とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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相合い傘



上条「さっきまであんなに晴れてたのに・・・。はぁ・・・不幸だ・・・」

上条はどす黒い空から降りしきる雨を見上げ、はぁ、と大きな溜息をつく。

上条「・・・つか、この雨止むんだろうな。流石に、何時間も待つわけにはいかねえしな・・・」

上条は再び空を見上げるが、雨は一向に止む気配も、弱まる気配すら見せない。
それどころか、先程よりも雨脚が強くなっているような気さえする。

上条「・・・はぁ。こうなったら、ずぶ濡れ覚悟で帰るしかなさそうだな・・・」
美琴「・・・あれ?アンタ、こんなところで何やってんの?」
上条「・・・なんだ、御坂か。見てわかんねーのか?雨宿りだよ、雨宿り」
美琴「雨宿り、って・・・。アンタ、何言ってんの?この雨、明日まで止まないわよー」

・・・へ?と一瞬フリーズする上条。

美琴「アンタ、今朝の天気予報見てないの?夕方から明日の明け方にかけて、大雨が降るって言ってたじゃない」

上条は今朝、天気予報を見ている余裕などなかった。
小萌先生に出された宿題を終わらせるために徹夜していて、そのせいで大幅に寝坊をした。
よって天気予報を見る時間どころか、ろくに朝飯を食べる時間さえもなかったのである。

上条「・・・あ」

上条は、自分の愚かさに頭を抱える。

上条「・・・不幸だ」
美琴「事情は分からないけど、傘を持ってくるのを忘れたみたいね。アンタも相変わらずドジねー」

ううっ、と上条の心に鋭い言葉の刃が突き刺さる。

美琴(・・・でも、これって逆にチャンスじゃないのかしら。
    私がこいつを傘に入れてあげれば・・・!そ、それってもしかして相合い傘!?)

美琴「・・・あ、あのさ」
上条「・・・ん?何だ?」
美琴「そ、その、よよ良かったらわ、私の傘にアンタをいいい、入れてあげても、いいけど」

美琴は顔を赤らめ、持っていた傘を少しだけ上条の方へ差し出した。

上条「私の傘、って・・・。・・・その少女趣味丸出しの傘に、入れと申しているのでせうか?」

上条はそう言って、美琴が持っているかわいらしい水玉模様の傘を指さした。

美琴「べっ、別にいいじゃない!!そ、そんな事よりほら!は、入るならさっさと入りなさいよ」
上条「・・・あのー、御坂さん?」
美琴「な、何よ」
上条「・・・つ、つまりワタクシめと、相合い傘をして帰ろうと仰っているのでせうか?」

ドキーン!と美琴の心臓が跳ね上がり、顔の赤みが更に増す。

美琴「ば、ばばば馬鹿言うんじゃないわよ!!かかか勘違いしないでよね!!
    わ、私はあまりにもアンタが惨めすぎてかわいそうだから同情してあげようって思っただけで、
    べ、別にアンタと相合い傘して帰りたいなんてこれっぽっちも考えてないんだからねっ!!」
上条「・・・そうですか。・・・で、でも、本当にいいのか?」
美琴「い、いいって言ってんじゃない。ったく、お、女の子に恥かかせんじゃないわよ、この馬鹿」
上条「はいはい・・・。・・・んじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますかね」

そう言って上条は美琴の傘に入るが、美琴の傘は元々小さいため、二人分の身体は収まりきらない。
そのため、雨から少しでも身を防ごうと必然的に二人の身体は密着し、寄り添うような感じになってしまう。

美琴(ちっ、近い~~~~~ッ!!こ、コイツの息遣いが直に聞こえてくるッ!!?
    わっ、私今すっごいドキドキ言ってる!!こ、コイツに聞こえてないかしら・・・?)
上条(なっ、何なんだこの状況はーッ!!?女の子と相合い傘とか、都市伝説じゃなかったんですか!!?
    つーか近い!!近すぎるッ!!あー、御坂の髪の毛からほんのりとフローラルな香りが・・・はっ!!
    な、何考えてんだ俺!!第一、相手は御坂だぞ!!?俺の好みは寮の管理人のお姉さんであってッ―)

互いに互いを意識しすぎているせいか、どうしても無言になってしまい、周りには雨の降る音しか聞こえない。

美琴「・・・ちょ、ちょっとは遠慮しなさいよ」
上条「そ、そんな事言われても、これ以上寄ったら出ちまうし・・・。だ、大体、入れっつったのはお前じゃねえか」
美琴「そ、それはそうだけど!!だ、だってこれじゃまるで・・・」

恋人達がいちゃいちゃしてるみたいじゃない、と言おうとしたが上手く言葉が出てこない。
それにそんな事を言ってしまったら、恐らく感情の制御が効かなくなり自分でもどうなるか想像がつかなかった。

上条「・・・」
美琴「・・・」

お互い照れているのか、顔を合わせようとせず、一言も発しない。

美琴(あ~もうどうしたらいいのよーッ!!願ってもないチャンスなのに、何もできないなんてッ!!)
上条(俺の好みのタイプは寮の管理人のお姉さん、俺の好みのタイプは寮の管理人のお姉さん・・・)

