とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある本気の九番勝負




「勝負よ! 今日こそ決着つけてやるんだから!」

美琴が人差し指を突きつけながら言い放ったその言葉に、
その頃の記憶がない筈の上条だが、妙な懐かしさを感じていた。

今年の6月中旬。美琴は数名のスキルアウトに囲まれていた所を、上条に助けられた。
とは言っても上条発案の『知り合いのフリして自然にこの場から連れ出す作戦』は、
美琴の「誰よアンタ?」という空気を読まない一言で頓挫したのだが、
そもそも美琴はレベル5の能力者だ。
上条の助けがなくとも、この程度のアクシデントは自分で何とかできる。
現に彼女は、その場で電撃をぶっ放し、ナンパしてきた野郎どもを丸焦げにしていた。
その際に自分の事を「まだ子供【ガキ】じゃねーか」と言いやがった上条も一緒に焼いた…のだが、
彼は何故か無傷だった(今ならば、それが幻想殺し【みぎて】の効果なのだと分かるのだが)のだ。
それ以来、超能力者としてのプライドを傷つけられた美琴は、事ある毎に勝負を挑むようになった。
だが結果は全戦全敗で、しかも上条は本気を出した事すらなかった。
その後、一方通行の「絶対能力進化実験」で上条に『本当の意味』で助けられたのを境に、
勝負を挑まなくなった美琴なのだが、オティヌスを巡る事件の時、美琴は再び上条と戦った。
そこで美琴は、『思ったよりも虚しい』初勝利をもぎ取ったのだ。

そして本日、美琴はまた上条に牙を剥いて相対している。
上条は突きつけられた指をギュッと握り、そのまま美琴を睨み返す。

「……いいぜ、相手になってやるよ。…もう手加減とか一切しないからな!」
「上等じゃない…本気のアンタをぶちのめさなきゃ、意味なんて無いものね!」

今ここに、超能力者の第三位、常盤台の超電磁砲こと御坂美琴
          対
右手に幻想殺しを宿し、幾度と無く世界を救ったヒーロー、上条当麻の、
血で血を洗う争いが始まろうとしていた。


 ◇


勝負その1 『格闘ゲーム』

ルール
・3ラウンド中、2ラウンド先取した方の勝ち
・持ちキャラは自由
・美琴は、能力を使ってゲーム機に干渉するのは禁止

「ちょ、それハメじゃないの!?」
「うははははー! これはれっきとしたコンボですー!
 それに仮にハメだったとしても、『ハメちゃいけない』ってルールはありましたっけー?」
「なっ! ん…にゃろう! だったら!」
「ああっ!? なにその受け身カウンター! そんな技あったっけ!?」
「アンタ、好きなキャラ以外の技表は見てないの? 他にもこんな事もできちゃうんだから!」
「えっ、ちょ、硬直なしにそんな超必、反則っ!」
「あっら~? これはただのコンボなんですけど~?」

勝者・御坂美琴
戦歴・上条 0 ― 1 美琴


 ◇


勝負その2 『ババ抜き』

ルール
・最後までジョーカーを持っていた方の負け
・10回勝負(ただしババ抜きで何度勝利しても、トータルの戦歴は1回分の勝利とする)
・不幸体質の上条へのハンデとして、10回の勝負中1回でも上条が勝てれば、上条の勝利となる

「………はい、アンタの番。ラスト二択ねー」
「ぐう! 右か…左か…? さっきは右だったから、今度は左…?
 いや、その裏をかいて右って可能性も……いやでも、それもフェイクで本当は左とかっ!?」
「ああ、もう! ごちゃごちゃ言ってないで、とっとと取りなさいよ! どんだけ慎重なのよ!」
「し、慎重にもなりますよ! ここまで9戦とも、上条さんのストレート負けなんですよ!?
 後がないんだよこっちには!」
「……はぁ…分かったわよ! 右よ右! 左がジョーカーだから!」
「…え? マジで? …でも何で?」
「一回くらい勝たせてあげるわよ。…何かもう、見てて可哀想だから」
「ムカッ! 施しなんていらねーよ! ……ただまぁ、『俺の意志』で右を選ぶけどな。
 べ、別にミコっちゃんに言われたから右をとる訳じゃないんだからね!?」
「何その取って付けたようなツンデレ……いいから、ちゃっちゃと取って…って馬鹿っ!」
「あれっ!!? 右を取ったのに何故にジョーカー!? 美琴センセーに嵌められた!?」
「違うわよ! 私から見て右って…あ~あ、もう……」
「………不幸だ…」

