とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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とある右手の名誉挽回(キューピッド)


『それに、私は上条当麻という人間の身の中でなければ、この力を揮うことが出来ん。それが神との契約だからな。その事を知らぬまま私の力を我が物にしようとした奴が起こしたのが、この前の戦争、第3次世界大戦だ』

「なっ!?」

『どうした?話の内容が完全に理解の範疇を超えてしまったか?まあ、無理も無いだろうな』

「い、いきなり、これだけのことを……聞かされたら……、……誰だって……混乱するわよ。……第一、信用出来る内容じゃないわ」

『それはそうだろうな。第一お前たち科学側の人間にとっては“神”などという単語自体が受け入れられるモノではないのだろうしな』

「そ、それは……確かに……そう……第一、神様なんてモノが存在するなんてこと自体……信じられない」

『哀しい話だな。自分達を創造してくれた存在を信じられぬなど、本来あってはならんこと。ではないのか……な』

「そ、そんなコト言ったって……」

『……まあ、今の時代は“見えぬ”モノは信じられぬようだしな。どうしようも無い……で片付けてしまう訳にも行かぬのだが……。今はやめておこう。……それじゃあ私の正体に関しては答えたぞ。次は何だ?』

「え!?……ちょ、ちょっと……まだ、話が……え?」

『どうした?私はこの男、上条当麻に神が貸し与えられた『浄化の力』だと言ったろう』

「そ、それは……そう……だけど……。……じゃあ、何故、当麻にその“力”が貸し与えられたの?」

『……それに関しては、これから起こることが関わるために詳しくは説明出来んのだが……この男がこの世界で成さねばならんことを成すため“浄化の力”がどうしても必要だった。ということだけは言える』

「訳が分からないわ」

『私もそれ以上は詳しくは言えん。こちらにも事情がある。その点は察して欲しい』

「……はあ……仕方がない訳ね。……まあ、しょうがない……か……」

『理解が早くて助かる』

「アンタ……じゃなくって、コイツと一緒にしないで欲しいわ。その点に関しては、特にね」

『フハハ、なかなか言うな』

「アハハ、まあ……ね」

 美琴は訳の分からない話をしている。と自覚していたが、何故かその話をやめようとは思わなかった。
 様々な使い慣れぬ単語が飛び出してきたりして、戸惑うことが多かったが、少しずつ心が軽くなっていくような気がしていた。
 それに、この目の前の上条の中に居る存在、自らを“神から貸し与えられた『浄化の右手』”と言ったこの存在がウソをついているとは思えなかった。
 右手の話には、今まで自分の目では見られなかった“真実”があるような気がする。もう少し話を続けてみようと美琴は想い出していた。

『次は……どうする?』

「そうね。じゃあ、アンタとコイツ、当麻の不幸の関係性についてってのはどう?」

『さっきも言ったが、私は上条当麻を不幸にした覚えはないぞ』

「でも、“神様のご加護”を消しているって……」

『それはあの【禁書目録】が言ったことであって、彼女自身も確信を持ってそう言った訳ではないはずだ』

「う……」

『第一、その身の内に“神の一部”を宿しているのに、“神のご加護”がいるのか?』

「えっ!?……言われて……みれば……そう……よね……」

『それに、この男は本当に“不幸”なのか?』

「だって、いつもいつも『不幸だー』って言ってるわよ」

『どう『不幸だー』なんだ?』

「真似しないでよ。……そうね、歩けば転ぶ。キャッシュカードやお金を機械に呑み込まれる。財布は落とす。何てことは日常茶飯事だし、事件には巻き込まれるし、解決しても病院(ふりだし)に戻るだけ。こうして見てみると、ホント散々な人生ね」

