「「俺達がキューピットだったんだぜい(やで)」」 1
「遊びに行こうぜい、カミやん」
「どこに?」
「僕らが高校生だった時代に遊びに行こうと計画中なんやで~。と言っても今からなんやけど」
「げっ、タイムマシーンに乗るのかよ。あれ苦手だな・・・でも行くなら美琴に言っとかないと」
「それなら問題ないぜい。俺から先に言っといかたらにゃ」
「それで?」
「超電磁砲をブッ放されたけど『男同士での息抜きも必要かもね。くれぐれも当麻を変な所に
連れて行かないように』と釘を刺されただけだから大丈夫だぜい」
「・・・よくお前生きているな土御門」
「さ~て、早速行くで~!ボク達が高校生だった頃に!!」
上条、土御門、青髪ピアスのデルタフォースは過去に飛び立った。
『昔を見て若かった頃の気持ちを取り戻そう!!』ツアーが名義だがそれは上条だけ。
土御門と青髪の本当の目的は・・・
『結婚して子供もできた幸せ絶頂なカミやんを久しぶりに不幸を味わわせよう!』ツアーであった。
「カミやん、行きたい時代とかあるかにゃ?」
「高校時代じゃねえのかよ?」
「いや、高校時代に行くぜい。ほら、バレンタインやクリスマスのイベントの日とか」
「ん~・・・特にないな。お前達が行きたい日で構わないぞ?」
「じゃあツッチー、ボクは『あの日』に行きたいでーす」
「わかってるにゃー青ピ。じゃあ『あの日』に決定だぜい。西暦と日付を設定してっと。
よし、あと一時間くらいで到着するぜい」
「なあ、俺徹夜明けだから着くまで寝てていいか?」
「かまわへんでカミやん。事故が起きない限り起こさないから安心しておやすみー」
「ならお言葉に甘えて。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グー」
「・・・・・・・・・・・寝たか?」
「バッチリ寝てるで。なんと都合の良いことか。さて、作戦会議するで!」
「ツッチー、カミやんと嫁はんの情報は得られたかい?」
「バッチリだぜい。かなり細かく教えてくれたにゃ~」
「んで、『あの日』で間違いないんやろ?」
「ああ。カミやんの不幸だー!って驚く顔が目に浮かぶぜよ」
「それにしてもよくあのカミやんの嫁はんから話聞けたな。何かしたんか?」
「美琴さんからじゃないぜよ。美琴さんの友達から教えてもらったんだぜい」
「花飾りした子と黒髪ロングの?」
「にゃー。初春さんと佐天さんからだぜい。美琴さんはあの二人には結構カミやんとの惚気話を
しているらしくて二人から教えてもらった訳だにゃ~」
「んで、ネタはどうなん?」
「青ピも楽しみは最後までとっとくべきだぜい。これは生で見ないと面白くないからにゃ~」
「あ~ん、ツッチーのいじわるぅ~」
「果てしなく気持ち悪いぜよ・・・」
「でもこれってカミやんの嫁はんも協力してくれてんのやろ?」
「そうだぜい。内容を教えたら私も行きたいって言ってきたけど子供の世話は誰が見るのかにゃ~
と言ったら諦めてくれたぜよ。その変わりこのデジカメにデータいっぱいになるまで撮ってこないと
俺が大変な目に遭うにゃ~」
「・・・このメモリーカード1テラバイトもあるで・・・いっぱいになるまで撮れるんかいな」
「だから写真は青ピにお願いするぜよ。カミやんを適当に入れて風景でも写せば問題ないだろうし。
俺はカミやんの誘導で大変になるだろうからにゃ~」
「了解したで!」
「さて、そろそろ到着するぜい。カミやんを起こしてくれい」
「はいは~い。お~いカミや~ん。朝でっせ~」
「んあ?最低な目覚ましだなお前は・・・」
こうしてデルタフォースは過去に到着した。
降り立った場所は上条達が通っていた高校。今も昔も全く変わらない風景だな~と上条はしみじみと思った。
「到着ぜよ。カミやん、この世界は俺達が高校三年の頃の世界だにゃ~」
「桜が咲いてるし季節は春か・・・」
「桜が咲いているということは学校では何のイベントがあるかにゃ?」
「新学期の登校日と入学式だろ?」
「その通り!!これから僕らはそれを見に行くんやで」
