とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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1日目


「新しい都市伝説ですよ!」

その日は珍しく風紀委員の仕事もなく、4人は久しぶりに遊ぶこととなった。
例のファミレスに入り、「とりあえずビール」的な感覚でドリンクバーを注文した矢先に、佐天が話をふってきた。

「佐天さん…貴方まだそんなものにお熱でしたの?」
「フッフッフ…今回のネタは信憑性高いんですよ!うちの学校でも実体験した人結構いるんですから!」

若干あきれる白井に対して佐天は興奮気味に答えた。

「それで?どんな噂なの?」

基本的に好奇心の高い御坂はこういった話はわりと嫌いではない。
だがこのわずか数十分後、「あのとき、くいつかないで別の話題をふっとけば良かった」と彼女は後悔することになる。

「おっさすが御坂さん!ノリがいいですねー!実はこの辺りの女の子が次々に 助けられる っていう事件が増えてるんですよ!」
「?? 襲われるんじゃなくて?」

学園都市の治安はお世辞にもあまり良いとはいえない。
スキルアウトの能力者狩りや強盗。置き去り。違法な人体実験などの噂も絶えない。
(もっともそういったものから一般市民を守るために風紀委員や警備員がいるのだが、風紀委員第177支部は今日お休みである。)
当然「襲われる」事件はよく耳にするが、「助けられる」事件?というのは聞いたことがない。

「そのことについては私から説明します。」

初春は持参した小型のノートパソコンを立ち上げながら話しだした。
ちなみにその前にはいつの間にか注文していつの間にか空になったジャンボパフェの容器【なきがら】が置いてあるが、もはや誰もツッコもうとはしない。

「白井さんは知ってると思いますがここ最近、第7学区の犯罪数が減少してきてますよね。」
「まぁ…おかげ様でこのようにお暇をもらっている訳ですし…」
「でも実際には犯罪数そのものはあまり変化はしていないんです。ただ何者かが風紀委員に連絡を入れる前に事件を解決しているらしいんですよ…っとこれですね。」

初春はノートパソコンをみんなに見えるように向けた。
画面は幻想御手事件のときに見た都市伝説に関するホームページ。そこには
    『 不 幸 な 王 子 様 』
というふざけた幻想のようなタイトルとその内容が書かれていた。

「お…王子様…ですの?子供っぽいというか…メルヘンチックというか…正直首筋が痒くなってきそうなタイトルですの…」
「まあまあ、それには理由があるんですよ!ココです!」

佐天は画面上にある内容の部分を指でさしながら得意げに話しだした。
この子はいつでもテンションが高いなぁ。

「その人はどこからともなく現れて、困っている女の子を助けちゃう。ていうのはさっき言いましたよね。
 で、王子様の由来なんですけど、助けられた女の子は高い確率でその人のこと好きになっちゃいらしいんです。
 ほら、ちっちゃいころってピンチのときに王子様が助けてくれてそのまま恋に堕ちる…な~んて憧れたじゃないですか。
 そのシチュエーションと重なって、そう呼ばれ始めたみたいですよ?
 …まぁ今時王子様ってどうよ。って思わなくもないですけどね。」

佐天の最後の言葉に「好きなタイプは白馬に乗った王子様」を地で行く、頭の上も中身もお花畑な初春は軽くショックを受けた。

「悪いことではありませんが、初春が言うには本来風紀委員が出動するような危険な現場にも首を突っ込んでいるのですわよね。
 怪我をする前に、そのお方には厳重注意しなければなりませんと。」
「ね、ねぇ佐天さん?その『王子様』の部分はわかったんだけど…その、ふ、『不幸な』ってどうゆう意味なの…?」

御坂はものすごく嫌な予感がしていた。
都市伝説の内容にハンパないデジャブを感じるし、「不幸」という単語にも聞き覚えがありすぎる。

「あぁ、別にそこはたいした理由じゃないんですよ。ただその人口癖でよく
 『不幸だぁー!』って叫ぶらしいのでそこからついたみたいです。」

99%の予感は100%の確信へと変わった。
世界広しといえどそんな口癖を言うやつは『アイツ』しかいない。他にいてたまるか。

(あ・の・バカ!なに噂になってるのよ! どんだけフラグ建てれば気がすむのよ!
 そんなに女にモテたいわけ!? だったら何であたしのことはいつもスルーすんだゴルァー!!)

と、頭に浮かんだ『アイツ』に向かって理不尽な怒りを撒き散らす御坂。
本人に代わってあえて言ってあげよう。不幸であると。
ちなみに彼の名誉のために言っておくが、彼はモテたくて女性を助けている訳じゃない。
単純に男女関係なく(といってもなぜか圧倒的に女性が多いが)困っている人を助けているだけなのだ。
さらに不幸を呼び寄せる彼の体質によって、他人の不幸に巻き込まれることも度々ある。
つまり 不幸発動→巻き込まれる→誰かが困っている→助ける という連鎖を何度も繰り返すうちに
『不幸の王子様』という恥ずかしい称号を承っちまったのである。
仕方ないさ、十何連鎖もすればおじゃまぷよだって王冠ぷよに進化する。
まぁ彼はまだこのことを知らないのだが…

「…ぇ様。聞いていますの?お姉様。」
「ぅえ!?…な、なに!?」

白井に話しかけられているのに気づき、御坂はあわてて返事をする。

「どうかなさいましたの?ご気分が優れないようでしたら黒子が人間ベットとなって
 …ハァハァ…お姉様を抱擁しつつアビャビャビャビャ!!!!ウボァー!!」

みことの10まんボルト こうかはばつぐんだ!
……おや!? くろこのようすが…… おめでとう! くろこは まっくろこに しんかした!

