とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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What's goin' on?


11月初め―――

美琴は学園都市へと帰って来た。
ロシアに駆けつけた際に自分が取った手段や今後学園都市が自分に対してどう動いてくるか?などを考えた際、戻るかどうか正直悩んだ。
が、学園都市内に残っている妹達からの情報や上条からの説得に応じた。
上条から「困ってたら、エリザード女王も裏で手を回してくれたみたいだし」と聞いた時には、突然出てきたイギリス女王の名にビックリしたものだ。
美琴が唖然としていると、「実はとある理由で知り合いでさ」と携帯を見せて来る。
その画面には、上条とイギリス皇女の3姉妹が写っていて納得するしかなかった。
(…ったく、アイツはひょっとしてイギリス皇女にもフラグ立ててんじゃないでしょうね?)
出来ればアイツと一緒に帰ってきたかったのだが、イギリスにて少しばかりやらなければいけない事があるらしい。 結局1人で帰って来た。


第23学区の空港に到着。 入国審査(パスポートコントロール)へと向かった際には正直緊張した。
が、広域社会見学から帰ってきた時と同じく、レベル5向けのチェックを受けるだけで審査を通過出来てしまった。
(本当に警戒すべきは、寮に戻ってかしらね。やっぱり…)
あれこれ考えそうになり、途中で考えるのを止めた。 色々と考えるよりも、まず相手がどう動いてくるか見た方が早い。
美琴は改めて覚悟を決め、常盤台中学学生寮へと戻る……

学生寮へと到着し、玄関前で意を決して中へと入る。 と、そこには寮監が待っていた。
「良くぞ無事に戻って来た。 …と、言いたい所だが数々の寮則違反を犯したという事は自覚はあるな? 御坂…」
「は、はぃぃっっ!」
自分の表情が一瞬にして凍りつき、冷や汗がダラダラと出るのを感じる。
「とりあえず、今日はこのまま自室で待機。 それと、明日は10時に登校し、そのまま校長室へ向かうように。」
寮則違反を問わず、首も刈られなかった。 寮監なりに心配していてくれたのだろうか。

自室に帰ると、黒子が泣きながら抱きついて来た。
「お姉さ゛ま゛ぁ゛ぁ゛… 黒子は、黒子は心配で夜も眠れませんでしたの! でもお姉さまの御活躍、嬉しかったですわ…」
「ごめん…黒子。 でも活躍って… 私が『何をした』ってのは『どういう風に言われている』の?」
心配をかけた後輩に素直に謝る。 が、後半の話が分からず聞き返す。
泣き止まない黒子から聞き出すのには少々苦労したが、おおよその話をまとめるとこうであった。

 ロシアが高高度での戦略核弾頭使用検討を始めた、という情報を入手した学園都市から急遽要請を受けた御坂美琴はロシアへと渡った。
 現地へ到着し情報を整理した御坂美琴は、見事に戦略核弾頭の使用阻止・無力化を成し遂げた。

ようやく落ち着いて来た黒子を寝かせつつ、美琴は「なる程」と考えた。
(虚実混交の情報操作がこちらではされている訳ね。 …確かに、全てを嘘で塗り固めるより少しの実を混ぜた方が色々と楽だわ。)
しかも、それを常盤台の中だけでの「ウワサ」レベルとして留めているらしい。
黒子はロシアでの話を聞きたがっていたようだったが、「ごめん…」とだけ伝る。
上条、そして上条を通してイギリス側からも「詳細は他言無用」と言いたげだった事はそれとなく感じていた。
そんな事言われなくとも、美琴は他人に話すつもりは無かった。 例えそれが黒子だとしても。
それに言えるハズが無かった。
1人の少年の事が心配で、それだけの為にディープな情報までハッキングをし、1戦闘部隊の制圧と戦闘機乗っ取り(ハイジャック)までしてロシアに駆け付けたなど…
黒子が寝付いたのを確認し、自分も久しぶりとなるベッドに身を委ねた。


翌日。 指定された時間に登校、そのまま校長室へと向かう。
美琴は自身の処分について、一応「最悪の事態」まで覚悟はしていた。 が、予想していたよりは悪く無かった。
その内容とは、

