お部屋デート日和~ ほのぼの時々イチャイチャ所によりエロ~
~ほのぼのイジワル~
ガーガーと、安物の掃除機の音が響く。
上条は、本日訪問してくる大切なお客様に備えて軽く掃除しているのだ。
せめて見た目だけでも部屋を綺麗にしておかなければならない。
「うっし! こんなもんかな?」
ふー、と一息ついた所で、タイミングよくチャイムが鳴る。どうやら来たようだ。
まだ片付いていない箇所もあるのだが、まぁ仕方ないだろう。
「はーい。今出ますよー、っと」
ガチャっとドアを開けたそこには、上条の彼女が立っていた。
彼女はお行儀良くペコリと頭を下げて、一言あいさつ。
「お邪魔します」
「おう、いらっしゃい…美琴。まだ部屋散らかってるけどいい?」
すると彼女はぷっ、と吹き出し、いつもの調子で軽口を叩く。
「別に気にしないわよ。アンタがずぼらなのは知ってるんだから、無理して掃除しなくてもいいのに」
「そ、そういう訳にはいきませんよ! 上条さんにだって意地があります!」
口を尖らせて文句を言う上条。その様子が可愛らしく、美琴もついついイジワルしたくなってくる。
「あらそう? じゃあ私が手伝ってあげようか? 片付け」
「うっぐっ…! そ、それは…ちょっと……遠慮しとこうかな~、なんて…」
「な~に? エッチな本でも隠してるの?」
「ソソソ、ソンナコトナイデスヨー!?」
どうやら図星のようだ。と言うか、わかりやすすぎる反応である。
美琴は目を細め、「へー、ほー」と何も語らずに上条を追い詰める。
「……………すんません…」
堪らず上条も、脂汗を垂れ流しながら謝った。だが別に、美琴も本気で怒っている訳ではないので、
「正直でよろしい」
と上条の謝罪を受け入れた。
今まで上条がさんざん他の女性にもフラグを建ててきた事を考えると、
エロ本の1冊や2冊など持っていようと許容範囲だ。
「で、もう上がってもいいのかしら?」
「あ…ああ。けどさっきも言ったけど、まだ散らかってるぜ?」
「だから気にしないって」
そう言うと美琴は、片手に持っていたお土産と共に、上条の部屋へと足を踏み入れた。
~イチャイチャお土産~
「ささっ、まずはこちらでおみ足をお崩しくださいませ姫様」
「うむ。苦しゅうない」
雑なミニコントと同時に差し出された座布団に座り、美琴はケーキボックスをテーブルの上に置いた。
上条はボックスにプリントされた店名のロゴを見て、軽く驚く。
「あっ、これってアレだろ? 最近オープンした、行列のできるケーキ屋。この前テレビで見たわ」
「うん。朝早くから並んじゃった」
「マジかよ!? 俺なんかの為にわざわざそんな苦労しなくても…」
上条の「俺なんかの為に」という発言にムッとした美琴は、頬を膨らませて反論する。
「アンタと一緒に食べたかったの!
私にとってはすごく大切な事なんだから、『俺なんか』とか『わざわざ』とか言わないで!」
真剣な眼差しでそんな嬉しい事を言われたら、流石の上条でも、
「そ…そっか。……ありがと、な…」
と顔を「かあぁっ…!」と赤くせざるを得ない。
「あ、じゃ、じゃあお茶淹れるな!? コーヒーと紅茶と牛乳、どれがいい!?」
照れ隠しするように、ワタワタと飲み物の準備をする上条。
美琴は「あ、紅茶をお願い」とリクエストしたので、戸棚からティーバッグを取り出す。
そんな上条の後ろ姿を眺めながら、美琴の頭にふと疑問が浮かび上がる。
「あれ? そう言えばあの子達は?」
ティーカップにお湯を注ぎながら、上条は答える。
「インデックスとオティヌスか?
