
自分が好きな相手は何をしても暖簾に腕押し柳に風米糠に釘…ふざけるなと。
しかも肝心の相手はいつもいろんな女の子と楽しそうに町をデート…なめんなと。
そういった理由から、数週間ほど前から症状が悪化していた。
もう感情の制御が出来るかできないかくらいまで。
そこにこの告白?である。
あぁ、その勝負。受けてたってやるわ。
何が勝負かわからない。もうやけくそであった。
そして聞き返す。今、なんて言ったの?よく聞こえなかったわもう一度大きな声ではっきり言いなさい!と。

今、なんて言ったの?よく聞こえなかったわもう一度大きな声ではっきり言いなさい!

と聞いて、上条当麻は少ししまった、と思った。
やはり普通に言うのはよくなかったのか?と。
いや、この少女はある程度聞こえていたのだが、やはり恋する乙女。
その実もう一度同じ言葉をはっきり聴きたかっただけである。
しかしそこはやはり上条当麻。盛大に思いっきり間違えた方向に勘違いする。
もっと刻々と鮮明に好きなことを堂々と語らねばならないのか?と。
そして覚悟を決める。盛大に思いっきり間違えた方向に。

まず、今横にいる少女の肩を ガッ! と掴んで体をこちらに向けさせる。
いきなりの出来事に固まる少女。
次に顔を近づけて目と目を強引にあわせる。
急に顔が近づいてきたことにびっくりした少女は、思わずその目を魅入ってしまう。
そして最後に口を開き、延々と好きだと言う単語を連発する。
それはもう、恥ずかしいくらいに。
ここのこういうところが好きだ。ああしてくれたことが嬉しかった。あの時のあれは本当に感謝している。
だから、好きだ。大好きなのだと。
心の底から、大好きなのだと。
そして聞く。俺と付き合ってくれないか?と。
返事は…なかった。
少女は
体を固定され目を合せ続けその愛の告白を延々と聞き続けた少女は
ぽけーっとしたまま、意識だけが違う世界を飛び跳ねていた。

もう、御坂美琴の頭の中はパニック状態だった。
肩を掴まれて目を合せられただけでも心臓が破裂しそうなほどに高鳴って意識を保つのがきつかったのだ。
そこに、愛の言葉の雨を浴びせられたらどうなるだろうか。
決まっている。幸せの世界へとひとっとびである。
止めてほしくないが止めてほしい。止めて欲しいなんて死んでも言えない。
でも言われ続けるのもこれはこれで精神がもたない。一種の地獄のような体験である。

御坂?御坂?
呼ばれる声がする…
そこでようやく、意識が戻る。
数瞬後、何を言われたかを瞬く間に理解し、
頭の先からつま先までが真っ赤になったんじゃないだろうかというほどの熱さを感じた。
もう顔は真っ赤であろう。そう解るほどに体中が火照っているのを感じる。
相変わらずこのばかは…加減というものを知らないのか?!と思う。
あれだけ散々スルーしてきたのに、告白はこんなに激しいとは、極端にも程があるんじゃない?!と理不尽に思う。
だが今はそんな事を考えている場合ではない。
自分は告白されたのだ。
ならば、速やかに返事をしなければならない。
元々答えなど決まっているようなものなのだから。
そして、少女は答えを出す。

結論から言うと、上条当麻と御坂美琴は付き合うこととなった。
周囲があきれるほどのバカップルとして。
朝、昼、晩、所構わず、暇さえあれば、いちゃつきまくるのだ。
鈍感な上条当麻、我慢し続けた御坂美琴。
まるで今までの分を取り戻すかのようないちゃつきっぷりを
周囲は怒り、悲しみ、笑い、呆れ、そして最後にはうんざりしながら祝福していた。

答えは出た。
上条当麻は一時の休暇を利用して戻ってきたインデックスに対し、宿題の答えを言わなければならない。
そう、恋とは誰かには幸福をもたらすが誰かには不幸をもたらすのである。
誰しもが、平等にはいかないのである。
しかし、上条当麻は戻ってくる少女に告げなければならない。
答えは出たのだ。
自分が選んだのは、好きだったのは、御坂美琴という少女であったことを…。


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