とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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バイトでなりきり?



とある病院。美琴は御坂妹がいる部屋にお見舞いに行った。
御坂妹自身の近況報告がほとんどだがその一つの話題に美琴は食いついた。

「え?バイト始めたの?」
「はい、外の生活とシステムに慣れるためのトレーニングとしてカエル顔の医者から勧められて始めました。とミサカは簡単にお姉様に説明します」
「他の妹達も?」
「回復状態からするとまだミサカだけしかできないらしく今の所ミサカだけです。とミサカは他の妹達より一歩上にいるという嬉しさを露わにします」

驚きだ。これから「一人の人間」として御坂妹が生活をする。それだけの報告で美琴は大変嬉しかったがその分不安もあった。

「そのバイト先は先生が勧めた所なの?」
「いえ、カエル医者からこれも社会勉強だからと言われ、一人で広告を見て募集店を探して電話をし、面接を受けました。
コネも使わずミサカはこの不景気でも採用という勝利をつかみ取りました。とミサカはどんなもんだいという顔をしてみます」
「まだ社会性もう一つのアンタを採用するくらいの店だから変な店じゃないでしょうね?」
「世間では可愛いと言われる制服を着用して接客をする普通すぎるくらいのファミレスです。とミサカは当然の回答をします」
「なんだ、意外としっかりしているのね」

美琴が心配する必要はもうなかった。さすが私の妹!と褒めてあげたいくらいだ。御坂妹の話だともう一ヶ月近く働いているらしい。
外でも「~とミサカは…」と言っているのか不安になったが。

「でもお姉様に謝罪しなければいけません。とミサカは肩を落とします」
「何よ、バイト始めたの私に言わなかったくらいいいわよ」
「いいえ、実はミサカはお姉様と偽って店で働いているのです。とミサカは誠心誠意頭を下げます」
「う~ん…まあ、私は御坂10032号ですなんて言えないわよね。いいわよ別に。
ただし、御坂さんですか?って聞かれても妹です。とだけ答える事。わかった?」
「お姉様がここまで寛大とは思ってもみませんでした。あの少年から聞くお姉様の醜態話には
開いた口が塞がらない状態でしたから。とミサカはため息を吐いてみます」
「ちょっと待ちなさい…あの少年ってアイツ意外考えられないけど…」
「おっと、これはお姉様にあまり言ってはいけない事だったのかもしれません。あの少年はミサカが働いている
お店の常連です。とミサカはニヤニヤしながらもう全部話します」
「はぁ!?それこそ何で黙っていたのよ!!」
「あの少年は既にミサカの可愛い制服姿に釘付けです。それと、それこそ何で黙っていたのよ!!とはどういうことですか?
とミサカはニヤニヤする顔を押さえきれません」
「うっ…」
「おっとなんとタイミングの良いこと、これからミサカは検診があるのでこれで失礼します。
とミサカはバイトの給料で買ったスリッパを履きます」

ニヤリ。と不適な笑みを浮かべて御坂妹は病室を出て行った。



その帰り道
(妹があそこまで回復していたのは嬉しいけどバイトだなんて…いや、バイトは全然問題ないか。
でもどこでバイトしているか聞いておけばよかったわね。問題はアイツよ!!何でアイツが、
妹がバイトしてる店の常連なのよ!!何で?何故よ!?納得いかない!!アイツを見つけたらとっちめてやるんだから…)

そんなことを思いながら帰り、とはいいつつもそのアイツをよく見かける通りをウロウロしている美琴。
いつも蹴りを放つ自販機の近くを中間地点として何回か往復していると背後から

「おーい、御坂!」

聞き慣れた、何故か安心する上条当麻の声が聞こえた。だが素直じゃないこのお嬢様は…

「死ねぇぇぇ!この変態がぁぁぁぁ!!!」
と電撃を飛ばした。もちろん電撃は少年の右手によって無力化されたが。

「うぎゃあ!たまに俺から声をかければこれだ!!何をそんなに怒っているのですか!!」
「むかつくのよ!!女の子を見て鼻の下伸ばしているのが!」
「はあ!?どこで俺が視姦プレイしたと言いやがるんですか!!紳士上条さんは決してそんなことしませんことよ?」
「アンタ、妹がバイトしてる店の常連ですってね」

ジト目で上条を見るが

「あぁ?御坂妹がバイトしてる店の事か?あそこは御坂妹がバイトする前から常連なんだよ」
「へ?あの子を追いかけてその店に入ったんじゃないの?」
「どこのストーカーだよ!!俺だって御坂妹が突然お冷やも持ってきてびっくりしたんだ!最初はお前と勘違いしたくらいだぞ!?」
「え…?」

