とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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だれでも歓迎! 編集


~君の瞳に痺れてる~


ここは科学の街、学園都市。
その街のとある学生寮、とある一室に、とある少年が住んでいる。

その名は上条当麻。異能を打ち消す右手を持つ、まっすぐな少年である。

いつもはおそらく世界で一番不幸な彼だが、この一時ばかりは幸せをひしひしと感じていた。


「ねぇ、アンタ」

「なんでせうか御坂さん」

「いつまでこうしてるつもりなのかしら?」


上条は今ベッドに座り、愛しい少女をその膝に乗せ、後ろから抱きしめている。
少女の名前は御坂美琴。学園都市のレベル5第三位の、すこし勝気な少女である。


この二人はつい三日前、恋人同士になったばかり。
美琴はかれこれ20分ほど抱きしめられ続けていた。
故にすこしばかり抗議の気持ちを含んだ質問を彼に投げかけたのだが・・・

「いつまでって・・・ずっと?」

「あんたねえ・・・」

「・・・全く、御坂さんは素直じゃないですな。上条さんにはお見通しですのことよ?」

いうが早いか、上条は抱きしめる力を少しだけ強くし、顔を美琴の首筋にうずめた。


「!!~~~~~ッ」

「こうしてると体温から心音まで丸分かりですからね。御坂さんがテレてるだけってのはよく分かるんですよ。」


そのままの体勢でささやく。上条の吐息が美琴の首筋に吹きかかる。

「ちょっ・・・その体勢で喋んなこのバカ!」ジタバタ

「おっとっと、そうはいきませんよ」ギュウ


こんな攻撃を食らっては、美琴としてはたまったものではない。
当然じたばたともがくが、それを制しようと上条がさらに力をこめ、全身を使って美琴に抱きつく。


「分かってるよ。デートだろ?俺が誘ったんだからちゃんと把握してるって。
まだ時間あるんだからそんなに焦らなくっても・・・」


「・・・だって、アンタと一日中一緒にいられる機会なんて初めてじゃない。
だから、一分一秒でも無駄にしたくないのよ。」


「・・・分かったよ。じゃあ早速準備して、いきますか!」


「うん!」



抱きしめていた腕をとくと、美琴が跳ねるようにして立ち上がり、上条に手を差し伸べる。
上条はにこりと笑って、その手をとって立ち上がる。

いつかは振り払ってしまった彼女の手。だが今はしっかりと握っていられる。

この手は絶対に離さない。離したくない。たとえ振り払われても、逆の手で掴みなおしてみせる。

恋人同士の、何のことはない『日常』のやりとり。その一つ一つを上条はかみしめていた。

愛しい人が隣にいてくれる。笑いかけてくれる。手を差し伸べてくれる。


―ああ、しあわせというのは、こういうことなんだ― と。





            ―とある少年の猛烈恋慕その2―
              ~君の瞳に痺れてる~

「で、どこに行くか決まってるわけ?」


上条の部屋で身支度を整えながら、美琴が尋ねた。


「・・・えーっと・・・」

「アンタまさか人のこと誘っておいてノープランなんじゃないでしょうねぇ!」


美琴の額に青筋と青白い光が浮かぶ。あわてて上条は美琴の頭に右手をおく。


「うわっと!冗談だって!ちゃんと決めてあるから落ち着いて!リラーックス御坂さんリラーックス!」

「・・・全く。アンタがやると冗談に聞こえないのよ。」

「ご安心くださいませ。今の上条さんは、この間までの上条当麻ではありませんのことよ?」

にっこりと笑って彼女の頭をなでる。

「・・・ホントかしら。ついこの間まであたしの検索件数ゼロだったヤツにそんなこといわれてもねー?」

美琴はわざとイジワルそうに言い返す。やられっぱなしは趣味ではない。

「・・・御坂はだれにも渡さないって決めたからな。上条さん、ラブパワーのリミッター解除モードなのですよ。」

「う、ぁ・・・うん・・・・」


上条のカウンターが決まる。自分の気持ちに正直な人間に恋の神様は微笑むらしい。

恋仲になってからの上条のキャラの変りっぷりに、美琴は内心ビックリしていた。
上条は何の臆面も躊躇もなく、言葉と行動でまっすぐに気持ちを伝えてくる。

しかし美琴のほうはいまだに素直になりきれないでいる。
上条にいわせれば『そんなところも好き』らしいのだが。


「よし。ほら、はやくしないと置いてっちゃいますよ?」

「あっ、ちょっと!まちなさいってば!」

小走りで玄関へかけて行く上条と、それを追いかける美琴。
玄関先でお互いの手をとって、二人はゆっくりと目的地へ歩き出した。


―――――――

二人がやってきたのは映画館だった。
つい最近新しく出来た、最新の技術を多数使用したシアターらしい。
まるでその場にいるかのような臨場感と迫力がウリ―とはパンフレットの文句である。

