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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind/Part02

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第1話 変化


 学園都市に住む一人の高校生、上条当麻。
 なんの変哲もない学生に見える彼だが、数々の戦場をくぐり抜け、幾多の修羅場を経験してきているちょっと特殊な高校生だ。
 また彼はやたら不幸だったり、尋常ではないくらい女性からモテたり、切り落とされた右腕が自動修復したりと、他人とは若干違うところがある。
 しかし、高校生であることになんら変わりはなく、上条は今日も普通の学生生活を送ることが……

「き、気持ち悪い…ヘルプミー……」

 できていなかった。
 『気持ち悪い』、つまり体調不良である。
 今は2時間目が終わった後の休み時間で、いつもより騒がしい教室内の音が、上条の頭に嫌な感じで響く。
 そしてなぜ騒がしいのかというと、今日は教師の勉強会があるらしく、学園都市内の学校のほとんどが3時間目の授業で終わるため、みんなのテンションが高めなのだ。 
 そんな騒がしい中、いつもより数倍顔色の悪い上条は、ただ一人自分の学制机に突っ伏していた。

(朝は大したことなかったのに、どんどん具合が悪くなってきてやがる……なんか世界が回ってる気がするんだけど…これ死ぬんじゃね?)

 それほどヤバい状態だった。
 さらに、具体的な症状は頭痛、吐き気、微熱、胃痛、などひどいものだ。
 だが、こうなった原因ははっきりとわかっている。

(これ、絶対昨日の土御門の薬のせいだよな…なんで飲んだんだ、俺…)

 上条は自分のバカさを呪った。
 あの時、なぜ土御門の口車に乗せられ、『増強剤』を飲んでしまったのか。
 飲まないでスルーしておけば、こんなことになっていなかったはずだ。
 青汁感覚で『増強剤』とやらを、普通に飲んでしまった昨日の自分に腹が立つ。
 で、『増強剤』を上条に勧めた当の土御門はというと

「上やーん、体調不良以外に何か変化はないのかにゃー?」
「ちょ、ゆ、揺するの止めて…」 

 上条の肩に手を置き、顔を上げるよう大きく前後に揺する土御門。
 そしてすぐ隣には傍観している青髪ピアスが立っている。
 上条が体調不良を訴えているにもかかわらず、彼らは全く心配していなかった。
 それどころか、土御門は『増強剤』がどんな効果を発揮するのかがかなり気になるらしく、この日の朝から執拗に上条に尋ね続けているのだ。
 しかし、これ以上上条に何も変化がないことがわかると

「うーん……もう何も変化はないみたいだにゃー。……つまらん。」
「体調が悪くなるだけって……ボク飲まんくてほんとによかったわ。」

 土御門と青ピはそろそろ3時間目の授業が始まるということで、上条の側から離れて行った。

(飲んだ俺も悪いけど……あいつら絶対殴る…殴り飛ばす…)

 上条は心の中でそう誓った。
 あんなおかしな薬を勧めてきた土御門と、それを囃し立てた青ピにも非はある、はずだ。多分。
 しかし、現在絶賛体調不良の上条に2人を倒す力などない。
 さらに保健室まで歩く元気もないため、仕方なく自分の席で体力の回復を待っていると

「上条君。大丈夫?体調が悪そうだけど…」
「え…」

 声に反応し顔を上げると、そこに立っていたのは髪の毛の長い少女、姫神愛沙だ。
 表情は乏しいが土御門や青ピと違い、普通に上条のことを心配してくれている。
 そんな彼女に、上条はに目に涙を浮かべながら言う。

「あ、ありがとう姫神…クラスで俺のことを心配してくれるのはお前だけだ…」
「ッ!……これは好印象?」
「ん?何か言ったか?」
「いや。なんでもない。早く治してね。」