(妹と私を勘違い?それって真っ先に私の事が頭に浮かんで来たみたいじゃない!!)
変な妄想をして顔を真っ赤にする恋は小学生レベルの美琴。

「おい、御坂?大丈夫ですか~?顔赤いぞ?」
「ひゃっ!何でもにゃい!」
「でさ、実は俺今日その店に行く予定なんだけど」
「や、やっぱりあの子の制服を見るために!!!」
「違う!!補習の課題や何やらでいっぱいなんだよ。部屋にいると白いビッグイーターに邪魔されるわ学校だとクラスメイトに妨害されるわ。
で、誰にも邪魔されず勉強できる店を上条さんは見つけた訳なんです!」
「そ、そう。じゃあそれが本当かどうか私も一緒に行ってみようかしらね!」
「ついでに課題も手伝ってください御坂先生」

どうやら全く動じてない様子だと御坂妹に対する下心というものはないようだ。美琴は御坂妹がバイトしている様子を確認できる事と、
上条とデート?を味わえる事となって一石二鳥となった。

「じゃあ早く行くわよ!別に私は妹がちゃんと働いているか見るだけなんだからね!!」

駆け足で上条の先を行く美琴。だが上条は冷静で、

「わかってるよ。それと御坂、店と逆方向に走ってどうするんだ?」



店に到着するまでは特に会話がなかった。上条がプリントを出して
「これとこれと………これがわからねえから教えてくれ」
と美琴に見せ、美琴はうん、うんと頷き理解するだけ。美琴本人は気付いてないがこれだけで嬉しさいっぱいなのだ。

そして着いた店は第7学区のはずれのファミレス。学生があまり通らない場所なので客層はトラック野郎かサラリーマンが多く学園都市にしては珍しい。

何事もないように上条と美琴はファミレスの中に入る。だがここで美琴にとっては最初の試練が…

「いらっしゃいませご主人様、お嬢様。とミサカはぺこりとお辞儀をします。あら、早速
私の事を心配して来てくださったのですか?それともこの方とデートですか?」

御坂妹が入った所で迎えてくれた。だがその瞬間美琴は

「んな…何でアンタが出迎えているのよ!まさか電磁波とかで?」
「何を警戒しているのですか?たまたまここに立っていたので接客として当然の作業をしたまでです。とミサカはくだらない説明をします」
「そもそも今の何?ご主人様?お嬢様?しかも可愛い制服ってアンタ、エロいだけじゃない!!」

普通のファミレスと思って入った人は誰もが突っ込みたいであろうポイントを美琴は突いた。
ファミレスなのにメイド口調、そしてちょいエロの制服(ひ○らしのエンジェル○―トの制服と思えば早い)
に興奮?して御坂妹にギャアギャアと吠える。

「こういうシステムらしいので従っているだけです。とミサカはお姉様といえどもしつこい事にイラッとします」
「あ、ゴメン…」

無表情の顔から若干黒いオーラが見え美琴は空気を読んで空いている適当なテーブルに座り、上条もそれに続く。
上条はさっさと座り鞄からまたプリントの山を出し、御坂妹に「コーラ」とだけ頼んだ。
美琴は上条が本当に課題をこなすためだけに来たのだと確信し、美琴も続いて「私もコーラ」と頼んだ。

「じゃ、始めるけど御坂早速ここ教えてもらえるか?」
「うん。ここは…」

その数分後
「お待たせしました。コーラでございます。とミサカは自然な手つきでテーブルに置きます」

御坂妹がコーラを上条と美琴の間に置いた。が

「ちょっと、コーラ一つしかないじゃないの」
「それは2人分です。とミサカはシラを切ります」
「なあ御坂妹、これはまさか…」

とても大きなグラスに注がれたコーラ一つだけではオーダーミス。そう思っていた美琴だが上条が非常に困ったような、照れたような顔をしていた。
何かを察したような若干顔も赤いような…

御坂妹がとどめにサクッとコーラにストローを刺した。だがアニメで見るカップルが使う
ようなペアストローを…

「…え?何これ?」
「あのなあ御坂妹、俺と御坂はそんな関係じゃ…」
「いえ、これはサービスという名の経費削減です。素直になれないお姉様のためにミサカは背中を押しているだけです。
とミサカはニヤニヤしながらお姉様をチラッと見てみます」
「ち、違う!…あう…」