二人には小萌先生…って俺の担任の先生なんだけど、その人の家に行ってもらってる。
ついでに言うと、スフィンクスにもな」
「えっ、あ、そうなの? う~ん…何だか追い出しちゃったみたいで悪いわね…
一応、4人分は買ってきたんだけど……」
「あいつ等の分は冷蔵庫に入れとけば大丈夫だろ。
…まぁ、オティヌスの体でケーキ一個は食いきれないと思うけど。
それに気を使わなくてもいいぞ? 二人とも…特にインデックスは小萌先生に懐いてるし、それに」
それに、と一拍置いてから上条は言う。
「…それに…美琴と二人っきりになりたかったからな」
今度は、美琴が赤面する番だった。
~ほのぼのケーキ~
「うんまかったなぁ~…」
上条は小皿の上のティラミスを平らげ、心地良い溜息を吐く。流石は高いだけの事はあるという所か。
上条のそんな様子を見て、美琴は自分のミル・クレープを半分食べた所で止め、フォークを置く。
「良かったらこれも食べる?」
「えっ!? いや、それ美琴のだろ?」
「アンタの幸せそうな顔を見てたら、お腹いっぱいになっちゃったわよ。
それに……ほら! 私ダイエット中だったし」
「え、あ…そう? 美琴にダイエットが必要な所なんて無いと思うけど…
でもまぁ、そういう事なら遠慮なく…あむっ! んぐんぐ…………うんめぇえ~!」
子供のように無邪気で幸せそうな顔をしながらケーキを頬張る上条を、
くすっと笑いながら見つめる美琴。
本当はダイエットなどしていないのだが、美琴にとってはケーキよりも、
上条のこの表情を見ている事の方が大切なのであった。
「はあぁ~…ごっそさんでした」
「はい。お粗末さまでした」
~ほのぼのゲーム~
「何かゲームでもやるか?」
「あっ、やるやる」
テレビ台の収納スペースから、ゲームのハードを取り出す上条。
しかし上条の懐事情もあり、出てきたのは2~3世代は昔のゲーム機であった。
「あー…悪いな。最新作とか無いけど」
「別に気にしないわよ、そんな事。レトロゲームだって面白いじゃない」
と言うより、美琴としては『なにで』遊ぶかよりも『だれと』遊ぶかの方が重要なので、
ゲームがレトロだろうが最新作だろうが、そこはあまり関係ない。
「じゃあ何にする? 格ゲー、パズル、レース…アクションで二人協力プレイってのもあるけど」
「それいいわね! どっちかって言うと、対戦よりそっちの方が好きだわ」
上条と対立するよりも、一緒に協力して敵を倒す方がいいという事らしい。例えゲームでも。
上条は「ん」と短く返事をすると、美琴のリクエスト通り、
協力プレイができる横スクロールアクションのゲームを起動させた。
~イチャイチャちょっとエロゲーム~
「あのー……美琴さん? これは一体どういう事なのでせう?」
「んー? どうって…何が?」
「いやだから! この状況ですよ!」
今現在、上条は美琴の座椅子と化している。
上条の胸を背もたれの代わりに寄りかかり、上条は強制的に、
美琴を背後から抱き締めざるを得ない構図となっているのだ。
ゲームの電源を入れて座布団にあぐらをかいた瞬間、美琴が膝の上に座ってきたのである。
「だって協力プレイなんでしょ? この方が一緒に戦ってるって感じがするじゃない♪」
「…まさか美琴さん、これが目当てでアクションを選らんだんじゃあ……」
「そんな事ないわよ~」
と口では言っているが、美琴が非常にご機嫌なのは明らかで、あながち間違ってもいないらしい。
しかし上条も黙ってはいない。
美琴の背後を取っているという利点を生かし、反撃に出たのだ。
「ふ~っ」
「わひゃっ!!?」
正確に表現するならば、美琴のうなじを目掛けて息を吹いたのである。
「ふ~、ふ~……ふぃ~~~!」
「ひゃんっ! ちょ、反、則! んゃあぁん!!!」
集中力をかき乱されたまくった美琴は、ゲームどころではなくなり、
アッサリと持ちキャラの体力と残機が失なわれる。
「ああ、ちょっと! アンタのせいで死んじゃったじゃない!」
「ん~? 上条さんのせいにされても困りますな~。ミコっちゃんの腕が悪かったんじゃな~い?」
「……にゃろう…」
しゃあしゃあとそんな事を言う上条に対し、今度は美琴が復讐に出る。
美琴はくるりと体勢を反転させ、上条と向き合う形を取る。
上条は不思議に思いつつも画面から目が離せないので、されるがままに、
「そぉ~れ、こちょこちょこちょこちょーーーっ!」
「あーーーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃあ!!!」
脇腹をくすぐられた。
しかも上条がコントローラーを握っていて、今は右手が使えないのをいい事に、
その両手から微かに感じる程度の、超微弱な電撃も放出させる。
上条はくすぐりと痛痒い程度のビリビリで、ゲームどころじゃなくなる。
結局上条も、持ちキャラを死に至らしめてしまったのだった。
~ほのぼのイチャイチャお別れ~
その後、借りてきた映画を観たり漫画を読んだりとだらだら時間を過ごした二人だったが、
そろそろ完全下校時刻が近づいている。
「あ…っと、もうこんな時間か。インデックス達を迎えに行かなきゃだ」
「あー…ホントだ……やっぱり楽しい時間って、あっと言う間に過ぎちゃうわね…」
美琴は名残惜しそうに時計を見る。
そんな美琴を上条は頭を優しく撫でながら慰めた。
「つっても、今生の別れって訳でもないだろ? 明日にはまた会うんだからさ」
「それでも! それでも…寂しいんだもん……」
口を尖らせる美琴。
上条は「やれやれ、仕方ないな」と言わんばかりに、その尖った唇を―――
『…ちゅっ…』
―――唇を黙らせた。
「ほ、ほら! これでもう寂しくないだろ!?」
と上条は言うがしかし、
「……こ、これじゃ逆効果よ…馬鹿………」
美琴は尚更帰りたくなくなってしまうのであった。