勝者・御坂美琴
戦歴・上条 0 ― 2 美琴


 ◇


勝負その3 『料理対決』

ルール
・美味しい料理を作った方の勝ち
・上条の部屋の冷蔵庫にある残り物の食材と、買い置きしてある調味料を使用
・買い足しはできない

「じゃーん! 上条さんの得意料理、『野菜炒め』だー!」
「はい。残り物のお魚を使った『ブイヤベース』」
「……へ? ブイヤベースって、ご家庭でも作れる物なの…?」
「わりと簡単に作れるわよ?」
「…い、いや! 問題は味だ! 見た目なんて二のつg『ぱくっ』参りました」
「早っ!!?」
「いや、勝てねーって。これ、レストランで食うより美味いもん」
「えっ!? そ…そう、かな…?
 で、でで、でもほら、アンタのも食べてみないと分からないじゃない!?」
「いや~…もう、勝負になんないと思うけどな~……まぁ、いいや。食べてみてくれ」
「っ!!? あ、あああの、ちょっと待って!? こ…このお箸ってもしかして…?」
「ああ、うん。普段は俺が使ってるもんだけど?」
「そ、そそ、そう…なんだ…………あの…じゃあ…い、いた、いただきます……『はむっ』…」
「なっ? 俺の負―――」
「…負けまひひゃ……」
「―――けだろ…って、はあっ!!?」
「…何かもう…ごちそうさみゃれふ……」
「え、あ、そう…? 美琴がそれでいいんなら、いいけど……てか、顔真っ赤だけど大丈夫か?」

勝者・上条当麻
戦歴・上条 1 ― 2 美琴


 ◇


勝負その4 『二文字しりとり』

ルール
・普通のしりとりのルールに加え、二文字以外の言葉を言っても負け
・相手が言葉を言った後、自分も10秒以内に次の言葉を言わなければならない
・自分の言った言葉が相手に伝わなかった場合は、一旦中断して審議
 (たとえ造語だったとしても、説明が面白ければOKとする)

「また『し』!? しお(塩)…は、さっき言ったから……」
「はい、10・9・8・7」
「ああ、えっと…『しか』! 鹿だ鹿!」
「『か』…か…かべ! 壁ね!」
「『べ』…べ……べ~~~っ!?」
「ぷぷぷっ! 濁音って焦ると意外と出てこないのよね~♪ 10・9」
「……『べあ』」
「はい、審議。『べあ』って何よ?」
「フォークダンスの時にミコっちゃんが放った謎の言葉」
「べあっ!!?」
「そう、それ。いかがですかな~?」
「ぐっ! あ…有りでいいわよ有りで!」
「はい、じゃあ『べあ』ね。10・9・8」
「『あし(足)』」
「あし……また『し』かよ! ええっとぉ…」
「10・9・8・76543」
「おおうっ!!? し、しし、『しお(塩)』! …あ、ちょっと、今のナシ―――」
「はい、駄目ーーーっ! 『しお』は一回言いましたー! アンタの負けー!」
「つ、つーかちょい待てっ! カウント7から急に速くなったぞ!? やり直しを要求する!」
「煽られたアンタが悪いんでしょ?
 しかも、それでもちゃんとカウントがゼロになる前に答えたんだから、アンタのミスよん♪」
「納得できねぇ…」