「見に行くって・・・今の俺達が入ったら不法侵入だろ」
「大丈夫!これに着替えれば問題ないぜよ」
「んな・・お前どこからそれを・・・」
土御門が取り出したのは高校の制服。
「これに着替えて学生達に紛れてあるシチュエーションを見るんやで」
青髪もノリノリで土御門から制服を受け取り説明に加わる。
「あの・・・不幸オーラがビンビンと感じるのですが」
「気のせいだにゃー。あと先に言っておくがこの世界の自分と会うなよ。会ったら大変なことになるらしいからにゃ~」
「それはなんとなくわかるけど俺がこの世界の土御門と青髪に会っても大丈夫なのかよ?」
「多分大丈夫やで。とりあえず未来から来たってことをバレないように誤魔化せばええで」
「よくそんな難しいこと簡単に言えるな・・・」
「心配するなカミやん。どう動いても過去や未来が変わることはないんやから」
「まっ、いずれわかる事だにゃ~」
制服に着替えた三人は見事に学生に変身した。三人共高校時代とほとんど変わっていないくらい
若く見える青年なのだ。
「この時間だともう入学式は終わってるにゃ~。まず先に行く場所は・・・」
今頃どの教室もホームルーム中なのだろう。廊下はシーンとして三人の足音だけが響く。
土御門が先頭になり泥棒のようにこそこそ移動して着いた場所は入学したての一年生の教室。
廊下の窓から覗くと買ったばかりのパリパリな制服を着た生徒達が担任の話を真面目に聞いていた。
「カミやん!いたぜよ!」
小さい声で土御門が上条を呼ぶ。
「いたって誰がだよ・・・」
上条の質問に土御門がある女の子に指をさした。
御坂美琴だった。付き合ってから知った事だが美琴は上条と同じ高校に通い、一緒に登校したいが為にわざわざ
レベルの低いこの学校を選んだとか。
その美琴は窓側の席に座っていた。クラスの男子全員の視線は全部美琴に釘付けで、美琴も
それを若干気付いているのか何度も「ハア~」とため息をついているのが見えた。
「どうだいカミやん?久しぶりに見た嫁はんのセーラー服の感想は?」
「う~ん、欲目だとしてもやっぱ美琴が一番可愛いな」
「カミや~ん、その言葉はいきなり俺の怒りを頂点にする言葉だぜい!」
バゴン!!
土御門がこの野郎♪というような可愛らしい感じでマジパンチを上条にお見舞いした。
「ぐぼぁ!てめえ何しやがる!?」
もちろん上条は土御門に怒りの眼差しをぶつけたがその土御門と青髪の表情が青ざめていた。
どうやら二人は上条の後ろにある「何か」に怯えているようだ。
上条も後ろを向くとそこには筋肉ムッキョムキョなゴリラ顔の災誤先生が立っていた。
これに上条も同じく青ざめる。
「貴様ら、サボって新入生を物色中か?」
三人は何も考えずダッシュして逃げた。
「こら!待たんか!上条!土御門!それと・・・」
廊下から上条と名前が聞こえて教室にいた美琴はバッと廊下を見たがもう誰もいなかった。
デルタフォースの三人はなんとか逃げ切り学校を出てタイムマシーンを隠しておいた場所まで戻ることができた。
「ハアハア・・・ここまで来ればもう大丈夫だぜい」
「にしても僕らは災誤と同じくらいの年になったんよな。どうりで足がもうガクガクしとる訳や」
「・・・・思い出した」
「何をだ?カミやん」
「俺全く覚えがないのにこの日災誤先生に呼び出されてボッコボコに説教と背負い投げされたんだよ。
あれがこの事に繋がっていたなんて・・・不幸だ」
「これがさっき言った未来も過去も変わることはないってヤツだぜい」
「ざけんな!つまり俺達の行動でこの世界の俺達が尻ぬぐいさせられてる訳じゃねえか!」
「カミやんだけだけどな」
「まあ、堅い事は気にせずに次の世界へ行こうではないかカミやん」
「は?またタイムマシーンに乗るのか?」
「そうだぜい。次は大覇星祭があった日に飛ぶぜよ」
「えっと、俺の記憶では大覇星祭の前日に美琴から二人三脚一緒に出ようって誘われて、OKしたけど
当日にお前らに変な所に連れられて美琴と二人三脚できなかったんだよな。美琴に謝り倒したら