『それの何処が『不幸』なんだ?』

「え?……だって、そうじゃない。望まない現実が次から次へと……」

『そんなものは程度の差こそあれ、誰の人生にだって起こることだろう?』

「コイツの場合、その頻度が普通じゃないって言うか……子どもの頃は“疫病神”って呼ばれてたそうだし、見知らぬ男に背中を刺されたこともあったらしいわ……」

『だとしても、今この男は自分を必要としてくれる場所に居て、自分を認めてくれる仲間と共にあって、自分の成すべき事を成している。コレが出来ていることの何処が“不幸”だと言うのだ?』

「えっ!?」

『しかも、お前のような者にまで想われている。コレを“不幸”と呼んだら、この世界に“幸せ”など存在しなくなるではないか?』

「(お、想われてる……って……“不幸”じゃなくって“幸せ”だって……(ボンッ!!))」

『……本当の“不幸”とは何だろうな?』

「えっ!?……本当の不幸……」

『この世界には、目の見えぬ者。耳の聞こえぬ者。手や足に不自由を抱える者。生まれながらに病を抱える者。と“不幸”と呼ぶべき条件を抱えた人間が数多くいる』

「……!!」

『それ以外にも居場所もなく、誰からも必要とされず、成すべき事も成せない。コレも“不幸”と言えば“不幸”だが……』

「……」

『本当の不幸というのは……お前自身が経験した、“あの出来事”のようなことを言うのではないのか?』

「!!!」

『信じていた者から裏切られ、自分という存在を根底から否定され、自分が蒔いた種であるはずなのに、自分の力ではどうする事も出来ない現実を突き付けられる。それこそが“本当の不幸”なんじゃないのか?』

「……そう……ね……」

『あの出来事に比べれば、今のこの男を取り巻く現実など“不幸”などと呼べるものではない。違うかな?』

「……確かに……そう……。……あの時の……あの出来事に比べたら……」

『そうだろう』

「でも、でもさ……だったら、神様が居るって言うんなら、どうしてあの時に神様は私を助けてくれなかったのよ?不幸のどん底にいる私を何故神様は見捨てたりした訳!?」

『神はお前を見捨ててなど居ない。第一、見捨てるなどということを神がされるはずはない』

「でも、でも、あの時……神様は……救いの手を……私には差し伸べて……くれなかった……」

『神は救いの御手を差し伸べられたじゃないか?そうでなければ、今お前はこの場には居ないはずだが?』

「その手を差し伸べてくれたのは、この人よ。上条当麻よ!!!神様じゃないわ!!!!!」

『その上条当麻は“神より貸し与えられし浄化の力”をその右手に宿す男。じゃないのか?』

「エッ!?」

『それこそ正に“神の代理人”と呼ぶに相応しい存在ではないのか?』

「え……あ……」

『神が救いの手を差し伸べられる時、直接その手を差し伸べられることは非常に稀だ。だが、救いの手は必ず訪れる。直接、間接は関係ない……だろう?手は必ず差し伸べられるのであれば』

「じゃ、じゃあ……私……私は……」

『既に神に救われた存在だ。何度も言うが、神が直接手を出されることは稀だ。だが、必ずその人を救える道を用意されているのも事実だ。人や物を介して、必ずその手は差し伸べられる。後は受け手の問題だ。その救いの御手に気付き、その手を握り返すか、それとも払い除けてしまうのか?』

「……あ、……」

『どうやら、その事がずっと引っ掛かっていたようだな。上条には助けられたが、神からは見捨てられた。とでも思っていたのか?』

「あ、アレ?……私……、グスッ……なんで、泣いてるんだろう……」

『人は創造主である神との絆を実感できたとき、本当の“癒し”を感じるコトが出来る……『悲しむ者は幸いである。心癒されるであろうから』……聖書の一節だ。本当にその通りだな』

