とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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御坂美琴改造計画




美琴から電話があった。
今日もいつもの4人で集まり、いつものようにとりとめのないおしゃべりをするものだと思っていた。
だが違っていた。
美琴からの呼び出されファミレスにやってきた初春と佐天は、まず白井がいない事に気付く。
そしてテーブルに一人でポツンといる美琴は、組んだ手を口元に当て肘をテーブルに置く、
いわゆる『碇ゲンドウのポーズ』で二人を待ち構えていた。
その表情は険しく、明らかに何かに悩んでいる様子であった。
二人はただごとではない何かを悟ったが、美琴に不安を与えないようにいつもの調子で話しかける。

「や~遅くなっちゃってすみません。店員さーん! あたしドリンクバーで!」
「あ、佐天さん。初春さんも急に呼び出しちゃってゴメンね?」
「私はバナナパフェをお願いします。いえいえ、私達も暇でしたから。白井さんはいらしてないんですか?」
「う、うん。黒子は呼んでなくて…あの子がいるとちょっと面倒な事になりそうだから……」

白井と大喧嘩でもしたのだろうか、とも思ったが違うらしい。
美琴の表情に、ますます濃く影が差す。もっと大きな悩みのようだ。
美琴はその後、しばらく沈黙した。
初春と佐天はあえて急かさず、美琴が自分から何か言うのを待った。
正直な所、美琴が心配でパフェの味もドリンクバーのメロンソーダの味もよく分からないのだが、
それでも友達の為に、『いつも通り』を振舞う。
やがて美琴はゆっくりと口を開け、そっと言葉を発し始めた。

「実は……その…わ、私…さ。今ちょっと……悩んでて……」

内心『やっぱりか』と思った二人だったが、ここで自分達が深刻そうにしたらきっと美琴は心配かけまいとして、
「あ、いやゴメン! 別にそんな大した事じゃないから、気にしないで」と言うに決まっている。
だからここでも『いつもの調子』を演じたのだ。美琴の力になりたかったから。

「へー、意外。御坂さんみたいな完璧超人でも、悩みとかあるんですね」
「失礼ですよ佐天さん! それでどんなお悩みなんですか?」
「う、うん……じじ、実は…その……」

美琴が自分から悩みを打ち明ける事など滅多にない。
きっとそれだけ切羽詰っているのだろう。そしてそれは、白井にも言えない事なのだ。
二人はゴクリと生唾を飲み込み、美琴はギュッと拳を握り、その悩みをぶちまけた。

「わ、わわわ私!! すすすす好きな人がいるの!!!」

衝撃の告白。
なるほど、それを言うのを躊躇っていたのか。
果たしてこの事実を知ってしまった二人の反応は…?

「あ、はい。知ってます」
「上条さんの事ですよね? で、それはともかく悩みって何ですか?」
「ええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!?」

意外! それはあっさりッ!
二人からすれば、そんなモンはとっくに知っている事であり、まさかそれが悩みの正体だとは思わなかったのだ。

「いやいやいやいや!! えええええ!!? 何でそんなキョトン顔!?」
「えっ……もしかしてその事で悩んでたんですか…?」
「そ、そうだけど! 何その『この人今更何言ってんの?』みたいな表情!!」
「な~~~~んだ! 御坂さんものすごく暗いから、てっきりもっと凄い事言うのかと思いましたよ。
 あ、ジュースおかわりしよ。次はコーラがいいかな」
「『な~~~~んだ』って佐天さんまで!! これ結構驚く所じゃないの!? 何で私が一番驚かされてんのよ!!」

今日も学園都市は平和である。



「…で、悩みっていうのは恋愛相談な訳ですね?」
「え、ええまぁ……平たく言えばそんな感じです……」
「う~ん…とは言ってもあたしも初春も経験ないからなぁ……」
「そうですよねぇ……」
「とりあえず、今お二人ってどんな関係なんですか?」
「えっと……友達以上………と、友達以下…みたいな…?」
「………つまり友達なんですね?」
「…………はい……」
「って!! 全っ然進展してないって事じゃないですか!!!
 確か手作りクッキー作ったのって8月の下旬でしたよね!? アレから何もないって事ですか!?
 今まで何やってたんですか!! ヘタレですかあなたは!?」
「うぅ……返す言葉もございません……」
「佐天さんがキレた!? あとそのクッキーの話、私初耳なんですけど!」
「初春は黙ってて!」
「ええっ!? 何で私まで怒られるんですか!?」

