とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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匿名ユーザー

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暗く、狭い。まるでロッカーの中に閉じ込められているようだと上条は思った。
なぜ自分がこのような場所にいるのか。それは彼にもわからない。昨日はいつものように風呂に布団を敷いて寝たはずなのだ。

(もしかしたら、また土御門が?)

前回彼をこのような場所に閉じ込めた犯人は土御門元春。その理由は上条を遠ざけるものだった。
今度はどんな事件が自分の近くで起きているのだろうか。また自分は遠ざけられているのか。
足元に落ちていた携帯に気づき拾い、電話をかける。相手はもちろん今回の犯人(にとてつもなく近い容疑者)である。

『あ、カミやん起きたー?』
「ふざけんなてめェ!ここはどこだ、今回は何だ!?もう騙されねぇからな!さっさと白状しやがれ!!」

と怒鳴ったが反応は無く、そのまま切られてしまった。もう一度かけるが土御門は携帯の電源を切ったようだ。

(とにかくここから出ないとな)

が、周囲を押したり叩いたりしても出られる様子はない。
仕方なく待つことにした。

「……」
「……」

目の前にいたのがちょうど体操着を脱ぎ終わった美琴だったから。というだけでなく、彼女が今着替え中で下着姿であり、上条が今いるロッカーに、美琴の着替えが入っていたからなのだ。

「……」

バタンッ!と扉は閉まられ、再び視界は闇に包まれた。




放課後、実験から帰ってきて更衣室で着替えをしていて、ロッカーを開けたらあの馬鹿がいた。
あの馬鹿のことが好きすぎて幻影でも見えているのだろうか。あれほどまでにはっきりと映り、しかも下着姿なのは……まあ、偶然だろうと、美琴は考えた。
もう一度開けば誰もいない、ただ自分の着替えがあるだけの、ただのロッカーとなっているはずだ。
そう決め付けて、もう一度ロッカーを開けた。

「……おっす、御坂」
「死に晒せおんどりゃぁぁー!!!」

感情の赴くままに電撃を出せどもこの馬鹿はいつものように右手で打ち消してしまう。やはり幻影ではなかった。

「……マジで死ねば良かったのに」
「目が本気ですよ美琴さん!?」

なぜここにいる!?というか何でパンツ一丁!?と騒ぐ美琴の声は廊下まで聞こえたのだろう。

『今御坂様の叫び声が!?』
『御坂様の身に何か!!』
『御坂様を助けなければ!!』

と、RPGのラスボスに素手で挑みそうな気迫の女子生徒数人の声と全速力の足音が聞こえてきた。

(ヤバイ!!)

この馬鹿が見つかる→即性犯罪者扱い→私刑(死刑)!!
そんな計算式を学園都市トップの頭脳でものの数秒で導くだした。
そして何を思ったのだろうか。美琴は上条がいる、さすがに2人入るのには狭いロッカーに入り、そのまま扉を閉めた。
更衣室の扉が開いたのはその直後だ。ドタバタと数人分の足音と騒ぎ声が聞こえる。

『確かに御坂様の声が……』
『よく探しましょう!』

どうやら上条のことがバレるのは阻止できたらしい。が、だ。

(やっべぇ、いい匂いが……)

きっと誤魔化そうとしてくれたのだろう。それ自体は嬉しいし実際成功した。
だが小さくなくとも、1組の男女が入る事を想定して作られているわけではないこのロッカーでは必然的に密着することとなってしまう。そのため美琴からは女の子らしい甘く、いい香りがする。しかもお互い下着姿。鼓動が早くなるのがわかる。一刻も早く逃げ出したいが、それはそれでゲームオーバー。今は耐えるしかない。

『ここには居られませんわ』
『では隣の部屋でしょうか』
『急ぎましょう!』

更衣室の扉が開き、数人分の足音と共に扉が閉まる音が聞こえた。

「やっと出て行ったな」
「……そうね」




美琴はロッカーを開けると制服を掴みながら出て、その制服と体操着で正面を隠し、羞恥に塗れた表情で上条を睨みつけながら言う。

「とりあえず、洗いざらい全部話しなさい。アンタがこの常盤台中学。しかもよりにもよって私が使ってたロッカーに裸で入っていた理由とか全部」
「いや、俺もわかんないし」
「嫌やめてそんな格好でこっちを見ないで!!」

どっちだよ。と突っ込みたいところだが、それはあまりにも可哀想だろうと上条は思った。
着替え中に男がロッカーに入っていたのだ。しょうがない。

「いつまでこっち見てる!後ろ向いてなさいこの馬鹿!!」
「え、あっ、悪い!」

その声でやっと自分が美琴を見続けたということに気づいて慌てて後ろを向く。その間に美琴はいそいそと服を着ていく。

「い、良いわよ」

その合図で上条は振り返る。
美琴はいつもの常盤台中学の制服を着ているが、今だ頬を赤く染めている。

「悪かったな、御坂」
「どうせアンタにはアンタの事情があるんでしょうね。アンタじゃなかったら黒炭にしてたわよ」

許してくれると言っているが、さっさと理由を話さないと焼くわよと言うような目をしている。

「・・・・・・俺もよくわかっていないんだ。でも、早く行かなきゃ」
「行くって、どこに」
「俺がここに送り込まれたのは俺を遠ざける為だ。学舎の園から出て、あいつを見つけ出さないと」