「あ……」

『ただ、神の救いというのは君にだけじゃない。もう一方の少年もまた救われている。その智慧深さこそが人の身では到底及ばぬところでもある』

「えっ!?」

『彼は【一方通行(アクセラレーター)】と言ったな。彼もまた、地獄から救われた存在だ』

「で、でも……奴は……」

『確かに彼は君の妹達を1万人以上殺している。だが、クローンであろうと1万人以上もの命を奪うなどという行為をそう簡単に行えると思うのか?お前がもし彼の立場であったとしたら、果たして同じコトが出来ると思うか?』

「あ……え……でも……」

『彼は彼なりの信念を持ってあの出来事に向かっていた。だが、同時に『止めて欲しい』とも願っていたのもまた事実だ。彼がそこまで自覚していたかどうかまでは、私には分からないがね』

「あ……」

『君が『助けて……』と言っていたのと同じように、彼もまた『止まりたい……』と思っていた』

「……」

『そしてそれを『止めた』のは、他でもないその身に私を宿す上条当麻だ。そうだろう?』

「あ……」

『あの事件の被害者、加害者の両方を拳一つで救い出した。コレが普通の人間に出来るコトかね?』

「た、確かに……」

『そんな事が出来る人間が“不幸”な訳はない。私はそう思うのだが……』

「あ……そ、そう……ね……、それは……そう……。そ、それにしても……アンタと話していると……自分の考え方を根底からひっくり返されてばかりで……何か、言いくるめられているような気に……」

『違うと思うのならそう思えばいい。だが、こういう考え方もあるのだ。と知ることが大事だ。私はそれを信じろと言っている訳ではない』

「信じろと言っている訳じゃない?」

『そう言う考え方もある。ということを知ることは、選択肢が増えると言うことだ。困難な現実に向かい合った時に、その事を知っているのと知らないのとでは、選べる行動の数が違ってくる。選べる道が増えると言うことは、解決へ向かえる可能性が増えると言うことだ。コレはそういう意味だ』

「選択肢の数が増える……」

『要は“モノの見方”は一つじゃない。ということだ』

「……な、なるほど……ね……」

『今言ったことは、お前の心の底にでも止めて置いてくれればイイ。だが、決して忘れないで欲しい。道は一つではない。ということを』

「うん、……分かったわ」

『老婆心で付け加えるのなら、今日のような出来事は“いつもと同じ気持ち”で起こしていることが多い。“いつもと同じ気持ち”は“いつもと同じ関わり”しか生まぬ。そして、“いつもと同じ関わり”は“いつもと同じ結果”しか生まないものだ。それでは新たな現実を生むことは出来ない』

「いつもと同じ……」

『そう。お前が何度も“素直になろう”としても、そう出来なかった。それは何故なのか?今日の出来事を思い返してみればイイ。お前はどんな気持ちでコイツに電撃を放ったんだ?』

「え……そ、それは……だから……ふ、振り向いて……欲しくて……」

『振り向いて欲しくて……それは一体何だ?』

「私だけを……見て欲しくて……って……だから……それって“いつもと同じ気持ち”だったってコト?」

『そして……いつもと同じように【雷撃の槍】を放った。それは……』

「あ……それは……“いつもと同じ関わり”」

『そうだ』

「でも……結果は……」

『そう、今日は少し違っていた。それは、ある方の意志が働き、ほんの少しだけ条件が異なっていたからだが……そういう可能性があると、もし考えていたら、お前は【雷撃の槍】をコイツに向かって放てたかな?』