「惜しかったね」って言われて理解できなかったんだよな~。それになんか俺あの時伝説の男とか
言われて冷やかされたし・・・」
「それをこれから実行しに行くんだぜい」
「は?」
「はいカミやん、これ体操服に着替えてな。僕らはもう着替えたから」
大覇星祭。学園都市外からも人がわんさかやってくる世界的一大イベントと言っても過言ではない。
デルタフォース三人はプログラムが進む中入場ゲートの前にいた。
「カミやんはここで待機。俺達はちょっくら散歩でもしてくるにゃ~」
「散歩って・・・それに俺だけここで待機っておかしくないか?」
「さっきの記憶をはっきり納得させるためだにゃ~」
それだけ言って土御門と青髪は人混みに紛れて見えなくなった。
「ったく。これでこの世界の俺と会ったりしたらどうすんだよ・・・」
一人愚痴っていた矢先、
「何訳のわからない事呟いてんのよアンタ」
高校一年生の御坂美琴が隣に立っていた。まさか隣にいるとは思わなかったので慌てた上条は
「み、美琴!?」
つい付き合ってから名前で呼ぶようになっていたのでつい呼んでしまった。この時期はまだ
美琴と付き合っていないため名前で呼ばれる事に慣れていない美琴は赤面する。
「い、今、みみみ、美琴って・・・」
「す、すまん!びっくりしたモンだからつい・・・」
「アンタ、これから二人三脚って事覚えてるわよね?」
「え?二人三脚は一緒にでられないんじゃ・・・」
「何言ってんのよ。もう始まるんだけど」
「おい!ちょっとみこ・・・御坂!」
美琴が大人の上条とは気付かずに手を引っ張り、アナウンスの「選手入場」の声と同時に他の
生徒と混じって競技場に入った。
(なるほど。これで辻褄が合った。この世界の俺は未来から来た土御門と青髪に連行され、変わりに
俺が美琴と走った訳だ。後は美琴の「惜しかったね」が気になる。恐らく俺がドジって
こけたか何らかの不幸に見舞われるのか・・・あぁ・・・考えただけで不幸だ・・・)
スタートラインに立ち、右に上条、左に美琴と並んでお互いの足を紐で結ぶ。しかし美琴はこの時既にフリーズしており
漏電を抑えるのがやっとの状況だ。世界中継されている前では死んでも漏電なんかできない。
美琴と結婚した今の上条なら美琴の心境はわかった。
(美琴・・・この時から俺を意識してくれてたのか。きっと勇気を出して俺に誘ってくれたんだろうな。
だったら余計負ける訳にはいかないぜ!)
「美琴、この勝負絶対に勝とうぜ!」
「だから名前で!!ふにゅ・・・」
二人三脚はトラック一周。所々に簡単な障害物がありそれを超えてゴールを目指す。だが
学園都市の大覇星祭。他の選手達が能力を使って邪魔をする事は当然許される。
スタート合図のピストルが鳴った。選手は一斉に走り出す。だがこの二人は・・・
「だああ!どうしてアンタは逆の足から出すのよ!?」
「だってお前が右足からねって言うから俺右足を・・・」
「私が右足だからアンタは左足よ!このド馬鹿!!」
「わ、悪い・・行くぞ!せーの、いち、に、いち、に!」
スタートダッシュに遅れたがなんとか巻き返す。ビリから二番目を抜いた所から辺りは戦場と
化していた。他の選手をゴールさせないため能力を使ってそれぞれが攻撃しあっている。
攻撃は二人にも向けられる。氷の槍のような物体が美琴の真横から襲って来た。
「美琴!危ない!!」
上条がクルっと向きを変えて氷の槍を正面から右手で粉砕した。
「だから名前で・・・にゃあ・・・」
左手で肩をしっかり握られている美琴はもうふにゃふにゃだ。でも美琴の右手はしっかり
上条の腰あたりに置いてあった。
戦力にならなくなってしまった美琴がここにいるのは危険だと判断した上条は他の攻撃を
紙一重で躱し、時には右手を使ってふにゃふにゃの美琴を守りながらゴールを目指した。
そして最後の直線。ついに上条と美琴は先頭に立った。ふにゃふにゃになりながらも美琴は
上条の足にしっかり合わせていたのだ。
「美琴、俺らが一位だぞ!」
「あ、ありがと・・・」
ゴールまで残り5メートルにさしかかったその時!!