 そう言う姫神の顔は、少し赤くなっているようだった。


 ♢ ♢ ♢


 そんなこんなで机に突っ伏したまま、3時間目も無事終了。
 問題の上条の体調はというと

(なんか知らんが、治った…?うん、いつも通りだよな。)

 幸運にも、この1時間で完全回復していた。
 なぜ治ったのかわからないが、それを気にしている場合ではない。
 体調不良の原因を作った土御門&青ピ狩りに出かけようと思い、自分の席から立ち上がった所で

「上条!!」
「え?吹寄…?」

 上条を呼び止めたのは、クラスの優等生でおでこが特徴の少女、吹寄制理だ。
 腕組みをした彼女は、鋭い目つきでこちらを見ている。

「な、なんでせうか?吹寄様……」

 上条はビビリながら尋ねるも、相変わらず吹寄はこちらを見ている、というより睨んでいた。
 宿題か?授業態度か?悪友2人と騒いでいたからか?
 吹寄が不機嫌な原因をいろいろ考えてみるも、正解を導きだすことができない。
 やべーよこれ、理由はわからないけどまた頭突きされるよ、という感じでびビビっている上条に吹寄がゆっくりと近づいて来た。

「上条、お前さっきの授業中ずっと寝ていたでしょ?」
「……いやそんなこ「正直に言え。」と……あります…」

 吹寄が不機嫌な原因、どうやら授業態度らしい。

(こ、これはもう完全に頭突きフラグじゃないですか…つーか土御門と青ピの野郎笑ってやがる……)

 上条は完全に諦めた。
 今からおでこに、今日1日の記憶が曖昧になるほど強い衝撃が襲ってくる、と。
 多分悪友2人を殴ると決めていたことも、頭から消えるだろう。
 だが、吹寄の口から出たのは意外な言葉だった。

「……その、だな。寝ていたなら、今日習ったところがわからないだろうから……うちに来て勉強しないか……?」
「は……?」

 上条とクラスメイトは耳を疑った。今、吹寄はなんと言った?
 全員の耳が確かなら、彼女は“うちに来て勉強しないか”と言ったはずだが、吹寄といえば『対上条属性完全ガードの女』として有名だ。
 その吹寄が上条を勉強に誘ったのだ、しかも少し頬を紅く染め恥ずかしそうにしながら。 
 当然、クラス中はパニック状態だった。
 いつのまに吹寄も上条の手中に落ちたんだ?とか
 これ夢?いやありえねーだろ?とか
 そろそろ上条殺そうぜ。とか、様々な声が聞こえる
 そんな感じで教室内はざわつき、土御門、青ピ、姫神は呆然としていた。


 しかし、そこは鈍感な上条。
 クラスメイトが『吹寄がデレた』から驚いているのに対し、上条は『頭突きされない』ことに驚いていた。

(え?何?これ?頭突きされないのか?……なんでかわかんねーけど、神は俺を味方した!!)

 上条は歓喜した。
 おでこに痛みはないし、まだ立っているし、意識もある。
 こんな幸運なことがあっていいのだろうかと、嬉しさに震える上条に、顔を赤らめた吹寄が尋ねる。

「上条……それで…どうなんだ?2人きりになるが、いいのか?ダメなのか?」
「え?今日…それも2人きり…」

 確かに授業は聞いていなかったので、吹寄の家に行って勉強するのも悪くない。 
 というか、これ以上授業についていけなくなれば留年間違い無しだ。
 だが、上条の心は決まっていた。

(誘いはありがたいけど……行くわけにはいかないよな。)

 別に吹寄と勉強することが嫌なわけではない。
 上条にはどうしても、吹寄の家に行くことができない理由があった。
 なので吹寄の誘いを断ろうと思った瞬間―――

「は~い!それでは帰りのHRを始めるのですよ~…?何を騒いでるのですか?」

 上条達の担任である、身長わずか135センチの月詠小萌が、これから配るのであろうプリントを片手に教室に入ってきた。
 しかし彼女はいつもと違った教室内の騒ぎに違和感を感じているのか、入り口付近で立ち止まった。
 と、思っいきや、小萌の視線は上条に固定されているようで、