「で、何見るのか決まってるの?」

「そりゃもちろんですよ。今日の上条さんはいつもの上条さんとは一味もニ味もですね・・・」

ふふんと胸を張り、チケットを美琴に手渡す上条。
タイトルから察するに、どうやらファンタジー系のアドベンチャー映画のようだった。

「・・・・・・アレ、もしかして上条さんハズしましたかね・・・?」

美琴としてはカップルで映画館に来たからにはもっと甘いラブロマンスな映画を期待していたのだが、
そんな期待を上条が察してくれるはずもなく。

「・・・ま、いいわ。急に全部察しろって言っても無理だもんね。
とりあえずは一歩前進ってことにしてあげるわ。ふふっ。」

「面目ないです・・・」

ちょっぴり落ち込んだ上条の腕を引いて引きずるように美琴が歩きだす。

「いいのよ。アンタから誘ってくれただけで正直ビックリしてるんだから。
これで映画のチョイスまであたしの好みだったら何かあったんじゃないかと思っちゃうわよ。」

「それはフォローしてるつもりなんでせうか・・・」

「ほーら、暗い顔しないの!・・・せ、せっかくのデ、デートなんだから・・・!」


そういいながら上条の腕にぎゅっと抱きつく。
いつかとは違い今は正真正銘の恋人同士なのだが、まだそれも三日目。
そういった言葉を言うのも、行動をするのにも恥ずかしさはある。実際美琴の顔は真っ赤だ。


「そうだったな。そうでした!
それでは気を取り直していきましょうか、美琴お嬢様?」

「それでよろしい!さ、いきましょ!」

お互いの顔を見合わせて笑いあい、いっしょにシアターへとあるいていく。
映画館の多数の照明がいくつも作り出した二人の影は、どれもぴったり寄り添っていた。

―――

「結構面白かったな」

「そうね。ただ・・・・」

「「スケールが中途半端」」

お互いの顔をみて言葉を重ね、やはり笑いあう。

「ファンタジーっていうからには、ある程度突き抜けて欲しかったわよね」

「まぁ、オレ達の経験が経験だからなぁ・・・」

怪獣と戦ったり、炎の魔人と相対したりと、ファンタジックなエピソードには事欠かない二人。
そこいらの映画よりも、この二人の人生のほうがよっぽどスリリングで、ファンタジック、ロマンスにあふれているだろう。

「ところで、門限は大丈夫か?もうだいぶいい時間だけど」

「そうね・・・まだ大丈夫よ。まだ何かあるの?」


携帯電話を取り出し、時間を確認しながら言う美琴。
『大丈夫』と聞いて、上条はにやりと笑う。


「ふふ・・・ちょーっとしたサプライズってやつですよ・・・それっ!」


言うが早いか、ポケットから取り出したハンカチで美琴に目隠しをしてしまった。


「きゃっ・・・ちょっと!なにすんのよ!」

「まぁまぁ、サプライズってのはバレちゃつまらないですからね。それ、行くぞ!」

「ちょっ・・・待ちなさいってばぁ~~~~~・・・・・ッ」


そして上条は批判の声をあげる美琴をおぶり、いずこかへと走り出す。
状況がわからない美琴は電撃を発してみようとするが、足を右手で掴まれているのか放電できなかった。


「おっと、電撃は禁止ですからね?おとなしく上条タクシーをご堪能くださいませねお嬢様?」

「ああもう!わかったわよ!ただし、へんなトコつれてったら承知しないんだからね!」

日の落ちた学園都市を上条は走る。
観念した美琴はそのの背中にもたれ、心地よい揺れと上条の匂いに身を預けた。

(・・・アイツの匂い)

そう思うと、自然と彼の体を掴む手に力が入る。

(もう、離さないんだからね)

様々な紆余曲折がありはしたが、今回も見事にハードルを乗り越え、自分の望む未来を手に入れたのだ。
正確にはあちらのほうから、今までのものよりもはるかに高く見えたハードルを飛び越えてきてくれたのだ。
ムードのかけらもない告白だったが、天にも上る気持ちだった。漏電しなかった自分を褒めてやりたいぐらいだ。



ぎゅっ

(・・・あ)