「あっ!!」

『“人”は“後から知る者”に過ぎぬ。だからこそ、普段の出来事から学ばねばならん。そしてそれが神に応えることにも繋がる』

「……」

「もっと出来事から学ぶことだ。それがお前達の人生を切り開く。それを忘れなければそれでイイ』

「あ……うん……あ、ありがと」

『素直だな。その素直さを、コイツの前でも出せると良いのだがな……』

「~~~~~~~~~~~~~~~」

『さて、すまんが、そろそろ時間だ。もうコイツが目を覚ます頃だ。私も戻らねばならん』

「あ……」

『ん?……どうした』

「あ……、あ、あのさ……最後に……一つ……だけ……、……イイか……な……」

『ん~、時間はあまりないが……何だ……』

「あ、あの……コイツって、……コイツって、私のこと……(ど、どう思って……いる……の……かな?……って)」

『……さすがにそれは、答えられんな。それは、お前が自分で確かめなければならんことだろう?』

「えっ!?……(ボンッ!!)」

『気持ちは分からんではないが……さすがに、宿主のプライバシーに関することを、私が口にするのは憚られるからな……フッ、フフッ、フハハハハハハ』

「~~~~~~~~~~~~~~~」

『案ずることはない。とだけ言っておこうか?さて、本当にそろそろ時間だ。最後に、今コイツが居るところをお前に見せてやろう』

「えっ!?……コイツのいるところ?」

『特別な場所だ。身体のこともあるが、今後のこともあって、今のウチに解いておかねばならん封印もある』

「封印?」

『だが、こちらの世界では私の力がジャマをしてそれが出来ん。何せ【異能の力】を全て消し飛ばすのでな。だから私の力を一度封じれる場所にコヤツの意識を移さねばならなかったのだ』

「……」

『そこに一度だけ連れて行ってやろう。今回私の他愛もない話につき合ってくれた礼だ』

「そんな……」

『……右手に、私に触れて、目を閉じよ』

「……あ、はい……」

『そして、奥の方に見える光に意識を集中し、心の波動を合わせるのだ』

「……あ、あれ……光、……光が……見えた……」

『ゆっくりと、緊張することはない。ただ、全てを委ねるように、光に心を合わせるように……』

「委ねるように。光に心を合わせる……」

 目を閉じ、呼吸を整えながら、右手の導きに全てを委ねて美琴は意識を集中する。

『チリーン、…チリーーン……、……シャラーン…、……シャララーン……』

 どこかで浄い鈴の音が聞こえたような気がした。
 と思ったら、身体がフワリと浮いたような感覚が訪れ、閉じているはずの目の中が光で溢れた。

『ゆっくりと、目を開くといい』

「え……うん……」

 目を開けると、そこは何とも表現のしようのない世界だった。
 空には銀色のオーロラが光り輝き、世界そのものが光り輝く球体に包まれているような場所だった。
 その球体は、虹のように様々に色を変え、形を変えながら、だが全体と調和するようにそこにあった。
 ふと気がつくと、自分は上条と共にその世界以上に七色に光り輝く“繭”のようなモノの中に居るのが分かった。
 「じっ」と上条の顔を見つめる。
 その時、上条の目がゆっくりと開かれ、美琴の姿を認めた。
 そして、上条の口が何か動いたような気がした……。
 と、思ったら、上条の顔にいつもの笑みが浮かんで、安心したようにまた眠りに入っていった。

「良かった……」

 確信と共に美琴の目にまた涙がたまる。
 だが、その涙は今日流していた涙とは違う涙だった。

『雷撃の姫よ。本当にもう時間だ……。名残惜しいが、お別れだ』

「あ、あの……」

『本当に楽しかった。久しぶりに人と話が出来て、私も嬉しかった』

「うん、私も……」

『ではさらばだ。時が来たなら、またじっくりと話がしたいな……』

「本当にありがとう。……私、素直に……なります」

 そう美琴が言った時、上条ではないもう一人の誰かが微笑んでくれたような気がした。
 気がつくと、美琴は上条の手を握り、あの病室に戻ってきていた。

「ん……、う……あ……」

 先程まではほとんど身動ぎすらしなかった上条が、小さく声を上げ始めた。
 『右手』が言っていたように、もうそろそろ目覚める頃なのだろう。
 ついさっき、『右手』に、「素直になります」と言った美琴であったが、そう簡単に“いつもと同じ気持ち”を変えられるかどうか不安だった。
 だが、自分の想いに素直になれるように誓ったのだ。その誓いだけは守りたい。そう願う想いが手に力を込めた。いつの間にか美琴は、上条の手を握りながら、祈るように胸元で手を合わせるのだった。

