とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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きっかけは些細なこと



「結局あれって何だったんだろ?」

他に誰もいない常盤台の寮室で呟いた。
美琴の言っている[あれ]とは、十月のある日にぼろぼろの上条を
止めようとした時に感じた、自分の中に眠っていた感情のことだ。
その後、しばらくは動くことさえも出来ない程、強烈なものだった。
今は落ち着いているが、まだ自分の中に感じている。
しかも、日に日に強くなっているのが分かる。別に嫌と言うわけではない。
むしろ心地いいくらいだ。
自分だけの現実に易々と入り込み、揺るがすが、それでも嫌ではない。
考える程に不思議でしょうがなかった。
結局、結論は「いくら考えても今の自分にはまったくわかる気がしない。
時間が解決してくれる。」と言うものだった。

「まったく。なんで私があのバカのことでこんなに悩まなくちゃいけないのよ。」

そう一人愚痴った。
あいつは、私のこと無視するし、適当にあしらうし、電撃効かないし。
たまには、かっこいいとこもあるけど、馬鹿だしフラグ男だし、
けどあいつと一緒にいるのは楽しいし、護ってくれるって約束したし。(自分のいないとこで)
って、あれ??文句言ってたのに、いつの間にか良いとこいってんじゃん!?
いけない、いけない。どうにも、あいつが絡むと自分じゃなくなるみたい。

ここまでで、考えるのをやめた。

「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ行かなきゃ。」

ここ最近、美琴は上条に会うため、街に繰り出している。
これといった待ち合わせをしたわけじゃない。会って何をするというわけでもない。
上条の居そうなところ回るだけ。あいつに会いたいから。
こんなの、傍から見れば[恋する乙女]まんまなのだが、肝心なとこに気付かない美琴だった。
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「やっぱいない、か。今日も無理かな…」

上条を探して、結構な時間が経っていた。
あいつの居そうな、コンビニ、公園など色んなとこに行ったが、見つからなかった。
最近いつもこんな感じだ。機嫌はどんどん悪くなっていく。
会ったらどうしてやろうかしら。と、理不尽で、不穏なことを考えていると、

「おーっす、御坂。何してんだ??」

と不意に話しかけられた。
自分にこんな風に話しかけてくるのは学園都市で唯一あの馬鹿だけだ。
なんでこう、気を抜いたときに来るのかなぁ。

「バ、馬鹿!なんでいきなり話しかけてくるのよ!!」
「ひどっ!?それはいくらなんでも酷くないですか!?」
「うるさい!!この馬鹿ーーー!!」
「話しかけただけなのにっ!不幸だーーーーーーー!!」

一瞬でレベル5の電撃の槍が出来、上条に向っていく。
それを、もう常人の域を超えた反応でそれを払いのける。
内心冷や汗ものだが、精一杯の努力で涼しい顔をしている。
しばらくして、疲れて落ち着いたので、やっとまともな会話ができるようになった。

「はぁ、はぁ、はぁ」
「ハァ、ハァ、ハァ」
「…ふぅ。んで何してたんだ?」
「ふぇ?な、何って…」

あんたを探してたなんて口が裂けても言えない。

「…………えーっと」
「ん?どした?言いたくなかったら別にいいぞ?」
「ち、違うわよ。ただ、なんとなくブラブラしてただけよ。
それより、今アンタ暇なの?」
「まぁ、夕食までなら時間はあるけど。
あんまり最終下校時刻まで時間ないぞ。門限大丈夫なのか?」
「平気よ。暇ならちょっと付き合ってよ。」
「お前がいいなら良いけど。」
「じゃさ、今からヘアピン買うからアンタ、選んでくれない?」
「俺が選ぶの?自分で言うのもなんだがセンスねぇぞ?」
「いいわよ。行きましょ?」
「あ、ああ。」

美琴は見ためは冷静だが、内心は超ガッツポーズだった。
こいつと自然に遊びに行くなんて、滅多にできないし、
なにより、今はあいつは私だけを見てくれている。
それだけで心がいっぱいだった。
未だに、何でコイツといるとこんな気持ちになるかは、わからないが、
けどそんなのは小さなこと。今は楽しむことだけを考えることにする。
余計な事を考えるのももったいない。
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―場所は変わってセブンミスト内―

「ところでさ、なんで俺なんだ?」
「なんとなくよ。なんとなく…」
「…お前、なんとなくばっかだな。」
「うるさいわねっ!別にいいでしょ!」
「まぁな。ところでさ、二人で決めないか?お前が選んで、
俺が意見を言う。みたいなさ。」
「ん~。それでもいいけど…。
その代わりにさ、アンタも良いなって思ったのがあったら言ってよ。」
「はいよ~。」

適当に会話しつつ、目当ての店に着いた。
ここは最近になって行くようになった店だ。
少し前までは、飾り気のないシンプルな髪留めを使っていたが、
上条を意識して、かわいい物を使い始めた時からたまに利用している店だ。
時間もあんま無いので、手早く選び始める。