1.常盤台中学の一端覧祭展示期間終了までの期間、身辺警護の為にデボィガードが付く事。
2.安全確保の為、上記期間の間は学校と寮の行き来以外の外出は控える事。
3.一端覧祭期間中、常盤台中学説明会の案内係(ガイダンス)を務める事。

であった。
(これだけで済む、という事は自分にはまだ利用価値がある。という事かしら?)
そう思うと、気に食わない。 番外固体だけでなく、他にもまだやらかそうとしているのか…。
そして今回の処分内容、停学処分や謹慎処分ではないのが怪しい。
―――もちろん、この決定がなされるまでに様々な勢力間での根回し・圧力・駆け引きなどがあった事は美琴本人は知る由も無いが。
だが、あからさまな行動制限と監視、そしてプロパガンダ役だと思っても受けざるを得ない。
ここで拒否して事を荒げてもアイツに迷惑がかかるだけかもしれない。 それだけは避けたい。
美琴は処遇を素直に受け入れ、その日はそのまま寮へと戻る。
これからしばらく、アイツに連絡も取れなくなるのか… 自室でこれからしばらくの生活を考えると気が滅入りそうになった。
だがそれと同時に
(アイツはアイツなりの後始末を毎回やっているんだろうか? だとしたら、私よりよっぽど精神的に強いじゃない…)
そう考え、上条への認識を改めた。
(これからまた、「常盤台のエース、御坂美琴」に戻らないと…か……)
本当の自分で常盤台のみんなと付き合える。 そんな日がいつか来るんだろうか…

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

数日後 の放課後―――

白井は学校が終わると一旦学生寮の自室へと戻る事にした。 最近の習慣である。
本当は、一端覧際の準備があったが適当な理由を付けて抜け出す。 気になる事、確かめたい事がある。
理由は、学校といえどもお姉さまに自由に会う事はできなくなっていたからだ。
欠席していた分を補う為、そして一端覧祭の準備の為の特別カリキュラム。 という名目で美琴は1日の半分程を他の生徒とは別行動で動いていた。
(特別カリキュラム、と言われていますが恐らくウソですわね。 …となると、監視をされなければならない何かがロシアであった。 という事でしょうか。)
帰って来た日以降も何度か、現地で何があったのかそれとなく聞こうとした。 が、以前として美琴は何も話してくれていない。
(お姉さまが何も言わずに突然行くなんて、それなりに理由があるハズ… なのに何もおっしゃって下さらないなんてまるであの夏の日のような…)
そこまで考えた所で、ふと…類人猿、改め一人の少年を思い出す。
(確か…上条当麻さん、とおっしゃいましたっけ。 ひょっとすると調べてみる必要があるかもしれませんわね。)

色々と考え事をしている内に自室に着き、静かに扉を開けて中の様子を伺う。 
―――と、そこには机に向かい、いかにも「自習をやっています」という格好で遠くを見つめるような美琴が居た。
(お姉さま…)
儚くて脆い印象を思わせる後ろ姿は、声をかけるのを躊躇わせる。
開けかけた扉を静かに閉め直す。 帰って来た事が分かりやすくなるように分かり易く入り直す事にした。
「お姉さま、ただいま戻りました。」
意を決して声を出した白井を、美琴が自然を装って迎える。
「…あ、黒子お帰り~。 今日も早いのね。」
「今日は風紀委員(ジャッジメント)の仕事がありますが、少し忙しくなりそうでしたので一旦戻る事にしたのです。」
「あまり突っ走って、初春さんとかに迷惑かけちゃダメよ?」
「御安心下さいな。 それでは行って参りますね。」
そう告げると、そのまま部屋を出た。 寮の玄関まで出た所でテレポートを開始する。
(何かを探ろうとしているとでも思われたのでしょうか。 だとしたら、それは違いますわよお姉さま…)
こんな時にまで後輩への気遣いを忘れていない、そんな美琴に感謝する。
(でも、そんなお姉さまだからこそ。 少しでもお姉さまの力になって差し上げたいのです。)
第177支部へと向かいながら、白井はこれからやるべき事をまとめ始めた。