互いに色々と思考を巡らせていると、大きな水たまりが見えてきた。
通れない事はないが、人ひとり通るのがやっとと言ったぐらいの道幅しかない。

上条「・・・どうする?一人しか濡れずに通れないみてーだぞ」

美琴はしばらく黙っていたが、何か覚悟を決めたのか、上条の胸に寄り添い、二人は縦に並ぶような形になった。

上条「あっ、あの、み、みみみ御坂さん!!?こ、これは一体―」
美琴「かかか、勘違いしないでよね!!こ、これは二人とも濡れないための最善の策なんだからっ!!」

そう言って美琴は行くわよ!と、水たまりに向かって歩いていく。
傘を持っているのは美琴の方なので、上条は濡れないように美琴に寄り添って歩いていく。

美琴「・・・べ、別にこんな事やりたいとか思ってたわけじゃ、ないんだからね・・・」

美琴はまるで他の誰かにではなく、自分に言い訳するように、小さく呟いた。


上条達が一緒に帰り始めて十数分経つが、未だ雨は止む事を知らず、ざあざあと降りしきっている。

美琴「ひうっ」

突如、美琴が小さく悲鳴をあげる。揺れる傘の先から落ちた雫が、美琴の頭のてっぺんに落ちたのだ。
美琴は背の高い上条に合わせて傘を差しているので、どうしても持ち方が不安定になってしまう。
その事に気づいた上条は、小さく笑って美琴の持つ傘を奪い取り、やや美琴寄りに傘を掲げる。

美琴「あっ・・・」
上条「・・・ったく、世話の焼けるヤツだな。・・・ほ、ほら、もっとこっちに来いよ」

そう言いながら上条は美琴の肩を打き寄せ、美琴が濡れないように、美琴を自分の胸に寄り添わせる。
そんなほんの小さな気遣いが、美琴にとってはとても嬉しく、安心感を抱かせた。

美琴(わっ、わっ・・・!う、嬉しい・・・!!)
上条(べ、別にやましい気持ちなんて一切ないんでございますからねーっ!!?)

美琴が上条の服の裾をきゅっと握り締めると、それと裏腹に上条の緊張のボルテージは上がっていく。
そんな正反対の感情を抱いた二人は、雨の降る学園都市をゆっくりと歩いていくのであった。


上条さんは美琴に寮まで送ってもらいました。


上条「わりぃな。わざわざ送らせちまって」
美琴「別にいいわよー。貸しって事で、また今度付き合ってもらうから」
上条「・・・。あのー、御坂さん?送るって言い出したのは、アナタの方だったんじゃ・・・」
美琴「いっ、いちいち細かい事気にしないのー。それじゃ、私帰るわね」

じゃ、と美琴が帰ろうとしたその時、二人に迫るひとつの影が。
学園都市製の清掃ロボット・・・の上に正座している、土御門舞夏だった。

舞夏「・・・あれ?上条当麻と・・・、御坂じゃないかー。こんなところで何してるんだー?」
美琴「・・・つ、土御門?アンタ、こんなところで何やってんの?」
舞夏「私はメイドさんだし、ここには兄貴も住んでるからなー。別にいてもおかしくはないぞー。
    それより二人はこんなところで一体何をやってたんだー?・・・ひょっとして、逢い引きかー?」

ぶっ!!?と上条と美琴は思わず吹き出してしまう。

美琴「あああアンタ!!いい、一体どこをどう見たら逢い引きしてるように見えんのよ!!」
舞夏「だってー御坂の寮はこっちの方じゃないだろー?わざわざ上条当麻の寮にまで来てー、
    やる事と言ったら逢い引きぐらいしかないじゃないかー」
美琴「だ、だから逢い引きじゃないっつってんでしょうが!!
    わ、私はただ、コイツが傘持ってないから仕方なくここまで送ってあげただけであって・・・ッ!!」
舞夏「なるほどー。相合い傘で帰宅というわけかー。なかなかやるなー御坂ー」

美琴の顔がみるみるうちに赤く。
それを見て意地悪そうに笑った舞夏は、更に二人を茶化す。

舞夏「これはあれだなー。一大ニュースになるなー」
美琴「な、何がよ?」
舞夏「スクープ!!常盤台の超電磁砲、高校生との熱愛が発覚!!?」

再び吹き出した美琴の顔は更に紅潮していき、必死に反論をする。
舞夏はそれを華麗に聞き流し、楽しそうに美琴をからかう。

土御門「・・・にゃー、何か外が騒がしいな・・・って舞夏と・・・カミやんと・・・誰?」
上条「つっ、土御門!?・・・ま、またややこしいのが出てきた・・・」
舞夏「おー兄貴ー。大スクープだぞー、上条当麻が寮の前で逢い引きしてたぞー」
上条「だ、だから逢い引きじゃねえって言ってんだろうが!!・・・ん?土御門・・・?」

土御門は急に打ちひしがれたように黙り込む。
そして一呼吸置いて、

土御門「・・・スクープ!!上条当麻、常盤台のお嬢様との交際が発覚!!?」
上条「・・・あっ、アホかっ!!大体、兄妹揃って同じ事言うんじゃねーっ!!」

抜け駆けはずるいぜよカミやーん!と土御門は上条に飛びかかる。
一方では、美琴が清掃ロボットに座った舞夏を追いかけているがなかなか捕まらない。


この後、それぞれの争いは数時間続いたとか続かなかったとか。


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