とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

391

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

共に歩む願いを星空へ




7月7日

七夕の日、学園都市においても七夕祭りが開催され、多くの学生達は夜の街へ繰り出していた。

上条当麻と御坂美琴は現在恋人同士の関係にある。
デートをするには今日は格好の機会だったが、2人は上条の部屋で勉強中だった。
より正確には、上条の課題を美琴が手伝っていた。

現在上条は高校2年生。奇跡と言える進級を果たしていた。
しかし2年生になれたとはいえ、何かとトラブルに突っ込んでいく性格から、
7月の時点で上条の出席状態は昨年度より酷い状況になっており、
それをなんとか補うために課題と補習に明け暮れる毎日だった。

「はぁー。今日も1日潰したってのに、全然終わる気配が見えねー」
「ちょっと、それが休日を1日潰してずっと付きあってた私の前で言うこと?」
「御坂には感謝してるけど、こればっかりは気が滅入るんだよなあ」

深いため息をつく上条。それにつられて美琴もため息をする。

「お祭り、行きたかったな……」

美琴の呟きを聞いた上条は、友達と遊びに行く予定でもあったのかと勘違いし、

「なんだ、言ってくれれば宿題につき合わせたりしなかったのに」

などと言い出した。

(アンタと一緒じゃないと意味ないじゃない)

口には出さなかったが、そのような意味を含めるように、美琴は上条を睨んだ。
珍しく上条はその意図を察することができたようで、素直に謝ることにした。

「あー……わりい。来年はちゃんとするから、一緒に行こうな」
「……わかればいいわよ」

美琴の機嫌が少しだけ直ったことにホッとする上条。

「そうだ御坂」
「なあに?」
「実はこんなものがあるんだけど」

そう言って、上条はベランダの一角を指差した。
そこには、小ぶりな竹笹が立てかけられており、竹笹にはいくつかの短冊が飾られていた。

「へえ。小さくてちょっとカワイイかも」
「学校の友人がくれたんだ。いくつか便乗でそいつらの願い事もついてるけどな」
「ふーん、どれどれ」

美琴は上条がどんな願いをしたのかが気になったので、上条の願い事を探すことにした。
短冊の数自体はさほど多くなかったため、すぐに見つけることができた。

『今年も無事進級できますように 上条当麻』

上条の願い事を見て、美琴は苦笑する。




「切実なのはわかってるけど、もうちょっとこう、ロマンはないのかしら」
「いや、ここはストレートにだな」
「でも、たしかに今日の状況じゃこうなるのも無理はないかもね。
 いいわ、その願いは美琴先生が叶えてあげる」
「はいはい、期待してますよっと。……割とマジに」
「任せなさい。……そろそろ休憩も終わりにする?」
「その前に、せっかくだからお前も何か書いたら?」
「私も? んー、そうね……」

少しだけ考え込み、短冊に願い事を書きこむと、美琴はそれを飾った。

『ゲコ太のグッズがたくさん出ますように 御坂美琴』

「お前な……さっきロマンとか言ってたのはどこのどいつだよ!?」
「な、何よー、ゲコ太がいっぱいいたら素敵じゃない」

上条から指摘され、自分の願いが子供っぽいのかと少し恥ずかしくなった美琴は、
他の人がどんな願い事をしているのか見たくなった。

「ね、他の人の願い事見ても、バチは当たらないわよね?」

なんとなく上条に確認する美琴。
それを聞いた上条は何か都合が悪いと思ったのか、

「え? えーと、ひょっとしたら人に見られると恥ずかしい願い事してる奴もいるかもしれねえし、
 やめといたほうがいいんじゃないかなー、と上条さんは思うわけですが」

やや上ずった声で美琴を止めようとした。
話しながら目が泳いでおり、挙動不審なことこの上ない。

(何か見られたらまずい願い事でもあるのかしら……)

と明らかに不審に思っている様子の美琴の気をそらすために、上条は話題を変えようとする。

「そ、そういえば、今日って七夕だよな? せっかくだから織姫と彦星がどの星なのか教えてくれねえか?
 俺星とかわかんねえから、どれがどれだかわかんなくってさ」

美琴ははぐらかされたことはわかってはいたが、上条の質問を無視するつもりもなかった。
位置がわかりやすいようにと、美琴は上条と頬が触れるくらいの距離まで近付いて説明をした。

「いい? あの辺りに一際大きい星があるでしょ? あれが織姫。
 んで、少し離れたところにもう2つほど明るい星が見えると思うけど、右側にあるほうが彦星よ」
「お、おう……」

