とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第2章(2)


「凄まじいね、彼は…」

美琴とステイルとインデックスは美琴が用意したモニターから
上条の戦いの様子を眺めていた。
今回は美琴に魔術師との戦いの様子を見せるという目的があった。
そこで上条には常に付き添うように小型のカメラが付随している。
それがリアルタイムで上条の戦闘を映し出してるのだ。

「これは魔術の法則を知って対処してるんじゃなくて、
 経験則から最適な答えを導き出してるのかも。
 でも一体どれだけの魔術師との戦闘を行えばこんな動きが出来るの!?」

上条の動きは相手の動きを予知してるとしか思えないような圧倒的なものだった。
それに加えてその動きは洗練されていて無駄なく確実に天草式の意識を刈っていく。
上条は初め、天草式に対話を呼びかけた。
しかしながら信じて受け入れてもらえることが出来ずに、止むを得ず戦闘となっていた。
天草式は魔術師でありながら肉弾戦も得意とする文武両道の集団だ。
上条にとって魔術のみで戦う魔術師と比べて相性がいい相手とはいえなかった。
にも拘らず上条は臆することなく、天草式の構成員を倒しながら進んでいく。

「みことはとうまと同じ場所で働いてるんだよね?
 とうまがどうしてこんなに強いか知ってる?」

インデックスの答えに美琴は答えることが出来ない。
美琴は上条について何も知らなかった。
いつも自分の話ばかりして、それを優しく受け止めてくれる上条に甘えていた。
良く考えれば上条が何故こんな危険なことをしているかも知らなかった。

(私は当麻に甘えてばかりいた、当麻のことを知ろうともしなかった。
 これじゃあ当麻が私を連れて行ってくれないのも当然だ。
 だって私と当麻は同じ場所にすら立っていないんだもん)

やがて上条はくわがたみたいな髪型をした男と対峙した。
雰囲気で分かる、この男が天草式のリーダーだ。
上条と男は対峙する。
男は刃の部分が波打った長剣の切っ先を上条に向けた。
男の後ろには一人の女性がいる。
漆黒の修道服に身を包んだ彼女がオルソラ=アクィナスに間違いないだろう。
しかし上条と男の戦闘が始まろうとしたまさにその時、
美琴の放つ電磁波のレーダーに反応があった。
美琴が反応のした方へ顔を向けるとそこにいたのは…

「全くコソコソと動き回られたせいで、こっちの計画は台無しってもんです。
 まあでもアンタ方を人質に取れば忌々しい『幻想殺し』も駆除できるってもんです」

一人の小柄なシスターの後ろからゾロゾロと大量のシスターが溢れ出てくる。
その数はおよそ250人…

「…ちょろっと、面倒なことになっちゃったみたいね」






上条は天草式と激闘を繰り広げたパラレルスウィーツパークから薄明座に向かう道を
天草式の教皇代理である建宮斎字とオルソラ=アクィナスと共に歩いていた。

「全くイギリス清教からの使いなら、さっさと言って欲しかったのよな」

「言おうとしたら、そっちが問答無用で襲い掛かってきたんじゃねえか!!」

建宮との戦闘の後に事情を説明した上条は
特に天草式の面々に大怪我を負わせた訳でもなかったので、
すぐに和解しオルソラの身を預かることになった。
そして念のためということで建宮も同行してるのであった。

「それにしても、お前さんの強さは反則なのよな。
 一体どういう鍛え方をしてるんだ?」

「まあ、それは色々と…」

上条がそう言い掛けた時、前方から一人のシスターが歩いてきた。
そのシスターを見た瞬間、オルソラの表情が凍る。
そのシスターが着ている修道服はオルソラのものと似通っていた。

「ローマ正教の人間か、思ったよりも早かったな」

その言葉に建宮はパニックを起こして激昂した様子で言った。

「なっ、お前さんやっぱりローマ正教と繋がってたんじゃ!?」

しかし建宮の言葉を否定するようにシスターは淡々と言った。

「電撃を使う少女とイギリス清教の二人の人間は預かった。
 交換条件は『幻想殺し』、貴様が一人で薄明座まで来ることだ」

「どういうことなのよな?
 狙いはオルソラ嬢じゃないのか!?」

天草式がオルソラを攫ったのは『法の書』の解読が出来るオルソラを
科学と魔術の戦闘に利用されないようにするためだった。
だからローマ正教はオルソラを狙ってくるものだとばかり思っていた。

