あの後
あの日以降、私の心の中にポッカリと大きい穴が空いたような感じがしている。
アイツがいなくなった。
後から聞いた話によるとアイツはインデックスと言うシスターがさらわれて助けに海外まで飛んだ。
インデックスはアイツの手によって無事に救われたがアイツの姿はない。
私もアイツを追ってロシアまで飛んだがあの時、無理矢理にでも引き留めていれば・・・
その後悔心だけで溢れていた。
見つかったのは強い力で引っ張られちぎれたであろう一緒に手に入れたゲコ太ストラップのみ。
もう生きる希望が全く湧かなくなった。死のうかとも思ったが私が死ねば両親や黒子、初春さんに佐天さんは
悲しんでくれるだろうし、それにアイツが一度救ってくれた私の命を粗末にしてはいけないと
思い踏みとどまった。
学園都市に戻る飛行機の中で泣きじゃくっていた私を打ち止めが心配してくれ、あの一方通行も
同情していた。
学園都市に戻り、普通の日常に戻った生活だが、私は荒れに荒れた。
いつも一番近くにいる黒子は私がロシアから戻ってきてから何も聞いてこなかった。どうやら
顔をぐちゃぐちゃにして泣き、目も腫らしているの姿を見て私の気持ちを察してくれてたようだ。
そんな優しい同僚は私が戻ってからは「普通」に接してくれていたのだが・・・
私はただ部屋でゴロゴロとだらしない生活を過ごしながらずっと泣き続ける毎日だった。
「お姉様、そろそろ起きませんと学校に遅刻なさいますよ?」
「・・・・行かない」
「・・・そうですか。寮監と教師には私から伝えておきますの」
「・・・うん」
このようなやりとりが毎朝何日も続く。ある日黒子が私を励まそうと
「お姉様、今度の休日に久しぶりに初春と佐天さんとお茶する予定ですの。お姉様その日ご予定が
なければご一緒しません?」
「ごめん、何も予定ないけど行きたくない。二人に会いたくない訳じゃないから」
「・・・そうですの」
心配してくれている黒子の気持ちに応えてあげないといけないとわかっているのに全てがどうでもよかった。
このまま黒子に嫌われてもいいとも思った。
だがついにその黒子が「キレた」。
ある日の放課後時、いつものようにベッドで泣きながらペア契約の時携帯で撮ったアイツとのツーショットを見ていると
黒子が部屋に戻って来たのだがそこに初春さんと佐天さんも一緒だった。
「み、御坂さんお久しぶりです」
「やっほー、来ちゃいました」
挨拶してきた初春さんと佐天さんだがどこか緊張しているように見えた。それもそうだろう。
いつも二人の前では明るく楽しくいるのに死んだ魚みたいな目をしている今の私を見た事なんてある訳がない。
「お姉様、みんなお姉様を心配してますの。少しでも楽になればと思って二人を連れて来たのですが」
「・・・何でもないよ」
「それのどこが何でもないんですか!!!」
突然叫んだのは初春さんだった。
「白井さんに聞きました。辛い事は自分で抱え込んでしまって誰にも相談してくれないって。
誰かに少しでも話せば落ち着くと思うんです!私達じゃ頼りにならないと思いますが」
「話して何か変わるとでも?」
「解決策の話をしてるんじゃありません!御坂さんがどんな事で悩んでいるかわかりませんが
少しでも御坂さんの気持ちを理解したいんです!私達友達じゃないですか!!」
「・・・・ごめん初春さん佐天さん。まだ何も言いたい気分じゃない。というか言いたくない」
「そうですか・・・」
「じゃ、じゃあ近いうちに遊びに行きましょうね御坂さん?」
最悪な形で二人を追い出すようなことをしてしまった。
その夜黒子が私にもの凄い形相で怒ってきた。
初春さんと佐天さんに対してあの帰し方は何だ、いつもでもウジウジするな、はっきり言って
今のお姉様には魅力の欠片もない等散々の言われ具合だった。
私は反論も言い返しもしなかった。自分でもわかっていたから。黒子は言いたいだけ言うと