「隙あり!!」
誰かが後ろから上条の足を引っかけた。それに上条はバランスを崩し倒れる。美琴も一緒に
倒れるが上条がそれを許さない。美琴の体を自分のほうに抱き寄せて上条が美琴の下になり、
美琴はズザァーと体を擦りむく事はなかった。
ゴールまであと数十センチ・・・無惨にも女の子ペアが一位でゴールした。
「美琴!大丈夫か!?」
「・・・・・・・うん」
上条の腕の中で大人しく、顔を熟したリンゴのように赤くしていた。
結局上条と美琴はビリになってしまった。上条が「お前のせいじゃないから気にすんな」
と美琴を励ましていた時、
「いやぁ、さっきはすみませんでした御坂さんの彼氏さん」
「あの、お怪我はありませんか?」
一位でゴールした女の子ペアが声をかけてきた。美琴と付き合い始めてから知り合ったハズの
佐天さんと初春さんという二人だった。
(なるほど。初めて会ったときから馴れ馴れしいと思っていたら二人にとってはここが
初対面だったのかよ。そりゃ親しく話しかけてくる訳だ)
上条の記憶では二人に初めて会ったのは美琴と付き合って「紹介したい友人がいる」と言われ
ファミレスで会ったのが最初だ。まさかここにいる全員が未来の俺だと気付かないのもどうかと思うが何も言えない。
一方美琴は佐天の「御坂さんの彼氏さん」発言に再び顔を赤くして、
「こ、こ、こんなヤツが私の彼氏に見えるって訳!?佐天さん冗談にも限度ってのがあるわよ?あはは」
「でも御坂さん、スタートからずっと顔真っ赤だったじゃないですか。初春も見たでしょ?」
「はい。あの時の御坂さん、手なずけられた子猫のようですっごく可愛かったです」
「・・・・・・・・・あぅ」
「運良く御坂さんの彼氏さんが攻撃を防いでいる時私達の盾にもなってくれていたんですよ。
ありがとうございました。でも勝負は別ですから最後私が足引っかけちゃいました。テヘっ」
「だからコイツはまだ私の彼氏じゃないってば!!」
「「まだ?」」
「はっ!!ほ、ほらアンタ!早く次の競技場に行くわよ!!」
美琴はこの場から逃げるように会場から出て行った。
「彼氏さん、お名前は?」
佐天が当たり前の質問をしてきた。
「上条ですが・・・」
「御坂さんをよろしくお願いしますね。あ~、でも白井さんが知ったらどうなるんだろうなぁ。ではいずれ会えたらいいですね」
そう言って佐天と初春は去っていった。
(そういえば白井にも意味不明に追いかけられた事もあったな。「お姉様と公共の電波を使って
あんな不埒な行動をしやがって類人猿がぁぁ」みたいな感じで)
また嫌な思い出がここに繋がるとは・・・と不幸を感じながら競技場から退場した上条だった。
「どうだったかにゃカミやん?」
「お前らに対する怒りしか沸いてこないよ」
「何言うてんねん。カミやんの嫁はんはこれがきっかけでカミやんと急接近できたって言うてたんやから」
「・・・そう言われればそうかもな。大覇星祭の後から急激に美琴と仲良くなったような気が」
「大覇星祭以降毎日のように一緒に登下校してたにゃ~。俺もあの時は一緒に登下校する友人を
美琴さんに奪われて寂しかったぜいカミやん」
「それは悪かったですね土御門くん・・・」
「さて、次はメインイベント!『あの日』に行くで~!」
「まだあんのかよ・・・」
「次は学ラン着用だぜいカミやん」
次に飛んだ世界は季節は冬の公園。ここで毎朝美琴と待ち合わせをして登校していた思い出もある場所。
土御門から受け取った学ランだけでは寒さに耐えられない程寒い。
「うひ~。冬はやっぱり寒いにゃ~。猫は早くこたつで丸くなりたいぜよ」
「んで、ここはいつだ?」
「大体予想できとるやろ?カミやんと嫁はんが付き合い始めた記念日の日や」
「何か思い出す事はあるかにゃ~カミやん?」
「・・・あるぞ、超ある!俺が「御坂のことがす・・・」て所でお前らが邪魔してきたんだよな!!」
「それやカミやん。これから僕らはそれを果たしに行くんや」
「わざわざする必要あんのか?」