「あの…本当に大丈夫なんですか…?」
「平気よ初春さん。これくらいいつも慣れてるから。」
「いえ白井さんではなくてですね…(いや白井さんも十分心配なんですけど)」
「そうですよ!なんか変でしたよ?御坂さん。ぶつぶつ言ってると思ったら急に顔が赤くなったり。」
「え、エェーー!?さ、佐て天さんまでへんなこといわないデヨー!
 別に?あたし?さっきまでと?かわんないし? …いやーそれにしても今日はいい天気ねぇ…」

ひょっとして今のは誤魔化したつもりなのだろうか。
佐天と初春は(絶対)(何かある)とアイコンタクトして、「「ナンダーナニモナインデスカー。ヨカッタヨカッタ。」」と
あえてゆさぶりをかけず、とりあえず誤魔化されてみた。ちなみに今日は曇っている。
御坂としても言える訳がない。
頭に浮かんだ『アイツ』に向かって怒りを撒き散らした後、
ひともんちゃくあって仲直りし、
すったもんだあって付き合うようになり、
なんやかんやあって結婚することとなり、
あれがなにして子供に恵まれるところまで妄想していたなどと、言える訳がない。
余談だが御坂曰く、3人目の子供が生まれるときに、白井の「…ぇ様。」が聞こえてきたらしい。 しらんがな。

そんな御坂の様子を、復活した白井はちらりと横目で見て、色々と察したらしく、

「あぁ…例の王子様とやらはあの類人猿ですの…     と、ぼそりとつぶやき
 …………………………チッ!!!」          と、盛大に舌打ちした。
「ぇえ!?白井さん王子様の知り合いなんですか!?」
「えぇまぁ…非っっっ情に不本意ながら知り合いと呼べなくもなくもなくもないですわ。」
「…てことは…」 「御坂さんも…」 「「ですか!?」」

ここぞとばかりに、佐天と初春はふたり同時にゆさぶりをかけた。質問攻め【じんもん】開始。
余談だが御坂曰く、このときのふたりは青くトガった弁護士に見えたらしい。 しらんがな。
御坂は明後日の方角を見ながらわざとらしく鼻歌を歌っている。
LEVEL5は頭がいいはずなので、これは御坂の心理戦略か、もしくは超天然なのだろう。
しかし知り合いの話をするのにここまで拒むだろうか。
ひょっとして何か弱みでも握られてるんじゃないだろうかと初春は心配になってくる。
御坂本人としては『アイツ』の話をして、先ほどの未来予想図【もうそう】をポロっと喋るのを懼れているだけなのだが…
初春とは対照的に佐天はイライラしていた。

「あーもー白井さん!その王子様ってどんな人なんですか!?」

シビレを切らした佐天は御坂をあきらめ白井に話をふった。
   計画通り!!……なのだろうか。

「どんな…と言われましても髪型以外はパッとしませんわねぇ…それに王子と言うより類人猿ですの。」
「る、るいじん…?さっきも言ってましたけど何なんですかそれ。
 王子で猿で髪型に特徴って…きたねぇ花火を打ち上げる人ですか?」
「いいえ、戦闘力はせいぜい4か5程度…ヤムチャ位しか倒せませんの。
 そうですわね、口で説明するより…初春、ちょっとカミジョーさんという方を調べてくださいな。」
「はぁ…カミジョーs あ、でました。」
「早っ!…ってこのひとLEVEL0ですよ!?」

ノートパソコンのディスプレイにはとある高校の生徒情報が写し出されていた。
(本来、一般生徒にはアクセスできないはすなのだが、初春にとってはググる程度の作業と大差ないようだ。)
そこには 上条当麻 LEVEL0 と書かれていた。

「う~ん意外ですね。都市伝説になるくらいですからてっきりLEVEL7はあるかと思ってました。」
「それでは『脱ぎ女』の木山先生もLEVEL7ですわね。あと13上がれば賢者に転職できますわ。
 …どうしましたの初春。なにやら難しい顔して。」
「…この人どこかで…あ!思い出しました!連続虚空爆破事件のときセブンスミストにいた人です!」
「えー初春も知ってるの?あたしだけかー会ったことないの。」
「…アレ?…あたし会ったことあるって言ったっ…け…?」

       誰だってわかります(わ)よ
3人は心の中で同じタイミング、同じ言葉でツッコんだ。

「じゃあ今度は御坂さんから聞きましょうか。」
「そうだね。この上条…え~と当麻さんてどんな人なんですか?
 もう誤魔化せませんからね。さっき、会ったことあるって認めたんですから!」
「ど…どんな…別に…ふ…普通よ…」

御坂の歯切れの悪い答えに、このふたりが納得するはずもなかった。
だって普通の訳ないもの。 顔真っ赤だもの。 なんかもじもじしてるもの。
まさかの大当たり。ふたりは内心ニヤリとした。
女子中学生にとって友人の恋愛話ほど面白いものはない。
この後御坂は、下校時間になるまで二度目の質問攻め【じんもん】されることとなる。


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