第177支部で情報を確認した後、白井は必要な物を揃え上条が通う高校へと向かった。
本当は住所などが分かれば一番良かった。 が、今はあまり贅沢は言ってられない。
戦後、書庫情報の警戒ランクが下げられたとは言え、うかつにデータを見に行ってお上に目を付けられたくはなかった。
(さて…あとはあの殿方が校内にまだ残っていらっしゃれば良いのですけれど…)
どうやってコンタクトを取ろう?と考えていると、
「はぁ…せっかく今日の分の課題が終わったのに、これから練習もあるだなんて……不幸だ…」
何やら聞き覚えのある声が聞こえて来る。 ふと声がした方を見やると、上条が校門の外へと出てきた所だった。
白井はこれ幸いとばかりに
「あらあら、お久しぶりですわね。上条さん?」
わざとらしく声をかける。
「…!? げっ、白井…」
と、言うや否や上条は露骨に嫌な顔を向けてきた。 気のせいか、ドロップキックや金属矢が来るのを警戒しているようにも見える。
「貴方が望むのであれば、勝負して差し上げ―――」
「ごめんなさい。 今日はもう既に疲れている上にまだこれから色々とありそうなので許して下さい。」
言い終わる前に、返事が帰って来た。 元から勝負などする気は無かったので白井は続ける。
「大事なお話がありますので、忙しくともお時間を頂けます? 出来れば人が居ない所が良いので、場所を移しましょう。」
とだけ言い、くるりと背を向け移動を始める。
大事な話、と聞いた上条はそれまでよりも少し締まった表情で「分かった。」とだけ言い着いてきた。


2人はあれから、とある河川敷へと移動してきた。
11月ともなると、時折川面を吹いてくる風が肌寒い。
ここまで来て今更揺らぐ自身の心に白井は戸惑っていた。
全てを聞こうとした場合、聞き出せた場合。 …あの時実感した「お姉さまが戦っている世界」で今の自分が戦えるのか? と。
(こんな疑問で戸惑ってしまうなんて、私もまだまだ。 と言った所でしょうか…)
上条は依然として何も聞いてこない。 こちらが話し出すのを待っているようだ。
ふぅ… と軽く息を吐いて意を決した白井は上条の方へと向き、核心に迫る質問からする事にした。
「上条さん。 ひょっとして、あなたも『あちら』に行ってらっしゃいませんでした?」
「あ、あちらとはど、どちらの事でせう? か、上条さんには何の事やらさっぱり…」
「さて…どちらでしょうね?」
あからさまに少しどもり気味の返事が返ってくる。 本人はシラを切っているつもりだろうが、それでは隠せていない。
その返事と様子から、大体の見当を付けた。
「もし、貴方もいらっしゃったのであれば…いつぞやの時のように、考えるのがバカバカしくなるような事が起こっていたのでは? と思ったのですけれど…」
それに対し、上条は何も答えないが構わず続ける。
「答えて頂かなくても結構ですの。 この件に関して、お姉さまも未だに何もおっしゃって下さらないのはそれなりの理由があるのでしょうし…
 これから話す事は、私の大きな独り言とでも思ってお聞き下さいな。」
そう言って白井は更に続ける。
「一端覧祭… お姉さまはきっと、貴方と一緒に観て回る事を大変楽しみにされていたと思います。
 ですが今、お姉さまにはかなりの行動制限が付いております。 詳細はお聞きしていませんが、一端覧祭も自由に観て回る事もできないかもしれません。
 にも関わらず、そんな事はおくびにも出さず周りに対して普段どおりに『常盤台のエース、御坂美琴』として振舞ってらっしゃいます。 それはもう、見事なくらいに…
 でもそれは、あくまでも『振舞っている』という事に過ぎません。」
そこまで言って、白井は溜め息を付いた。
「お姉さまを元気付けようと会話をしても、ふとした時に何とも言えない切ない顔をされる時がありますのよ。
 帰って来たハズなのに、それはまるで『私の居場所は常盤台(ここ)じゃないんじゃないか? 私の本当の居場所に帰りたい。』とでも言っているような…」
白井はそこで上条から視線を逸らし、川面を見やる。
「もちろん、そんな表情なんてして欲しくありませんので私なりに頑張ってみたのですよ?
 でも…私ではそんなお姉さまを癒して差し上げる事も出来ませんでした。 悔しいですけど、今回もあなたにお任せするしかないみたいですの…」

