とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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終章その後 先に辿り着いた者は




第7学区にある、とある病院の一室。
四人部屋のベッドの内3つが埋まっており、
それぞれ上条当麻、浜面仕上、黒夜海鳥の三名が横になっている。
(本当はそれぞれ別室だったのだが、
 『面倒な事情を抱えた患者は一緒くたにした方が都合がいい』
 という病院側【カエルがおのいしゃ】の意向で無理矢理同室にされたのであった)

しかし病室には現在、入院患者三名の他に、上条の見舞いに来た客が二名。
正直な所、あまり空気はよろしくない。というより最悪である。
見舞い客の一人から、何やらどす黒いオーラが出ている気がする。
しかも何やらバチバチと帯電音もしている。こちらは『気がする』ではなく、物理的【マジ】にだ。

そしてもう一人の見舞い客は、上条に抱きつき、
その豊満な胸でモニュモニュと上条の右腕を『挟んでいる』。

一言でいうなら、正に『修羅場』である。
黒夜は上から布団を被り、帯電音がする度にビクッとしている。
サイボーグである彼女は、電撃そのものが怖いのだろう。
(もしくは、ハワイで番外個体に遊ばれた【いじられた】事がトラウマになっているのかもしれない)
浜面は何度も読み返した映画情報誌(おそらく絹旗からの見舞い品だと思われる)で顔を隠し、
我関せずを決め込んでいる。こちらは電撃よりも、この空気が怖いらしい。

そして上条はというと、電撃も空気もどちらも怖いのであった。
しかし同時に、制服の上からでも分かる程の柔らか~い感触が右腕から伝わってくるので、
珍しく『幸せだー!』と思っているのも確かである。
よって、彼の顔は青くなったり赤くなったりで大忙しだ。

? 「い、い、い、いい加減その馬鹿から離れなさいよ!!!」

と、怒鳴った見舞い客は御坂美琴。当然、帯電していた方だ。

? 「あらぁ、御坂さん。約束力は守らないとイケナイんじゃなぁい?」

と、反論したのは食蜂操祈。当然、豊満な胸をしている方だ。
どちらも常盤台中学が誇るレベル5の超能力者であり、
今回の事件にも少なからず関わっていた者達だ。

食 「『先に辿り着いた方が好きにする』…私の方が御坂さんよりも早くこの病室に入ったのよぉ?
   上条さんを『こうやって』好きにできる権利力は、私にあるのが当然じゃないかしらぁ」

美 「たかだか4~5分の差でしょ!?
   しかも私が遅れたのは、アンタが洗脳した奴等の妨害にあったのが原因だし!!
   てか、あんなのちょっとした口約束じゃない! 承認した憶えはないわよ!!」

食 「あらぁ? 大覇星祭でのちょっとした口約束で、
   罰ゲームと称して上条さんを連れまわしたのはどこのどちらさんだったかしらぁ?」

美 「なっ! ななな何でアンタがそんな事知ってんのよ!?」

食 「私の情報力をナメないで欲しいわねぇ」

大方、あのツーショット写真事件を目撃した通行人の中に食蜂の手の者がいたのだろう。
だが今はそこを追及している場合ではない。
とりあえず、目の前で起こっている出来事【じけん】を何とかしなくてはならない。
大切なのは『今』なのだ。

美 「だとしても! 『好きにする』で何で『ソレ』なのよ!!!」

食 「そんなの私の勝手力でしょぉ? 上条さんだって喜んでるみたいだしねぇ」

美 「ア・ン・タ・も・ア・ン・タ・よ!!!
   何、一切抵抗しないで胸の感触楽しんでんのよこの変態!!!」

上 「あ…いや、あのですね?
   ワタクシ上条当麻は現在動けない状態にありまして、逃げようにも逃げられないのであります……」

と、自分の弁護をする上条だが、彼の怪我は黒夜と違って、歩けない程の重症ではない。
しかしながら、食蜂のモニュモニュ地獄【てんごく】を食らい続けている上条は、
下半身の『一部分』が大変な事になっており、布団から出るに出られないのである。
健全な男子高校生なのだから仕方がない。
ちなみに浜面も、雑誌を読むフリをしながら横目でこの状況を見ており、
上条同様、下半身の『一部分』が大変な事になっていた。
滝壺が知ったらと思うと恐ろしい。



食 「女の嫉妬力は見苦しいわよぉ? 悔しかったら御坂さんもやればいいじゃない。
   もっとも、御坂さんにそんな度胸力はないし、
   そもそもその俎板力じゃ物理的にも無理だと思うけどぉ」

美 「あん!?」

くすくすと嘲る食蜂に対し、美琴は「バヂヂィッ!!」と本日最大の帯電音を発して威嚇する。
仲裁に入ったのは上条…ではなく、

黒 「やァめェろォよォォォ! ここ病院なンだぞォ!? 精密機械とかいっぱいあンだぞォ!?
   他の患者さンの迷惑になるから、ケンカなら外でやれよォォォ!!!」

若干半泣きの黒夜であった。しかも正論である。
よほど電撃が怖いらしい。
しかし黒夜の恐怖とは裏腹に、美琴の次の行動は、予想【でんげき】とは違うものだった。

食 「なっ!!?」

上 「み、みみみ御坂さん!!?」

食蜂とは反対側、つまりは上条の左腕側に抱きついたのだ。

美 「こ、ここ、これでいいんでしょこれで!!!///」

食 「い、いい訳ないじゃない! 勝負は私が勝ったのよぉ!? 
   どぉして御坂さんまで抱きつくのかしらぁ!」

美 「ア、アア、アンタが『やればいい』って言ったんじゃない!!」

食 「だ、だってそれは、まさか本当に御坂さんがこんな大胆力な事ができるとは思わなかったしぃ!」

確かに、普段の美琴ならできなかったかもしれない。
しかし今は、食蜂というライバルに煽られた事による対抗心と、
目の前で上条が思いっきり誘惑されているという嫉妬心、
更には、「ここで引いたら色々と負ける気がする」という謎の不安心などが入り乱れ、
結果、羞恥心に勝ったのである。