泣きながら自分のベッドに入ってさっさと寝てしまった。
私は黒子の様子を見てもちろん心が痛んだ。
でも何もかもがどうでもいいと思っている感情のほうが私の心のほとんどを占めていた。
そして夢の中にもアイツは一回も現れてくれない。
時が経つと不思議と涙を流す事は少なくなった。しかし私は相変わらず寮から全くと言っていいほど
出ていない。寮監は私に愛想が尽きたのか、最初は学校に行くだけでもと言っていたが今はもう
何も言ってこなくなった。
平日の昼、何を思ったのか私は外に出た。学校はやっているが足は学校に向かってない。
自然と足が向かった先は何回かアイツを待ち伏せした公園。ここで待っていればアイツが来るかもしれないと
ありえない希望を持って来たのかもしれない。
自販機を見て久しぶりに一発蹴ってやろうかと思った。しかしアイツは「常盤台のお嬢様がやる事か?」
とジト目でこっちを見ていたな・・・
今更ながらいつも蹴っていた自販機にお金を入れてボタンを押す。
でもボタンを押してもジュースが出てこない。
あれ?何回押しても同じ。もしかして小銭足りなかった?そう思ってつい500円玉を入れ再びボタンを押した。
しかしピッという音だけが流れジュースは出てくる気配を見せない。
「何でよ!?500円も入れたのにこの自販機!!これじゃアイツと変わらないじゃ・・・」
アイツと同じ・・・アイツは2000円札をのまれてたな。
「私もお金のまれるなんて一緒じゃん。不幸だ~ってヤツ?・・・フフフ」
ついつい口癖を真似た。だけどあの日以来久しぶりに頬が上に上がった。これが笑うって事だったな~と思った。
そうだ、あの時もアイツがお金をのまれたのを見て大爆笑してやったっけ・・・
もうアイツはいないのに思い出だけが脳裏に蘇ってきた。でも今は思い出して泣く事はなく、
ただ思い出に浸る事ができた。
結局自販機に電撃を浴びせてジュースを1本いただき、飲みながらまたフラフラと歩いた。
行きたい場所も目的もない。ただ私の足に任せるのみ。
「ここは・・・」
ビルが並ぶ道を歩いているとここがどこなのか思い出した。
私が海原を撒くためアイツと偽デートしてアイツが海原と闘った場所
今では二人が闘った場所は見事なビルが完成していた。
どういう状況だったのかはあまりわからなかったが今でもはっきりと耳に残っているアイツが
海原に言った一言。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
私はアイツが言った言葉を脳内再生した。
「アンタがいなければ誰も守ってくれないじゃない・・・」
ついボソっと口にしてしまった。
ここにいるとあの時の感情が蘇ってしまう。一刻も早くこの場から立ち去りたかったが足が動いてくれない。
でも数分たつと自然と足が出た。
「どうせだったら恋なんて知りたくなかったわよあの馬鹿・・・」
またいらない一言を吐き捨て今はビルが建っているアイツと海原が闘った場所を後にした。
空を見上げるとオレンジ色に染まっていた。もうすぐ完全下校時刻くらいだろう。そんな中私は
あれから淡々と学園都市を彷徨うように歩いていた。もちろん行き先はない。ないハズなのに
勝手に足があの場所を歩いていた。
夜にアイツと決着をつけるために闘った河川敷。それからアイツが私をおちょくって追いかけ回した。
不思議と走り回った道もしっかり覚えている。道なりをまっすぐ走り、角を曲がり、もう一つ
角を曲がりまたまっすぐ。その道をいつの間にか私はかみしめるような気持ちで歩いていた。
追いかけっこした道を歩いていたのに何故かたどり着いた場所がここだ。
鉄橋
あの時、またアイツとの思い出が・・・
あの時アイツが現れなかったら私はどうなっていたかわからない。
死んでいてもおかしくなかった。
