小ネタ 美琴ちゃんの卒業式、代わりに出といてね
上条さんが卒業式を迎えました。おめでとうございます。
………あおーげばーとぉーとしー、わーがーしのーぉ、おんー♪………
上条「おい御坂」
美琴「何? せっかくの晴れの日なのに変な顔して何かあったの?」
上条「何で俺がお前の卒業式に出席せにゃならんのだ。しかも昨日の夜にはお前の母さんから『美琴ちゃんの卒業式、代わりに出といてね』とか電話がかかってくるし俺の手元には学舎の園の臨時入場パスが届いてるし! 何だよこの手際の良さは!! 説明しろ!」
美琴「アンタ知らないの? 女子校じゃね、彼氏持ちの子は彼氏を卒業式に呼ぶのが習わしなのよ。アンタもここに来るとき、門の前に男どもがうようよしてたの見たでしょ? 気合いが入った奴なんか大きな花束抱えて迎えに来るんだから」
上条「なぁ、それってまさか……」
美琴「そ。要は彼氏のお披露目なワケ。おおっぴらに『彼氏がいます』なんて話が噂に上ったら先生に目をつけられるもん。だから卒業式はここぞとばかりに見栄張るのよねー。去年はすごかったわ。どこのホストクラブだよってくらい気合い入れたスーツの奴らがたむろしててさ。たった一人に二〇人の取り巻きよ? 信じられる?」
上条「……彼氏って、おい……」
美琴「ああ、アンタにスーツ着て来いとか花束持って来いなんて甲斐性は期待してないから安心して」
上条「っつか、俺を品評会に引きずり出すな!」
美琴「アンタの良さは私だけが知ってればいいの。アンタを誰かに値踏みさせるつもりなんてさらさらないわよ。ただ単に……私はアンタに今日、ここに来て卒業を祝って欲しかっただけ。それだけだから」
上条「…………そうやって俺を丸め込む気か?」
美琴「落とされたのは私のような気がするんだけど?」
上条「…………ぐぬぬ」
美琴「常盤台中学とも今日でお別れか。なんだか感慨深いなぁ。寮も引き払ったし、午後にはそっちに私の荷物が届くから受け取っといて」
上条「感慨深いとか言ってとんでもない事をさらっと混ぜるな! 一緒に住むことは許可してないぞ!」
美琴「冗談よ。今日から高校の寮に引っ越すから手伝いよろしくね。あ、はいこれ。渡しとくからなくさないでよ?」
上条「……鍵?」
美琴「そ。私の部屋の合鍵。一人部屋だから、いつでも来ていいからね」
上条「………………おい」
美琴「今度の部屋は、アンタんとこと違って防音効いてるから」
上条「変な含みを持たせるな! 俺をからかって楽しいか!?」
美琴「…………含みなんて別に持たせてないけど? 変なことを勝手に想像したのは当麻じゃない?」
上条「くっ………ああ、中学生に引っかかるなんてふこ」
美琴「不幸? 本当に不幸? それ、私の目を見て言える?」
上条「いえ…………幸せです」
美琴「よろしい。………ふふっ」
ちなみにこの習わしは、現実のとある女子校に実在する。完。