小ネタ 人生一幸せな誕生日
5月2日。それは御坂美琴の誕生日である。
彼女ももう15歳だ。髪も以前より伸ばしており、大人らしい落ちついた雰囲気も感じられる。未だにゲコ太は大好きだが。
そして今日、美琴は友人である佐天に、とある個室サロンに案内されていた。
約束をしていたわけでもなく、いきなり連れてこられたので、一体何があるのだろうかと不思議に思いながら扉を開けると、パンパンパン!!!と、火薬が破裂する音が部屋中に鳴り響いた。
「……ふぇ?」
「「「御坂さん(御坂様)(お姉さま)お誕生日おめでとうございます(の)!」」」
それは突然の事であり、美琴は茫然と立ち尽くすだけであった。
白井、初春、婚后、湾内、泡浮。彼女達が美琴の登場と同時にクラッカーを鳴らしたのだ。
部屋の中は飾り付けがされており、ついさっき借りたのではない事だけはにわかった。
「ふふーん。御坂さんの誕生日会をしたいって言ったら、皆快く承諾してくれたんですよ」
美琴の隣で佐天は、自慢げにそう言った。
「お、お友達のお誕生日を祝うなど、当然のことですわよ」
「そうですよ。そうでしょう?泡浮さん」
「はい」
「御坂さんには日頃お世話になっていますし」
「この程度の準備、なんともありませんわ!」
「……皆、ありがとう」
美琴自身は誰かの誕生日を祝う事はあっても、友達に自分の誕生日を祝われる事には慣れておらず、心の底から嬉しかった。
その後は騒いだり誕生日プレゼントを貰ったりと、どこにでもあるような幸せなパーティであった。
数時間経ってからだ。佐天が経ち上がり持っていたコップを上に挙げた。
「それでは最後に、サプライズがあります」
「サプライズ?」
今のままでも美琴にとっては最高のサプライズだ。
これ以上一体何があるのだろうと考えていると、扉が開き、一人の少年が入って来る。
見覚えがある。絶対に忘れる事の出来ない、美琴の心を占める、あの少年。あの馬鹿。
「誕生日おめでとう。美琴」
「アンタ、何で……?」
「お前が今日誕生日だって事を、“たまたま“聞いてな。お前には世話になってるし、少しだけでも参加させてもらうよう頼んだんだよ。ほら」
そう言って差し出したのは丁寧に梱包された小さな箱だ。
「出来れば、今開けてくれると助かる」
「う、うん」
美琴は包装用紙を破かないように丁寧に、開封する。
中身は銀製でハートの形のネックレスだった。
「これは」
「あんまり高いのは買えなかったけどさ、お前なら似合うと思って……」
「つ、着けていい?」
「ああ、頼む」
ネックレスに首に掛けながら、上条の顔を見る。
その顔は今までに見た事がないほどに嬉しそうだった。それを見て美琴も微笑む。
「似合ってる?」
「似合ってるよ。何だか今までより大人っぽく見えるぞ」
「ふふっ、ありがと」
突然の誕生日パーティ、上条からのプレゼント。
美琴は今年で一番幸せな気分だった。
今なら言葉に出来ると、美琴は思った。
「アンタから貰えて、私は幸せよ」
そう言われて上条の頬は赤く染まっていった。
そして美琴から目を反らし、
「じ、時間取らせるのも悪いし、俺の用事はこれだけだから、じゃあな!!」
そのまま部屋から出て行ったしまった。
その数分後にパーティはお開きとなってしまったが、その間美琴は、首のネックレスを両手で握って頬を赤らめていた。