とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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嫉妬する上条さん(上条視点)



上条当麻は、いつものように何の気もなしに普通に道を歩いていた。
そこで、見てしまった。
御坂美琴が他の男と歩いているのを。

(ッ!? な……んだよ。コレ。)

ただ、一緒に歩いているのを見ただけで、ドス黒い感情が湧き出してくる。
少しでも気を緩めれば、男に殴りかかりに行ってしまいそうだった。
意識しなければよかったのだが、気持ちとは裏腹に上条の目は2人に釘付けになっていた。
だが、何故だか聴覚が働いていない。
何かを喋っているのはわかるのだが、何を喋っているのかがわからない。
心なしか、美琴が楽しそうにしているように見えて。
一気に感情が爆発しそうになる。

(離れろ……さっさと御坂から離れろよクソ野郎!)

だが、寸でのところで自身の感情を押さえつける。
見なかったことにしようと、少し足早にそこから離れることにした。
角を曲がって、上条は思考する。

(クソ……。なんなんだよ、俺は。御坂は別に俺のものってわけでもないのに。御坂が誰といたって、別に……)

その、続きの言葉は考えたくなかった。
そして、考えたくないと思う自分に腹が立った。

(……しばらく、御坂に会わないようにした方がいいかな)

その時、後方から足音が聞こえた。
まさか。いや、そんなはずが―――
だけど、自身の苛立ちは全く消えていない。
こんな顔は見せたくなかった。

「あ! いたいt「なんだよ」……え?」

声を聞いたと同時に、相手が美琴であると判断して、すぐに答える。
やはり、苛立ちは消えていない。
八つ当たりをしているような自分に、さらに腹が立つ。
と、同時に、今は美琴に会いたくなかった。
早く、去って欲しい。

「ね、ねえ。アンタ、何苛ついt「なんでもねぇよ」」

だけど、美琴はたずねてきた。
去ってくれそうもないことを理解する。
ならば、どうせなら聞いてみようと思った。

「戻らなくていいのかよ?」
「は? 戻るって、どこに?」

言ってから、後悔する。
もし、自身が最も望まない答えを言われたら?
どうなるかはわからない。
だけど、一度言ってしまったからには続けるしかない。
気を紛らわそうと頭を激しくかいて、言う。

「さっきの男の所にだよ」

背を向けているので相手の反応がわからない。
どんな顔をしているのだろう?
照れか。驚きか。困惑か。それとも別の何かだろうか。
想像がつかない。

「アンタ、人に背をむけて話すってのはどうかと思うけど?」

まさか、そう返ってくるとは思わなかった。
こんなことを言われたら、振り向かないわけにはいかない。
足を止めて、深呼吸をすることで気を落ち着かせようとする。
効果がない。
諦めて、振り向く。
美琴の顔は僅かに眉をしかめていた。
怒っているのだろうか?
だけど、そうだとしても何故だか今の上条は謝ろうとは思わなかった。

「これで、いいのか?」
「…それで? アンタは何に苛ついてたわけ?」

早速問われる。
だが、答える気はない。答えたくない。
だから、もう一度問い返す。

「……お前は戻らなくてもいいのかよ?」
「質問に答えなさいよ」

質問に答えるのはそっちだろ。と上条はさらにイライラをつのらせて。
電撃がバチバチいい始めていたが、完全に無視する。

「それはこっちのセリフだ」
「アンタには関係ないでしょ?」

その言葉を聞いたとき、上条は今までに無いほどの衝撃を受けた。
自分の顔が悲痛に歪んだのがわかる。
そういうセリフを言うということは、つまり―――そういうことなのか。と理解する。
理解したらしたらで、それは上条の心に重くのしかかった。

「ああ、そっか。そうだよな……。俺には、関係ない話だよな……。悪かったな、無理に聞こうとして」

自身の声が驚くほど弱弱しいのがわかった。
もう、どうでもよくなった。
だから、美琴の顔もろくに見ることなく、背を向けて歩き出す。

「ま……待って!」

声をかけられて、上条は立ち止まる。
だが、振り向くことなんてできなかった。
自分は今にも泣きそうな顔をしているのだから。

「……ごめん」

突然謝られて上条は驚く。
と同時に理解ができなかった。
なぜ、美琴が謝る必要があるのか。
それはごく普通に口をついて出てきた。

「………なんで、お前が謝るんだよ」

自分の声が今にも泣きそうで、震えていることに気づく。
だけど、その震えを隠そうとも、思えなかった。

「謝る必要なんか、ねぇだろ。俺が苛ついていた理由は個人的なものなんだしよ」
「アンタは……そうやって隠そうとするのね。今だって、声震えてるじゃない! 私がアンタを傷つけたのに、なんでそんなこと言うのよ!」