ゼィゼィと息を切らしながら捲くし立てる佐天。
そのままコーラを一気飲みし、空いたコップを叩くようにテーブルに置く。
あまりの勢いに初春も引き気味だ。

「はぁ…とにかくこのままじゃ、いつまで経っても何も変わらないですね!」
「ですけど…私達にできる事って何かあるんですか? さっき佐天さんも仰ったじゃないですか。経験がないって」
「確かにあたし達には男性経験はないけど、でも御坂さんを鍛え直す事はできるよ」
「えっ……き、鍛えるって…?」
「はいそこ! 口答えしない!」
「えぇ~…?」
「今までの御坂さんの話を聞く限り、おそらくお二人の関係に変化がない理由は大きく二つあります。
 まず一つは、上条さんが鈍感すぎる事です!」
「あ、うん。それはもう、すんごい納得」
「……御坂さん…ものすごく頷いてますね……」
「でもそれは多分どうしようもないので、もう一つの原因を何とかしましょう」
「も、もう一つ…?」
「決まってるじゃないですか! 御坂さんの性格【ツンデレ】を直すんですよ!!」
「なっ!!!」
「そもそも鈍感とツンデレは相性最悪なんです!
 例えば、『別にアンタの為じゃないんだからねっ!?』っていうテンプレ台詞があるじゃないですか。
 普通の人ならその言葉の裏に隠された、本当の気持ちを察してくれます。
 けど鈍感な人は『そっかー、気を遣わせてゴメンな?』とか言って、そのままの意味で捉えちゃうんですよ」
「で、でででも私、その…ツン……デ、デレ…とかじゃないし。前に木山春生にも同じ事言われたけど……」
「ほら! その反応がもう立派なツンデレなんですよ!」
「でも性格を変えるなんて、一朝一夕じゃ無理なんじゃないですか?」
「うん、そうだね。そうだけど、それでもやらないよりはいいと思わない?」
「それで…具体的にはどうすればいいの…?」
「あたしに考えがあります」

そう言うと佐天は自分のケータイを取り出し、画像ファイルから一枚の写メールを二人に見せた。
その瞬間、美琴はガバッと立ち上がった。

「なっ、こ、これって!?」

その写真はツンツン頭の少年が、左手にスーパーのビニール袋を持ち、右手でピースサインをしているものだった。
ちなみに美琴が持っている上条の写真は、9月30日に一緒に撮ったツーショット写真のみで、
上条がソロで写っている写真など持ってはいない。

「こ、ここ、これ!! ど、ど、どうしたの!!?」
「え、あ、いや。この前、スーパーの近くを通った時に上条さんがいたんで、
 立ち話した後、『ついでにちょっと写真一枚いいですか?』って言って撮らせてもらったヤツですけど」
「さ、さすが佐天さん! 私にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」