結局上条と美琴はコーラに一口も飲まず課題を終わらせただけで店を出た。



それから数日後。御坂妹によって恥ずかしすぎるあの日を大分忘れた頃、美琴の携帯に一本の電話が届いた。相手は御坂妹

「もしもし?どうしたの?」
『お姉様に一生のお願いがあります。今日のバイトを変わってもらえないでしょうか?とミサカは…』
「私がアンタのふりしてバイトするって事!?自信ないわよ」
『お姉様はミサカの真似はせず普通に接客するだけでいいです。周りの人も気にしないと思いますので。
とミサカは懇切丁寧にお願いします』
「周りの人たちの神経がわからないし懇切丁寧かしら…まあ、どうしてもと言うなら仕方ないわよね」
『助かります。ではミサカは早速作戦開始します。とミサカは通話を切ります』
「はあ!?作戦って何よ!?変なこと企んでないでしょうね!?…切れた…」


でも美琴はしっかり約束を守る人間でバイト先に行き、美琴からするとただエロく見えるだけの制服に着替えるのに躊躇したが
なんとか着替え、仕事を開始した。周りの人は気付かないかと不安だったが誰にも感心がないような素振りだったのであまり気にする心配はなかった。
会話も「御坂さん、この料理5番テーブルによろしく」程度。
知らない男性にご主人様と言うのもかなり抵抗があったがバイトも少し慣れ、やりがいを感じ始めていた時、新しく客が入ってきた。

「いらっしゃいませ……ご主人様、…お嬢……様」
「おう御坂妹、今日も来たぞ」

上条がやってきた。しかも隣には御坂妹。鈍い上条は違いに気付かないのかと愕然としたが御坂妹が
「やっほー、今日も頑張っているのね」

と今まで見せたことのない口調と笑顔で微笑んできた。いつもの無表情な顔と無機質な声しか知らない為、あまりにも驚いた。
治療が良好と聞いててもここまでとは。しかもカエル顔の医者のトレーニングか何かで表情まで豊富になった御坂妹の笑顔は美琴からもそっくりに見えた。

「御坂、あそこに座ろうか」
「あ、うん…」

咄嗟に美琴は上条の言葉に反応したが上条の言葉は御坂妹にかけられた言葉だった。

「うん、わかった」
御坂妹が元気よく返事して上条の後に続く。

テーブル席に座った上条だが御坂妹が動き出した。上条の隣に座るという暴挙に。

「お、おい御坂。何故そこに座るのでせうか…」
「別に?向かい合って教えるよりこっちのほうが私も教えやすいし」

美琴の目の前では美琴の理想通りなシチュエーションが繰り広げられていた。
その光景を見て顔を強張らせている美琴に、上条は何事もないように

「あ、御坂妹、今日もコーラな」
「私もコーラ。どうせならこの前のでっかいグラスに注いだヤツでもいいわよ」
「んなっ!」

今にも二人に電撃を飛ばしたいが今は妹のふりをした身。ヘタすれば妹がクビになりかねないのでグッと堪えるしかなかった。

「…ふん、持ってくればいいんでしょ」

あからさま不機嫌な表情で接客して二人から離れる美琴。後ろで妹が上条に

「凄いでしょ?カエル医者のおかげでここまで表情とか感情が出るようになったんだ」
きっと妹が私を指さして言っているのだろう。それはアンタだろ!!と心で叫ぶ。

ものの数秒ででかいグラスにコーラを注ぎ再び二人のテーブルに運ぶ。
「おまたせしました。コーラでございます」
「サンキュー御坂妹…てこれ本当に持ってきたよ」
「ねえ、アンタに聞きたい事があるんだけど」