どこに行ってもアイツ。何を考えてもアイツ。アイツ以外の事を考えられない。そのアイツがもういないんだ。
現実を受け止めろ!と景色が訴えているような気がした。
今すぐここから去りたいと思ってもまた足が言うことを聞かない。でも私の目はあの時は夜だったが
絶望に打ち拉がれていた時に眺めていたのと同じ景色から目が離せなかった。
こうやっているとまたアイツが声をかけて来そうな気がして・・・
そんな時だった。
「見つけたぜい」
一人の男が声をかけてきた。
私に声をかけた人は金髪でサングラス、学ランの下にはアロハシャツというふざけた格好をした男だった。
「どちらさまで?」
私は初対面の人に対して妥当な質問をした。ナンパだったら無視するが男からは格好と口調は
ふざけているように見えるがサングラス越しに見える目は真剣そのものだった。
「俺は土御門元春。カミやんの友達ってとこだにゃー」
「カミやんってまさか・・・!?」
「そう、上条当麻ぜよ。ちょっと話す事があってにゃー」
「話す事?」
「にゃー。先に俺の事説明しておくぜい。俺はカミやんと同じ高校で同じクラス、住んでいる
学生寮も同じ場所でなんと部屋も隣同士ぜよ。それでカミやんの事を色々調べたって訳」
「調べた?」
「俺が所属している所は君に話してもよくわからないだろうからその辺は割愛させてもらうぜよ。
君とカミやんは多くの接点がある。その接点と行動を調べていくうちに俺でも気付いた事があったんだぜい」
土御門と名乗った男はもったいぶるような感じで私の返事を待っているようだ。
「な、何ですか?」
「君、カミやんの事好きだろ」
その瞬間私の顔はボンと真っ赤になってしまった。
「にゃ、にゃんで私がアイツの事を・・・」
「ほほう、言葉と反応が矛盾しているぜよ?」
「し、してないです!!」
「にゃー。これほどツンデレだとは・・・調べるよりも実際に見る方が早いと言うモンだぜい」
目の前の男はまいったぜいとか言いながら笑っていた。
「ひ、冷やかすなら帰ります!」
男の顔を見てイラッとして後ろを振り返ろうとしたが
「おっと待ってくれい。カミやんの事が好きな君だから頼みに来たんだぜい」
その言葉に振り返るのを止めた。
「カミやんの事を好きな女性はもっとたくさんいるが色々調べた結果、君が一番カミやんと
交流がある。それにお互い信用、信頼しあった関係だと俺は読んだぜい」
「そんな、アイツが私を信頼してるってガセネタにも程がありますよ」
「そうじゃなかったらビルの中でツインテールの風紀委員の子を助けられなかったと思うにゃ~」
「ちょっと、どうしてそこまで知っているんですか!?」
「調べたって言っただろ?それに俺は前からずっとカミやんの事は何でも知っているぜよ」
「・・・そのアイツの事何でも知っている人が私にどんな用件で?」
「にゃ~。君と同じくらいカミやんと関係がある人から手紙を預かっているぜよ。それを渡すだけだぜい」
「私に手紙?アイツと関係ある人って・・・」
「インデックスからだにゃ~」
私は理解できなかった。あのシスターは見た感じどこかの宗教関連の人だと思っていた。でも
アイツは宗教とかやっていそうにもないのに何故インデックスと仲が良いのかも疑問だった。
地下街でのテロリストの時「とうまは必ず戻ってくるんだよ」と信頼しているような言い方していたし
私はインデックスとそれっきり会ってもないし何故インデックスが手紙を書いたのだろうか。
「ま、俺がインデックスに頼まれたってとこぜよ。ほれ、読んでみろい」
土御門という人は懐から手紙を取り出し私に渡してきた。私はそれを受け取り手紙を読んだ。
『短髪へ。私は今でもとうまは必ず戻ってくると信じているんだよ。スフィンクスのお世話よろしくなんだよ』
・・何これ?信じているのはわかる気もするがスフィンクスって?抱えていた猫の事?