「上からの命令だから詳しいことは私も知らない。
 ただ上は『幻想殺し』、貴様を必要としているようだ」

「…美琴は無事なんだろうな?」

「感謝して欲しいものだ。
 こちらは150人以上の仲間が戦闘不能に陥らされたのに、
 人質には傷一つ負わせていない、ただ眠らせているだけだ」

「…そうか」

シスターの言葉から嘘を感じられなかった上条は
黙ってシスターの後に続いて歩いていく。
そんな上条を建宮が呼び止めた。

「ちょっと待つのよな、本気で一人で行くつもりなのか!?
 人質がいるってことは、お前さんは必ず相手の言うことを聞かなきゃならん。
 どんな目に遭うか分からんぞ!!」

「大事な人が人質になってるんだ、退くわけにはいかないだろ」

そして上条は薄明座へ続く道を歩いていくのだった。






上条が薄明座に着くと美琴はステージの上で横になっていた。
急いで駆け寄ろうとする上条の行く手を数十人のシスターが阻む。
見たところ本当に美琴が怪我を負った様子はなかった。
恐らく魔術か何かで昏睡させられてるのだろう。
美琴の横にはステイルとインデックスが雁字搦めの状態で縄で縛られている。

「よく来やがりましたね、『幻想殺し』…
 大丈夫、アンタの大切なお姫様は眠ってるだけで怪我一つ負っちゃあいませんよ。
 尤もこれからのアンタの態度次第じゃどうなるか分かりませんけどね」

そう小柄なシスター…アニェーゼが口にすると、美琴の首筋に剣が突きつけられる。
美琴の首筋から一滴の血が流れた。

「目的は何だ?」

「上の人間がどうやらアンタとの対面をご所望みたいなんで、
 大人しく私達と一緒にバチカンまでご同行願いましょうか?」

上条に拒否権はない。
上条はただ黙って頷いた。

「ただね、上はアンタが生きてさえすりゃあいいみたいで、
 アンタをどんな状態でつれて来いとまでは言われてないんですよ。
 そしてここには同胞をアンタに傷つけられ怒りに満ちてる人間がたくさんいる。
 この意味は分かりますよね?」

上条はようやくアニェーゼが意図していることが理解出来た。
ガキの癖に随分と歪んだ性質を持ってると心の中で毒づきながら、
上条は一歩一歩前へと進みでる。
そして100人のシスターによる異教の徒に対する圧倒的な暴力が振るわれるのだった。






「ちっ、悲鳴を上げるどころか気絶すらしない。
 気に入らねえったらありゃしませんよ」

アニェーゼは上条の脇腹を蹴り続けながら、つまらなそうに呟いた。
上条は顔が苦痛に歪んでいるものの、その表情から力は消えていなかった。

「これだったら目の前で人質を傷つけた方が、こっちも楽しめる…」

しかしアニェーゼがそう言った瞬間、アニェーゼはドッと汗が噴出すのを感じた。
アニェーゼだけでない、中にはガタガタと震えだすシスターまでいる始末だ。
それが上条から放たれた殺気だと気付くのに時間は掛からなかった。
かつて上条が土御門に向けたものとは比較にならない殺意…
使いようによってはそれだけで人を殺せるような鋭いものだった。

「じょ、冗談に決まってるじゃないですか…
 人質は傷つけないでいるからこそ意味があるんですから」

アニェーゼは震える肩を押さえつけるように腕を組みながら押さえつけていた。
もしかしたら自分達はとんでもない相手を敵に回してしまったのではないか?

「そろそろ移送する時間です、立てますか?」

知らず知らずの内に上条に対して丁寧な扱いになってることにアニェーゼ自身、
気付いてはいないのだった。

「ああ」

あれだけ痛めつけられたにも拘らず上条はよろつきながらも、
自分の足でしっかりと立ち上がった。
そして上条をアニェーゼ部隊が連れて行こうとした、その時…
薄明座の建物全体を揺らすような衝撃が襲った。
アニェーゼが思わず音のした方を見ると、ステージに外から風穴が開いている。

「な、何事ですか!?」

すると風穴から二人の男女が出てきた。

「ありゃ、上条ったら随分と派手にやられやがって」

「甘いからそういうことになるのよね」

上条は声の主の方を見ると思わず声を上げた。

「垣根、麦野!!」

垣根と呼ばれた少年は上条に向かって何処か悪戯っぽい笑みを浮かべると、

「ったく、わざわざ俺がお前の尻拭いをしに来てやったっていうのに、
 周りにいるのは雑魚ばかりかよ。
 第四位、手を出すんじゃねえぞ!!
 俺が一瞬で終わらせてやるからな!!」

「はいはい、お好きにどうぞ」

垣根の言葉に対し、上条に麦野と呼ばれた少女はどうでもいいように答えた。
そして学園都市第二位による数などものともしない、圧倒的な蹂躙が始まるのだった







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