とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ Night story




春の夜というのはなぜだか神秘的だ。夜桜と月が創りだす幻想的な空間に心を奪われることがある。

今夜は三日月。桜はないが風が吹くたびに木の葉がサァッ――とざわめく。寒くもなければ昼のように暖かくもないその空間に―――
ヴァイオリンを弾く少女がいた。

曲はショパンの月光。茶色の髪を靡かせながら1人で静かに音色を響かせていた。テラスで楽器を奏でるその姿は、背景とよく合っているようだった。
一通り弾き終わると、楽器を下げて空を見上げる。瞳に映った三日月が異様に輝いていた。
すると、後ろからパチパチと拍手が聞こえた。

「さすがだな。ヴァイオリン弾ける人なんてそうそういないんじゃないか?」

振り返ると、風呂上がりの上条が首にタオルを巻きながら窓の側に座っていた。

「そうでもないわよ。常盤台にいた頃はハープとか弾いてる人もいたんだから」

「上条さんには遠い話です」

まずハープを買うお金さえないな、と苦笑しながらまた美琴を見つめる。

「そうやって三日月に照らされてると・・・綺麗だな」

「ッ!?いきなり何言ってんのよ!!」

美琴は楽器を片づけようとして中に入ると、ささっと自分の部屋に入ってしまった。
上条は、そんなところも可愛いと思ってしまう自分がかなりの変人かもしれないと感じていた。
しばらくすると、彼女は寝巻に着替えてやってきた。

「いつまでそこに座ってんのよ。明日早いんでしょ?」

「それが出張で2日間帰れなかった人に言う台詞ですか美琴さん」

「・・・うっ」

「せめてお帰りは言ってほしかったのになー」

「・・・うぅっ」

「そういえば帰ってきてから1回も名前で呼ばれていないような・・・」

「あーもうっ!!分かったわよ言えばいいんでしょ言えばー!!」

「あ、待って」

上条は立ち上がると、ヤケになった美琴をそっと抱きしめた。背中に腕をまわし、ぎゅっと引き寄せると胸の鼓動がドクン―――と感じられた。
いきなり抱きしめられた美琴は顔を赤くしながら彼のシャツを握りしめていた。

「こっちの方が、帰ってきたって感じがする」

「そ、そうね・・・」

上条は身を低めて彼女と目線を合わせると、笑顔で言った。

「ただいま、美琴」

「おかえりなさい―――、当麻」

三日月が明るく闇夜を照らす中、2人は目を閉じると、唇を重ねた。

「・・・今日はいつも以上に美味しそうな匂いだな」

「は・・・はぁっ!?何言ってんの?今日は何もつけてないよ?」

「でも何かいい匂いがする・・・シャンプーか?」

「何でもいいから勝手に嗅ぐな変態ッ!!」

・・・やっぱり俺って、変人?

~Fin~








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