勝者・御坂美琴
戦歴・上条 1 ― 3 美琴


 ◇


勝負その5 『10秒ゲーム』

ルール
・目を瞑ったままストップウォッチをスタートさせ、10秒経ったと思ったところでストップさせる
・コンマ1秒でも、10秒に近かった方の勝ち

「私からね」
「いいぜ。よーい……スタート!」
「……3………8…10!」
「10秒18か。ま、まぁまぁだな」
「ふっふ~ん! 焦ってるわね? 体内時計には結構自信あるんだから♪」
「体内時計の意味、ちょっと違くね?」
「い、いいから! 次はアンタの番よ! よーい……スタート!」
「……4…6…………10!」
「…12秒00。スッゴーイ、12秒ジャストダー」
「お褒めいただきありがとうございますですよチクショウ!」

勝者・御坂美琴
戦歴・上条 1 ― 4 美琴


 ◇


勝負その6 『腕相撲』

ルール
・手の甲が台面に着いた方の負け
・女性である美琴はハンデとして、両手を使っても良いものとする

「しっかり握れよ~? 負けた後、文句とか言われなくないからな」
「……………」
「…? えっと…大丈夫でせうか?」
「……らいじょぶれひゅ…」
「そ、そうか? んじゃいくぞ? レディー………ゴー!!! …ってあれ? もう勝ち?」
「……………」
「ん~…そっち両手だし、美琴って体力もあるから負けるかと思ってたけど……
 もしかして調子でも悪かったのか?」
「……………」
「美琴?」
「………アンタの手…ゴツゴツしてた………やっぱり…男の子なのね…」
「あ、あの…ミコっちゃん?」
「えへ…えへへへへへへ~……手ぇ握っちゃった~…」
「……何か、勝負どころじゃなかったみたいだな…」

勝者・上条当麻
戦歴・上条 2 ― 4 美琴


 ◇


勝負その7 『呼び名勝負』

ルール
・お互いに、自分の呼び名を決める
・決められた呼び名以外で相手の事を呼んだ場合に負けとなる
 (例・上条は『御坂』や『美琴』、美琴は『アンタ』など)

「じゃ…じゃあその……わわ、私の事はハハハ『ハニー』とでも呼んでもらおうかしらっ!!?
 どっ、どど、どう!? 恥ずかしすぎて呼べないでしょう!!!」
「OK、ハニー!」
「ぶっふぇい!!! ななな何で当たり前のようにサラッと言えんのよ!!?」
「何キョドってんだよハニー。ハニーがそう呼べって言ったんだろ?
 ハニーの事をハニー以外の呼び名で呼んだら、俺がハニーに負けてしまいますよ」
「わわわ、分かったから! ハニー連呼すんな馬鹿っ!!!」
「ふっふっふ…『馬鹿』ではなく、『当麻くん』と呼んでもらおうか!」
「え………えええええぇぇぇっ!!!?」
「思えばハニーって、俺の事を名前で呼んだ事ないだろ? だからどんな感じなのかな~って」
「え、でも…その………名前で…呼ぶ…にゃんて……」
「ん~? それともハニーは潔く負けを認めるおつもりなのでせうか~?」
「なっ!? い、いいわよ! やってやろうじゃない!
 た、高々名前を呼ぶだけでしょ!? 簡単よ、そんなの!」
 とっ! とと……と…まぁ…………」
「あれ~? 声がちっちゃくて聞こえませんなぁ~!」
「くっ…! と、うま………当麻っ!!! 当麻当麻当麻ぁ~~~!!!
 ここここれで満足!!?」
「はい、ハニーの負け~」
「はぁっ!!? 何でよ! ちゃんと呼んだじゃない!」
「俺は俺の事を、当麻『くん』って呼べって言ったはずだぜ?
 『くん付け』してないからルール違反です。だからハニーの負け」
「だっ………騙されたあああああぁぁぁぁ!!!!!」