「こんなのは、どう?」
「ん~。ちょっとイメージと違うかな。」
「じゃあ、これは?」
「それもな~…」
「アンタ真面目に答えてる?」
「真面目だよ。そ~だな。これなんてどうよ?」
「あ、それ…いいかも。」

上条が選んだのは美琴なら、選ばないであろうものだった。
可愛いというよりは、奇麗な感じで、少し大人っぽさがあるものだった。

「あんたは、そういうのが好きなの…?」
「ん?いやだったか?
確かに、いつもお前が着けてるのとは違うけど、俺はいいと思うぞ。」
「そう。…じゃあ、それにする。」
「よしっ!じゃ、買ってやんぞ」
「えっ!?別に良いわよ。びんぼー学生に払わせるほど
鬼じゃないわよ。」
「まぁ、まぁ。気にすんなって。この前妹にも買ってあげたしな。」
「……じゃあお願いするわ。」

そんなに高くはないけど、上条にすれば結構な出費だろう。
けっして安くはないはずだ。
それでも、自分のためにプレゼント(?)をくれるのはやはり、うれしい。
今まで会えなくてイライラしてたのは、いつの間にか無くなっていた。

レジに行ったあいつがやけに慌てているのが見えた。
何か気になったので後で、聞くことにしよう。
からかってやるついでに。
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あのあと、話していたら時間もまずくなっていたので、
帰りの分かれ道である、いつもの公園にいた

「んじゃな。御坂。」
「じゃね。…あっ。そうだ。そういえばさ」
「ん?」
「さっき、レジのところで、なんで慌ててたの?」
「あ~~、それな。ん~。まぁ気にすんな。」
「い・い・か・ら・言・い・な・さ・い!」
「おぁっ!?わかった!わかったから、その怖いのをしまってください!」
「ったく。んで?なんだったの?」
「言っても、怒るなよ?」
「しつこいわね。はやくしなさい!」
「ん~とだな、さっきのレジの人な、お前のことを
俺の彼女だと勘違いしてさ。」
「ふぇ?」
「彼女にプレゼントですか?って聞かれて。そんで慌ててたんだよ。
悪いな。変な勘違いされて嫌だ……って、御坂?」

(私があいつの彼女!?かっ、かのっ、彼女!?え~と!?え~と!?)

「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!!!!!!!?????」
「だから、言いたくなかったんだぁぁぁぁぁぁ!!!!不幸だぁ~~~~!!!!!」

上条はいきなりの放電に、美琴が怒りの頂点をぶっち切ったと、
勝手に勘違い。
美琴は、かなり恥ずかしかったので、無意識の内に放電していた。
そこにいると、やられる!?(何に?)と判断した美琴はそのまま、超スピードで走っていった。
上条は、やっぱ止めとくんだったと、そして、
あの状態で走るのはかなり危険じゃないか??(主に周りの人が)と、
思いながら、寮に向かって帰って行った。

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美琴はあのあと、寮に着いたが、気持ちは全く落ち着かず、
どっからどう見ても、挙動不審で、同室者から痛い目で見られていたので、
いつもより、早く布団に入り、丸まっていた。
黒子はまだ、起きているが、もう少しで寝るだろう。

(聞くんじゃなかった…)

布団の中で美琴は激しく後悔していた。
顔がやけに熱い。動悸が激しい。あいつが頭から離れない。
あの瞬間、あの感情が今までで、一番暴れてとても抑えられなかった。
逃げていなかったら、自分がどんな行動をしてたか、わかったもんじゃない。
とにかく、まずかった。

(だいたい、あれよ!彼女ってのは、あいつが私を好きで、
私があいつを好きってことよっ!?
そんなの絶対にっ…!絶対に…)

ありえない。その言葉が出てこなかった。頭では必死に言おうと
しているが、本能がそれを許さない。
っていうことはつまり…、私はアイツが――――

(好き。)

その言葉で、胸の中のモヤモヤが消えていった。

(そっか。私、あいつの事が好きなんだ。)

心は不思議なくらいに穏やかだった。
多少の恥ずかしさもあるが、それ以上に心地よかった。
とても、安心できた。

アイツの前では私が一番私でいられる時間。
本当の自分に一番近い時間。
けど、まだだ。
もっと見て欲しい自分がいる。
アイツに見せられていない自分がいる。
そのためには、超えるべき高い壁がいくつもある。
きっと、悩んだり、つらいこともあるだろう。

(けど、そうやって悩めるのもいいことなのかも。
絶対に後悔しないようにしなきゃ。
まずは、素直になる!かな。)

断られるのは怖いけど、想いを伝えないまま、
アイツがどっか行くほうがもっと怖い。
なにより、死ぬほど後悔するだろう。

(まってなさいよ。上条当麻。絶対に振り向かせて見せるんだから。
いつか必ず好きだって言ってみせるんだから!!)

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後日、決意むなしく、好きと認識して初めて会った時、
恥ずかしくて、目も合わせられず、上条と追いかけっこになるのは、また別の話。


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