二人の言い争いの激しさが増す事に比例して、両サイドからの乳圧も強くなる。
食蜂がスゴイのは言わずもがなだが、美琴とて決して「つーるーーー♪ ぺーたーーー♪」ではない。
小振りながらもそれなりに主張してくるお胸さまと、
何よりも普段では見れない大胆な美琴自身に、紳士を自称する上条さんとて理性の崩壊は目前だ。
こんな時は素数を数えて気を紛らわすのが上条流なのだが、その余裕すらない。

だが上条にとって、これが不安でもあった。
何故なら彼は、自他共に認める『不幸体質』の持ち主だ。幸せの後は必ず不幸が訪れるものなのだ。
つまり、「俺の幸せがこんなに続くわけがない」と、ラノベのタイトルのような事を思っている訳だ。

と、その時である。

美 「―――てんのよ!! って、聞いてんの!?」

上 「……ふぁ!? は、はえ!? なな、何でございませう!?」

言い争いは、いつの間にか上条に飛び火していたらしい。

食 「だからぁ。上条さんは私と御坂さん、どっちの胸の感触力が良かったのぉ? 勿論、私よねぇ」

美 「ち、違うわよ!! わ、わた、私の方が気持ち良かったでしょ!!?///」

上 「………はい?」

二人の言い争いが、どうしてそんなとんでもない所で終着したのか、
両腕に神経を集中していて、ろくに会話を聞いていなかった上条には知る由もない。
理由は分からない。が、とにかくここは、どちらかを選ばなければならない。



数々の戦いにその身を投じてきた上条は、本能的に悟ったのだ。
二人のうち一人を選ばないと、この妙な桃色空間は終わらないと。
平和的に解決しようとして、「いやー、どっちも良かったから選べないやー」
などと曖昧な返事をすれば、昨日よりも恐ろしい出来事が待ち受けているのも、
今までの経験から知っている。
(それは上条にとって、7500人の自称ヒーロー達や、
 第一位から第六位までの能力を自在に使える恋査を相手にするより恐い事らしい)
なので、美琴【ビアンカ】か食蜂【フローラ】のどちらかを選ばなければならない。

上条はそれぞれを選んだ時のシミュレーションをしてみる。
美琴を選んだ場合、食蜂は何人もの人間を操り自分をボコボコにする気がする。それは嫌だ。
食蜂を選んだ場合、美琴はコインが尽きるまで超電磁砲をぶっ放してくる気がする。それも嫌だ。
……………結論、どっち道不幸だ。
しかし、先ほど述べた通り曖昧にする方が危険だ。
そうなるとやはり……

上 「い、いや~、み、御坂の方が気持ち良かったかなー…?」

食 「なっ!!?」

美 「えっ!!?///」

上条は美琴を選んだ。
美琴を選んだ場合、実害が出るのは自分一人だけだが、
食蜂を選んだ場合は病院全体に被害が出る。
そうなると、先ほど黒夜の言った事が冗談では済まなくなる。

食蜂がピクッと動いて身構える上条。
だが食蜂は、上条が思っていたように能力を使うわけでもなく、

食 「うわ~ん! 上条さんのバカアホ貧乳派~!」

と、泣きながら走り去っていった。
どこぞの隣人部の肉のように、それはもう見事な走りっぷりであった。
ちょっと可哀相なくらいである。

嵐が去った後のような病室で、上条は溜息をつきながら美琴に話しかけた。

上 「あのなぁ、御坂。あまりこういう悪ふざけはやめてくれないか?
   俺だって男なんだから、何か問題が起こっても………ってアレ? 御坂?」

おかしい。美琴から、返事も相槌も聞こえてこない。

美 「私を…選んで…コイツが…私を……///」

と言うより、そもそも上条の声が届いていなかったらしい。
この様子はもしや……

美 「……ふ…///」

いつものアレだ。

美 「ふny」

黒 「ぎゃァァァす!!!」

上 「危ねーーーー!!!」

が、とっさに右手で頭を抑えた【そげぶった】。
しかし、左側にいた美琴を右手で抑えるためには体を捻る必要があり、
くわえて上条はベッドで上半身だけ起こしている状態だったので、
バランスを崩した挙句、そのまま美琴を引っ張りベッドに押し倒す事となる。
そのせいで再び美琴は「ふにゃー」しそうになるのだが、上条の不幸は終わらない。

この直後、どこから話を聞いたのか、純白のシスターが病室に入ってくる。
彼女は、また上条が自分を放って何かの事件に首を突っ込んでいたというイライラ。
単純にお腹が空いているというイライラ。
そして何より、いざ心配して来てみれば、
何やら美琴と仲良く【イチャイチャ】しているのを目撃したというイライラ。
以上、3つのイライラを自らの歯に集中させ、上条の頭皮目掛けて飛び掛る。

『修羅場』の第二ラウンドのゴングが鳴り響く。
その一部始終を見ていた浜面が、最後にポツリと呟いた。

浜 「……俺は滝壺一筋でいこう」









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