上条は驚いた。
美琴は、自分を傷つけたことを悔いているのだ。
そんな、美琴の優しさが、嬉しかった。

「…そういうお前だって、声震えてるじゃねえか」

もう、全てを暴露しようと思った。
美琴の優しさにちゃんとお返しをしようと。
上条は意を決して振り向いた。
美琴の顔は、今にも泣きそうだった。
美琴にそんな顔をして欲しくない。
上条は深呼吸して。

「そんな、今にも泣きそうな顔すんなよ。俺は、お前を泣かせたくない」
「そっ……そんな顔してないわよ…」
「今から言うことは、俺の気持ちだ。それが、俺が苛ついていた理由だし、それを聞いたら多分、幻滅すると思う」

美琴の体が、緊張したのがわかった。
上条は、全てを暴露する覚悟を決める。
それを言えば、美琴は幻滅するだろう。
だけど、上条はそれでも別に良かった。
こんな、自分勝手で、醜くて、ドス黒い感情を持った自分に対して美琴が泣く必要はない。
そんなことをしてしまうくらいなら、幻滅されて避けられた方がまだマシだった。

「アンタが何を言おうと、私はアンタに幻滅なんてしないわよ」
「はは……そっか」

こんな時でも優しさを見せる美琴に、上条の心が痛くなる。
優しさをまだ向けていて欲しい。と願ってしまう。
だけど、上条は言い始めた。

「さっきお前、男と歩いてただろ?」
「そう……だけど?」
「俺さ、それをみてソイツを殺してやろうかと思ったんだ。…馬鹿みたいだよな、別に御坂は俺のものってわけでもないのに、錯覚して、苛ついて、早く御坂から離れろクソ野郎って思ったんだぜ?」

美琴の動きが止まっているのがわかる。
それはきっと、唖然としているんだろう。
この後、美琴はきっと軽蔑の眼を向けるだろう。
けれど、上条は言った。

「……ああ、そうだよ。俺は、上条当麻は。御坂美琴のことが好きなんだ」

その答えを言った瞬間、美琴の眼からは涙がこぼれ落ちていた。
それを見た上条は予想外の反応をされてうろたえる。

「げ、幻滅どころか泣いちまった!? ご、ごめん御坂! 今のことは綺麗さっぱりわs「違うわよ」……ぇ?」

上条の時が止まる。
違う? 違うって、何が?