「ン……ゥ……ン?……あ、アレ?……、み、御坂?」

「……あ、……気がついた?……よ、良かった……」

「……付き添っててくれたんだな……ありがとう……御坂……」

「……ウッ……エッ……グスッ……ヒクッ……ご、ゴメン……ね……」

「……」

「今日は……ホンットに……エッ……ゴメン……なさ……い……グスッ……」

「……な、泣くなよ……」

「だって……だって……、……わ、……わたし……私……」

 上条が目を覚ました嬉しさと、そして今日のコトを起こしてしまった申し訳なさ。そういった感情が綯い交ぜになって、もう少しで美琴は溢れる涙を抑えられなくなるところだった。
 その瞬間、握っていた上条の手が美琴の手を握り替えし、「グイッ」と引っぱられたと思ったら、美琴は上条に抱き締められていた。

「御坂……ゴメンな……でも、さ……オレ……、……お前に泣かれると……どうしてイイか……分かんなくなるから……さ……」

「……!!!(ドキドキ)……」

「こんなことするなんて、ズルいって分かってんだけど……ゴメンな……」

「な……何で、……謝るの?……確かに今のコレは……恥ずかしい……けど……、謝らなきゃ……いけないのは……私の方なのに……」

「お前は別に悪くないよ。いつものように受けきれなかったオレのドジだ」

「違う!!アンタは悪くなんかない!!!……悪いのは……私の方。……だって……」

「……御坂……」

「だって……何にも考えずに……あんな電撃を……アンタなら……平気だって……勝手に思って……」

「……」

「ご、ゴメン……ホントに……ゴメ……ゴメン……なさい……グスッ……」

「……きょ、今日の美琴たんは……素直……ですねぇ~……」

「(えっ?)」

「上条さんは、素直な美琴たん萌え~ですよ……」

「(……また、名前……きゃぁ~……)」

「ん?……どうした?」

「(す、素直に)……」

「……御坂……?」

「自分の気持ちに素直になろうと思ったから!!……だから……だから……」

「そっか……素直に……か。……じゃあ、オレも御坂を見習おう……かな」

「えっ?」

「……」

「……」

「……御坂……好きだ……」

「えっ!?い、今……何て……?」

「……」

「ねぇ、……もう一回……、もう一回言って……」

「……」

「ねぇ……ねぇってば……」

「……無理です。……恥ずかしすぎて……言えません……です。ハィ……」

「……ジィ~(上目遣い)……」

「……あ……あの……」

「……ズルい……」

「う……」

「……男らしくない……」

「(グサッ!!)」

「こんな大事なこと……言うのに……こんなの……」

「……ご、ゴメン……」

「……ちゃんと言って……」

「……う……」

「……ちゃんと私の目を見て言って……」

「……ハィ……」

「……あ……そ、その前に……」

「……ん?」

「は、……放して……」

「……あ!!……ご、ゴメン!!!」

「(モジモジ)」

 美琴に言われるまで、彼女を抱き締めたままでいることを上条は忘れていたようだ。
 美琴に言われて自分が今まで何をしていたのか、やっと気付いたようで、慌てて彼女を抱き締めていた手を弛めるのだった。
 そして、抱き締められていた恥ずかしさに、モジモジしている美琴の正面を向いてベッドにキチンと正座し直した。
 目を閉じて二、三度深呼吸した後、意を決したように「じっ」と美琴の目を見つめる。