美琴は衝撃と興奮のあまり、ディオの取り巻きのようになっていた。



「まずはコレを使って練習してみましょうか」

佐天はそう言うと、画面を上条の写真にしたままケータイを自分の顔の前に持っていく。
そして出来る限り低い声で一言。

「よお御s…美琴。上条でs…だぜ。えっと……調子はどうですか…だぜ?」

どうやら上条のつもりらしい。

「あの…私、上条さんの事はよく知らないんですけど……そんな喋り方なんですか?」
「うっ……男言葉って意外と難しいね……」

いくら何でも、これで練習になる訳がない。
美琴も上条に話しかけられたとは到底思えないだろう。いつも通り佐天と話すように返事をする。

「べ、べべ別に!? アンタに心配されるような事は何一つないけど!?」

と、思ったらそうでもなかったようだ。そして相変わらず『ツン』全開である。

「……………」
「……………」

思った以上に重症な美琴の『ツン』に、初春と佐天も言葉を失う。
そして美琴は自分でも情けなくなり、膝を抱えて俯いた。

「う~ん……これはちょっと荒療治が必要みたいだね」
「荒療治ですか……どんな事をするんですか?」

佐天はニヤッと笑うと、おもむろにメールを打ち出す。そして打ち終わると、そのまま美琴のケータイに送信した。

「御坂さん、それ読んでみてください」
「えっ、これ………って!!! ええええええぇぇぇぇぇ!!!?」

佐天からのメールはこうであった。
件名は『大声で!』 そして本文はというと………

『「当麻(で、あってますよね? 上条さんの下の名前)! 大好き♡」 × 10回』

「な、ななななななああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
「あ、慣れてきたらステップアップしますから。
 『もう当麻の事しか考えられなくなっちゃったんだから責任とってよぉ』とか『当麻は私の事…好き?』とか」
「むむむむ無理無理無理無理!!!!! 絶っっっっ対無理ぃぃぃぃぃ!!!!!」
「御坂さん! ワガママ言っちゃ駄目です!」
「初春さん!!? 何で急にやる気出したの!!? あとこれってワガママなの!!?」
「ほらほら御坂さん! 初春もこう言ってるんですから!」
「ど…どうしても………や…やらなきゃ……駄目…?」
「駄目です。やらないと帰れません」
「あうぅ……」

正直やる義務などないし、半分遊ばれているのも分かっているのだが、こちらから相談を持ちかけた手前断りにくい。
美琴は観念してギュッと目を瞑った。体はかすかに震え、顔はもう茹で上がっている。

「と、とと、と、と、とう、と、とととう、と…ま……だだだだだだい、だい、だ、だだ……………
 ………ふえぇぇぇ…やっぱ無理ぃぃぃぃぃ! 恥ずかしいよぉぉぉ!」

美琴は半泣き状態でギブアップした。
そして初春と佐天の二人は思った。「何だこの可愛いすぎる生き物は」、と。

「ね、ねぇ初春。今の御坂さんを見せれば、上条さんでもコロッといっちゃうんじゃない?」
「そ、そうですね。と言うより、これで気持ちが傾かない男性はこの世にいないと思います」



「やっぱりいきなり素直になるのは無理があったみたいですね……」
「ごめんなさい……せっかく私の為に頑張ってくれたのに……」
「ああ! いやいや! 無理やりやらせたあたしが悪いんですから!」
「どうするんですか佐天さん! 御坂さん、すっかり落ち込んじゃいましたよ!?」
「えー、あー、うー……あっ! そ、そう言えばあたしたまたま映画のチケットが2枚あったんですよ!!
 コレお詫びに差し上げますから、上条さんを誘ったらどうですか!?
 ホ、ホラ! 上条さんとデートするきっかけにもなりますし!」
「えっ…い、いいの? 貰っちゃっても」
「いいんですよ! それ懸賞で当たったヤツなんですけど、あたし興味ないですし!」
「あれっ? その映画って、佐天さんが私と観たいからってご自分で買―――」
「しゃーーー!!!」
「あ、いえ…何でもないです……」
「でも…その……本当にいいの…?」
「いいですって! その代わり、ちゃんと上条さんを誘ってくださいよ?」
「う、うん! 私、頑張ってみる!」



その後、美琴は約束通り上条を誘おうとしていた。そして初春と佐天はその様子をこっそりと覗いていた。

「こ、ここここれ!! え、え、映画のチケットが2枚あるんだけど!!」
「あ、うん。そうだな」
「で、でも私これ観ないし…その……ア、アアア、アンタに上げてもいいけど!?」
「えっ? マジで? いいのか?」
「か、かか、勘違いするんじゃないわよ!! べべべ別にアンタの為じゃないんだからねっ!?
 ただその…アンタお金ないみたいだから、映画とか最近観れないと思って…ホ、ホントにそれだけなんだから!!」
「そっかー、気を遣わせてゴメンな?
 でもせっかくだからありがたく貰っとくよ。サンキューな、美琴」
「ふぇ!? ア、アア、アンタ…に……感謝されたって…う、嬉しくも何とも……にゃいんだかりゃ………
 …ん? あ、あれ!? 何で2枚とも持ってくの!?」
「えっ…だって、これ美琴は観ないんだろ? 2枚とも俺にくれるんじゃないのか?
 それとも、もしかして……実は俺と一緒に行きたかった…とか…?」
「なっ! なななな何バカな事言ってんのよ!!!
 わ、わわ、私がアンタなんかと一緒に映画なんて観る訳ないじゃない!!
 2枚ともアンタにくれてやるわよ!!!」
「はは……だよな……はぁ、不幸だ……じゃあ、まぁ…土御門でも誘うかな」
「あ、うん……そうしなさいよ……はは…は……」

この様子を影から見ていた初春と佐天の二人は思った。「駄目だこりゃ」、と。








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