(なんでこうも世界は待ってくれないのでしょうか…)
後半から白井は少しずつ涙声になっていた。 が、それを隠そうとは思わない。
それはまるで、「お姉さまの露払い」と名乗っているのに何もしてあげられない事を悔いているかのようだった。
白井とて9月の残骸(レムナント)事件から何もしていなかった訳ではない。
あの時に自分の身の程を知り、そして更にお姉さまに少しでも追いつき『今ある大切な場所』を守れるようにと心身共に努力を重ねていた。
が、成果が実る前に再び事は起きてしまい、自分の無力さを再び痛感させられた。
今は悔しいが、上条に守ってもらうしかない。
だが白井もこのままで居るつもりもない。
何度転んでも、立ち上がってやる。 いつの日か同じ場所に並び立てるように、そして自分でも守れるように。 と。


それから白井が落ち着くまでの間、上条は何も言わないで居てくれた。
「空間移動者(テレポーター)として、珍しく取り乱してしまいましたわ。 どうも貴方が相手だと、調子が狂うのですよね…」
そう思わずボヤくと、それに対して自嘲するかのように上条が答える。
「アイツにも良く言われるよ。」
「貴方と言う人はこれだから…」
恐らく無意識だろう。 だが、上条の一言で先程までの空気から救われた気がした。
(普段は鈍感そうなのに、妙な部分では気が利く方ですのね。)
などと思っていると、ようやく上条から話し掛けてきた。
それは質問であったが、しっかりと、だが迷いの無い言葉が伝わってくる。
「なぁ…? あの約束を守るために、今の俺には何が出来る?」
(でも…こういう方だからこそ、お姉さまは惹かれたのかもしれませんわね。)
聞くと心強く感じる上条の言葉に、白井はふとそんな事を考えた。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

同日夜 常盤台中学学生寮、208号室―――

「お姉さまっ、ただいま戻りましたわ。」
「黒子、お帰りー。」
いつも通りの言葉で黒子を出迎える。
明日の準備も終え、する事も無かったので美琴はベッドに仰向けで横になっていた。
が、後輩とは言えそのままで出迎えるのは悪いと思い起き上がる。
黒子の声が少し弾んでいる気がする。 今日は何か良い事でもあったのだろうか?
そう思っていると、黒子から声をかけてきた。
「お姉さま。 今日はお姉さまにお土産がありますの。」
お土産?と首をかしげる美琴に、近寄ってきた黒子がメモリーカードを手渡してきた。
「黒子、これは?」
「今のお姉さまにきっと『必要不可欠なモノ』ですわ。 中に入っているモノを観れば分かりますの。」
とりあえず自身の机に向かい、PDAを立ち上げる。 起動し終わった所でスロットを開け、言われるままにメディアを入れた。
メディアの認識が完了し、その中身を確認すると1つの動画が入っていた。
何だろう?と思いつつ、動画を再生する。
そこには、見慣れたツンツン頭の少年。
ずっと会いたいと思っていた、少しでも良いからその声を聞きたいと思っていた少年が映っている。


