とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ




上条「御坂の親父さんも釣りをするのか」

美琴「普段は海外だからよく知らないけど。帰国した時とか、たまに行ってるみたい」

上条「何か格好いいな。それで近々、釣った魚を送ってくれるって?」

美琴「うん。こないだの川釣りの話を母づてに聞いたらしくて」

上条「はは、趣味に理解を得られた気がして嬉しいのかもな」

美琴「私、魚なんて本格的に調理したことないのに。アンタはできるのよね?」



上条「独学だけど、まあ自炊の範囲で」

美琴「だったら届けてもらってアンタにあげる」

上条「待て待て。どうしてそうなる」

美琴「動物性たんぱく質が足りてないんでしょ? 前も結局はボウズだったし」

上条「そりゃ俺は助かるが、親父さんはお前に食べて欲しいんだろ」

美琴「私には無理だってば」



上条「んじゃ俺が料理するから、一緒に食おうぜ」

美琴「えっ」

上条「魚の種類はわかるか?」

美琴「えっと、お父さんがやるのは海釣りの方で、以前は確かクロダイとか」

上条「うーん。刺身……は、皮の処理が俺のスキルじゃ厳しいな。水炊きなんかどうだ」

美琴「そろそろ鍋の美味しい季節よね。って、本当に?」

上条「場所はうちでいいよな。親父さんの連絡があったら教えてくれよ」



上条「――さて。届いたはいいが、何だよこれ。すごく大きいですよ?」

美琴「お、お邪魔しまーす」

上条「ちょっと送り状を見せてくれ。……三十キロのクエ? 超高級魚じゃねぇか!」

美琴「そうなの?」

上条「俺も詳しくねぇけど、海○雄山がドヤ顔で講釈垂れるレベル」

美琴「あ、猫だ。かわいー♪」



上条「スフィンクスに避けられて凹んでる場合じゃねぇって! 悪いことは言わねぇ、御坂」

美琴「何よ。私が嫌われたわけじゃないわよ」

上条「寮の食堂で何とかしてもらえ。常盤台の厨房だったらその辺の飲食店よりマシだろ」

美琴「アンタは捌けないの?」

上条「これだけの食材、俺みたいな素人が手を出したら勿体無ぇよ」

美琴「そうね……。それじゃ、ここが無人島だと考えてみて」



上条「御坂さん? 意味わかんねぇぞ」

美琴「島に取り残されて二人きり。救助のあてはなく、自分たちだけで生き延びなきゃいけないの」

上条「ただの学生が、そんな映画みたいなシチュエーション……」

美琴「絶対にないと言い切れる? その右手を持つアンタが?」

上条「ぐっ」

美琴「この魚はようやく手に入れた食料よ。もしそうなった時、私に何て言うつもり?」



上条「……いいぜ、高級魚。てめぇに俺の腕が見合わねぇと言うなら、まずはその幻想を」 ブチコロス!