上条はすぐ隣にある美琴の顔が気になってなかなか星を探すことができない。
美琴はそんな上条の様子が気にかかり、上条の方へ振り向いたが、予想以上の顔の近さに驚き、慌てて距離をとった。
しばらくの間お互いに無言の状態が続いたが、やがて上条が口を開いた。




「そ、そういえば、織姫と彦星といえばだけどさ」
「うん」
「1年に1回しか会えないんだろ? なんか可哀そうな話だよな」
「そうね……」
「そもそもなんで二人は1年に1回しか会えないんだろうな」
「たしか、二人は夫婦生活が楽しすぎて仕事をサボっちゃって、神様の怒りに触れちゃったそうよ。
 ……あ、アンタも気をつけなさいよ!」

そう言う美琴の顔はわずかに赤くなっていた。
彦星を上条に、織姫を美琴自身に当てはめて、楽しい夫婦生活でも想像していたのだろうか。

一方で、上条は美琴の話を聞いて意外そうな顔をしていた。

「俺、織姫達の話って詳しくなかったんだけど、そんな話だったのか?」
「んー、バリエーションは色々あるかもしれないけど、メジャーなのはこのタイプのはずよ」
「そうか……」

そう言ったまま上条が俯いてしまったので、不思議に思った美琴が問いかける。

「どしたの? どこかイメージと違った?」
「じゃあ、2人が1年に1回しか会えないのって、神様にそうされたからってことになるよな?」
「まあ、そうなるわね」
「……いくらなんでもひどすぎねえか?」
「そりゃ私もそう思うけど、お話なんだから仕方なくない?」
「でもさ、御坂が織姫の立場だったらどうする? 俺が彦星で」
「……んー、やっぱりちょっと寂しいかも」
「だろ? もし俺が彦星だったら……」

上条はなぜか突然握り拳を作り、一度深呼吸したあと

「もし俺が彦星だったら、神様をぶん殴ってでも説得して、御坂のところへ会いに行く!」

急にとんでもないことを言い出した。

「アンタね……サボってて罰をくらったってのに、それじゃ悪化するかもしれないわよ?」
「なんだよ、じゃあ御坂は一年に一回しか会えなくてもいいのか?」
「……んなわけないでしょ。ああでも、そもそも私はサボったりしないから、
 私から会いに行くぶんには許しが出るかもね。だからアンタは待ってていいわよ」
「むむむ? なんか前提がおかしくなってきた気が……」
「細かいところはいいでしょ!……でも、ちょっと嬉しかったかな」
「ん?」
「さっきのよ。アンタ、私と会うためなら神様でも相手にしてくれるんだ」

美琴は上条に向かって笑みを浮かべる。
すると、上条は美琴に笑顔を向けられて急に恥ずかしくなったのか、

「ま、まあ休憩はこのへんにして、勉強しねえとな」

と言ってそそくさと部屋に戻ってしまった。




美琴は少し不満そうだったが、自分も上条を追って部屋に戻ろうとした。
ただ、最後にもう一度だけ短冊を飾った笹を見ようとして、視線をそちらへ移動させる。
そして、笹を眺めていると、笹の低い位置に他の短冊とは離れてひっそりと飾ってあるものがある事に気付いた。
笹のすぐそばにいた時にはちょうど見つけにくい位置にあったため気付かなかったが、少し距離を置くとかえって目立っていた。
美琴は気になってその短冊を除きこんだ。

『美琴に見捨てられませんように。他に好きな男ができたりしませんように 上条当麻』

それは上条当麻の2つ目の願い事だった。
見られると恥ずかしい内容だったから、コッソリと飾っていたのだろうか。

「……ばーか」

美琴は小さく笑い、余っていた短冊を取り出して新たな願い事を書き、上条の短冊の隣に飾った。

『当麻とずっと一緒にいられますように 御坂美琴』

美琴が部屋に戻ると、上条は課題と思われるプリントとにらめっこをしていた。
しかしよく見てみると、ペンは全く動いていない。

(やれやれ、私がいないとダメダメなんだから)

などと思いつつも、美琴の顔には満面の笑みが浮かんでいる。
上条に近付くと、美琴は彼に背中から抱きついた。

「おわっ、御坂、急にどうした!?」
「えへへ、たまにはいいでしょ~」
「えーと……」
「♪」

上条としては抱きつかれることは迷惑ではない、むしろ嬉しい。
しかし、今そんな事をされては勉強どころではないではないか。
美琴に離れてもらうかと一瞬考えた上条だったが、

(たまにはこういうのもいいかもな……てか、もう今日はずっとこのままでいいや)

普段とは違って素直に甘えてくる美琴が可愛かったため、上条は全身の神経を背中に集中させ、
されるがままの状態を続けることにした。

結局、その後の上条の勉強はほとんど進まなかった。








ウィキ募集バナー