「………そうだ上条ちゃん。」
「へ?なんですか?」
「あの、今日の放課後なんですが…私のアパートに来ることができますか?」
「え…小萌先生のですか…?」
「はい。是非とも来てほしいのですが…」
「えーと…」

 是非来て、と言われても上条としては行きたくはない。
 吹寄の家に行きたくないのと同じで、理由があるのだ。
 どうするべきか、上条は考える。

(行きたくはないけど、俺の成績についてとかだったら、行かなきゃまずいよな。…でもな…)

 行くべきか、適当な理由を言って行かないべきか。
 しかし、後になって“来なかったから重要なことが教えられなくて留年”、なんてことになったら泣くに泣けない。
 上条が悩んでいると

「小萌先生!」

 と、ざわつく教室内の声をかき消すかのように、吹寄が大きめの声を出した。
 クラス中の視線が彼女に集まり、うるさかった室内は自然と静まり返る。
 そんな状況で、吹寄は小萌に近づき、誰もが耳を疑うとんでもないことを言い出した。

「申し訳ありませんが、上条は私との先約がありますので、先生のアパートに行くことはできません。」
「は?」

 上条は思わず声を出してしまった。
 また上条と同じく、驚きのあまり静まり返っていはクラス内は、再びざわざわと騒がしくなった。
 だが、耳を疑う出来事はこれだけで終わらない。
 反抗的な態度を示す吹寄に、小萌はいつもと違う笑顔を見せながら言った。

「いやいや、何を言っているのですか?上条ちゃんは私の生徒さんなのですよ?優先順位はせんせーにあるに決まっているじゃありませんか。」

 明らかに吹寄に対する反撃だ。
 入り口付近で火花を散らし合う小萌と吹寄。
 どうしてこうなったのか。
 上条は目の前で起こっている事態を、全く飲み込めていなかった。

(ど、どういうこと…だ?小萌先生も吹寄もおかしくないか?この2人が言い争うなんて……ていうか俺、まだどっちの家にも行くって言ってないんだけど…)

「「上条!(ちゃん)!!」」
「は、はい!!」


 ふいをつく大声、上条は反射的にピンッ!と背筋を伸ばした。
 そして声のした方向を向くと、吹寄と小萌がこちらを見ている。
 ただ見ているだけなら何の問題もないのだが、今2人には異様な迫力があった。
 一体何なんだ、と冷や汗をたらす上条に、吹寄と小萌が言った。

「上条の意見を聞きたい。どっちの家に来るの?もちろん私の家よね?」
「何言っているのですか?もちろんせんせーの家ですよね?」
「え、いや、俺は行けな「上やん!!!」…」

 上条の言葉を遮り、怒号がとんだ。
 嫌な予感は全開、そして上条にゆっくりと歩み寄ってきたのは…

「あのなぁ……」
「な、何でしょう、青髪大明神様……」

 多分、青髪ピアスだ。
 スーパーサ○ヤ人か何かですか?と、尋ねたくなるほど怒りのオーラを纏っており、彼の背後にはスタープラ○ナ的な物が見える気がする。
 というか、普段のおちゃらけた彼とは全く雰囲気がことなるため、本当に青髪ピアスかどうかが怪しい。
 すると彼は大きく息を吸い込み

「小萌先生まで手にかけるとはなにごとやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!
!!!!!!!!!!!」

 学園都市中に聞こえるのではないか、というくらいの大声を出し、ものすごい形相で上条撃墜体制に入った。
 どうやら青ピは上条が小萌先生にもフラグを立てたと思い、怒りが頂点に達したようだ。
 しかし上条には、なぜ青ピが怒っているのかわからない。

「いやいやいやいや!!俺何もしてねーだろ!!!」
「上やんのフラグ体質があかんのや!!!今日という今日は絶対に許さん!!覚悟ぉ!!」
「いや、俺別に好かれてねーから!!小萌先生!なんとか言ってやってください!!!」