上条はロッカーから出て、更衣室の扉に手をかける。

「待ちなさい」

美琴に呼び止められ、立ち止まる。

「そんな格好で行くつもり?」
「こんな格好でも、行かなきゃいけない。それにこの右手があれば、強行突破も出来るだろ」

そんな上条を見て美琴は、はぁ、と溜め息をつくと上条を掴み、再びロッカーへと押し込んだ。

「お、おい!」
「私が何とかするから、アンタはそこで待ってなさい」

そう言って美琴は鍵を閉め、更衣室から出て行った。




美琴を待っている間にも生徒達は入ってきたが、美琴が鍵をかけていてくれたおかげで見つからずに済んだ。
その後誰もいなくなってから30分か40分そこらで美琴は戻って来て、扉を開けた。その手には袋がある。
わざわざ外まで出て買ってきたのか。

「その格好のまま動くわけにはいかないでしょ。これを着なさい」

美琴が袋から取り出したのは、美琴のよりも大きめの常盤台中学の制服一式である。
学舎の園では学校の制服も買えるのだろうか。値段は気にしないことにした。

「あの、御坂さん?これは一体・・・・・・」
「そもそもこの学校は女子校だし、私達【ここのせいと】は私服が禁止されてるのよ」

つまり、と美琴は話を続ける。

「アンタもここの生徒になるしかないってわけ」
「どうしても?」
「どうしても」

いくら学舎の園から出るためとはいえ、女装、しかも女子中学生になるのは嫌なのだ。
一歩、上条が後ろに下がると一歩、美琴が詰め寄る。元からロッカーから出て数歩の場所だ。すぐに追い詰められてしまった。

「これもアンタの為よ。覚悟を決めなさい」

これを言われてしまってはどうしようもない。

「・・・・・・御坂がわざわざ買ってきてくれたんだもんな。着るよ」
「そう言ってもらえると助かるわ」




美琴が買ってきたのは制服の他にマフラーや化粧道具。ソックスや革靴と櫛アンパン2つ。それにボタンみたいなものだ。
上条は1つずつそれらを身につけていく。制服はともかく目測だけでソックスや革靴のサイズを正確に当てられるものなのだろうか。
着替えている上条を見る美琴の目線は一箇所。胸だ。少しでも女の子らしするためにアンパンを2つ、テープで止めているのだ。

「・・・・・・何してんの?」
「何でもない・・・・・・それよりも、さっさと髪解かすわよ」

美琴に言われ、上条はベンチに腰かける。その後ろから美琴は優しい手つきで上条の髪を櫛で解かし始める。とても心地良く、つい目を閉じてその感覚を堪能してしまう。
が、それもものの数分のことだ。

「終わったわよ」
「そうか。ありがとうな」

ツンツン頭はすっかり影を失くし、美琴よりも少し長めだが、彼女と同じ髪型となった。

「さ、こっち向きなさい」

言われるがままに美琴へと顔を向ける。その手が持つものは櫛から口紅や筆のようなものに変わっていた。

「常盤台だと化粧が禁止されてるから、バレないように誤魔化す程度に抑えてるのよ」

そんな話をしながら、美琴は器用な手つきで上条を瞬く間に変身させてしまった。

「これが今のアンタの顔よ」

更衣室の鏡で自分を見る。髪は解かされ、唇や顔も美しくなっている。特に綺麗にしているわけでもない足も長いソックスによって隠されている。本当に自分なのかと疑いたくなるほどの変化だ。

「はい、あとこれね」

上条の喉に美琴はボタンのようなものを貼り付け、その上からマフラーを巻く。

「何だよこれ・・・・・・、え?」

上条自身から出た声のはずなのに、それは美しく女性らしいものとなっていたのだ。
変声機まで学舎の園では売っているのだろうか。

「これでアンタは立派な女の子よ」
「何から何までありがとうな」
「ちょっと時間はかかったけど、これなら男だってバレないわよ」
「それじゃあ、俺・・・・・・、私は行くわ」

今度こそ出ていこうとする上条だが、また美琴に呼び止められてしまった。

「何だよ」
「私も行くに決まってるじゃない。アンタ、道分かってるの?」
「確かに、その通りだな」

ここまで世話になったが、もう少し力を借りることにした。いつかこの借りを返さなければなれないと上条は思った。

「それじゃあ行きましょうか。上条せ・ん・ぱ・い」

今、『学舎の園脱出作戦』が敢行された!!









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