美琴「意外とノリがいいじゃない」

上条「お陰で気分が切り替わりましたよ。実際、カミジョーさんも高級食材には興味津々でして」

美琴「もっと楽にしなさいよ。無人島じゃないけど、本当に二人きり、なんだ、し……?」

上条「そうと決まれば、御坂。ここから先は共同作業だ」

美琴「はひっ」



上条「包丁は俺が持つ。お前はネットで情報を集めて指示してくれ。流石に独りじゃ戦えねぇ」

美琴「わ、わかった」

上条「その前に下準備が要るな……。出刃と鱗とりは調達しとくから、鍋の具材を頼めるか」

美琴「水炊きでいいのね?」

上条「薬味を忘れるなよ。万能ねぎはベランダの鉢に植えてる」

美琴「あ、家庭菜園も始めたんだ」



上条「――や、やっと下拵えが終わった。不恰好だけど刺身も何とかなったか」

美琴「お疲れさま。私のナビのお陰よね」

上条「そのとおりだと思うぞ。にしても、綺麗な白身だな。顔はいかついのに気品すら漂ってる……」

美琴「ボリュームもすごいわね。これって何人前くらいあるのかしら」

上条「ぺろっと平らげそうなのが浮かぶせいで、カミジョーさんには判断がつきません」

美琴「そういえば……。あの子はどうしたの」



上条「ちょっと出掛けてる。今日は御坂が腹一杯にならねぇとさ」

美琴「悪いことしちゃった、かな」

上条「お裾分けはしっかり頂戴するよ。それに、無人島なんだろ?」

美琴「! そ、そうよね。いつまた敵が襲ってくるかもわからないし」

上条「その設定は初耳ですが。まあいいや」

美琴「鍋よそうわね。それじゃ、いただきます!」

上条「ん……。何だこれ」 モグモグ

美琴「出汁は利いてるのに、身にクセがなくて、ひどく上品な感じ……」 モグ

上条「食感もたまらねぇ。肉厚のぷりっとした歯ざわりと、骨まわりのゼラチンがまた」

美琴「グルメ番組のコメントみたいになってるわね」

上条「だって旨ぇよマジで。御坂の親父さんに感謝しなきゃな」

美琴「そうね。アンタと二人でこんな時間が過ごせるなんて」



上条「うん?」

美琴「えっ?」

上条「御坂さん、それって」

美琴「ええっと、そう! ご飯って誰かと食べた方が美味しいから。あはは」

上条「だな、大勢の方が賑やかで!」

美琴「無人島、だけどね」



ニャー

上条「猫は生息してたか」

美琴「アンタも食べる? はい右手」

上条「幻想殺しを『お手』っぽく催促すんな! 『アンタ』じゃどっちを呼んでるかもわかんねぇよ」

美琴「と、当麻?」

上条「だぁー! 頭に触れればいいのか? もう好きに使ってくれ……」



ニャー

美琴「よしよし。たくさん食べなさい」 ナデナデ

上条「利き腕を取られたカミジョーさんはお預けを食らってるわけですが」 ナデ

美琴「私の頭も撫でてない?」

上条「嫌だったか」

美琴「別に。そんなことないけど」



上条「また釣りに行きてぇな。帰省ついでに、今度は海とか」

美琴「お父さんみたいに?」

上条「そこまで本格的なのは無理だろ。もっと手軽に防波堤あたり」

美琴「また図書館で旬の魚でも調べてみたら」

上条「土御門はキス釣りがお勧めだって言ってたな。食いつきがいいんだと」

美琴「き、キス?」



上条「顔が赤いぞ。魚の名前で変に意識してねぇか」

美琴「知らない。猫が可愛いから、勝手に熱くなってるだけ」

上条「御坂、お前さ。ひょっとして……って、中学生相手に何を聞こうとしてんだ俺は」

美琴「……どういう意味?」

上条「んー。ちょっと待ってくれ、いま自分に説教してる」

美琴「わけわかんないわよ! ああもう。――いい、私はアンタのことが」



上条「好きだぞ、御坂」

美琴「……はい?」

上条「くそ、脳ミソを通さずに言葉が出ちまった。整理がつくまでもう少し」

美琴「ちゃんと話して。考えてること全部」

上条「勘弁してください。俺にも尊厳ってものが」

美琴「話して」

上条「ワカリマシタ」



上条「ええとだな。最近のお前はよく赤くなったりで、もしや俺に気があるんじゃないかと」

上条「調子に乗ってるだろ? 勘違いだったらカミジョーさんの赤っ恥です」

上条「で、御坂の本心を確かめたくなった時にはっとしたんだ。俺って卑怯者じゃね?」

上条「たとえ仮の話でも、保身に走って女の子に恥ずかしい思いをさせるのかよ、ってさ」

上条「俺は男で年上だ。じゃあこっちから動こう、と決めたはいいけど、今度は自分の気持ちをすっ飛ばしてた」

上条「つまり、上条当麻にとって御坂美琴はどんな存在か。咄嗟に口をついたのがさっきの台詞なんだよ」



上条「とはいえ、俺はその辺が少し疎いみたいで……。って急に抱きつくな!」

美琴「少し? 抜けぬけとよくも」

上条「首絞まってる! まだ続きがあるんです最後まで聞いて」

美琴「たとえば不幸体質とか? 恋人を作って巻き込むことが怖いんでしょ」

上条「うっ」

美琴「却下よ。そんな理由で身を引かれた方がよほど不幸だわ」



上条「ち、中学生の御坂に交際を申し込むのはいささか早過ぎるって気も」

美琴「江戸時代だったら結婚適齢期よ」

上条「お願いします赤面しないで。カミジョーさんは現代の話をしています」

美琴「要は世間体じゃない。――耐えて」

上条「そんなばっさり!?」

美琴「うるさい。それより本題」



上条「……ああ。俺はある事情を抱えてて、誰とも付き合えない」

美琴「あの子のことね?」

上条「俺はインデックスを守ると決めたんだ。彼氏彼女の関係じゃねぇけど、こんな状況じゃ相手に悪いだろ」

美琴「何よ。周りの世界が含まれてる分、私の方が条件は上じゃない」

上条「御坂さん? ど、どこでそれを」

美琴「私は当麻を信じてる。気持ちは伝えてもらったもの」



美琴「あの子のためにも、一人で抱え込むのは限界があるわ。これからは二人で考えましょう」

上条「御坂……」

美琴「名前で呼んで。もう何の障害もないわよね?」

上条「しばらくごたつきそうだけどな。本当に俺なんかでいいのか美琴、ネットみたいに『釣りでした』ってオチは」

美琴「この期に及んでアンタは……。言葉で足りなければ態度で示してみせるけど?」

上条「とても魅力的な提案ですが、いまは告白の返事を聞かせてくれるか」



美琴「――私もあなたが好きよ。当麻」

おわり






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