とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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(無題)




ある朝、私、上条当麻がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分がベッドの中で一人の女の子に変わっているのを発見した。

俺はマシュマロのように柔らかい胸を上にして、あおむけに横たわっていた。
頭をすこし持ちあげると、はだけた水色のパジャマの隙間から、
処女雪のように汚れの無い白さをたたえた腹部、
申し訳程度に添えられたヘソが見える。
ソフトボール大に膨らんだ胸部の大きさにくらべて、手足と腰回りはひどく細かった。

「これはいったいどうしたことだ」と俺は思った。
夢ではない。
見まわす周囲は、若干装飾が変わっているとはいえ、とにかく俺が住む普通の学生寮、自分のいつもの部屋である。
寝ぼけた頭に情報がなだれ込み、脳の処理が追いつかない。

昨日は普通に登校し、授業を済ませ、特売に参戦し、ご飯を食べた。
夜の十時過ぎにはいつも通り風呂場で寝たハズだ。
特筆すべきことも無かったし、それに第一『男の上条当麻』がとった行動のハズだ。

…待てよ。

理解不能な状況の中、さらに強い違和感が俺を襲う。

……どうして俺は『自分の部屋で寝ている』んだ?

インデックスが住み着いて以来『夜は風呂場で寝る』と決めたハズだ。
『一緒に寝てもいいんだよ』という、干天の慈雨すらも断ったハズだ。
緋村剣心が立てた『不殺の誓い』の如く、頑に守り通してきたハズだ。

それだのに、これは一体どういうことだ。
呆然としたまま薄暗い部屋の天井を眺めていると、隣で何かがもぞもぞと蠢いていることに気がついた。
掛け布団は蠢く何かに合わせる様に形を変え、もごもごと起伏が変化している。
隙間から、白くか細い腕が伸びており、何かを求めるように辺りを探っていた。
その指先が俺の指先に触れ合ったかと思うと、いきなり手首を掴まれ、ぐいと布団の中へ引き込まれた。

布団の中は真っ暗で、妙に生暖かく、柔らかいものに触れたのを感じた。
何が何だか分からないまま暴れていると、掛け布団がベットの傍へずり落ちた。
薄暗い部屋の中、隣で蠢いていた何かが起き上がった。
目を凝らして凝視すると、
「……おはよ、当麻」
莞爾と笑う、一糸纏わぬ御坂美琴の姿があった。



ベットの傍に置いた携帯電話が、不快な電子音をがなり立てている。
寝ぼけた頭脳に、延々と鳴り響く電子音が突き刺さる。
思わず叩きつぶしたい衝動をこらえる。
携帯を開いてみると、通常の待ち受け画面で『6:05』という時刻が表示されていた。
電話をかけるには、いささか無礼な時刻である。
尤も『この業界』に無礼もしきたりもへったくれもあったものではないが。

…待てよ。
俺は違和感を覚えた。

……どうして『通常の待ち受け画面のまま着信している』んだ?

また下らないことが起きるのであろう。
俺の経験と直感が警鐘を鳴らしている。
一旦落ち着く必要がありそうだ。

俺が缶コーヒーを飲んでいる間も、携帯は延々と電子音を轟かせていた。
尋常ならざる状況に、いよいよ危機感を覚える。
緑色の受話ボタンを、深く深く本体へとめりこませた。

「こンな早くに何だ、何だよ、何ですかァ?お宅は常識ってのをご存知なンですかァ?」
『電話は3コール以内にとるのが常識な筈だが、そちらこそ常識を知っているのか?』
「生憎こンな時間に電話をかけるような『非常識』な連中の『常識』は忘れちまったンでねェ」
『それは済まなかった、無礼を詫びよう』

謝罪の言葉を口にするが、一片たりとも感情の籠っていない声だった。
その声は、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえた。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる声は、尋ねる。

『君は幻想殺し・上条当麻を覚えているか?』

忘れるはずはなかった。
『絶対能力』になろうという俺の『幻想』を殺した張本人だ。
ロシアでも俺の前に立ちふさがり『ヒーロー』とは何かを体現した男だ。

「あァ。色々とお世話になったもンでねェ」
『では、その上条当麻は男だったか?』
こいつは何を言ってるんだ?
上条当麻は男に決まっているではないか。
しかし、受話口から放たれた言葉は驚くべきものだった。





「てめェ、ふざけてンのかァ!?」
『非常に興味深い「参考文献」が手に入ってね。是非とも実験してみたくなったのだよ』
「……何の為だ?」
『知的好奇心の暴走とでも言おうか。それに今回の実験は君にとっても非常に有益なものとなるはずだ』
「……どォいうことだァ?」
『それを言ってしまってはつまらないだろう?』
「くそったれが!」

舌打ちをし、悪態をつかずにはいられなかった。
こんなことがあっていいのか。
こんなことを『知的好奇心』の一言で済ませていいのか。
俺が焦燥にかられていると、
『君が「もうひとつのベクトル」を操ることが今回の実験の鍵となる。健闘を祈るよ』
そう言って電話は切れてしまった。

携帯を眺めると、いつも通りの待ち受け画面が表示されているだけだった。
呆然としたまま、携帯を強く握りしめた。
しかし、呆然としている暇はない。
とにかく今は『ヒーロー』いや、『ヒロイン』に会わなくては。



第七学区にある窓の無いビル。
培養液にひたされた巨大なビーカーの中には、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』が浮かんでいる。
『人間』は、巨大なビーカーの前に浮かぶ画面を見る。

そこには「ら○ま1/2」が映っていた。

『人間』は、にやりと不敵に笑い、ひとりつぶやいた。
『私だって「人間」だ。息抜きをしたくなる時もある』
『楽しませてくれよ。幻想殺し、一方通行、そして超電磁砲』







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