とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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ラプラスの神様 6



 楽しい時間というものはあっという間に過ぎるものだ。
 あれから美琴は上条と波打ち際でバシャバシャ水をかけ合ったり、ビーチボルをぶつけあったり、浮き輪の上に乗って二人でただプールを漂ったりして散々遊び倒した。
 昼に食べた弁当は、朝と同じメニューなのにもかかわらず非常に好評で、二人はペロリと平らげてしまった。少し足りなかったのか、食べ終わるなり売店で焼きそばを注文した上条を見て、もう少し作ってくれば良かったなと美琴は少し後悔した。

 時刻は17時半。ほとんど真上にあった人工照明は、同じく人工の海に向かってゆっくりと落ちていく。天井に張り巡らされたスクリーンは、そんな太陽の動きに合わせて夕空へと姿を変えていった。
 もう少し遊びたい気持ちもあったが、ここでは完全下校時刻を過ぎると大学生以下の学生は追い出されてしまうため、そろそろ帰宅しなくてはならない。
 美しい人工の夕日の中、ぐったりと遊びつかれた美琴と上条はレジャーシートの上で、見事な景色を眺めていた。
「案外綺麗なもんだなー」
「そ、そうね…」
 時刻が迫る。普段ならこのまま寮へ帰るのも良かったのかもしれない。しかし、今日ばかりはそうする訳にはいかなかった。占いが本当であるならば、今日が上条との仲を深める最後のチャンスなのだ。美琴は手の中に収まった携帯をぎゅっと握り締めた。
「うっし、疲れたし今日はここらで帰るか。楽しかったな今日は」
 そう言って立ち上がろうとした上条の腕を美琴は遠慮がちにつかんだ。
 確かに上条の言う通り今日は楽しかった。しかし美琴は、これが人生最高の幸せであるとは認めたくなかった。美琴が本当に望むものはこの先にあるのだ。
「ど、どうした御坂?」上条は美琴の挙動に動きを止めた。

「……ねえ、アンタはさ、どうして今日私を誘ってくれたの?」
 気になっていた事だった。
 遊びに行くなら、友達だって、いつも一緒にいるあのシスターだって良かったはずだ。でも、上条は自分を選んだ。理由を聞いておかなければいけないような気がした。
「…?なんだよ急に」
「いいじゃない別に…」
 そう言った美琴は、気恥ずかしさから上条の目をみることが出来なかった。精一杯勇気を振り絞って言った言葉だったから、そんな余裕が残っているはずはなかった。
 美琴は願うような思いでギュッと目を閉じ、上条の言葉を待った。

 しかし、次の瞬間上条の口から出た言葉は、美琴の願望を裏切るものだった。
「うん、いやあ、実はお前を誘う前にも高校の奴とか他にもいろいろ誘ってはみたんだけどな。あ、吹寄と土御門は知ってるよな。誘った奴みんな都合つかなくてさ」
 吹寄は確か上条のクラスの女だ。土御門とは舞夏のことだろうか。二人の女性の顔が美琴の頭に浮かんだ。
「インデックスなんて死んでも行かないとか言うんだぜ。ひでーよな。お前がたまたまヒマで助かったよ」
 青髪ピアスは元々誘っていなかった。トラウマが蘇るからだ。


「………そう」
 上条の言葉を聞いた美琴は、ほんの数秒だけ視線を宙に漂わせてからそう答えた。
 道理で誘われたのが前日だった訳だ。
「あん?さっきからどうしたお前」
「なんでもない」そう言った美琴はゆっくりと立ち上がった。
「ええ!?おい、ちょっと待てよ御坂」
 そのまま立ち去ろうとした美琴を上条は呼び止めようとした。
「…ついてくんな」
 静かにそう言った美琴の唇はわずかに震えていた。しかし上条からは彼女の表情までは見ることが出来なかったようだ。
「ちょっとちょっと、なにいきなり不機嫌になってるんですか?御坂さ…」
「うるさい!!ついてくんなって言ってんのよ!!」
 次の瞬間、ズドンという凄まじい轟音と共に10億ボルトの電撃が迸った。衝撃で砂塵が舞い散り、着弾地点から10メートルも先にあったヤシの木が根元から吹き飛ばされそうになる。客も監視員も近くにいなかったのは幸いだった。
「あぶねえ!!だから水辺で電撃は撃つなって―――」
「…………御坂…?」砂塵が晴れたとき、美琴の姿はそこになかった。

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