そんなきもちのこもった力の加わりが上条に通じたのだろうか。
自分の体を支える上条の手にも力が加わるのが、美琴にはわかった。

「御坂」

「・・・なに?」


上条が走りながら、美琴に話しかける


「ありがとうな。」

「なによ、いきなり」

「いや、いままで言ってなかったと思ったからさ。
オレを好きになってくれて、ありがとうって。」

「・・・そんなの、お互い様じゃない。ううん、アタシのほうがいいたい台詞よ。
アタシをす、好きになってくれてありがと、って。」


しばしの沈黙の後、二人の笑い声が響く。


「ははは・・・オレたちって、似たもの同士なんだな。」

「ふふ、そうね。おせっかいだし」

「人が傷つくくらいなら自分が傷ついて、ボロボロになって。」

「「それでも、自分を曲げない頑固者で」」


「最初に会ったあのときに、アンタの不幸がうつっちゃったのかもね。」

「だとしたら、感謝しなくっちゃな。おかげで一緒にいられるんだから。」

「そうね・・・」

愛しい少年の首筋に顔をうずめ、深呼吸する。
このときばかりは、黒子の気持ちがわかってしまう。我ながら脳がとろけてるように思える。が、それでもいいやと思った。

―アタシのしあわせは、こういうことなんだから。―と



―――――――


「はい、到着ですよお客さん」


優しく背中から美琴を降ろし、立たせる

「いったい何なのよ?アンタにしちゃ気が回りすぎてて恐いわ・・・」

「ふふん、最初に言ったはずですよ?今日の上条さんは一味も二味も違うって。それっ!」


シュル


「えっ・・・・?」


パ  ア ァ  ―――――z__   ッ


掛け声と共に目隠しをとる。
美琴の眼前に広がったのは、高台から望む学園都市の夜景だった。


「綺麗・・・・・・」

「夜と昼とでだいぶ違うもんだろ?
門限だなんだって言ってるから、もしかしてみたことないんじゃないかと思ってな」

「アンタはここに来たことあるの?」

「ガラの悪いお兄さんに追いかけられたときにたまたまな・・・」

「あはは、そうなんだ。で、なんでここにつれてきたの?この夜景を見せるため?」

「ああ、それはな・・・」



ちゅっ・・・



時間が止まったように静かになる。上条の唇が美琴の額に押し付けられた。


「ふえっ・・・・・!?」

「告白の時はあんなだったからさ。これくらいはと思ってさ。」


美琴は大混乱だ。額にとはいえ接吻をされてしまったのだから。
脳の処理が追いつかない。上条も美琴も真っ赤になっている。


「あああああああああアンタななななななななななななにし」

「ほらほら、バグるなバグるな。」


漏電しかけた美琴の頭に右手を置いてなでる。
しばらくそうしているととろんとした目になり、上条に身を預けてきた。


「大丈夫か?どっか具合でも・・・」

「ねぇ、なんでオデコなの?」

「なんでって・・・御坂はまだ中学生だからな。オレも高一だし・・・
お付き合いというのは節度を守らないとダメだろ?」


美琴はあきれ半分、残念さ半分といった気持ちだったが、すぐにどうでもいいか、と思い直した。
真剣に自分との関係を考えてくれている彼の気持ちが嬉しかったからだ。


「御坂が高校生になったら・・・そんときは、な?」

「・・・わかったわ。ちょっと残念だけど」


ちゅっ


「しばらくは、これで我慢してあげる。」


背伸びして、上条の頬に口付ける。―やられっぱなしってのは、ね?―と自分に言い訳しながら。


「あ、ああ・・・・」

最初は自分からやったくせに、上条の顔は真っ赤だった。

―――――


「ほんと、綺麗ね・・・」

「なぁ、門限大丈夫なのか?」

そのあとも二人は寄り添って、夜景をずっと眺めていた。


「うん・・・それにさ、この景色をもっと見てたいの。アンタが守ったこの街をね。」

「オレは何もしてないぞ?それにこの街のだれも、そんなこと知りやしない」

「そうかもね。でもそのほうがいいの。
世界とこの街を守ったヒーローの正体を知ってるのは、アタシだけ・・・って、素敵でしょ?」


そういって、上条に微笑む。これ以上ないくらいの笑顔で。
その笑顔に、言葉のひとつひとつに、上条は電流を浴びたようになる。
愛らしい瞳が自分を見つめてくれるたびに、彼女に痺れてしまうのだ。

それは、美琴にとっても同じだった。

―ああ、ちくしょう。ビリビリしやがる。でもこれが―

―ああ、なんだろう。ビリビリする。そっか、これが―


「美琴」

「なに?当麻」

「絶対に離さないからな。後悔するなよ?」

「その言葉、そっくりそのまま返してあげる。」

「はは・・・」

「ふふ・・・」


夜の闇の中で寄り添う二つの影。しあわせな二つの影。
この影が離れることは、たとえ神の力をもってしてもありえないだろう。


「美琴」

「当麻」


「「大好き」」



―しあわせなんだな―


煌々と輝く夜景。二人の未来も、きっと同じくらい、もしくはそれ以上に明るいのだろう。
神様にしかわからないことだが、そう断言できる。

お互いを愛し合う二人に、不幸が訪れるはずはないのだから。


            ―とある少年の猛烈恋慕その2―
              ~君の瞳に痺れてる~
                              その3につづく・・・?


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