とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第四.五章 暇潰しに恋の話でもどうだろう




(11月10日、カウアイ島近海、UUVカニバルシャーク♯443の映像より)


上条当麻、一方通行、浜面仕上、御坂美琴、番外個体、黒夜海鳥、レイヴィニア=バードウェイ、ロベルト=カッツェの八名は、
リンディ=ブルーシェイクを救出する為にカウアイ島へと向かっていた。
浜面が調達したエアクッション船は順調に航海しているが、船内にはただならぬ緊張感が漂っている。
これから戦場に向かうから、という理由だけではない。
なにしろこの御一行、レイヴィニアとロベルト以外は、それぞれ過去に殺し合いをした仲だ。
「色々あったけど、今は友達だから仲良くしましょう」と言われて、何のためらいもなく「はい、わかりました」と言えるのは、
馬鹿なのか大物なのかわからない、ツンツン頭の少年だけである。
そんなことを知る由もないアメリカ合衆国大統領は、この気まずい沈黙に耐えかねて口を開いた。

ロ 『だ~~~暗い!! ジャパニーズはシャイでいかん! 首脳会議のときの日本の総理も、少しくらいは発言するぞ!?』

上 『そう言われてもなぁ……』

共通の話題が無い。
とはいえ、目的地までまだ少し時間が掛かる。 それまでにこの空気を何とかしたいと思っているのは、上条も同じだった。

一 『別にどォでもいいだろォが。俺達は仲良く旅行しに来た訳じゃねェンだ。馴れ合いなら勝手にやれ』

美 『…へぇ、気が合うわね。私もアンタと馴れ合うつもりはないわ。
    ……私はまだ「あの事」を許したつもりはないんだから……』

一 『あ゛ァ!?』

特にこの二人の雰囲気がヤバイ。
番外個体と黒夜は楽しんでそうだが、それでも近くに上条当麻【にがてなやつ】がいることで大人しくなっている。
どうしたもんかなと頭を抱えていたところ、意外な人物が意外な話題を振ってきた。

バ 『暇潰しに恋の話でもどうだろう。日本の学生はこんなときKOIBANAをするのがスタンダードなのだろう?』

緊張と緩和というヤツだろう。あまりに空気とかけ離れたバードウェイの提案に、全員が吹き出した。

バ 『ち、違うのか!?』

浜 『間違っちゃいねえが、そりゃ修学旅行生の夜のスタンダードだよ』

一 『チッ…くだらねェ……』

番 『いいじゃんコイバナ! ミサカ興味あるな~』

心底、嫌そうな顔をする一方通行を見て、番外個体がくいついた。
彼女は一方通行に嫌がらせをするのが趣味なのだ。今回の件で、さらに美琴と海鳥という玩具【ターゲット】が増えた訳だが。

そんなわけで、先程までのピリピリムードはどこへやら。 一気に合コンみたいなノリへと変わった。

番 『はいはーい! じゃあこの中で、恋人、愛人、セフレ、配偶者がいる人手ぇ挙げてー!』

司会進行は番外個体がするようだ。 ツッコミたい単語があったが、まぁスルーしよう。
手を挙げたのはロベルトと浜面の二人だけ。
それを見てミスタースキャンダルは驚いた。 というか貴方も、あっさり愛人がいることを認めてもいいのか?

ロ 『おいおい! 性欲旺盛な10代の若者が、そんなに枯れててどうする!
    これだから日本の少子化は歯止めが利かなくなるんだぞ!? もっと入れたり出したりしないとダメだろう!』

アメリカで最も偉い人の、純度100%の下ネタに、
上条と浜面は苦笑いし、一方通行と海鳥とバードウェイは冷たい視線を送り、美琴は真っ赤になり、番外個体は爆笑していた。
そこでふと、浜面があることを思い出す。

浜 『あれっ? 大将、あんなにモテるのに彼女いねえの?』

上 『モテる? 誰が?』

浜 『いや、だからアンタが……』

上 『………(多分)生まれてこの方、上条さんにモテ期なんて都市伝説、訪れたことがありません』

浜 『ぅえ!? だってこの前、明らかに女の子に囲まれてたじゃん!!
    そうだ! アンタだってその中にいたよな!?』

美 『えっ!!? 私!?』


美琴は急に振られて焦っていた。
事実なだけに、どう言い訳するればいいか困っていたのだ。

美 『あ、あれはそういうんじゃなくて……だから、つまり、そういうんじゃないの!!』

何ひとつ情報のない言い訳をされてもこちらも困る。
ただし、美琴のあからさまなその態度に、上条以外の人間は何かを感じ取ったようだ。

黒 『やァァァァめェェェェろォォォォよォォォォ!!!』

黒夜に再び猫耳をつけて遊び【イジメ】ながら美琴の様子を見て、番外個体はニンマリとする。
いや、その前に黒夜を離してやれ。 口調も変わってるし、そのままだとまた泣くぞ。

