小ネタ そんな足じゃ寮まで帰れねーだろ?
美琴「今日という今日こそ覚悟しろやこらーっ!!」
上条「はあっ、はあっ、ふ、不幸だぁーっ!!」
土手沿いを走る一組の男女。いや、これは「追いかけっこ」と言った方が正しい表現なのだろうか、
少女の方が、顔に似合わぬ荒々しい罵声を吐きながら、逃げ走る少年を追いかける。
上条「お、お前もっ・・・いい加減、こ、懲りねえヤツだなっ!!」
美琴「はあっ、はあっ、あ、アンタが、悪いんでしょうが!!いい加減、人をビリビリ呼ばわりするなっつーの!!」
彼女の名は、御坂美琴。これでも一応常盤台中学に通うれっきとしたお嬢様である。
彼女はこの学園都市に7人しかいないレベル5の一人であり、「超電磁砲」の異名を持つ。
それ故に、この逃げ足だけは達者な少年・上条当麻からは「ビリビリ」と呼ばれる事が多い。
美琴「私にはっ、み、御坂美琴って立派な名前があんのよ!!はあっ、ちゃ、ちゃんと名前で呼びなさいよ!!」
上条「だ、だったらっ!!出会い頭にいきなり電撃をぶっ放すのはやめていただきたいんですがっ!!」
美琴「あ、アンタが私の顔見るなり逃げ出すからでしょうがっ!!そんな態度を示すアンタが悪いのよっ!!」
上条「こっ、これは最早反射と言うかっ、身体に染み付いたもんなのでっ!!はあっ、な、治らないのでございますよっ!!?」
美琴「アンタやっぱりむかつくんじゃーっ!!」
美琴が再び電撃をぶっ飛ばすと、うおわぁっ!?と上条がバランスを崩して少しだけ二人の距離が縮まる。
これはチャンスと睨んだ美琴は、ズバン、ズバンと上条の足元に電撃を放っていく。もちろん、足止め程度に。
美琴「はあっ、はあっ、逃がさないわよ・・・!!」
美琴が再び電撃を放とうとした瞬間、彼女は足元の出っ張りに足を取られて転んでしまった。
電撃を打つ事に集中しすぎたせいで、足元への注意が疎かになっていたのだ。
美琴「痛つつ・・・」
上条「おっ、おいおい、大丈夫かよ?無茶しすぎるからそんな事になるんだよ」
美琴「う、うるさいわね。元はと言えばアンタが・・・っつつ・・・」
美琴は何とか立ち上がろうとするが、足元をくじいてしまったのか、ストンと尻餅をついてしまう。
大丈夫か、と声をかける上条に美琴は強がってみせるが、何度立とうとしても足元が痛み、立ち上がれない。
上条「おいおい、無理に強がらなくていいって。お前はいっつもそうだよな」
美琴「うっ、うるさいわね。だ、大丈夫よ、ちょっと足が痺れてるだけだからすぐ治るわよ」
美琴は生まれたての子鹿のようにふるふると震えて立ち上がるが、やはり足元がおぼつかずバランスを崩してしまう。
それを見かねた上条は、仕方のないヤツだなーと言わんばかりに溜息をはいて、美琴の前で跪いた。
上条「ほら、乗れよ。そんな足じゃ寮まで帰れねーだろ?」
美琴は上条のとった行動の意図に気づき、段々と顔が赤くなっていく。
美琴「・・・な・・・なな・・・な・・・!?」
上条「俺にも一応非があるからな、これくらいはさせてもらいますよー」
美琴「べ、べべ別にいいわよ!!そ、そんな事されなくても一人で帰れるわよ」
上条「だーかーらー、強がるなっての。変な意地張ってないで、もうちょっと人に頼れよ」
美琴「な、何よ・・・かっこつけちゃって。ま、まあそこまで言うんなら、の、乗ってあげなくもないけど」
上条は、やれやれ、と言わんばかりに再び溜息をついて美琴をおんぶする。
おんぶして初めてわかる美琴の香り、そして華奢な身体に、上条は改めて美琴を「少女」と認識する。
美琴「へ、変なところ触ったら容赦なく電撃ぶっ放すからね?」
上条「ば、バカ、そんな事しねえっつーの。ほら、しっかり掴まってろよ」
美琴は落ちないようにか、それとも他に理由があるのか、上条の言葉通りにしっかりと上条に抱きつく。
相手の顔がどうなっているかはわからないが、互いに自分の顔が真っ赤に火照っている事はわかる。
二人は照れつつも、ゆっくりと、夕陽に照らされた街並みを進んでいった。