特売デート? 1 (前)
「……あ~~、暇だわ~」
御坂美琴はいつもの自動販売機の横にあるベンチにもたれかかっていた。
いつもの自動販売機というのは、美琴に日常的にハイキックされている哀れなソレのことである。
暇と言いながらも本音では「アイツに会えるかも」と期待しつつ待っているわけだが、今日はまだお目当ての人物には会えていなかった。
「今日はもう帰るか」
別に待ち合わせしたわけではなかったのだが、待ち人に会えなかったせいか、美琴は心なしか落ち込み気味で帰路に着こうとしたが
その時、トンガリ頭の少年がこちらに向かって走っているのが視界に映った。
「あっ!ぐ、偶然ね~」
全く偶然ではないのだが会話の導入の常套句で話しかけた美琴の横をその待ち人『上条当麻』は……
全速力で駆け抜けた。
「……人が話しかけてんのに無視すんなゴルァ!」
高圧電流の槍が上条に向かって放たれた。
「どわあ!っておいビリビリ、挨拶代わりに電撃飛ばすのやめろって言ってるだろ」
「うっさいわね!アンタが人の事シカトするからでしょうが。あと私はビリビリじゃなくて御坂美琴って言うちゃんとした名前が」
「おっとこんなことしてる場合じゃなかった。じゃあな御坂」
「人の話を聞けーーーっ!!」
バリバリと再度上条に向けて電撃が放たれた。
「スーパーの特売日?」
「ああ、現在上条家の冷蔵庫はスッカラカンだからな。今日の特売で買いだめして飢えをしのごうと思ってたんだが…」
上条は美琴にジト目を向けながらぼやく。
「うっ!で、でももとはと言えば最初にアタシがアンタに声かけた時にスルーするのが悪いんじゃない!」
「あ~そのことは謝るが、……不幸だ」
上条はがっくりと肩を落とした。その姿を見た美琴はさすがにいたたまれなくなり
「……ゴメン」
「いや気にすんなって。急いでて気付かなかったとはいえお前をスルーした俺も悪かったしな」
「その特売って今からじゃもう間に合わないの?」
特売と言う単語に漠然としたイメージしかできない美琴はどんなものか聞いてみたが
「う~ん今からいっても目的のものは少しは手に入るだろうけど予定してた分は無理だろうな。まあ行かないよりはマシだから行くか」
「ちょっと待ちなさいよ」
「まだ何かあるのでせうか?」
上条は疲れた表情を見せながら振り返る。
「アタシも一緒に行くわよ」
「ハイ?」
「一人で行くより二人の方が効率いいでしょ、アンタの予定の分に届くかはわからないけど手伝うわよ」
「いや悪いからいいって」
「別にいいわよ、どうせ暇だったし」
「いやそうじゃなくてさ、お前スーパーの特売とか行ったことあるのか?」
「……」
普段の振る舞いのせいかそう見られないことが多いが、御坂美琴はれっきとしたお嬢様である。
幼い頃から学園都市の食事付き学生寮に住んでいるため食事の買出しとは無縁の生活を送っている。
そんな少女がスーパーの特売と言うむさ苦しいイベントに参加したことなどあるわけがないのだが
「まあなんとかなるでしょ」
「いやいやいや!なんとかならないって、今後の展開想像したらカミジョーさんとても不安なんですがーっ」
「いいから行くわよ」
「(さっきまで怒ってたのになんで急に機嫌よくなってんだ?)」
「なにしてんのよ、早く行くわよ」
「へいへい」
最初は乗り気じゃなかった上条も、機嫌の良い美琴を見ているとどうでもよくなったらしく結局一緒に行くことに
そして二人は戦場へ・・・