―――気が付いた時には、涙が頬を伝わっていた。
黒子が傍に居るというのに、止められそうに無い。
「お姉さまが会いたい、とずっと胸に秘められておられた方でしょう?」
そっと私の肩に手を添え、黒子は続ける。
「お姉さまを励まそうと私なりに一生懸命頑張ってはみたのですけれど… やはりその殿方には敵わなかったようです。」
黒子が自分を励まそうと色々と気を使ってくれていた事は気付いていた。
だからこそ心配はかけまい、と振舞っていたハズだった。 振舞えていたハズだった。
が、それもしっかりとは出来ていなかったようだ…
「こんなにも黒子に心配ばかりさせて気を使わせて… 本当にダメな先輩だね、私って…」
その思いやりが嬉しくて、立ち上がって黒子を抱きしめる。
突然の行動に、黒子はドキっとしたようだが嬉しそうに、少し照れたように答える。
「そんな事おっしゃらないで下さいな。 お姉さまだって、常盤台のエースや先輩云々の前に一人の人間ですわ。
 私は普段、露払いなどと申してますけれど、それよりもまずお姉さまの大事な親友でありたいのです。
 大事な事はいつでも相談してもらえる、そんな立場を黒子は目指しているのですから。」
「ありがとう…黒子……」
「さて…私はこれからお風呂を済ませて参ります。 今日は少し長く入って、溜まった疲れを癒そうかと思いますわ。」
そう言うと、黒子は着替えなどを用意してさっさと洗面所へと行ってしまった。
どうやら、ゆっくりと動画を観られるように、また気を使ってくれたようだ。
美琴は気の利く後輩に、心の中で再び「ありがとう」と伝えた。

40分程して、黒子が部屋へと戻ってきた。
たっぷりとくれた時間のおかげで、大分元気も出た。
あとは…
「あのさ…ちょっとお願いがあるんだけど、良いかな?」
動画を観ていて、ふと思いついた事を黒子に伝える。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

翌朝―――

昨日までの寂しげな表情とは違い、安らかな顔で眠る美琴が居る。
「…えへへ……今度はどうしようかなぁ………」
枕を抱きしめるその様子も、呟く寝言も今までとは違い何やら幸せそうだ。
その寝言を聞き、ガバァッ!!と起きて複雑な面持ちで見守る白井。
(ちょ、ちょっとサービスが過ぎましたの…)
少しの後悔の念と共に、そんな事を考えている所に追い討ちがかかる。
「…次は……に行くんだからね………」
気のせいか、甘えたような口調で枕を更にキュッと抱きしめたようだ。
(おっ、お姉さま! どこに行くおつもりですの!? どこまで行くおつもりですの~~っ!?!?)
白井は髪が乱れるのも気にせず、グシャグシャ~ッ!!と勢い良く掻き毟って行き場の無い怒りに悶えた。

いっその事、あの動画を消してしまおうか?と考える。
が、それをやってしまえば再び美琴は悲しみに暮れるだろう。
更には、昨晩交わした美琴からの契約(おねがい)は反故となる。
それ自体は個人的に反故としたいが、そうなれば自分の『パソコン部品+他コレクション』が寮監に知られてしまう。
そんな事になれば、首を刈られるだけでなくどんなキツいお仕置きが待っているか…? そこまで考えた所で契約を反故にするのは諦めた。
(仕方ありませんわ…お姉さまに頼まれた品以外に、耳栓とアイマスクで何か良いものが無いか初春にでも聞くことにしましょう。)
気分を別の方向へと導き、再び寝ようとした所に
「…あっ……そっちは……むにゃ………」
トドメのような気になる寝言が、少し照れた様子で美琴から呟かれる。
(あの類人猿めがぁぁぁぁっっっっ!!)
気分的に八方塞がりとなった白井は、現実逃避をするかのように黒いオーラを出しつつベッドの上で正座の姿勢からおでこを打ちつけ始める。
通称『顔ドラム』と呼ばれる行為を行いつつ、白井は夢の中の美琴の無事を祈る。
これからしばらく、眠れぬ日々が続きそうだ―――


その日から一端覧祭までの間―――
  • 下校後必死に逃げ回るツンツン頭の少年とそれを必殺の形相で追うツインテールの少女。
  • 夕方、ツンツン頭の少年へのメッセージを必死に考え動画(メッセージ)を撮影、夜に後輩から届けられる最新のメッセージを嬉しそうに見る少女。
  • 明け方、嬉しそうに寝言を呟く少女と、耳栓をしても聞こえてくる甘い寝言に苦しむツインテールの少女。
そんな三者三様の光景があったとか無かったとか。


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