 このままでは間違いなく殺られる。
 上条は誤解を解くため、小萌に助けを求めたのだが…

「だから!せんせーは上条ちゃんを愛しているのですから、譲りなさいと言っているのですよ?」
「そんなこと言ったら私だって上条のこと好きですよ!異性として!!」
「へ……」

 上条の耳に聞こえてきたのは、核爆弾クラスの爆弾発言。
 青ピの出した大声などで注意が削がれていた間に、2人の言い争いは過熱していたのだ。

(……これって、吹寄も小萌先生も俺のことが好きってこと…だよな。……マジカヨ。)

 上条は青ざめた。
 いくら鈍感な上条でも、“愛している”や“異性として好き”と言われたのだ。
 好かれていると気づかないわけがない。
 また、ただでさえ恋愛事には疎いのに、同級生と担任教師が自分に好意を持っていることが一度にわかったのだから、混乱するのは必然だ。
 さらに青ピに誤解を解くどころか、状況が悪化してしまったため、上条がとった行動は―――

「せんせー、上条さんはもう帰りまーす。……じゃあな!青ピ!!!」

 上条は現実逃避し、実際に逃走を開始した。
 だが、完全にキレている青髪ピアスが素直に逃すわけがない。

「あぁ!?待たんかぃコラァァァァァァァ!!!!!!

 小萌と吹寄が立っている出入り口とは別に、後ろの出入り口から教室を飛び出す上条、そしてそれを追う青ピ。
 2人はカバンもほったらかしのまま廊下を激走し始めた。
 上条の背後には、鬼と化した青髪ピアス。
 止まるわけには、いかない。

「なんでこうなるんだよ!!俺何も悪いことしてないのにーーーーー!!!!!!!」

 今日もやっぱり上条は不幸だった。


 ♢ ♢ ♢


 舞台は変わって、ここは常盤台中学。
 学園都市内でも有数のお嬢様学校であるこの学校には、2人のレベル5が在籍している。
 一人は第5位、食蜂操祈。
 一見まともそうに見えなくもないが、結構な人格破綻者である。
 もう一人はというと、とあるツンツン頭の高校生に恋する少女、超電磁砲こと御坂美琴だ。

「今日はもう学校終わりか……アイツに会いたいなー…」

 と、教室の窓から雲一つない空を見上げた美琴は、ぽつりと呟いた。
 彼女が言うアイツ、とは上条のこと。
 もう1週間近く会っておらず、会いたいという想いが募る。

(今どこで何してるんだろ………って、なんかアイツのことばっかり考えてる気がするんだけど!!)

 美琴は重症だった。
 頭の中は上条でいっぱい、最近は本当に彼のことばかり考えている。
 会えない日が続くと、特に症状はひどい。
 だが、今日は学校が3時間で終わるため時間はたっぷりある。
 友人たちはと言うと、黒子と初春は風紀委員の仕事で、佐天は別の友達との約束があるため、集まることができず、上条と2人きりで長い時間会う大チャンスだ。

(電話をして遊ぶ約束を……いや、メールにしよう!)

 美琴は恋愛に対してはビビりだった。
 電話をして直接話すなんてこと、できるわけがない。
 そして『今日ヒマ?』とだけ打ったメールを、震える指で上条へ送信した。
 ちなみにメールを打ってから送るまで20分かかった。

(でもアイツのことだから、メールの返信を期待しちゃダメよね。)

 上条の不幸をなめてはいけない。
 今頃、電池が切れたり、携帯自体をどこかに無くしたりして、返信が来ない可能性はきわめて高い。

(…よし!今日は天気もいいから、なんだかアイツに会えそうな気がするし…返信が来なかったら探しに行こっと!)

 上条に会う。
 ただその目的を達成するためだけに、美琴は街へ足を運ぶことを決めた―――――