しかも手紙というよりメモ帳を破って走り書きしたような感じだった。
「これは一体?」
私は土御門さんにきょとんとした表情で聞いた。
「にゃ~。簡単に言えばスフィンクスって猫の世話をしてほしいみたいぜよ。カミやんが部屋に
いないから仕方なく隣の住人である俺が餌をやったりしていたんだがにゃ~。世話がめんどくさくて
イギリスで治療している飼い主に助けを求めたら何故か君に頼むように言われたんだぜい」
イギリスにいる飼い主?もしかしてアイツ?いや、違う。この人はインデックスの事を言っているハズだ。
猫がアイツの部屋にいるということはアイツとインデックスは同じ部屋で過ごしていたのか・・・
それに気付いただけで泣き崩れそうだった。
誰がインデックスの猫の世話なんかしてやるか!・・・そう思ったがインデックスや猫に何の罪もない。
どちらかと言えば勝手にいなくなったアイツが悪い。もしアイツが遠い未来また現れる時のために、
もしかしたら二度と私の前に現れないかもしれないがアイツに対して大きな借りを作っておこうと
必要のないアイツに対して意地悪心が芽生えて来た。
「わかりました。私が猫の世話をします。その猫はどこにいるんですか?」
「俺を助けてくれるのかにゃ~。助かるぜい。寮まで案内してやるぜよ」
私は土御門さんの後に付いていった。黒子から何件もメールや着信があったのに気付いて
『今日だけは上手くごまかしてください。わがままばかりでごめんね黒子』
といつもではありえない下手に出たメールを送信した。すぐに返信が届き
『了解ですの。悪い事には巻き込まれませんように気をつけてくださいませ』
と書いてあった。本当にありがたいとこの時改めて思った。
(こんな子に嫌われていい訳ないじゃない・・・)
私はアイツがいなくなってからふと思ったあの時の最悪な感情は全くなくなった。
「さあ、ここだぜい」
土御門さんが案内して着いた学生寮。そのある部屋の前に立っているが、ここはアイツの部屋
なのか土御門さんの部屋なのか・・・
そもそも「ここだぜい」と言っても私から入れる訳ないじゃないの・・・
「あの、鍵はかかってないんですか?」
「おっと、忘れてたにゃ~。てっきり鍵を渡したつもりでいたぜよ」
土御門さんは一本の鍵を渡しに差し出して来た。
「これがカミやんの部屋の鍵。何故俺が持っているのかあんまり聞かない方が身のためだにゃ~。
んじゃ、俺はこっちの部屋だから。何もないだろうけど聞きたい事があったら来てくれてもいいんだぜい?」
土御門さんは私に鍵をさっさと渡して自分の部屋に入っていった。残された私は仕方がないので
アイツの部屋の鍵を開け、中に入った。
中はごく普通の部屋。意外と整理されていて少し驚いた。肝心の猫はドアの音に反応して
玄関までやってきた。この三毛猫がスフィンクス・・・一回だけ見たので覚えている。
でもスフィンクスは私が出している微量の電磁波に警戒しているのか近寄って来ない。
ちょっと手を出すと一定の距離を保たれビクビクしているようにも見えた。
「ごめんねスフィンクス。私の事怖いだろうけどあなたの世話を頼まれたの。これから度々来るからよろしくね」
猫に話しかけても無駄だろうが私はスフィンクスに挨拶をした。するとスフィンクスはタイミング良く
にゃあと鳴き声をあげて返事を返してくれた。それに嬉しくなって手を伸ばすがやはりサッと避けられてしまう。
少し落ち込んだがそこは気にせず
「じゃあ、お邪魔します」
靴を脱いで部屋へと入った。
手ぶらで外出した私の持ち物といえばゲコ太のがま口財布と携帯電話だけ。その二つをテーブルの上にポンと置き
スフィンクスの餌と水の準備を始めた。餌はスフィンクスが勝手に食べるのを防止する為なのか冷蔵庫の上に置かれていた。
餌を取りだし適当な皿を選んでキャットフードを盛りつけ、底が浅い容器に水を入れる。
皿と容器を持ってスフィンクスがいる所まで行くとスフィンクスは何とも不思議な事をしていた。
私の携帯に興味を持ったのか触ったり臭いをかいだりしている。携帯というよりゲコ太ストラップが一番気になったのか
ストラップだけに夢中のようだった。
アイツも同じストラップつけてたから気になっているのかな・・・?
