小ネタ ポニーテール 2 おまけ
オマケ
――常盤台中学学生寮208号室にて――
「ふふん、ふふん、ふ、ふ、ふーん♪」
「お姉さま、どうしましたの?」
今日はやけに上機嫌なお姉さま。
何か良い事でもあったのだろうか?と白井は声を掛けた。
「んーん、別になんでもないー、えへ、えへへ」
にまーと、何かを思い出してはニコニコと頬を染めて、美琴は話す。
「そ…そうですか」
――何でもないこと無いでしょうに…わたくしにも言えないこと…はっ、ま、まさか?!
…まさか、そんなことはないでしょうけれど、もしや、あの殿方と何か…いやいや――
まさか、まさか…と白井は何度も否定する。
そういえば、今日の髪型がいつもと違うのも、もしかして関係しているのだろうか?
「あ!そうだ…黒子ー」
白井がそう考え始めたところで、名を呼ばれる。
何かご入用でも?と、お姉さまに呼ばれる事が大歓迎な白井は、すぐに返事を返した。
「はい、何でございますの?お姉さま」
「んー、私も黒子みたいにもう少し伸ばそうっかなーと思ってさ…ちょっと参考に、ね?」
やはりどこか緩みきった美琴の表情に、白井はある予感が走る。
「はぁ、今のままでも十分だとは思いますけれど…長いのも中々手入れが大変ですし…」
今までだったら考えられない。思いもしない発言でもあり、白井は困惑気味で答える。
長いのは手入れが大変で面倒くさそうなどと言ってたお姉さまが…何故?と疑問が沸く。
「まー、そうなんだけどね、ちょっと気分転換っていうか、もう少し長くしようかなっと」
色んな髪型を試してみたいなー、アイツどんな反応するかなーと何やら呟き聞こえてくる。
聞き捨てならない単語が飛び出た。
――アイツとは?やはり…やはりかっ!――
白井の耳に反響して、木霊する。
「お姉さま…一つお伺いしたいのですが…」
「ん、何?」
「『アイツ』って、どちら様のことでしょうか?もしやお姉さま…」
「え、アイツって、そ、そんな事言ってた?…っつーか誰?…あはは、き、気のせい、キノセイよ!」
慌てて誤魔化そうとしているようだけれども、バレバレだ。
頬をそんなに赤くして、思いっきり否定されましても…と白井は突っ込んだ。
「…………黒子は誤魔化されませんの」
数秒の沈黙、にらみ合い。
「うぅっ…さぁて何の事かなぁ?…あ、そろそろ夕食の時間だ!こうしちゃいられない!」
居た堪れなくなって、美琴は逃げ出した。
「お、お姉さま!…あ、あの!」
「ほ、ほらほら、さき行ってるよー」
「おねーさまっ!」
後姿に向って叫んでみたところで
バタンと無情にも閉まるドア、白井は部屋に取り残された。
「………、ふ」
ポツンと1人、拳を掲げて叫ぶ。
「ふ、ふふふ、あの類人猿めぇぇーーーー!」
はぐらかされてしまったが、一つ分かった事がある。
お姉様さまが髪を伸ばそうなんてこと、よもやそのような事を言う変化が起きたのは
全て、そう全て、いや全部といっていい、あの男の仕業なのだと、白井は確信した。
(終)