とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ 祝杯




月明かりが壮年の二人を照らす。

「どうぞ」

「ん? ああ、すみませんね」

少なくなっていたグラスが再び黄金の輝きを放つ。
この二人で飲みたいとはだいぶ前から思っていた。

「アンタの息子には、申し訳ないな、ちょっとやんちゃに育ててしまった」

「いやいや、あなたに似てしっかりした強い娘さんですよ」

「そう言ってもらえると助かる」

酒が、いつもより進む。

「こちらこそ、すこしぼけっとした子に育ててしまい、娘さんに迷惑をかけてるようで」

「アンタにそっくりだよな」

「そこは否定するところでは?」

そこで間が入り、笑いが起こる。
なんともうまい酒だ。

「早いもんだな」

「ついこの間高校卒業を喜んだばかりなんですがね」

「ついこの間ぱーぱと呼ばれて泣いたんだがな」

「……流石にそれはついこの間とはいえないと思いますよ」

外は雨の後なので少し冷えている。
もうすぐ梅雨も終わるだろう。

「さっきの電話は、アンタの息子さんからだったよ」

「……あなたの息子でもあるんですよ?」

「おっと、先週からそうだったな」

「……こちらの電話も、新しい娘からでした」

「……そっか、なんでそっちにかけたのが先か、理由はなんとなくわかる」

「……私は恥ずかしく、こんなことは酒の力を借りなければ言えない、やはり、あなたの娘さんはお強い」

「おや? そちらの息子さんもシラフでしたぞ? あんなセリフをシラフで言えるあたり、オレなんかよりよっぽど強い。娘が惚れるわけだ」

気が利くことに、月は雲に隠れ、互いの表情は見えなくなった。
二人は酒に背中を押されながら、子供の言葉と一部変えた言葉を相手に伝える。



『お義父さん』 『お義父様』



「御坂美琴を育ててくれて、守ってくれて、ありがとう」

「上条当麻を育ててくれて、守ってくれて、ありがとう」

また、月明かりによってグラスの輝きがテーブルに映る。
これほど、うまい酒ははじめてだ。










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