勝者・上条当麻
戦歴・上条 3 ― 4 美琴


 ◇


勝負その8 『こちょこちょ対決』

ルール
・お互いにくすぐり合い、先に笑った方の負け

「あっははははははははっ!!! りゃめ、そこ、弱、くっ、ひゃはははははははっ!!!!!」
「ミコっちゃん弱っ!」

勝者・上条当麻(瞬殺)
戦歴・上条 4 ― 4 美琴


 ◇


ここまでお互いに4勝4敗。勝負の行方は、最後の9戦目まで持ち越された。

「次でラストだな…」
「まさかここまで食いついてくるとは思わなかったわ……
 予定では、もっと圧倒的な大差で勝てるはずだったのに…」
「それはこっちの台詞だよ。美琴がここまでやるとはな…」

二人は睨み合いながら、「ふっふっふ…」と不気味な笑みを浮かべた。

「んじゃ、ラストの競技はどうする?」
「そうね…アンタが決めていいわよ」
「おっ! いいのか~? 俺に有利な競技にしちまうぜ~?」
「ハッ! 来なさいよ。どんな勝負でも真っ向から受け止めて、そんで返り討ちにしてやるんだから!」
「その自信が命取りになるかも知れないぜ…?
 けどまぁ、美琴がいいってんなら遠慮なく提案させてもらうか」

「望むところよ!」と腕を組む美琴だったが、上条の提案した予想の斜め上を行く勝負内容に、
美琴は固まる事となる。

「じゃあ…『抱き締め対決』だ!」
「ええ、いいわよ! 抱き締め対決でも何でも………へ? だきしめ?」
「ああ。お互いに抱き締め合って、先にギブアップした方の負け」
「………………はああああああぁぁぁぁぁ!!!?」

勝負その9 『抱き締め対決』

ルール
・お互いに抱き締め合って、先にギブアップした方の負け…らしい

「なっ、ななな、何よそのふざけた対決方法っ!?」
「おやおや~? ミコっちゃんが言ったんじゃないのか~? 勝負方法を『俺が決めていい』って~」
「だっ、だだ、だかりゃって、な、そ、何で、そんにゃ!?」

この反応に、上条はすでに勝ちを確信していた。

(美琴は何だかんだ言っても、こういう事には免疫が無いからな。
 すぐに恥ずかしがってギブアップすんだろ)

免疫が無い…と言うよりは、その相手が『上条』だから、と言った方が正しいのだが、
そこに気付けるようならば、鈍感王という不名誉な肩書きは授かっていないだろう。

「んじゃ、勝負開始な」
「ちょちょちょ、待ってっ!!! ここ、心の準備が―――」

抱き締め対決、開始。

(………あれ? 勝つ事ばかり考えてて、あまり深く考えてなかったけど、
 これってもしかして、思いっきりセクハラなんじゃあ…)
「……………」
(い、いや! 美琴も承諾した(?)んだから大丈夫だよな!?)
「……………」
(つか、美琴って何か、甘くていい匂いがするな…やっぱり女の子なんだなぁ…)
「……………」
(って、いかんいかんいかんいかん!!! 俺がドキドキしてどうするよ!?)
「……………」
(…け、結構粘るな…もっと早く音を上げると思ってたのに……)
「……………」
(ヤ、ヤバい! もう、俺の方が限界だ! これ想像してたより遥かに恥ずいっ!)
「……………」
「ミ、ミコっちゃ~ん? ギブならギブって言った方がいいですぞ~?」
「……………」
「…? 美琴?」
「………ふにゃー」
「……あっ。すでに気絶してる」

結局美琴は、抱き締め対決開始直後のファーストインパクトで負けが確定していたのだった。

勝者・上条当麻
戦歴・上条 5 ― 4 美琴

これにより、9番勝負は上条の勝ち越しという結果で幕を下ろした。
だが『そんな事』はどうでもいい。おそらく皆さんには、冒頭から抱いていた疑問があるだろう。
ここは代表して、青髪ピアスさんに思う存分にツッコんでもらおうと思う。

「いや、勝負言うかこれ……

 た  だ  イ  チ  ャ  つ  い  と  る  だ  け  や  な  い  か  い  っ!!!」










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