「大アリだぜい。あの時のカミやんを見て美琴さんは一生カミやんと生きると決めたらしいからにゃ~」
「・・・恥ずかしい。俺はここで何していればいいんだ?」
「何もないで。隠れて昔の青春していた頃を見ててくれ」
「おっと、噂をすればやってきたぜよ。隠れるにゃ~」
三人は影に隠れて様子を伺った。
高校生の上条と美琴が楽しそうに会話をしながらこちらの公園に入ってきた。
「でさ、青髪が「ボクは敬遠球の女の子でも行けるんやで!」とか言ってさ~」
「あはは、何それ。意味わかんないその人」
手は繋いでないけどすげ~密着してますよお二人さん。どう見ても恋人なのだがまだお互いの気持ちを伝えていない二人。
まあ、この数分後には晴れて恋人になるのだが気にくわないと思った男が一人。
「カミやん。どうしてボクを笑いのネタに使うたんや?」
青髪が隣の上条にボディを打ちながら攻める。
「痛てっ。スマンな。この時は美琴を楽しませようと必死だったんだよ」
「けっ。カミやんのくせにカロリー高めの砂糖吐いてるぜい」
「じゃあ俺こっちだから。また明日な御坂」
「ね、ねえ。あの・・・・さ?」
美琴がさっきまでとは違う空気を出した。デルタフォース三人はこれを「青春の空気」と勝手に名付けた。
「くぅ~!!来たぜ~カミやん!」
「ああ・・・なんか知っている結果だけど見ているとやっぱ緊張するな」
土御門が上条につつき、上条もまんざらでもない表情で高校生の二人を眺める。
「待ってくれ御坂。先に言いたいことがある」
「え?」
「もうすぐクリスマスだよな。俺、今年も一人で過ごす結果になりそうで・・・もしよかったら
一緒にどこか行きたいな~・・・と思っているのですが」
あれほど鈍感と言われていた上条が顔を赤くして美琴にデートの誘いをしている。それだけで
学園都市新聞の一面を飾りそうな出来事。もちろん上条本人は鈍感が抜けた訳ではなくただ
思った事を行動しているだけだ。
「アンタね、クリスマスは好きな人と過ごすのが日本では当たり前なのよ?そこんとこわかってる?」
ツンツンした感じで返事をしている美琴だがどこか顔が赤い。もちろん緊張してドキドキなのだ。
「俺は御坂と・・・一緒にクリスマスを過ごしたい」
「「キタ―――(TvT)―――!!!」」
「お前ら!声がでかい!!」
土御門と青髪はもうハイになっている。
「それ・・・ちゃんとはっきりした言葉で聞きたいな・・・」
「わかった。言うぞ?」
「・・・・・・・・うん」
「さあ準備だぜい青ピ」
「イエッサー!」
「俺はできれば邪魔してほしくないんだが・・・」
「俺は・・・・・御坂のことが・・すk「はいそこまでだぜいカミやん!」」
「な!土御門に青髪!?」
待ってました!!と言わんばかりに飛び出した大人げない二人。土御門は学ランの第2ボタンまで開けて
いかにもチンピラですという仕草で上条と美琴に近づき青髪もニヤニヤしながらそれに続くようにゆっくり近寄る。
高校生の上条は警戒して態勢を整える。
「いけないぜいカミやん。超電磁砲をゲットする気かにゃ~?」
「せやで。こんなべっぴんさんカミやんの相手なんかしてくれへんって」
「うるせえ!それでダメになっても俺は御坂に気持ちを伝えたいだけだ!」
「無理無理!カミやんが傷つくだけだからやめとけ」
「それよりべっぴんさん、ボクと遊びませんか?ボクならカミやんよりも面白いジョーク言えるで?」
「いや・・・あの・・・」
「お前ら!いい加減にしろ!御坂が困ってるじゃねえか!俺は構わねえが御坂を傷つけるつもり
なら本気で許さねえぞ!!」
「超電磁砲、カミやんはすぐ女にフラグを立てて他へ行ったりするぜい」
「今現在もフラグを立てている数は星の数なんやで~。そんな男と一緒にいたいと思いまっか?」
青髪の言葉を聞いて美琴はポロっと涙をこぼした。それを見た上条は激怒して
「美琴を泣かせるんじゃねえ!!」
上条は土御門と青髪を一発ずつ右手で殴った。
「美琴の暗い過去を一番知っているのは俺だ!!それに一番親しい男友達だって事も自負している!