「これは、嫌なんじゃなくて、嬉し泣きよ……馬鹿」
「え? え?」

状況が理解できない。
全ての心情を告白して、そしたら美琴が泣き出して。
嫌なのかと思っていたら、違うと言われて。
そして―――

「私も、アンタのことが、上条当麻のことが……好き」

さらに衝撃の言葉を言われて、上条の頭は大混乱に陥った。
もう、何がなんだかわからない。
ただ、頭に思い浮かんだ疑問だけをそのままぶつける。

「へ? だってお前……え? あの、男は彼氏なんじゃないのか?」
「アイツは、私の彼氏でもなんでもないわよ」
「は?」

思わず間抜けな声をあげていた。
そこでようやく、上条は少しずつ理解する。

「ちょっと前に不良に絡まれてたところを助けて、そしたら今日偶然会っちゃって、そのお礼で何か奢ってくれるとかいう話になってただけよ」

まさか。もしかして―――?
だが、頭が答えにたどり着く前に、上条は尋ねていた。

「え? だってお前、さっき俺には関係ないっていうから。てっきり……」

その言葉を聞いて美琴がいいづらそうにしているのがわかった。
言いたくないなら言わなくてもいいと言う前に美琴が先に言った。

「そ、それは……アンタが教えてくれそうになかったから、その……ちょっとムキになっちゃって………」

上条は頭以外の行動が全て停止した。
だが、そのおかげか上条は短時間で全てを把握して、自分のしたことを理解した。
途端にため息がでた。

「はあ………。それじゃあつまり、俺は勝手に誤解して、勝手に自白したと。そういうことですか……」

なんて自分は馬鹿なんだと認めて、なんだか鬱になる上条だった。

「そ、それは悪かったわよ。でも、アンタが教えてくれないから……」
「お、お前なぁ、いきなり面と向かって嫉妬しました。なんて言えるわけないだろ」
「そ、そりゃそうだけど……。ア、アンタはアンタで私の気持ちには気づいてなかったじゃない」
「うっ!? そ、それは………。ってそっちこそ、気づいてなかったんじゃないか?」
「なっ!? アンタの普段のどこに気づく要素があったっていうのよ!?」
「ぎくぅっ!? そ、それは……か、隠してたからな」
「なんで隠す必要があったのよ!?」

電撃が飛んできたので、慌てて右手で防ぐ。

「うおあぁ!? み、御坂さん!? そ、それには深いワケがありましてってゴメンナサイすいません俺が悪かったです許してくださいぃー!」

理由をいおうかと思ったが、その前に謝ることにした。
その後、電撃を右手で消すという行為を繰り返し。
ふと、気づく。

「というか、そういう風だから俺は気づかなかったんじゃ……すいませんゴメンナサイ許してください」

電撃がバチバチ言い始めたので再び謝る。

「……それで? 深いワケってなによ?」
「い、言わなきゃいけないんでせうか?」

美琴は無言で圧力をかけてくる。
上条は無言でそれに対抗する。
しばらくして、言うしかないと諦めて。

「怖かったんだ」

正直に暴露することにした。

「え?」
「もし、告白してダメだった場合、今の関係が壊れると思って。それが、怖かったんだ。だから、隠した」
「……じゃあ、なんで」

ついさっきまでの自分を分析したその結果を、言う。

「今の今まで、お前が他の誰かと歩いているのなんて見たことなかったから。だから、嫉妬した自分を隠しきれなかった」
「そっか……。じゃあ、私はあの人に感謝しなきゃね」

その言葉を聞いて、再び自分の心に黒い感情が現れ始めた。

「…なんでそうなる」
「え、だって。あの人のおかげで、アンタが私に告白してくれたんでしょ? お礼にキスぐらいしてあげようかな~?って」

その言葉を聞いて、上条は瞬時にその場面を想像する。
ドス黒い感情が上条を埋め尽くそうとする。

「やめろよ!」

気づいたら、叫んでいた。

「………そんなことされたら、俺は自分を抑えられなくなる」
「…冗談よ。間違ってもキスなんてしないわよ。………アンタともまだしてないし」

冗談だと聞かされても、完全には収まらなくて、呟く。

「……お礼はするのかよ」
「あ、そういえば、途中で逃げてきちゃったんだった。う……どうしよう」
「……いらないって言えばいいんじゃないのか」

自分は自分の都合のいい方へ持っていこうとしていることに気づく。

「それは最初に言ったわよ。でもね、なかなか引き下がらなくって。だから、さっさともらって終わらそうと思ったんだけど」
「けど?」
「アンタを見つけたから途中で逃げてきたってわけ」

その行為自体は嬉しいのだけれど、それは結局。

「そ、それは……嬉しいような、悲しいような」
「悲しいってどういうことよ」
「いや、来てくれたのは嬉しいんだけど、結局またそいつと会うことになるってことだろ?」
「ん~。逃げちゃえばいっか?」

その言葉をきいて、安堵している自分がいることに気づく。
それで、やはり自分は自分勝手だなと思う。

「うわー。可愛そうだなソイツ」
「私は、アンタのものよ」

唇に、何かが触れて。
上条の時は止まった。

「その代わり、アンタも私のものなんだからね。他の女と一緒にいたら、許さないんだから」
「じゃあね。また、今度」
「………ぇ? え?」

上条はようやく我にかえって。
自身の唇に何が触れて、何という行為をされたのかを、たっぷり10秒かけて理解する。
そして、その感触を思い出して。
上条の顔は真っ赤になっていた。

終わり


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