とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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少女の奏でる旋律は―― 1



お昼過ぎ。
少し肌寒い冬の学園都市――その第7学区のとあるコンサートホールの前の広場を、御坂美琴は歩いていた。

「御坂さ~ん!!」

ふと、遠くから声が聞こえた気がした。

「ん・・・?あ、初春さんじゃない!やっほ~」
「こんにちは!珍しいですね、こんなところで会うなんて」
「ちょっと午前中に実習があってね。初春さんはなんでまたこんなところに?」
「風紀委員ですからね、パトロール中なのですよ、といっても今は休憩中なのですが――あっ」
「どうかしたの?」
「あ、いえなんでもないです!あはは」

そう答えながらも、何やら初春はチラチラと美琴の後ろの方を見ているようだった。

「・・・?――フフ~ン。そういうことか」

初春の視線の正体に気づいた美琴は、肩に担いでいた物を降ろす
――それはヴァイオリンのケースだった。

「?!」

初春は目を丸くする。

「これが気になってたのね。私でよかったらまた教えてあげよっか?」
「わわわわ、とんでもないですよ!」
「まあまあ、遠慮しない遠慮しない」

と言って、ポイッと楽器を初春へと投げつける。
もちろん、常盤台のお嬢様に相応しい価値がそれにあることは言うまでもない。

「ひぃぃ!だから投げちゃだめですってばあああ!」

必死でキャッチする初春をよそに、美琴は後ろに回ってレクチャーをし始めた。

「はいは~い、それじゃ力抜いてね」
「ひゃ、ひゃい!」

そんなことを言われても、美琴から漂う雰囲気のせいで初春は相変わらず目を回している。

「あはは、たかがヴァイオリンでそんな緊張しなくても大丈夫よ~」
「(そ、そういう問題じゃないですよーーー!)」


お嬢様の方も、相変わらずそんなことは自覚していなかった。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

お昼過ぎ
上条当麻はコンサートホール前の広場の近くを歩いていた。

「ん?」

ふと、広場の方に目をやると、見覚えのある少女が目に入った。

「あれは――美琴・・・か?なにやってるんだ、アイツ」

向こうはまだこちらに気づいてないらしい。
よく見てみると、どうやら一緒にいる女の子にヴァイオリンを教えているようだった。

「そうそう、その調子よ♪うん、上手上手」
「こ、こうですね。あわわわわ」

その楽しそうな様子を見て、

「(・・・へぇ、アイツあんな顔で笑うんだな。普段からああだと良いのに)」

もとから美琴は基本的に女の子には優しいのだが、少年がそんなことに気づくはずもなく

「(しかしこうして見てるとやっぱりアイツって結構可愛―)っておわっ!」

ボーっとしていたせいで何かに躓いたらしく、上条は広場の方へ転びそうになる。

「っとと、あぶないあぶない―――あ。」
「え?」

なんとか踏みとどまったものの、少女と目があってしまった。

「よ、よう」
「あ、アンタ!こんなとこで何してるのよ!!」
「ちょ、ちょっと用事でさ。近くを通りがかっただけだよ」
「・・・また何かトラブル?」

美琴が少し心配そうな顔をする。

「いや、もう済んだ。気にすんな」
「そういう問題じゃ――」
「今回はほんとに大したことじゃないって、心配するなよ」

そう言われた美琴は顔を真っ赤にして、

「べ、別に心配なんかしてないわよ!」
「で、でっかい声出すなよ。隣の子がびっくりしてるぞ」
「あ・・・」

と、美琴は初春が一緒にいたことを思い出す。

「あ、私は大丈夫です!気にしないで下さい!」

初春はそう言いつつ、普段見ない美琴の様子から何かを察して、

「あ、そろそろパトロールに戻らないと!御坂さん、今日はヴァイオリン弾かせて頂いて本当にありがとうございました!!」

「それでは」と言って、花飾りの少女は行ってしまった。

「・・・悪い、御坂。なんか邪魔しちゃったかな」
「ううん、大丈夫だと思う。あ――」

場所が場所なだけに、周りに少し人だかりができていた。

「と、とりあえずここに居たら恥ずかしいから離れるわよ!」
「あ、ああ!」

無意識に上条の手を引きつつ、美琴は広場から逃げるように走り去った。


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