俺が美琴に近づいちゃいけない理由なんてそもそもないだろうが!!」
「それだけでカミやんはそこまでやるのか?」
「当たり前だ!美琴の笑顔が見れるなら何でもやってやる!守ってやる!!」
上条は二人をキッと睨みつけたままゆっくり美琴に近寄りグイっと少し強引に肩を抱いた。
美琴は「あっ・・・」と小さく声を漏らした。
「・・・あと、美琴とは友達で終わりたくないって思ったんだよ・・・」
「ツッチー、ボクもう感動で泣きそうなんやけど・・・」
「もう少しの辛抱ぜよ!我慢しろい」
小さく合図をしあってシリアスムードの中アホな会話をする二人。
「カミやんはこう言っているが超電磁砲はどうなのかにゃ?」
土御門の質問にしばらく沈黙が流れる。いくら知っている結果だとしても土御門と青髪の心境もハラハラ物だ。
バカでもわかる。ふざけてはいけない空気だと
「コイツは他の女の子との帰りの誘いを断ってまで私と一緒に帰ってくれた!」
「・・・・マジかにゃ?」
「マジよ!私が作ったお弁当必ずおいしかったって言ってくれて綺麗にして弁当箱返してくれる!」
「・・・カミやん、知らない所でそんな事してたんかい」
「それに今まで適当に流されていた電話もメールも丁寧に返してくれるようになった!」
「嘘や、あのカミやんが」
「私が風邪ひいた時心配してくれてお粥を作ってくれた!」
「ちょ・・・」
「それに今私を守ってくれるって言ってくれた!」
「そこまで行くと・・・なあ青ピ」
「せやな・・・ぐす。ツッチー、もう我慢できへん・・・うぅ」
「これで当麻の事好きにならない理由なんかないじゃない!!」
サアーっと冬の冷たい風が吹いた。でも寒さは影で見守っている上条以外感じなかった。
「参った。俺達の負けだぜい。カミやん、大切に守ってあげるんだぜい?」
「お前らに言われなくてもそのつもりだ!」
どうやら高校生の上条はまだ怒っているようで怒鳴りながら土御門と青髪を威嚇している。
「そんな警戒せんでもええやんか。僕達はこう見えてもわかっていた結果を祝福してるんやで?」
「そうだにゃ~。これで二人は永遠に一緒にいることになるんだぜい?」
「・・・何言ってんだお前ら?」
「気になるんなら早く年を取る事だにゃ~。俺達からはそれしか言えないぜよ」
「ある意味僕達がカミやん達をより強く結ばせた。という事になるんや。いずれ僕達に感謝する事になるんやで」
「じゃ、俺達は消えるからあとは好きにするにゃ~。邪魔して悪かったぜよ」
土御門と青髪はんじゃ。と手を上げて去った。
高校生の上条と美琴が見えなくなった所まで行くと急いで上条が隠れている場所まで戻り
上条に感想を求めた。
「どうやったカミやん!?僕達の迫真の演技!?」
「いや、なんというか・・・言葉がねえよ」
「俺達に感謝してないのかにゃ?」
「くそっ、頼んでもいねえのにこんなシチュ作りやがって。・・・・・・・・・サンキューな」
「何、決まっている事を実行しただけだぜい。ところで、あの二人はどうなったかにゃ?」
三人は再びコソコソと覗く。
「さっき、私のこと名前で呼んでくれたよね?」
「お前だって、俺のこと名前で呼んでたじゃねえか」
「あ、あれは思わず・・・」
「俺も思わず・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・美琴」
「ふ!!にゃ、にゃに!?」
「さっき俺が言いかけた事だけどさ・・・」
「・・・・・・・・・・うん」
「クリスマスもその後もずっと一緒にいてくれないか?」
「・・・・・・・・私だってアンタと。当麻とずっと一緒にいたい」
プロポーズとも言える上条の告白を美琴は上条の胸に顔を埋めながら返事した。
「あのさ、どこか行きたい所あるか?」
「私、緊張がほどけちゃったせいかお腹減っちゃった。ファミレスにでも行かない?」
「そうか。俺はクリスマスに行きたい所を聞いたつもりだったんだけどな。まあ、ファミレスくらいならいいぞ」
「主語がないからいけないのよ!えへへ」
「じゃあ、行こう!」
「うん!」
恋人となった二人は幸せそうに手を繋いでファミレスの方へ歩いていった。
「素晴らしい!!昔の俺と美琴!!盛大な拍手を送りたい!!」
「おえぇ、うぇぇ!!甘すぎて気持ち悪いぜよ」
「ボクもさすがにここまで甘いと受付へんがな・・・」
「なんだよお前ら!せっかく少しは感謝したのに!!」
「そういえばさっき、昔のカミやんに殴られたにゃ~」
「あ、ボクもや」
「へ?ちょっと待て。ここに来てそれですか?」
「「とりあえず一発殴らせろカミやん!!」」
「不幸だーーー!」