もっとも妥当であるハズの事を思ってスフィンクスから少し離れた所に餌と水を置く。
「さ、あなたのご飯ができたわよ!」
スフィンクスに言うがスフィンクスはこちらをじっと見ているだけだった。
「ごめんね。私が近くにいたからでしょ?」
私が餌の目の前にいる事にまだ警戒している事に気付いたのでサッと餌から離れ適当な場所に座る。
私が離れた途端スフィンクスは猛ダッシュで餌に飛びつきがっついていた。
「まさか土御門さん世話とかしてないんじゃ・・・」
スフィンクスの食いッぷりを見て不安になったが食べる仕草が可愛らしいので完食するまでスフィンクスを見ていた。
スフィンクスの食事が終わったのを確認して私も何か食べようと思ってアイツには申し訳ないが
勝手に冷蔵庫の中を見た。
でもほとんど何もなく、あっても賞味期限が切れた生ものだけ。冷蔵庫の中全体が腐ったような臭いがした。
アイツには悪いがこれは見なかった事にしておこう。
部屋にはどんな物があるだろうと気になりいろいろ見て回った。靴箱、本棚、ベッドの下。
ユニットバスに布団が敷かれていたのは全く理解ができなかったが・・・
隣の土御門さんの部屋からは時々「にゃ~」と聞こえるがあの人も猫を飼っているのだろうか?
結局私は食事をする事は諦め(外に行くのがめんどくさいだけ)スフィンクスは普段一匹で
寂しいだろうと思って触る事もできないがしばらく何もせずに部屋にいた。
ただ時間だけが過ぎていく。
太陽も完全に見えなくなり周りは暗くなり、私は部屋の電気をつける。
ここの家主は一行に帰ってくる気配がない。私がここにずっといるのはその家主を待っているからかもしれない。
わかっているはずなのに気持ちと体が矛盾している。
スフィンクスはいつの間にか眠っており私もダラダラしている内にフローリングの上で眠ってしまった。
気がついたら日が昇っていた。勝手に泊まってしまった。無断外泊がこのような形で行われるとは
少々複雑な気分だ。でも最後に残っている記憶とおかしい。
私フローリングで寝ていたのにベッドの上で目を覚ました。しかも毛布もしっかり羽織って。
私って寝相良いのか悪いのか・・・不安になっていたが自分の寝相なんてどうでも良い物が視界に入った。
私が寝ていたハズのフローリングに人が横になっていた。
ユニットバスにあった薄い毛布ともいえない生地を羽織って寝息をたてていた。
「ねえ、ちょっと」
私は無心で相手に声をかけていた。
夢ならこんなリアルな夢は今まで見たことない。
「ん・・・んあ・・・」
起こされた相手は少し不機嫌な様子で目を開け、私を見てきた。
「・・・なんで・・・なんでアンタが・・・・ここにいるのよ・・・」
「ふあ・・・何でってここ俺の部屋だし。それにその言葉をそっくり御坂に返すぞ」
「違う・・・そうじゃなくて・・・なんで生きてんのよ・・・」
「約束してんだよ。必ず戻るって」
「アンタ、おばけ?」
「違ぇよ・・・そうだったら勝手に俺の部屋で何も羽織らず寝てるお前を誰がベッドに運んだって言うんだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、言い忘れてた。おはよう」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私は大泣きしながら胸に飛び込んだ。アイツが驚いているのも関係なく。
いつも馬鹿なアイツは泣きじゃくっている私の顔を見てこう言ってくれた。
「ただいま。御坂」