「私、上条当麻は御坂美琴さんのことが大好きです。バカで不幸な男ですが、恋人としてつき合って下さい!!」

 上条らしい張りのある声で、美琴の目を見つめながらハッキリと言い切った。
 但し、顔はこれ以上ないくらい真っ赤である。

「うっ……ううっ……う、……う……ぅ、ぅわぁぁぁぁああああああああああ……」

 美琴は上条の言葉を聞いた途端、泣き出してしまった。
 それは、待ちに待った言葉だった。
 でも、絶対に言って貰えないだろうと諦めていた言葉でもあった。
 その言葉を今、上条当麻の口から聞けたのだ。
 御坂美琴が唯一御坂美琴で居られる人から、御坂美琴を御坂美琴として見てくれる人から、その言葉が聞けたのだ。
 しかも「素直になろう」と思い、そう出来るように願い、そのように生きようとした……その途端、想い続けた人からの思いもかけない告白をされた。
 驚きと共に、嬉しさで胸がいっぱいになり、今までの色んなコトが一気に思い出され、それが涙となってあふれ出した。

 一方、上条は……一世一代の告白した。
 と思ったらいきなり泣き出した美琴を見て、ただただオロオロするばかりだった。

「み、み、みみみみみみ御坂さん……ゎ、わたくし上条当麻は……何かいけないことを言ってしまったんでせうか?」

「……だって……だって……だって……私……」

「……あ、……あの……」

「……ずっと、……ずっと……」

「……ずっと?……」

 大粒のうれし涙をポロポロと零しながらも、美琴は「じっ」と上条の目を見つめて言い切った。

「御坂美琴は上条当麻さんのことがずっと、ずっと、ずっと好きでした。私もアナタのことが大好きです。だから、だから……ずっと一緒に居て下さい!!!」

 そう言って、美琴は上条の胸に飛び込んだ。

「ずっと、ずっと、ずっと好きだった。でも、ずっと、ずっと、ずっと言えなかった。……全然自分に素直になれなくて。……だから……怒ったり、電撃を飛ばしたり……してばかりで……、絶対!!……絶対……嫌われてると……思ってたのに……まさか、……まさか当麻から告白して貰えるなんて……信じられない!!」

「お、おい。御坂……お前、今……名前で……」

「と、当麻だって、さっき、私の名前呼んだもん……」

「え?……そう……だっけ?」

「む~~~~~~~」

「あ、あ……アハハ……アハハハハ……」

「もう……でも、嬉しい」

「そ、そうか……?」

「……それにしても……信じられないな……」

「な、何がだよ?……そんなにオレが告白したのが信じられないのか?」

「そ、それもあるけど……それ以上に……「素直になろう」って思って、そして出来たら告白しようって思ってたのに……」

「思ってたのに……?」

「……そしたら……まさか、先に告白されちゃうなんて……ホント、信じられない」

「(ボンッ!!)」

「ほんのちょっとだけ“いつもと同じ気持ち”から抜け出そうとしただけ……何だけど……、それがこんなに変わっちゃう……なんて……ホントに信じられない」

「“いつもと同じ気持ち”って?」

「さっき、ある人が教えてくれたの。“いつもと同じ気持ち”だと“いつもと同じ関わり”しかできないから、“いつもと同じ結果”しか出せないって……」

「へ、へえ……」

「今までだって、何度も素直になろうって思って……自分の気持ちを伝えたくて……、……でも、どうしても……素直になれなくて……その度、自己嫌悪に陥って……」

「……」

「だから、余計にイライラしたりして……、余計に怒って……、……余計に当麻に……当たったりして……」

「でも、今日の美琴は素直だったぞ。……だからオレも素直に告白出来たんだ」

「(ボンッ!!)~~~~~~~~~~~~~~~」

「と、ところで……さ。……その『ある人』って誰なんだ?……カエル先生のことか?」

「あ……その……人って言うか……何て言うか……ウーン……」

「???」

「多分、言っても信じない……と思う……」

「……何だよ、それ……余計気になるぞ……」

「だって……ねぇ……」

 そう言って、美琴は上条の右手を掴む。
 上条は「?」を浮かべるだけだった……。


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