美琴が来た所を狙ったように御坂妹が美琴口調で上条に話しかけた。

「アンタ…今、付き合っている人とか…いる?」
「何だよ藪から棒に。この上条さんがいるわけないだろ」
「まさか…ちょっと…」

少し時間を取って御坂妹が言葉を放つ。

「なら私、立候補しようかな…」
「んあ?立候補って常盤台の生徒会長とか?お前なら余裕で当選だろ」
「…アンタの彼女に」
「ぶほっ!!!」

上条の見事なスルーっぷりにもだが美琴は御坂妹のとんでも発言に盛大にこけてしまった。しかし御坂妹はそんな美琴を待ってはくれない。

「おいおいおい。冗談はよせよ御坂。お前が俺の彼女だなんて…ははは」
「笑うなんてひどい!私は本当にアンタの事が…」
「や………………やめて――――――!!!」

美琴が無心で叫ぶ。

「…はい?」
「アンタ、今日バイト変われってこのためだったの!?ふざけんじゃないわよ!!」
「やれやれ。ばれちゃあ仕方ないですね。とミサカは慣れないお姉様口調に解放されて少し安堵しながらコーラを一口」
「え?お前御坂じゃなくて御坂妹だったのか?で、そっちが御坂?」
「はい。あと少しでこの方の本心を聞けたとこだったのに。とミサカはがっかりします」
「コイツの本心聞いてどうするつもりなのよ!!たとえOKされてもアンタがコイツと付き合うのは私が許さないからね!!」
「ミサカが付き合うのではありません。お姉様がこの方と付き合うのです。とミサカは今回の一番の狙いを吐露します」
「はあ?何で私がコイツなんかと…」
「お姉様、素直になってください。こうでもしないとお姉様が正直にならないと思いまして。」
「あの、さっきからお二人が何を喋っているのか全くわからないのですが…」
「やれやれ、この方はどこまでも鈍感なのですね。それではお姉様、制服に着替えますので
控え室に来てください。とミサカは席を立ちます」
「は?アンタ何言って…」
「その制服は私の物です。私はバイトに戻りますので早く制服を返してください。お姉様は
早くこの方の隣に座りやがれ。とミサカはお姉様の腕を引っ張ります」
「あっ、ちょっと!!」

御坂妹が美琴を引っ張って店の控え室に消えていった。取り残された上条はとりあえず二人分あるコーラをズズーっと飲んで一言、

「二人だけで盛り上がって俺はのけ者扱いかよ。さて、課題やるか」

盛り上がっているネタはまさしく自分なのだがこの少年には届いていなかったようだ。

「あ、あの。さっきはゴメン…」
「お前は…御坂か?」

正真正銘の美琴が常盤台の制服に着替えて戻ってきたが上条はまだ区別がつきにくいらしい。

「アンタね、いくら似ていても区別つくでしょ」
「いや、口調や仕草も御坂と一緒だったから白井も騙せるだろうな。んで、お前は御坂妹?」
「アンタ、さっきからふざけているのかしら?」
「だってわかんねえんだもん。いつもの御坂妹の口調とか無機質な対応とかならわかるけど」
「じゃあ超電磁砲打ってあげるからそれで区別できるかしら?」
「ごめんなさいあなたは御坂さんです上条さんが悪かったです」

テーブルの上で即座に土下座を慣行した上条。それを見てふん!と息をならす美琴。
だが美琴はいざ冷静になると先程の御坂妹が上条に放った

「私が立候補しようかな…彼女に」
「お姉様がこの方と付き合うのです」

と言っていたのを思い出して静かになってしまう。上条はその事をなかったのように普通に座り課題に取り組んでいた。

(何か話しかけないと余計居づらくなってしまうわ。何か話す事…)

「ね、ねえ」
「どうした?手伝ってくれるのか?」
「いや、あの、さっきあの子が言っていた事…」
「ああ、あれか。別に気にしてないから」
「あ、でも…」
「わかってるって。お前は俺にそんな感情持っている訳ないもんな。ビリビリする相手なんだし」
「………あぅ」
「まあでも…」

ペンを走らせながら喋っていた上条がペンを置いき、美琴のほうを見て、

「ちょっと残念だったな。あの言葉、御坂の口からも聞いてみたかったりして」

「あ…ぁ……」

とんでもない一言を言い放たれ固まることしかできない美琴。とんでもない事を言ったつもりのない上条は
またペンを握ってプリントに目を移す。

次の瞬間上条の頭にゴン!!と衝撃が走る。
「ンゴ!!」
「この男は自覚というものがないのでしょうか。とミサカはため息を吐きます」

バイトの制服に着替えなおした御坂妹が上条の頭をお盆でブン殴っていた。

「ちょっとアンタ、何してんのよ!?」
「盗み聞きしていたのですが段々むかついて来たのでつい…とミサカは殴った事に反省していません」

美琴と同じようにフンっと鼻をならす御坂妹。仕草もうり二つ。頭を抱えて痛がっている上条の胸ぐらを掴み

「いいですか。これからお姉様が真剣にあんたにお話します。先程の私の時のように笑ってすませたらミサカが許しません。とミサカはVシネのような脅迫をしてみます」
「は…はひ…」
上条からすれば美琴から「この距離で超電磁砲打つから」と言われるに等しいくらいの恐怖だった。
余計な事は言わないように気をつけ、というより何も言わないように心を決め席に座り直し、またプリントに目をやるが美琴が集中できない事を言ってきた。


「さっきあの子はあんな事言ってたけど…私が立候補したら…ダメ…かな?」


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