番 『そう言えばおねーたま、さっき買ったキューピッドアローの―――』

美 『そおおぉぉい!!!』

面白い【よけいな】ことを喋ろうとした番外個体の口を、美琴は急いで塞いだ。
普通ならここで、「それは誰へのプレゼントなのかにゃーん」と追求するものなのだが、

上 『なんだ御坂、もうお土産買ったのか? つーか俺も買わなきゃな、やっぱマカデミアンナッツがいいかなあ?』

と、どうでもいい方向に話をもって行った。この辺りは、さすが上条さんとでも言うべきか。
美琴はホッとしているが、他のみんなは心の中でこう思っていた。

知らねぇ(ェ)よ。

しかし、このまま有耶無耶になってもつまらない。
なので番外個体は無理やり話を戻した。 上条がまだお土産のことを話しているが関係ない。
ハワイ出雲大社のお守りとか、そんなのどうでもいいのだ。

番 『じゃあ恋人がいない人に質問。 単純に好きな人っている?』

バ 『特には』

黒 『別に』

上 『んー……そう言えばいないな』

一 『興味ねェ』

番 『第一位は、「興味ねェ」の前に「13歳以上は」がつくけどね! ギャハッ☆』

一 『よォし、テメェは自殺か俺に殺されるか、どっちかを選べ』

ここまでは予想通り。

美 『わわわ私にもいないわよっ!!? す、好きな人ってなぁに!? おいしいの!?』

これも予想通りだった。 いや、予想以上だった。
いくらなんでも「おいしいの?」は、ないだろう。

ロ 『おお! コレが本場日本のツンデレか…… そして今の俺のこの感情こそが「萌え」というヤツか!』

美 『ツ、ツン!? 私はべべ、別に誰にもデレてなんかないわよっ!!!』

浜 『……なぁアンタ、ずっとそんな感じで疲れないか?
    好きな人がいるなら、少しくらい素直になったほいやなんでもありません!!!!!』

言いかける浜面に、高圧電流が飛んできた。 船を操縦していようが容赦はない。
だが、浜面のファインプレーによって、この鈍感男がついに動いたのだ。

上 『…御坂って好きな人いるのか?』

美 『ぅえっ!!? あ、えと、その………』

ここでいつもの様に否定するのは簡単だ。 しかし、ここで「いない」と言えば、「なんだ、やっぱりか」で終わってしまう。
せっかくこの男が、こっち方面の話に興味を持ったのだ。
なんとかして意識させたい。 しかし、大統領も言っていたように彼女はツンデレだ。
自分から言えるなら初めから悩みはしない。
そう思っていると、思わぬところから助け舟が出てきた。


一 『……そりゃいるだろォよ。 しかも、もしかしたらテメェのよく知る人物かもなァ』

美 『ア、一方通行!?』

まさかの援護射撃に、一番驚いているのは美琴本人であった。

上 『俺の知ってるヤツ……? 誰だろう……』

考えても考えても答えは出てこない。
そもそも、上条は御坂の友人関係についてよく知らない。
白井のことは知っているが、アレはさすがに違うだろう。
そうなると誰だろう、と、上条は今までの美琴との出来事を思い出してみた。

思えば美琴は、いつも何かに怒っていたような気がする。
いつもの公園では白井に怒っていた。
擬似デートのときは、海原と仲良くなったら怒られた。
罰ゲームのときは、御坂妹と一緒にいたら怒られた。
インデックスがいるときも、五和がいるときも、美琴は常にイライラしているようだった。
まるで上条と一緒にいるのを第三者に邪魔されるのを、何よりも嫌がるように。
いや、しかし、それではまるで―――

一 『…まだ、気付かねェか? ソイツはレベル0にくせに勝手に事件に首突っ込ンで、人の心に土足で踏み荒らすよォな野郎だ。
    けどなァ、コイツはそンな馬鹿【ヒーロー】に救われてンだ。
    何の見返りも求めず、当たり前のよォに助けてくれたソイツに感謝してンだよ。感謝してもしきれねェくらいになァ。
    コイツが惚れてンのはそういう男だ! わかったか三下【ヒーロー】!』

果たしてそれは、美琴の気持ちだけを代弁して言ったのだろうか。
どちらにせよ、一方通行の言葉は上条を大きく揺さぶった。

上 『(御坂の好きな人って……まさか…いや…でも…やっぱり……)』

上条は美琴を見つめた。 すると彼女はかすかに震えていた。
不安と期待の混ざったその瞳は、何を映しているのか………

上 『……御坂、レベル0ってことは……その…やっぱり……』

美琴はギュッと目を瞑った。周りの者も誰一人口を開かず、エアクッション船のエンジン音と波の音だけが聞こえてくる。









上 『浜面のことが好きなのか?』

その後、初めより空気が悪くなったのは言うまでもない。




番 『そンな馬鹿【ヒーロー】に救われてンだ(ぼそっ)』

一 『………うるせェよ』






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